逆キッザニアへの招待
ある日、友人から「息子の自由研究に参加しませんか?」と連絡があった。
この友人は、変わったマラソン大会に参加する「つぶやき珍走団」というサークルを主宰していて、僕も10年ぐらい前に何度か参加させてもらっていた。
これは彼が入院したときの写真。みんなで滋賀のお米「近江米(おうみまい)」を買い、米俵に入れて巣鴨から品川の病院まで走ってお見舞いにいった。
彼にお子さんが産まれてからはあまり会えていなかったのだが、その子がもう小学4年生になり、自由研究の参加者をさがしているのだという。
子どもたちがいろんな職業を体験できるキッザニアという施設があるが、大人が子どもの自由研究に参加するのはその逆。もう小学生にはもどれない大人にとって、本家より貴重な体験だ。
行こう「逆キッザニア」へ。夏休みの小学生のように、はりきって朝6時半に起きて会場に向かった。
逆キッザニアの会場、それは地域の公民館。
「3個に1個すっぱいガム」の一番すっぱい場所をしらべる
当日僕をむかえてくれたのは、友人(以降パパ)と、小学4年生のこうきくん。
![自由研究_3.jpg](/application/themes/dpz2018sp/img/loading-min.png)
そして、こちらの「そのまんまグレープ」というお菓子が100袋。
町内会の夏祭り用ですよね?と思う量
このお菓子、袋をあけるとガムが3つ入っていて、その中のどれか1つが「超すっぱい」。ロシアンルーレットみたいに遊べるものだ。
僕が子供のころにも同じようなものがあり、友だちとよく食べていた。
友だちと3人で1つずつ食べると、
誰か1人がすっぱいガムに当たってこんな顔になるのが楽しい。
こうきくんの自由研究は、このガムを100袋食べて、すっぱいガムが 左・真ん中・右 のどこに一番多く入っているかを調べるというものだった。
それ、僕も子どものころ気になってたことじゃん!
経験則では左がすっぱい
実験に入る前に、まずはこうきくんに予想を立ててもらう。
このガムを毎週のように食べているというこうきくん。その経験によると、すっぱいガムがいちばん多い場所は左、次が真ん中、いちばん少ないのは右とのこと。
競馬新聞のような予想スタイル
そしてその予想をもとに、誰がどの場所のガムを食べるか担当を決める。
こうきくんは酸っぱいのが食べたいからというアグレッシブな理由で「左」を選択。一方でパパは真逆の理由で「右」。
それぞれ担当する場所のガムを食べて、「すっぱいガム」に当たったら自己申告。
1つ目の「すっぱいガム」は、なるべく避けたかったパパ(右)にヒット
その数をホワイトボードに「正」の字で記録する。
![自由研究_10.jpg](/application/themes/dpz2018sp/img/loading-min.png)
これを100回繰り返し、すっぱいガムがどの場所で多く出たかを調べる。これ、かなりちゃんとした実験だぞ。
思わず、中学のときに各コンビニの鮭おにぎりを1つずつ買って食べ、「サークルKのがいちばん美味しい」と書いて出した自分の自由研究を思い出してしまった。THE主観!恥ずかしくなっちゃうな。
今はローソンのが好きです
すっぱいガムの位置は均等じゃない
さて、先ほども書いたとおり、こうきくんの予想ではいちばん酸っぱいのは「左」。
いっぽうで大人2人は、そこはやっぱり3ヶ所均等に入っているんじゃないかと思っていた。
しかし実際にやってみると、
パパ(右)
パパ
ときどきこうきくんと私
でもやっぱりパパ
予想に反して、パパ(右)がすごいペースですっぱいガムを引きあてていく。競馬だったら、早くもあきらめて次のレースの予想に移っちゃいそうなぐらいぶっちぎりの展開だ。
50個おわった時点で半分がパパ
そしてこの「超すっぱいガム」、想像していたよりだいぶ酸っぱい。毎回はじめて当たったかのように震えるし、しっかり涙目になるほど。
実験をする前、「これだんだん口が慣れてきて、酸っぱいのに当たっても分かんなくなるかも」と話していたが、そんな心配はまったくいらなかった。
子どもの時こんなに酸っぱかったっけ?
