特集 2014年3月15日

移動販売車のひみつ

移動販売車の中について色々聞いてきました。移動販売をしている方の話もきいています。
移動販売車の中について色々聞いてきました。移動販売をしている方の話もきいています。
たこ焼きやクレープや焼き鳥など。大きな商業施設やイベント会場では様々な移動販売車が出ています。カラフルなラッピング塗装や装飾がされている移動販売車は有るだけでイベント会場が賑わいます。

あの移動販売車の中はどうなっていのでしょうか?水回りは?調理用の道具は?そもそも買うと幾らぐらいするの?どうやって出店しているのか?

移動販売車の気になる所を色々聞いてきました。
1972年生まれ。元機械設計屋の工業製造業系ライター。普段は工業、製造業関係、テクノロジー全般の記事を多く書いています。元プロボクサーでウルトラマラソンを走ります。日本酒利き酒師の資格があり、ライター以外に日本酒と発酵食品をメインにした飲み屋も経営しているので、体力実践系、各種料理、日本酒関係の記事も多く書いています。(動画インタビュー

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> 個人サイト 酒と醸し料理 BY 工業製造業系ライター 馬場吉成 website

ベースは軽トラック

話を聞いたのは都内で移動販売車の製作販売を行っている移動販売車.netの神山さんです。
納車前の車で内部を説明していただきました。ありがとうございます。
納車前の車で内部を説明していただきました。ありがとうございます。
移動販売車は軽トラックや普通車のトラック。ハイエースなどのバンを改造して作られています。今回説明していただいたのは軽トラックを改造した物。
カフェの移動販売車。もともとはこんな感じの車</a>です。
カフェの移動販売車。もともとはこんな感じの車です。
こちらがその車。荷台部分にラッピング塗装された販売 スペースの箱が乗り、前の部分の形状も変更されています。
ちょっと大きめの荷物庫がついた軽トラックという感じ。
ちょっと大きめの荷物庫がついた軽トラックという感じ。
販売スペースには一方の側面と後ろに販売用の窓があり、もう一方の側面に出入り口のドアがついています。ドアや窓の位置はお客様によって変わるそうです。
白で統一された販売車内。思った以上に広い。
白で統一された販売車内。思った以上に広い。
中は広さが畳1枚半程度。高さは180cmぐらいあり、私が立ち上がっても頭が天井にはつかない高さでした。トイレと風呂は無いものの、住もうと思えば住めそうな広さです。
販売用窓も予想外に広かった。
販売用窓も予想外に広かった。
神山さんによると、軽自動車は地面から天井までの高さが2mまでと決まっているため、ワンボックスタイプをベースにすると、天井が低く腰を曲げながら作業をするような状態になるそうです。 窓も狭くなり、覗き込むように販売をすることになるので圧迫感が出ます。
荷台と箱の境目。箱自体は大きな金属のフレームを溶接でくみ上げてあって、その周りに壁板が取り付けてあります。結構シンプル。
荷台と箱の境目。箱自体は大きな金属のフレームを溶接でくみ上げてあって、その周りに壁板が取り付けてあります。結構シンプル。
こちらの車では天井が高くしてあるので、立って作業も出来るし窓も広くなります。

大変とは言え、箱が取り外せるとは知らなかった。
中から外を見るとこんな感じ。窓が広いと見通しがいい。
中から外を見るとこんな感じ。窓が広いと見通しがいい。
使用する車は新車以外に中古車も使うそうです。当然それによって販売価格も変わります。
販売窓の扉は屋根代わりに。固定式ガスダンパーで支えられていて開け閉めと固定は楽だった。色々細かい仕掛けがついている。
販売窓の扉は屋根代わりに。固定式ガスダンパーで支えられていて開け閉めと固定は楽だった。色々細かい仕掛けがついている。
続いて内部の設備を見せてもらいます。
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普通のキッチンと変わらない

続いて移動販売車内部の設備です。まずは絶対必要なこちら。
2つのシンク。これが無いと保健所の検査を通らない。
2つのシンク。これが無いと保健所の検査を通らない。
調理用と洗い物用の二つのシンク。飲食物を取り扱うにはこれが必ず必要になります。
近くに水道があってそこから水を直接供給できる場合でも、基本的に備え付けてないといけないそうです。設備に対する決まりは色々ある。
近くに水道があってそこから水を直接供給できる場合でも、基本的に備え付けてないといけないそうです。設備に対する決まりは色々ある。
水回りがあるので水タンクと排水タンクもついています。水タンクは運転席の屋根の上に置いて下に落とすタイプが多いが、こちらは床置きでポンプでくみ上げ。電気が必要になるが重い水を屋根まで持ち上げなくて済むので楽なのだとか。なるほど。
換気扇も必ず要るそうです。この棚の部分に水タンクが置かれているタイプが多い。こちらでは物入れになっていた。
換気扇も必ず要るそうです。この棚の部分に水タンクが置かれているタイプが多い。こちらでは物入れになっていた。
換気扇も付いていました。内部の設備は通常のキッチンと差はありません。必要な物が揃っています。
電圧などを変換するインバーターも備えている。発電機からの電気や外部からの電気をこれで変換して使う。
電圧などを変換するインバーターも備えている。発電機からの電気や外部からの電気をこれで変換して使う。
発電機や外の電源に接続することで電気も使えます。
家庭用冷蔵庫も使えます。真ん中あたりにある小さな箱は水くみ上げ用ポンプの一部。各種電化製品が使用可能。
家庭用冷蔵庫も使えます。真ん中あたりにある小さな箱は水くみ上げ用ポンプの一部。各種電化製品が使用可能。
電気があるのでポットやホットプレート、ミキサーなど電気式の各種調理器が使えます。冷蔵庫なども搭載可能。オプションでエアコンを取り付ける事も可能だそうです。一応天井は断熱のプレートを使っているということですが、そのままだと夏場はかなり暑いと思われます。

