この「マンションポエム」とはぼくの造語だ。本記事冒頭の画像にもあるような、もはや詩のようになってしまっている高級分譲マンションのうたい文句を指している。折り込みチラシや駅の広告などでみなさんいちどは目にしたことがあると思う。これがちゃんと読み込むと実におもしろいのだ。
みんなからポエム通報をいただく日々



この「マンションポエム」とはぼくの造語だ。本記事冒頭の画像にもあるような、もはや詩のようになってしまっている高級分譲マンションのうたい文句を指している。折り込みチラシや駅の広告などでみなさんいちどは目にしたことがあると思う。これがちゃんと読み込むと実におもしろいのだ。



そのほか、ぼくが集めていると知って写真に撮って送ってくれたり、チラシをくれる方のおかげでずいぶん集まった。ありがたい。
上の名作ポエム「あえて、深大寺。」も友人でありライター仲間である伊藤さんが送ってきてくれたもの。冒頭の、成城でもなく仙川でもないけど成城でもあり仙川でもあるものも、いただきものだ。ありがとう!



地域別ポエム分析へ



前回の記事では、2007年を分水嶺にマンションポエムの傾向が変わってきているのではないか、という仮説だったが、今回は地理的な視点で見てみようというわけだ。
結論から言っちゃうと「臨海部、やばい!」です。



あれか、リーマンショックか!










たくさん見ているうちに、なんとなく2008年ぐらいから傾向が変わってるなー、と思ってさしたる根拠もなくここで区切ったのだが、これはあれか、リーマンショックの影響か。
って、なんでも「リーマンショックの影響」っていえばそれらしいよね。

エリアもなんとなくで区切ります
前回記事の後も集め続けた珠玉のマンションポエムを、その所在地でもって地図にマッピングした(といっても首都圏だけですが。いずれ大阪や名古屋など他の都市でもやりたい)。
そのうえで「ここらへんでポエムの傾向が変化しているなー」ってところでエリアわけしてみた。それが下だ。どーん!


重ねて申し上げるが、このエリアわけには根拠らしいものはない。ぼくがポエムを読みながら「んー、このあたりのポエムってちょっと毛色が違うなー」って思った、ってだけだ。もっと有意な分け方があるかもしれない。
そして下が第4のエリア。



すげーたいへん!



あんまりここで苦労話をじっくりしても退屈なだけなので詳しくは書きませんが、ほんと泣きそうになった。こういうの得意じゃないんだった、ぼく。
なにがたいへんって、まずポエムを全部打ち直さなきゃならないわけですよ。マンションのウェブサイトがFLASHだからテキストコピペできないの。
あと、それをマッピングするのも、所在地がはっきりしないものが多くて。

上のわざとらしい写真は、現実逃避で部屋の片付けなんかしちゃった成果ですよ。
大学で教授がめんどくさい作業を学生にやらせる気持ちがよく分かった。これはいい大人がやるものじゃない。目・肩・腰がやばい。
と、結局苦労話を書き連ねてしまったところで、それぞれのエリアの語をまとめたものを以下に!どーん!



次は荒川区・墨田区・江東区・江戸川区など東京の東側の部分の結果。









さあ、これらを比較してみよう。

ポエムではあるけれど現実も見ている千葉と埼玉
なぜここを「真性」とするかというと、やっぱりなんだかんだいって港区あたりの2億円するような超高級マンションのポエムは格別だからだ。だって





Mid Southern Style
やすらぎは、にぎやかさのすぐ横にある
東京、まん中、やや南
人は、この場所を「ミッドサザンエリア」と呼ぶ。
さあ、御殿山の、あの森へ。
御殿山の静寂と煌めきの中で始まるタワーライフ。





