最近のワンカップを見てみよう
最近のワンカップ日本酒は以前のイメージとはかなり違う物が多数あります。都内では数年前から各種ワンカップの日本酒を置く飲み屋が幾つかあるので、そういう店で見た、飲んだ事がある方もいるのではないでしょうか。
例えばこちら。
ワンカップではなくニャンカップ。
静岡県藤枝市の志太泉酒造の「志太泉純米吟醸にゃんカップ」。酒造好適米の八反錦を50%まで磨いて作った純米吟醸酒が入ったカップ酒です。
フタにも猫がいる。
落ち着きのある華やかな香りと綺麗な米の旨味のある非常にレベルの高い日本酒です。価格は180ml入りで300円でした。
蔵のホームページの説明によると最初は様々な理由からカップ酒を出してはいなかったものの、日本酒を全く飲まない方に対する入り口を作るなどの意味でこのようなデザインのカップ酒を出すことになったのだとか。確かについ手にとってしまうデザイン。
続いてはこちら。
青森なのでリンゴのイラスト。リンゴ味はしない。
青森県弘前市の三浦酒造の「豊盃純米Apples& Dogs」。酒造好適米の山田錦を55%まで磨いて作る純米酒。果実感のある香りと旨味を感じ、スッキリとしたキレのある味わいの日本酒です。
Applesとありますが、リンゴ味ではありません。綺麗な日本酒の味です。犬は蔵の方の飼い犬のようです。ワンカップだけに犬なのか?
他にもこんなワンカップがあります。
宮城県の墨廼江酒造の「墨廼江特別純米」。スッキリと軽い口当たりの後に柔らかい旨味を感じます。
新潟県の株式会社越後鶴亀の「越後鶴亀特別純米」。サラリとキレのある味わい。ラベルがやたらにめでたい感じ。
佐賀県の小松酒蔵の「万齢純米山田錦ひきやま」。しっかりとした米の旨味がありキレのいい日本酒。魚料理に合いそう。
山梨県の笹一酒造の「笹一純米猫芸者」。スッキリとした口当たりで旨味が続く。
以前、デイリーではライターの大塚さんがワンカップ酒について紹介しています。
おんなのワンカップ研究
この頃に比べ、ワンカップ日本酒は更に女性でも手にとりやすいデザイン、味となったのではないでしょうか。
また、ワンカップではなくこんなデザインのボトルの日本酒もあります。
150mlの飲みやすいサイズ。
日本各地の蔵の日本酒を詰めた小ボトルです。こちらの品。
PASSION-15
通常のワンカップは180mlなところを、こちらの瓶では150mlと飲み切るのに程良い量になっています。純米酒や大吟醸酒など各種質の高い日本酒がはいっていて、色々飲むのにはちょうどいい。
日本酒は好きだが1升瓶は冷蔵庫に入らないし飲み切れない。4合瓶でも多いなんて人にはこういうワンカップなどの日本酒は丁度いいはずです。
ただ一つ問題があります。
近所で売ってない
これらの日本酒。売っている店が非常に少ないです。
せっかく気軽に飲めるサイズなのに、しっかりと日本酒を扱っているような店でなければ置いていることはまずありません。また、日本酒をしっかりと扱っている店でも管理など様々な問題もあり扱っている店は限られています。残念です。
しかし、かなり手に入りやすくオススメ出来る味のお手頃サイズの日本酒があります。それがこちら。
ファミリーマート粋ボトルシリーズ。コンビニ日本酒だからと言ってあなどるなかれ。オススメです。別に今回はコラボ記事という訳ではありません。
ファミリーマートで販売している日本酒の粋ボトルシリーズ。松竹梅、日本盛、月桂冠、白鶴と大手酒造会社がそれぞれに作った大吟醸、特別純米などの4タイプの日本酒が広口のアルミボトルに入っています。ファミリーマートの酒コーナーに行けば大体置いてあるはずです。
「大手の酒造が作った日本酒なんて安っぽくて不味いに決まっている」なんて思っている方。是非一度飲んで欲しい。大手の酒造は研究所を持っている所もあり、安価なパック入り酒を一定の味で量産することも、レベルの高い味わいの酒も狙って作ることも出来る高度な技術を持っている所が多いのです。
