特集 2011年10月25日

「レスカください」と言ってみたい

レスカあった!
レスカあった!
先日、職場の飲み会で50代の上司が「俺の若い頃の定番デートコースといえば待ち合わせは喫茶店で、女性は必ずレスカを頼んだ。実際、初デートに誘った女性もレスカを頼んだ。マニュアル通りでかえって緊張した」と教えてくれた。

それを聞いた20代のメンバーの反応→「レスカ・・??」
私含む30代前半メンバーの反応→「レスカ・・(って何だっけ)・・あ、レモンスカッシュか!」

どこで聞いたか知っていたレスカという響き。久々にその言葉を聞いた時に浮かんだ形容詞は正直いって「ダサい」であった。が、昭和の良き時代を思わせ、なぜかほっこりしてしまう可愛らしさがある。

自分も一度「レスカください」とオーダーしてみたくなった。
東京葛飾生まれ。江戸っ子ぽいとよく言われますが、新潟と茨城のハーフです。
好きなものは犬と酸っぱいもの全般。そこらへんの人にすぐに話しかけてしまう癖がある。上野・浅草が庭。(動画インタビュー)

前の記事:ビデオテープでドミノ倒し

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そもそもレスカは今でもあるの?

これまでの人生で特にレモンスカッシュに注目していた事がなかったのもあるが、普段友達と一緒に入るようなチェーン店や小洒落た喫茶店には、確かレスカは無かったように思う。
ドトールにレスカは無かった
ドトールにレスカは無かった
新しめの喫茶店にも無かった
新しめの喫茶店にも無かった
やっぱりそうか。たとえ自分が頼まないとしても、普段周りでレモンスカッシュを頼む声を聞いた事がない。という事は今どきの喫茶店事情においてはスタンダードでないと思っていいでしょう。

昭和の香り残る浅草へ

という訳で、レスカを求め昔ながらの喫茶店が多く並んでいるであろう浅草へ向かってみることに。
家から割と近いしね
家から割と近いしね
レスカという呼び名を知らなかったという友人に付き合ってもらい、アーケード入り口から調査スタート。きっとそんなに簡単には見つからないと思うから、もし見つかったらすぐにそのお店に入ろうねと決めた。

あった!

と、決めたその5秒後くらいに発見してしまった。
アーケードに入ってすぐ、食品サンプルが並んでいるのを覗いて見たらあったのだ。
貫禄がうかがえる
貫禄がうかがえる
どこに行けばレスカがあるのか実は少し悩んでいただけに拍子抜けしてしまった。こんなにすぐに見つかるとは・・

しかしここ、喫茶店というよりはレストラン色が強いみたいだ。どうせなら上司の思い出の場所にリンクさせるべく喫茶店で探したいところ。

しかも一軒目で見つかった事を考えると他の場所にも沢山ある可能性もあるので、すぐに入るのをやめてしばし探索を続けよう。
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とても沢山ありました

1ページ目で「レスカは今でもあるのか」という疑問が浮かんだのが恥ずかしくなるくらいに、浅草の喫茶店にはあるわあるわ。
控えめにいるレスカ
控えめにいるレスカ
基本クリームソーダの傍が好きなレスカ
基本クリームソーダの傍が好きなレスカ
ブロマイドなレスカ
ブロマイドなレスカ
高級レスカ
高級レスカ
コーラ・レスカ・コーラ
コーラ・レスカ・コーラ
大体お値段は650円前後らしい
大体お値段は650円前後らしい
ちなみに私のお昼ご飯の目安は500円です
ちなみに私のお昼ご飯の目安は500円です

有りそうで無い店もある

けっこうあるもんなんだなと頭の中を切り替えていた所で、「友路有」と書いてトゥモローと読む、昔ながらと銘打った喫茶店を発見した。ここにもあるんだろうとサンプルケースを見るが見当たらない。たまたまサンプルが無いだけなのか・・ちょっと気になったので店員さんに聞きに行ってみることにした。

いやしかしなんて聞こう?ここはやはり「レスカありますか」と聞くのが良いのだろうな。ドア開けながらそう思ったらいきなり緊張してきた。
私「あのう・・」 若い店員さん「はい?」         私「レ・・レモンスカッシュありますか?」<br>         レスカと言えなかった。そして無かった。
私「あのう・・」 若い店員さん「はい?」
私「レ・・レモンスカッシュありますか?」
レスカと言えなかった。そして無かった。
昔ながらとは書いてあるものの、ここは開店してからまだ数年らしい。やはり最近できたお店には無くなっていっているメニューなのかも。

ちなみに他には、あんみつが出てくるような和風喫茶やコーヒーしかないようなこだわりのお店なんかにもレスカは無かった。

メニューから外すのが面倒なのか?