ちなみに、何か焼いたり炒めたりする調理をするような場合は、電気調理器では電気の容量が足りない事が多いので、通常のガスコンロが使われます。その場合は小さなプロパンガスのボンベをシンクの付いている机の下などに搭載するとのことでした。ほぼ通常のキッチンと変わらない。

幾らぐらいするのですか?

外観や内部の設備を一通り見せていただいたところで、一番重要な点を聞いてみました。この車を購入すると幾らぐらいするのでしょう?
フロントマスクもオプションの一つ。
フロントマスクもオプションの一つ。
神山さんの話によると、軽トラックを改造して作る場合、車体と基本的な内装などを作るので新車で250万円ぐらい。中古車なら走行距離によって変動はあるものの200万を切るぐらい。これに外部の塗装や各種手数料なども含めてザックリ300万前後だそうです。

この他、車体の前の部分にレトロなマスクをつけたり、ショーケースをつけたり、水タンクの増設、発電機のスライドケースなど各種オプション改造で費用が上乗せされていきます。
販売窓前のカウンターテーブルもオプション取付。その他、使う人との相談で各種改造が行われます。販売する商品によって使い勝手は様々。
販売窓前のカウンターテーブルもオプション取付。その他、使う人との相談で各種改造が行われます。販売する商品によって使い勝手は様々。
あと、車内で使う冷蔵庫や各種調理器などの什器を揃える必要があります。車内で全部仕込めないので、設備が揃った調理場を販売車とは別に用意する必要もあります。

実際に開業するとなると、当面の仕入れや生活費も含めて移動販売車を購入する倍ぐらいの資金が必要ということでした。
移動販売車net では移動販売車の製作販売だけでなく、実際の車を使っての使い方の指導など開業サポートもしているそうです。普通のキッチンと大体同じとは言え、移動販売車特有の使い方がある。
移動販売車net では移動販売車の製作販売だけでなく、実際の車を使っての使い方の指導など開業サポートもしているそうです。普通のキッチンと大体同じとは言え、移動販売車特有の使い方がある。
しかし、固定のお店を新しく作るのに比べて開業資金は安くすみます。また、移動販売車ならば場所が悪くて売上が上がらない場合でもお客様の沢山いるところに移動して新たに始めることが可能。自由度の高い所も移動販売車の魅力という話でした。確かに。

続いては実際に移動販売を行っている人から話を聞いてみました。車の使い勝手や、どうやって出店場所を探しているのかなど聞いてみました。
取材協力
ファインダー
移動販売車.net
http://www.idouhanbaisha.net/
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本場メキシカンタコスの移動販売車

続いて神山さんの紹介で、移動販売車で実際に営業している方に話を聞いてきました。
加藤さん。この日は西武園遊園地内での出店。
加藤さん。この日は西武園遊園地内での出店。
移動販売車「タコスマン」で本場メキシコのタコスなどを販売している加藤さんです。

加藤さんが移動販売車でのタコスの販売を始めたのは約3年前。本場メキシコでタコス作りの修行も積んでいる本格派です。
タコスだけでなく、季節に合わせてケバブや暖かいスープなども販売。冬はトルティーア(トウモロコシを使ったタコスの皮)が硬くなりやすいので取材の日はケバブでした。
タコスだけでなく、季節に合わせてケバブや暖かいスープなども販売。冬はトルティーア(トウモロコシを使ったタコスの皮)が硬くなりやすいので取材の日はケバブでした。
まずは移動販売車を始めた切っ掛けなどを聞いてみました。


加藤「メキシコを旅行した時に食べたタコスが日本で売られているタコスとは全く違い感動する美味しさでした。その本場の味を日本で提供できるようにと移動販売車を購入しました」


馬場「お店でなくてなぜ移動販売車に?」

加藤「実際の店舗となるとかなりの開店資金や固定費がかかりますが、移動販売車なら安く抑えられる。色々な所でやれる強みもあります」
クレープ、ケバブ、タコ焼きは鉄板の商品。
クレープ、ケバブ、タコ焼きは鉄板の商品。
移動販売車での販売は固定の店とは違い、お客様の沢山いるイベント会場や商業施設などへ行って販売を行います。出店に関しては、多くの場合イベント会社などが間に入っていて、そこからの依頼という形で出店となるそうです。