利き酒師としてオススメの味わいの日本酒なのですが、なぜかこの酒は認知度が低い。私の周りの酒飲みで知っている人はほぼいなかった。2007年から発売されているのに。一応酒飲みよりも日本酒をあまり飲まない人向けというコンセプトの商品のようですが、それにして認知度が低い。なぜなんだ、ファミリーマート。
ということで、勝手にこの日本酒をプッシュしてみたいと思います。まずはこの日本酒の良い点を挙げてみましょう。
アルミボトルで持ち運びに便利
では、ファミリーマートの粋ボトルのいい点を挙げてみましょう。従来のガラスのカップと違いアルミボトルで持ち運びやすいという点があります。
出張帰りに電車の中で1杯。そんな時は大体こういった組み合わせになるはずです。
缶ビールと乾き物。夕方の東京に向かう特急電車内では各所でプシュッ!という音がしますよね。
喉の渇きもあり最初に缶ビールというのは分かります。なにしろ缶ジュース同様持ち運びも廃棄も楽。しかし、更に進んでワンカップで日本酒をとなると、突如酒飲みプロフェッショナル感が上がり飲むのに躊躇します。
ところが、粋ボトルだとこう。
スーツの胸ポケットにフィットする違和感の無さ。
一目見た感じでは酒を持っているようには見えません。
モーニングショットと言っても分かるまい。
飲んでいても缶コーヒーでも飲んでいるようにしか見えません。
仕事の最中でも違和感無し。
仕事中に手に持っていたとしても、遠目には酒を飲んでいるようには思われない。
いや、仕事中飲んではダメだけど。
グイッと一本!
若干無理がありましたが、とにかく従来のガラスコップ型に比べて扱いやすいのは確かです。広口瓶で飲みやすく、容量も200mlとちょっと多目ですが、スクリューキャップなので閉じて持ち帰りも出来る。
私なら出張帰りの駅の近くにファミリーマートがあったらビールと合わせてこれを買うでしょう。それぐらいの気軽さで飲めます。そして味もいいのです。
コンビニ食材でツマミも作ろう
味もいいと重ねて言っていますが、こればかりは実際に飲んで感じてもらわないとどうにもならないので、味の雰囲気だけでも説明しておきたいと思います。
コンビニで買ってきた食材でその酒に合う料理を作りながら説明していきます。
まずは青いボトルの大吟醸に合わせる料理を作ってみます。
カニカマはそのまま醤油をつけて食べても美味しいつまみになりますがあえてひと手間加えます。
青ボトルの「すっきりした味わい大吟醸」は、香りが穏やかで旨味も程よくスッキリタイプの大吟醸酒です。脂っこいものや香りの強い食べ物よりも酢の物的なサッパリ感のある物がいいでしょう。
ただ、かなりスッキリなタイプで酢の物ではサッパリしすぎて物足りないので、マヨネーズを使いコクを加えます。
ポン酢にマヨネーズを同量混ぜる。分量は適当で。
最初にポン酢とマヨネーズを同量で混ぜます。分離するのでよく混ぜ合わせてください。
カニカマにかけるだけでもOK。
混ぜ合わせたソースに食べやすい大きさに切ったカニカマを入れて和えます。切らずに細く裂いても構いません。
コンソメパンチなどもいいです。無しでもOK。
和えたカニカマを皿に盛って小さく割ったポテトチップをお好みで乗せます。バーベキュー味がオススメです。
残ったソースをかければ出来上がりです。
カニカマのマヨポンがけ。
マヨネーズのコクにポン酢の爽やかさが加わり酒によく合います。家に小ネギでもあればそれを散らしても美味しいです。カニカマではなく鰹のタタキでもいいです。
酒がススムね。この後も大体こんな感じの料理と酒の話が続くので、酒を飲まない方は申し訳ありません。
から揚げはそのまま食べても美味しいつまみになりますがあえてひと手間加えます。
お次は黒いボトルの「キレのある超辛口清酒」向けにから揚げをアレンジしてみます。
ファミから油淋鶏(ユウリンチー)風
黒いボトルの「キレのある超辛口清酒」は米の味とスッキリとしたキレのある味わいがあります。少し濃い目の料理を合わせます。
しょうゆベースの和風ドレッシングの場合、おろしニンニクチューブを追加で買ってきて少し足すといいです。