しかしそれ以外の、長年続いていそうだと思うお店にはほぼレスカがあった。

単にメニューから外すのが面倒くさいだけの可能性も出てきたぞ。
これまでの調査結果
これまでの調査結果

いざ、レスカを頼もう!

それにしても、普段から浅草をブラブラしている私でもこんなにたくさんの喫茶店があったのか、と思うくらいあちこちにお店が点在している。

これだけの喫茶店があり、なかなかの高確率でレスカがあるとなると、かえってどこに入ればいいか迷ってきた。

外にメニューがない喫茶店

他の店と違ってメニューが表に無い。趣ある喫茶「待合室」
他の店と違ってメニューが表に無い。趣ある喫茶「待合室」
そこで見つけたこの「待合室」。開いていたドア越しに見えるのは新聞を広げているおっちゃんばかり。席が空いていないほどたくさん座っているようにも見え独特の雰囲気だ。

外にメニューは見当たらないし、友人が入るのに臆する気持ちも分かる。

しかし名前といい、昭和にタイムスリップしてしまいそうな雰囲気が気になり、思い切って入ってみる事にした。
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2階は麻雀「部長室」 ちょっと勇気が要った
2階は麻雀「部長室」 ちょっと勇気が要った
表から見えるのは常連客の様に見えるおっちゃん達ばかりだ。新参者には居辛い感じなのだろうか・・

別に何かされる訳でも無いだろうが妙な緊張を持って足を踏み入れた。マスターが怖かったら引き返すから、と友人に伝え、まずはメニューを見せて貰いに行った。そもそもレスカはあるのだろうか。
あった!レスカのスタンダード価格。
あった!レスカのスタンダード価格。
中は意外と広く椅子の形も落ち着く感じ。店員さんも怖くない。でも向こう側にはおっちゃんばかり
中は意外と広く椅子の形も落ち着く感じ。店員さんも怖くない。でも向こう側にはおっちゃんばかり
壁には芸能人のサインやライブ情報など。ここで音楽やお笑いライブもするらしい。
壁には芸能人のサインやライブ情報など。ここで音楽やお笑いライブもするらしい。
中に入ってみると、暖色系の明りで落ち着いた雰囲気だ。そしてなぜおっちゃん達が多いのかが分かった。奥にあるTVで競馬中継が流れているのだ。新聞は競馬新聞だきっと。確かにこの喫茶店のすぐ近くにウインズがあった。なるほどね。

果たして「レスカ」は通じるか?!

よし、いよいよ「レスカください」を言う時がきた。今度こそ恥ずかしがらずにちゃんと言えるだろうか?店員さんに通じるのだろうか?どんな反応が返ってくるのだろうか?緊張の瞬間だ。
言う。絶対言うぞ!
私「え、えと・・レスカください」(言った!) ママさん「はい」(アッサリ!)
私「え、えと・・レスカください」(言った!) ママさん「はい」(アッサリ!)
もの凄く自然にオーダーが通った。

私は今回、もしかしたら初めから勘違いをしていたのかもしれない。

レスカは別に珍しいものでもないし、特別な呼び名でもないんじゃないか・・少なくともここ浅草では。

聞き返される事なく、いともあっさりとオーダーが通り、何だか自分が通っぽく感じて嬉しかった。
缶以外で人生初めてのレスカ
缶以外で人生初めてのレスカ
ちなみに友人は「ソーダ水」
ちなみに友人は「ソーダ水」
これがまた、酸っぱくてめちゃくちゃ美味しい!(ところで後ろのおっちゃん達増えてる)
これがまた、酸っぱくてめちゃくちゃ美味しい!(ところで後ろのおっちゃん達増えてる)
友人「これちゃんとレモン絞ってるね美味しい」
友人「これちゃんとレモン絞ってるね美味しい」

酸っぱい好きにはたまらない味

私は人一倍酸っぱいものが大好きなのだが、レモンスカッシュに酸っぱさは期待していなかった。しょせんはジュースなので甘いのだろうと踏んでいたのだ。

しかし飲んでみたらビックリ。レモン丸々絞ったものを入れているらしく果肉が浮きフレッシュな酸味強し。もちろんとても気に入った。そしてこのお店のママさんの事も。
可愛らしいママさん。色々教えてくれた。ちなみに普段は女性客や若い人もたくさん来るそうです。
可愛らしいママさん。色々教えてくれた。ちなみに普段は女性客や若い人もたくさん来るそうです。

レスカ頼む人いますか?

