北九州の沖合にすごいものが!
みなさんは国家石油備蓄基地というものをご存じだろうか。ぼくは知りませんでした。
文字通り、石油が備蓄されている施設で、全国に
10ヶ所あるそうだ。
で、今回訪れることができたのが、そのひとつ、北九州の沖合にある「白島国家石油備蓄基地」だ。
これがまたすごい基地なのだ。海に浮かんでいるのだから!ぼくもいつか基地を持つような身分になったら、ぜひ洋上に持ちたい。
「男島」という島に増設された不思議な施設。これが白島国家石油備蓄基地だ(
大きな地図で見る)
「国家」という物々しいネーミングにふさわしく、一般開放見学が行われているような場所ではない。今回は特別に見せてもらったのだ。とにかく度肝を抜かれる光景だったので、説明はあとまわしにして、まずはそれをご覧いただきたい。どーん!
上の航空写真で四角く見えていたのが、石油が入った貯蔵船。管理事務所の屋上から見ると、こんな。左右に全8艘並んでいる。正面のものだけ、一時的にメンテナンスのため油が抜かれていて、浮き上がっている。すげー!(大きな画像は
こちら)
地面から見上げると、こんな。一隻だけ浮いているタイミングで訪れることができたのは運がよかった。写真ではぜんぜん迫力が伝わらないが、見ためは「ビル」だ。幅82m。すげー!(大きな画像は
こちら)
ハシゴの大きさでなんとなく分かっていただけるだろうか。この状態でまだ水面から完全に浮き上がっているわけではないが、全高は25m強なので、7階建てのビルと同じぐらいだ。すごい!(大きな画像は
こちら)
まわりにある設備類もすべてでかいので、スケール感覚が麻痺する。すごいなあー!
うん、ぜんぜん伝わらないぞ!
なんせこの基地にあるもの全てが大きいので、いくら写真をお見せしても、まったくそのダイナミックさが伝わらない。よくある「タバコ置く」とかって、小さいものにしか通用しないのが欠陥だよな。こまった。
しょうがないので、地図で見てみよう。
上は同縮尺の基地と新宿駅周辺。(→三土さんの「
くらべ地図」で見てみてください)
貯蔵船一隻で、新宿東口から新宿三丁目駅まで辿り着く。大阪で言うと、
大阪駅がちょうど一隻分です。
結局地図か。地図に頼らなくては大きさは伝わらないのか。ざんねん。
民間でも貯められていたとは
さて、この巨大な貯蔵船、一隻に蓄えられる石油の量は約70万キロリットルだそうだ。70万キロリットルって言われても。それは何リットルですか、って感じだ。この施設の解説展示を行っている「白島展示館」の
公式サイトによれば「ドラム缶に詰めてたてにならべると、JR鹿児島中央駅から北海道の北の端の稚内駅まで達するほどです」とのこと。すごい!縦に並べちゃうか!
そして「しかし、それだけの量を日本はほぼ1日で使いきってしまいます」とも。
みなさんご存じの通り、国内で消費される石油のほぼ全てを海外からの輸入に頼っている日本。世界の経済・政治状況によって供給が大きな影響を受ける。
きけば、国を挙げての本格的な石油備蓄のきっかけはやはり
オイルショックだったようだ。第一次オイルショックのときはぼくは1歳、第二次のことも記憶にないが、石油価格高騰は、高度経済成長が終わる原因のひとつになったなど、その影響はかなり深刻だった。
で、そうなのか!ってびっくりしたのが、前ページで書いた国家石油備蓄基地が10ヶ所あるのとはほかに「民間備蓄」というのもあること。
ちょうかっこいい!とのんきに鑑賞していた鹿島のこのタンクたちも…
実は「民間備蓄」を義務づけられているのだった。
各石油会社に、常に多めの石油を輸入・貯蔵しておいてあるのだそうだ。
そういえば、製油所行った時にそういう話聞いた覚えがある。構造物に夢中だったのでしっかり覚えてなかったけど(すみません)。
石油備蓄を統括する「JOGMEC」(独立行政法人 石油天然ガス・金属鉱物資源機構)の
ウェブサイトによれば、国家備蓄、民間備蓄を合わせて、約8,700キロリットルあり、2011年10月末現在の消費量から換算すると200日分貯められていることになるのだとか。
島に渡る最中もかっこよかった!
さて、日本の資源環境が置かれた状況に気も引き締まったところで、「すげー!」に戻ろう。
島に行く船は、北九州の魅惑の工業地域から出航した。
これは…!あこがれの日本コークス工業ではないか!
鉄をつくるときに使うコークスをあつかっている工場なのだ。見たかったのだ。
陸からは拝めないその雄姿をここで見ることができるとは!
島に着く前からすでにエキサイト状態だった。すげー!