「飲まなきゃやってらんないよ!」(お茶です)
そんな酸っぱいガムを最大4連続でくらったパパ。マラソン走りきった直後に失格を告げられた人みたいな放心状態。
代わるがわる酸っぱさにもだえる状況に、こうきくんは「何やってるんだ?って怪しまれるかもしれないから」と途中で鍵をかけていた。
![自由研究_21.JPG](/application/themes/dpz2018sp/img/loading-min.png)
途中、「パッケージでは真ん中のキャラがすっぱい顔してるから、いちばん当たるの真ん中じゃない?」とか「中のペーストがちょっと透けて見えるやつがすっぱいんだよ」とかいろんな予想をした。
そういえば、小学生のときもこういう話をしながら食べてたな。
「このペラっとめくったところに何かヒントあるんじゃないの?」
でも、当時も今もこういう説がその通りだった試しがない。その後もすっぱいガムは容赦なくパパに当たりつづけ、
100個目もパパでフィニッシュ
最終的な結果はこちら。「3個に1個すっぱいガム」の一番すっぱい場所は「右」だった。
![自由研究_24.jpg](/application/themes/dpz2018sp/img/loading-min.png)
![自由研究_25.jpg](/application/themes/dpz2018sp/img/loading-min.png)
自由研究ってこういうのありなんだっけ!?
経験則ではいちばん酸っぱいのは「左」だったけど、調べてみた結果は断トツで「右」。
これって立派な仮説検証というやつだろう。
「予想と全然ちがーう!!」「こんなに差がでると思わなかった」
僕が小学生のころ、通学路の途中に「近道」とされている道があってよく通っていたが、大人になってから見たらめちゃくちゃ遠まわりだった。
そんな僕に「感覚やウワサだけで判断してはいけない」ということを教えてくれる、お手本のような自由研究だ。
後日見せてもらったこうきくんのまとめ。手書きの感じがまさに自由研究で、思わず顔がほころんでしまう良さ。
でも、僕には1つ疑問に思っていたことがある。自由研究ってこういうのありなんだっけ!?
自由研究は本当に自由だった
自由研究ってたしかに「自由」と名がついているが、理科の実験や、歴史や地理系の調べもの、工作など、学校の教科の延長のことをやらないといけないイメージだった。
![自由研究_28.jpg](/application/themes/dpz2018sp/img/loading-min.png)
自分が昔やったものを思い出してみても、恥ずかしくなるぐらい堅いテーマでやっている。でも、そういうものだとも思っていた。
ちなみに「木の椅子」は、技術力がなさすぎてほぼ角材と板をクギで組み合わせただけのストロングスタイルだったのを覚えています。
一方で今回のこうきくんの実験は、教科というよりはテレビとかインターネットのバラエティー的。学校としては、こういうのでも大丈夫なのだろうか。
![](/application/themes/dpz2018sp/img/loading-min.png)
気になって、先生は何て言っていたのかこうきくんに聞いてみる。
すると、何をやるかを事前に学校に伝えることはなく「テーマは任せるのでとにかくやってきてください」という感じの指示があるだけなのだそう。
自由研究って、本当はなんの制約もなく、完全に自由だったんだ。
誕生日・クリスマス・自由研究
そんな「自由」研究の精神にのっとり素直に気になったことを調べたこうきくんは、さらなら興味を口にしていた。
・もう1回やっても同じ結果になるんだろうか?
・1個ずつ違う場所にすっぱいガムを入れるのって、工場ではどうやって作ってるんだろう?
・どうして右にすっぱいガムを多く入れてるんだろう?
「僕だったら盛りあがるように34・33・33とかにするけどな」
それだけでなく、実験の準備もパパに協力してもらいながら自分でやり、いろんな経験をしたそうだ。
・ガムはスーパーでは100個も置いてない → ネットならすぐ買える
・公民館は自由研究のためにも使わせてくれる
たしかに近所のスーパーでは20個ぐらいが限界
こういう経験、きっと将来なにかの役に立つだろう。具体的にはいつだろうか?真っ先に思い浮かんだのは「デイリーポータルZのライターになったとき」だ。
「理系の大学生みたいな立派な実験じゃん!」と一緒に興奮するパパ
知的好奇心も満たされるうえに、新たな疑問も生まれるしいろんな経験もできる。
それに考えてみれば、ガムを100個って自由研究のためじゃなければなかなか買ってもらえない。
ふだん箱買いなんてできないもんね
子どもたちにとって、誕生日やクリスマスは好きなものを買ってもらえるチャンスだろう。
それと同じように自由研究も、普段はなかなかできないことをやれたり、興味のあるところに行けたりするチャンスだったのだ。
そういうのありなんだ!?と思っていたが、自由研究って自由を謳歌したもん勝ちだったんだ。
高瀬:「こんど友達とこのガム食べることになったらどこ選ぶ?」
こうき:「すっぱいの食べたいときは右をとるし、そうじゃない時は左か真ん中」
これが情報強者ってやつか!