私が注文した時にあっさり「はい」の返答があったことから分かるように、今でもレモンスカッシュを注文する人はけっこういるそうだ。そして「レスカ」と略して注文する人も。

自分で注文してみて思ったけど、あれだけ自然に「レスカ」が通じてしまうお店なら2度目からはそんなに恥ずかしくないと思う。開店して50年近くになるというこちらのお店には、きっと酸っぱい好きの常連客がやってきてはいつものレスカを頼むのだろう。
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昔の浅草の喫茶店

ついでに聞いた所によると、昭和40年代頃から喫茶店が流行り確かに当時のデートの待ち合わせに使われていたそうだ。しかしここ浅草という土地柄では映画帰りの客、キャバレーのホステスやバンドマンによく利用されていたらしい。

ママさん「昔はカップル向けに『同伴席』っていうのがあったの。うちも以前は2階がそうだったんだけどね。」
同伴席は電車みたいに皆同じ方向を向いていたといっていた。こんな感じだろうか?なんか変だ。(絵の問題だろう)
同伴席は電車みたいに皆同じ方向を向いていたといっていた。こんな感じだろうか?なんか変だ。(絵の問題だろう)
昭和40年代といえば自分の親の青春時代かあ・・。キャバレーという言葉から察するにその頃の浅草はきっと「華やか」という言葉が似合う街だったんだろうな。

今でも浅草には娯楽が集まって賑やかではあるけれど、ギラギラ感は無くなっていっているもんね。

そんな時代の移り変わりを想像すると面白い。
伝票にレスカの文字
伝票にレスカの文字

オレンジスカッシュはオスカ

そういえば、冒頭で出てきた上司とは別の上司が「ちなみにオレンジスカッシュはオスカと呼んだ」と冗談なのかなんなのか分からない事を言っていた。

オスカと呼ぶどころか、オレンジスカッシュ自体知らないわーと期待しないでまた浅草をウロウロしていたら
あった。オスカ!
あった。オスカ!
いきなりの雨に追いやられ入った喫茶店「アモール」。もう一杯くらいレスカ飲んでもいいかなとメニューを見せてもらったらオレンジスカッシュの文字があったのだ。これは今日周った中でも初めて見たから珍しいのでは。
表のメニューにジュース類が書いて無かったので確認中。私「レスカありますかね?」 店員さん「(一拍おいて)レモンスカッシュですか?ありますよ」
表のメニューにジュース類が書いて無かったので確認中。私「レスカありますかね?」 店員さん「(一拍おいて)レモンスカッシュですか?ありますよ」
オレンジスカッシュも。本当に&今でもあったのか。
オレンジスカッシュも。本当に&今でもあったのか。
私「オスカください」 店員さん「(一拍おいて)オレンジスカッシュですね?」 必ず正式名で再確認
私「オスカください」 店員さん「(一拍おいて)オレンジスカッシュですね?」 必ず正式名で再確認
うん、ファンタというより旅館とかに出てくるオレンジジュースの炭酸バージョンです。
うん、ファンタというより旅館とかに出てくるオレンジジュースの炭酸バージョンです。
こちらのオスカはオレンジを絞って、とかでは無いようだけど普通に美味しい。なんと言っても刺さったレモンと添えられたチェリーが喫茶店らしくて可愛くて嬉しい。

そして、さすが50年以上続いている老舗喫茶。一応はレスカ、オスカの通称が通った。とはいえその呼び名はお客が注文で言うというより、スタッフ間で使うことの方が多いのだと言う。だから再確認する時は正式名で言ってきたのだろう。
注文もまあまああるそうだ。そりゃメニューから外さないね。
注文もまあまああるそうだ。そりゃメニューから外さないね。
こんな感じで今回、レモンスカッシュは今でも割と人気であること、そしてレモンスカッシュが置いてあるお店ならレスカがちゃんと通じるという事が分かった。

これからは堂々と言っていこうと思う。「レスカください」と。
関係ないけどこれ食べたい
関係ないけどこれ食べたい

初デートの結末は

冒頭に出てきた上司の初デート。女性がマニュアル通りにレスカを所望した為かえって緊張してしまい「レレレレ、レスカですか」と裏声になって気まずい雰囲気になったそうで、その後予定していた映画→ダンパ(ダンスパーティ)のコースも叶わずまた今度皆で・・とフラれてしまったそうな。

そんな甘酸っぱい他人の思い出を、レモン絞りたての酸っぱいレスカ飲みながら想像する。なんだか自分もその当時にいるみたいな、風変わりで贅沢な時間だった。
最後に試しに聞きに入ったプロント。若い店員さんにはやはりレスカは通じなかったが、「生グレープフルーツスカッシュがありますよ!」と新たなスカッシュの登場を知った。今のとこ略名は無いらしい。・・グスカ?
最後に試しに聞きに入ったプロント。若い店員さんにはやはりレスカは通じなかったが、「生グレープフルーツスカッシュがありますよ!」と新たなスカッシュの登場を知った。今のとこ略名は無いらしい。・・グスカ?
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