でも、この船がちょっと緊張するものでして。
船に乗り込まんとしているところ。船内の写真は撮りづらかったので撮ってない。
前記のように、今回の島への上陸は特別なものだった。上の写真の港も立ち入りが厳重に管理されていた。そりゃそうだ。行き先はなんせ国家石油備蓄基地なのだから。国を背負ってる施設なのだ。
当然船内にいるのは、基地で働いている方々。なんだか身が引き締まる。
引き締まっちゃいないか。船窓から工場見て興奮してるんだから。
これが港から見た基地のある島。
いわば海に作ったプールに浮かべてある
何重もの構造で油を流出させないようになっているのだ。
そもそもなんで海上に基地が作られたかというと、これだけの規模の土地を陸地で確保するのがたいへんということと、案外このほうが安全性が高いという理由によっているそうだ。
船の二重構造は、水が油よりも高い圧力で封入してあって、万が一にも油が外に出ないようになっているのだとか。なるほど。
この「洋上タンク方式」はここともう一ヶ所、同じく
九州の長崎沖にあるが、そもそも世界でも珍しい備蓄方法なのだとか。さもろう。
「防油堤」の列。これは浮いていて、潮の満ち引きに追従できるようになっている。
いろいろたいへんだとは思うが、こんなダイナミックな光景が広がるのなら十分元は取れるってものだ(なのでもっと気軽に見学できるようになるといいなー)。個人的には夜見に来たい。きっとものすごく「怖かっこいい」(造語)と思うんだ。
あと、細かいことだが(大きさは全然細かくないけど)、個人的にぐっときたのが、浮いている船の「緩衝装置」だ。
青いアームのようなものがある、ここの部分。
ゴム!
巨大なゴムだった。だからなんだ、って話だとは思うんだけど、なんというか、こんな巨大なものでも「ぶつかって壊れないようにゴムでそっと支える」っていうのがキュートだなー、って思ってさ。
パイプがまたかっこいい!
さて、上の図の北の方に「シーバース」というものがある。これは石油を積んだタンカーがここまで来て、パイプラインを通じてこの備蓄基地まで油を入れる、停泊場所だ。
ここから伸びてきている配管がまたかっこよかった。
ずっと防波堤の外に延びていっている「配管橋」。その先がシーバース。
ここで防波堤の内側に到着。
とぐろを巻いている!キュート!(たぶん変位を吸収するために回してあるんだと思う。興奮して理由を聞き忘れた)
で、その先がこの魅力的なごちゃごちゃですよ!真っ白っていうのもすてきだ。
巨大さに興奮していたところから徐々に冷静になってきて、ようやくこういう部分にも目が行くようになった。
このパイプの先、船へ油を入れる塔も気になる。
これ、この塔!
塔もすげー!
各備蓄船の間に並んで立っています(大きな画像は
こちら)
どれぐらい偉くなればここに登ることができるのですかっ!(大きな画像は
こちら)
このぶらーんとしたホース(っていうのか?これも名称とか聞き忘れた。全体的に興奮状態でしたんで。すみません)、写真で見ると庭先で水でも撒きそうな感じだが、とてつもなく太い。
そしてそれを支えるこの構造物のかっこよさはどうだ。質実剛健。小じゃれたところなど全くない(あたりまえだ)、虚飾を廃した佇まい。「国家」って感じだ。
で、よく見たら、船の上もすごかった!
航空写真でなんとなーく見えてた模様はこのパイプ群だったのだな!(大きな画像は
こちら)
照明灯もいい。そして白いパイプ群の中に頼もしく赤く輝くのが、放水銃だ。そうだよねー、なんせこれだけの可燃物だ。消火設備と体制もすごいのだ。
とにかくすべてがすごかった!以上!
みなさんにも見る機会があるといいなー
実はこの基地に行ったのは、一昨年の2010年の夏だった。なぜいままでご紹介しなかったのかというと、なんせ「国家」と銘打つだけの施設なので、あんまりあちこち撮れなかったことと、それにもまして、ぼくがエキサイトしすぎて同じような写真ばかり撮っていたことによる。
考えてみたらこの翌年あの震災が起こって日本のエネルギー政策に対するぼくらの見方も大きく変わった。これはいい機会だ、いまこそ備蓄基地を紹介しよう!
…とかはあんまりどうでもよくて、久しぶりに写真を整理してたら、あの興奮がよみがえってきたので記事にしただけです。とにかく「すげー!」ってだけでした。すまん。でもほんとすごかったんだからしょうがない。みんな見学できるといいのになー。
【告知:ひさしぶりに工場夜景クルーズやります】
2012年11月30日(金)の夜に、ひさしぶりに工場クルーズをやりますよ!
今回のクルーズは、ぜひ「ちゃんと工場見るの初めて」ってかたにお勧めしたい。まあ、ぼくはべつにマニアックな専門知識披露しているわけじゃないんで、内容はいつもと同じなんだけど。ただ「マニアばかり集まってそう…」とか「詳しくないんで参加しづらい…」とか「誘う人がいないので一人だし…」とか、そういう方々にぜひ来ていただきたいです。
詳しくは
こちら。興味のある方ぜひー。