材料は、から揚げ、ポン酢、小分けの野菜ドレッシング、ラー油です。
味を見ながら目分量でいいです。
入れすぎると辛くなるので適量で。一味唐辛子とかでもOK。
ラー油を数滴入れてよく混ぜて、皿に盛ったから揚げにかければ出来上がりです。
白髪ねぎとかあればそれを散らすのもいい。
スッキリとしたキレのある味わいの酒なので、油のあるものでもサラリと流し、受け止める。ちょっと濃すぎる感じのから揚げも、ポン酢の酸味で引き締まります。
濃いツマミは酒の量が増える。
純米酒に簡単味玉
次は赤いボトルの「華やかな香り純米酒」。
塩味がついたゆでたまごなので、そのまま食べても美味しいつまみになりますがあえてひと手間加えます。
「華やかな香り純米酒」は抑えられた果実感のある香りと程よい米の旨味がある純米酒なので、シンプルな味わいの物をつくってみます。
ゆで卵を使って作る味玉です。
醤油、米酢、砂糖を3対2対1で混ぜる。醤油とすし酢を1対1でも構いません。
まず醤油、米酢、砂糖を混ぜ合わせて漬けダレを作ります。分量は醤油大サジ3、米酢大サジ2、砂糖大サジ1。米酢と砂糖の代わりに醤油と同量ぐらいの寿司酢でも大丈夫です。
家に帰って仕込んでから風呂に入り、風呂上り頃には食べられます。
ゆで卵の殻をむいてタレと一緒に保存袋に入れます。全体にタレがつくようにして冷蔵庫に30分から1時間程度入れておきます。
ひと晩ぐらい漬けていると白身が締まってくる。それはそれで美味しい。
翌日ぐらいまでは大丈夫なので、明日の分も仕込んでおくのもいいです。
少し酢の風味がある味玉は純米酒の香りと合います。また、卵の黄身の味が米の旨味により柔らかく感じられる。時間があるなら燗にして合わせるのもいいです。
半分でビール。残り半分で日本酒というのでもいいかもしれない。
特別純米とスパイシーなめ茸
最後は緑のボトルの「豊かなコク 山田錦 特別純米」。
なめ茸はそのまま食べても…もういいですね。
「豊かなコク 山田錦 特別純米」は柔らかく落ち着きのある旨味があり、キレもよく、ゆったりと飲むのには丁度いい味わいです。個人的にはこれが一番よかった。
これに合わせるのはなめ茸と豆腐。なめ茸だけだとちょっと甘いので、少し味に変化をつけます。
粉山椒を少し入れるのもいいです。
なめ茸を皿に出して黒胡椒とラー油を少し混ぜます。
豆腐は皿に載せてラップをしたら電子レンジで1分ほど加熱します。出来る方は昆布ダシをはった鍋で温めるとより美味しくなります。
温めた豆腐の上に黒胡椒とラー油を混ぜたなめ茸を乗せたら出来上がりです。
夏場なら冷えた豆腐に大根おろしを乗せてから混ぜ合わせたなめ茸を乗せるのもいいです。
なめ茸の甘味と黒胡椒のスパイシーな辛さが酒の旨味と合います。これも出来るなら燗酒にしてゆっくりと味わうのもいいでしょう。
1本では済まない味だ。
気軽に飲んでほしい
今回紹介したコンビニのボトル日本酒。値段は1本200ml入りで約300円から360円でした。缶酎ハイや最近のビールテイスト飲料に比べると割高感はあるかもしれません。しかし、一気に飲んでしまうような酒ではないし、アルコール1%あたりに換算するとこちらの方が割安となります。
もちろんそれぞれ好みの種類の酒があるので、そちらよりもこちらがいいというものではありません。しかし、まだ飲んだことの無い方は手にとってみると意外な発見になるかもしれません。そこを入り口にもっと色々な日本酒に手を出したくなるでしょう。日本酒好きとして是非そうなっていただきたい。
そして、今時のカップ日本酒をもっと沢山の酒屋で扱ってもらいたいです。酒造の方も手間や費用がかかり大変かと思いますが、もっと気軽に飲める製品があったらいいなと、今日も1升瓶をかかえつつ飲んでいます。
だって、日本酒が好きだから。
店でワンカップ地酒と核種珍味を楽しむ宴会をした際に今回の粋ボトルも出したところ「これはあなどれない!」と高評価でした。ファミリーマートはもっと宣伝したらいいのに。