その為、自分で直接イベントの実行委員や施設の方に問い合わせても出店出来る事はまず無く、出店場所を探すのは色々な苦労があります。
ケバブを購入して食べてみました。オリジナルの特製ソースが肉によく合っていて旨かった。取材中だというのにうっかりビールを開けてしまったことをここに告白します。
ケバブを購入して食べてみました。オリジナルの特製ソースが肉によく合っていて旨かった。取材中だというのにうっかりビールを開けてしまったことをここに告白します。
販売するメニューに関しては、クレープやたこ焼きなどの定番商品がやはり一番売れるそうです。こだわりを持ってオリジナルのメニューを作って売っている移動販売車もあるものの、売れ筋商品に変更していくことが多く、加藤さんも季節や場所に合わせてメニューを変更しているそうです。
タコスマンの車内。車体が見えなければ業務用の冷蔵庫もあって普通のお店のキッチン風。
タコスマンの車内。車体が見えなければ業務用の冷蔵庫もあって普通のお店のキッチン風。
また、メニューを変更する場合も既にその場所で同じ商品を販売している人がいると変えることが難しく、その点も苦労する点なのだとか。加藤さん曰く、特にこだわりがあってそのメニュー1本でやっていこうという人は通常の店舗の方がいいだろうという事でした。

儲かりますか?

続いて、一番気になる所。移動販売車での営業は儲かるのでしょうか?
人が立って調理をしているとこのぐらい。スープ用の鍋や加熱用のコンロなどがコンパクトにまとまっていて、それほど狭さを感じません。
人が立って調理をしているとこのぐらい。スープ用の鍋や加熱用のコンロなどがコンパクトにまとまっていて、それほど狭さを感じません。
馬場「率直に聞きますが、儲かりますか?」
加藤「1ヵ月で普通のサラリーマン1ヵ月分の3倍ぐらい稼げる時もありますが、遥かに下回ることもあります。場所や運次第の所もありますね」

加藤さんは週末の遊園地での出店や、平日に青山辺りでのランチ営業など各地で出店しています。夏休み期間のプールでの連日の営業ではかなりの儲けも出るそうです。
遊園地のイベントなので綿菓子も販売。子供たちが列をなして購入していました。子供の頃はよく食べたなあ。
遊園地のイベントなので綿菓子も販売。子供たちが列をなして購入していました。子供の頃はよく食べたなあ。
しかし、雨が降って来場者が少なかったり、イベントが中止になったりすれば売上は激減。用意した食材も全て無駄になり、入ってくるどころか全部損失となります。

加藤さん自身は、もし新たに移動販売を始めようとする人がいるならば、正直なところオススメはしないそうです。不安定な要素が多く、色々な苦労も多い。それが移動販売車での営業とのこと。
しかし、運次第ではあるものの多く売れれば大きな充実感があるとも加藤さんは言っていました。お客様が来るのを待つのではなく、自分でお客様のいるところに行き、場所毎に自分で色々工夫して売る攻めの営業が出来る。
数十年ぶりに綿菓子を食べたが結構イケる。今時の綿菓子はただの砂糖の味だけでなく、ブドウ、メロン、イチゴなど各種フレーバーが有りました。こちらはオレンジ味の綿菓子。色もほんのりオレンジ。
数十年ぶりに綿菓子を食べたが結構イケる。今時の綿菓子はただの砂糖の味だけでなく、ブドウ、メロン、イチゴなど各種フレーバーが有りました。こちらはオレンジ味の綿菓子。色もほんのりオレンジ。
苦労の中にも多くの楽しさが有る。綿菓子を子供に笑顔で渡している加藤さんを見て思う、そんな移動販売車の取材でした。
取材協力

タコスマン
http://www.tacosman.com/

移動販売車を買う気はないが・・

街で見かけるが中はほぼ見た事の無い移動販売車。見てみたら予想以上に内部は普通のキッチンと変わりませんでした。移動販売車を購入して使う気はないですが、あれだけ設備が揃うならばあの中で暮らしながら色々旅が出来そうです。

神山さんの話では、ファインダーではキャンピングカーの改造は今の所やってはいないそうです。しかし、基本的には同じような改造で出来るとのこと。実際軽トラックを改造したキャンピングカーは割と流行っているらしく、それで道の駅などを使って旅行をしている人もいるのだとか。

そういう旅行もいいですね。遠い将来に考えてみます。
移動販売車とは全然関係ないですが、お酒好きの方で家にこういうショーケースを置きたがる人がいます。コンプレッサーの音がうるさく、ガラス張りで冷却効率も悪いので家庭用の冷蔵庫の中板を外して使うことをオススメします。業務用は色々苦労あり。
移動販売車とは全然関係ないですが、お酒好きの方で家にこういうショーケースを置きたがる人がいます。コンプレッサーの音がうるさく、ガラス張りで冷却効率も悪いので家庭用の冷蔵庫の中板を外して使うことをオススメします。業務用は色々苦労あり。
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