ミラクルフルーツというのは、酸っぱい食べ物が甘く感じられるようになる、不思議な実である。
仕組みを調べたところ、口の中が酸性になると、ミラクルフルーツに含まれる「ミラクリン」という成分が舌の甘味受容体と結びつくのだそうだ。「ミラクリン」という名前のファンシーさが気になって全く頭に入ってこない。
ミラクルフルーツの定番といえば、レモンを食べて「甘ーい!」とやるやつ。
酸っぱい食べ物の代表としてレモンを使うのは理解できるが、逆にレモン以外のフルーツを試食しているのを見たことがない。酸味を甘く感じられるのであれば、他のフルーツだって「糖度○度以上!」という謳い文句の高級フルーツに変身するのではなかろうか。
甘…酸っぱ……うん?
甘いというか、「あるべき酸味がない」と言う方が正確だ。
酸味の刺激は舌と喉に確かにあるのに、じゃあ酸っぱいかと言われるとそんなことはない。食べられるが、美味しいかと言われるとちょっと考えてしまう。
一口食べて確信した。ミラクルフルーツの本領発揮は「元からちょっと甘いフルーツ」だ。
加糖されているジュースのような甘さで、知らないフルーツを食べている気分。口に入れた瞬間の雰囲気や、甘さの加減はライチっぽい。
笑ってしまうほど甘い。若いキウイのシャクシャク感に、ミラクルフルーツが作り出す完熟のような甘さがあいまって、ほとんど高級フルーツの味わいだ。1個500円の高級キウイと言われたら信じるかもしれない。
気付いたら完食していて、「え!ない!」と驚いてしまった。美味しいもののデメリットは、食べるとなくなること。
もはやスイーツの域。ちょっと疲れるくらい甘い。
甘いからどんどん食べてしまうが、舌がビリビリしてきて「本当はそこに存在している酸味」のことをを思い出す。食べすぎると口の中と胃が危ないかもしれない。
このあと試しに黒酢を飲んでみたところ、「甘くなる」からといって何もかも「うまくなる」わけではないなと思った。ミラクルフルーツの本領発揮は「元からちょっと甘いフルーツ」。
現場からは以上です。