さて、この「真性ポエムゾーン」と千葉+埼玉を比べてみよう。



傾向としては、千葉+埼玉エリアは「駅前」とか「日当たり」とか「環境」「便利」などの具体的な語があるが、都心にはそれがない。変わりに「本質」とか「哲学」などのいかにもポエムな語は都心だけに見られる。
興味深いのは「ともに・一緒」「家族」などが 千葉+埼玉エリアに特有で、それと対比されるように都心には「自分」「わたし」が目立つ。これは郊外のマンションのファミリー重視と都心の金持ちシングルも視野に入れたマンションとの違いだろうか。
意外だったのは「歴史」系は共通して上位にある。会わせて「上質」とか「快適」とか「静けさ」も共通していて、これらはマンションポエムの基本ワードといえそうだ。
ただ、千葉+埼玉の「新しい」系と「開発・発展」系の 優勢と、縄文から江戸、昭和までの歴史を動員しっぷりを見ると、「歴史のなさへのコンプレックス」も感じる。
そんな中で謎なのは「継ぐ・継承」系が郊外に特有な点。これもコンプレックスの裏返しだろうか。
以上から、千葉+埼玉エリアはポエムでありながら具体的なメリットを謳うという特長から「詩的リアリズムゾーン」と呼びたい。
さて次は東京東部だ。

郊外と都心のいいとこ取り「江戸ゾーン」



「歴史・伝統」系が東部に多い。ランキング同じぐらいじゃない?とお思いかもしれないが、さきほどの千葉+埼玉とちがって、この2つは語の母数がほぼ同じなのだ(東部エリア:2690、都心:2708)。それを考えると27と17の差は大きい。
そしてやはりというかなんというか「和」とか(ちなみに"Wa"は【いまも変わらない 和 と、変わり続ける Wa が、 心を和ませる。】という絶妙のポエムが元) 「江戸」が多いのが下町っぽい。
この「歴史・伝統」と「和」「江戸」からも分かるが、印象としてもこの東部エリアの「江戸推し」は顕著だ。したがってこの東部エリアは「江戸ゾーン」と呼びたい。



同時に「緑」「駅前」「家族」といった千葉+埼玉の特長も併せ持っている。つまりここ東部は「江戸」というキーワードで「真正」と「リアリズム」のいいとこ取りをしているのだ。なかなかやるな!

マンションポエム界の火薬庫「臨海部」
さて、最初に「結論:臨海部やばい」と書いたが、いよいよその臨海部だ。なにがどうやばいのか。まずは具体例を読んでいただきたい。いまマンションポエム界で最もアグレッシブな作品だ!





東京を駆け抜ける人々へ。
その充実の日々は、いつしか"東京"という巨大な都市に根付く夢の塊を突き抜けて、世界へ向かい始めていることでしょう。
「忙しい」や「多忙」という生き様の言葉を日本流に解釈する時代は終わりました。
あなたは、その「忙しさ」をしなやかに包みこむ空間を所有すべき時にいます。
既存の東京、すなわち夢の塊で膨張した街に所有すべき空間を探すことでは、世界基準には到達できません。
「無色の東京」が東京の中にあります。
それはフロンティアの場所。 フロンティアとは、未開地を意味するのではなく、「国境」を指す。
東京の中の世界のフロンティア。
東京ベイエリア、晴海のアドレスが有する進化ポテンシャル。
世界へ挑む、あなたにふさわしい「私極」の空間が、そこに誕生します。





さて、テンションが上がったところで比較を見てみよう。



さて、まず目に付くのは他エリアにはないポエム単語だ。同じ「生活・暮らし」系だが、臨海部においてはそこに「生き様」という語が含まれている。「都市・都心」系にも「アーバン」という語がいる。
他にも数は少ないながら「フロンティア」「惑星」「銀河」「プラネット」といった香ばしい語が散見されることと、「煌めき」系が強いことと合わせて、ここ臨海部エリアを「キラキラゾーン」と呼ぶ次第だ。ただでさえポエムなのに、その中でもなお存在感を放つとは、まさにマンションポエム界の火薬庫である。
興味深いのは「歴史」がないこと。これはその大部分が埋め立て地なのだから当然だが、同時に「未来」系も弱いのが意外だ。いわば臨海部には「現在」しかないのだ。そして「景色」もない。
一方で「東京」が第1位。これは江戸ゾーン以上の東京であることの主張だ。 これはぼくには「東京なのにそうは見えないことへのコンプレックス」に見える。
以上を合わせて考えるに、前述の実例に「無色の東京」とあったのは臨海部のメンタリティをよく表していると思う。






見つけたら教えてください

集め始めた当初は「こんな言い方しちゃってー」と半笑いだったが、いまやぼくは真顔である。








【告知】マンションポエムももちろん話します!2013年11月30日(土)イベント『 千葉 vs. 東京 』