そういうのありなんだ!?と驚いた自由研究を募集します
さて、ここまでご紹介した「すっぱいガムの確率しらべ」のように、「そういうのありなんだ!?」「自由すぎるな!」と驚いた自由研究、皆さんの記憶にもないでしょうか?
そんな自由研究の思い出を募集します。
いただいた投稿は、後日別の記事でまとめてご紹介します。
回答はこちらから
・ご自身、友達やクラスメイト、お子さんなど、誰の自由研究でもOKです。
・ご自身の自由研究の場合は、その詳細、やった理由、周りの反応、感想などを教えてください。
・他の人の自由研究の場合は、その詳細、それを見たときどう思ったかや、エピソードなどを教えてください。
※編集の都合上、掲載されない場合もございます。どうかお許しください!
※いただいた内容の一部を編集して掲載することもございます。こちらもご了承くださいませ。
ここではこうきくんの例に加えて、他にもいくつか参考としてご紹介します。
まずは私が子ども時代に驚いた自由研究。
T.M.Revolutionの衣装
中2のときに歌手のT.M.Revolutionが大好きなクラスメイトがいて、Hot Limitという曲の衣装(写真)を完コピで作ってきました。
好きな歌手をテーマにしていいんだ!?衣装のコピーって考えたことなかった!そしてちゃんと作れてるのすごい!と、衝撃をうけました。
![自由研究_36.jpg](/application/themes/dpz2018sp/img/loading-min.png)
夏休みあけのクラスでの発表は、T.M.Revolutionへの愛を語る時間になってました。でも試行錯誤も技術もいるし、いい自由研究ですね。
続いて、友人からも教えてもらいました。
海水から塩をつくる(なる さん)
海水から本当に塩はつくれるのか?それは食べられるのか?と思い、鍋で海水を蒸発させて塩をつくりました。塩はできたしちゃんと食べられたのですが、鍋を黒焦げにしてダメにしてしまい、母に「言ってくれれば別の鍋にしてもらったのに」とさびしそうに言われました。
夏休みあけ、クラスメイトが自作の塩とともに現れたら驚きますね。そして使っていい鍋の確認が必要という教訓…
水道水の飲みくらべ(ガンジー さん)
練馬・調布・横浜・川崎・川口・柏の、人の家の水道水を飲みくらべました。調布の水が一番おいしかったように覚えています。
その手があったか!と悔しくなるほど身近すぎるテーマ。そしてこれだけの場所の水を飲ませてもらえてるのがすごい。
最後にもう1つ私から。
毎年ワイキキビーチのジオラマ
小学校の同級生でいつも夏休みにハワイに行く子がいて、自由研究は毎年ワイキキビーチのジオラマでした。都度新しく作っていたし綺麗だったのですが、「毎年同じってありなんだ!?」と思ってました。
あと、毎年うらやましかったです。
2学期が楽しみになる自由研究の発表会
夏休みが終わるとクラスで自由研究の発表会がありますよね。あれ、クラスの全員がみんなをビックリさせようと思っていたら、新学期がちょっと楽しみになるんじゃないかと思います。
そんなクラス発表会のように後日まとめてご紹介しますので、皆さんが「そういうのありなんだ!?」「自由すぎるな!」と驚いた自由研究の思い出をお待ちしています。
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回答はこちらから
・ご自身、友達やクラスメイト、お子さんなど、誰の自由研究でもOKです。
・ご自身の自由研究の場合は、その詳細、やった理由、周りの反応、感想などを教えてください。
・他の人の自由研究の場合は、その詳細、それを見たときどう思ったかや、エピソードなどを教えてください。
※編集の都合上、掲載されない場合もございます。どうかお許しください!
※いただいた内容の一部を編集して掲載することもございます。こちらもご了承くださいませ。
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こうきくんの自由研究がクラスでどんな反応になるかも楽しみ