市女笠(いちめがさ)ソーシャルディスタンス
「あきたこまち」の袋の女性がかぶっているような、ふちに薄いベール様の布がぶら下がっている、あの笠。調べると「市女笠(いちめがさ)」という名称であることがわかりました。
うすいベールのような布は「枲(むし)の垂衣(たれぎぬ)」という布で、苧(からむし)という植物の茎を薄く削いで蒸して干し、よった糸で編んだ布でした。
ソーシャルディスタンスや飛沫感染防止がさけばれるなか、外出するさいに、この垂衣をつけた市女笠をかぶって外出すれば、飛沫防止になるのではないか。さらに垂衣の外がわを、ビニールでガードすれば、完璧ではないか。そう考えたわけです。
SNS等で検索してみたところ「市女笠が新型コロナウィルスの感染拡大防止に使えるのではないか」という発想にいたっているひともおおくいましたので、さっそく実際に作ってみました。
それがこちらです。
いかがでしょう。
中身はおじさん(筆者)ですが、雅な雰囲気が伝わりますでしょうか? みための完成度の高さにわれながら驚いています。申し訳ない。
この笠は、市でものをひさぐ女性がかぶったことから、市女笠と呼ばれるようになったそうですが、日本国語大辞典によると「平安中期以降、主として上流階級で男女ともに用いられた」とあり、とくに男女の区別なくかぶられたようです。
なお、購入にあたり、大人の男の肩幅であってもすっぽり入るサイズのものをネットで探したところ、14999円しました。たぶん、ぼくが今着ているどの服よりも高価なものです。
1万オーバーの笠だけあって、さすがに作りはしっかりとしており、装着するための頭台と座布団もついていて、ずれることなくかぶることができ、頭と笠が一体化しているような感覚になります。
かんじんの垂衣ですが、薄い苧麻(からむし)の布を準備するのがすこし面倒だったので、オーガンジーとよばれる、ウェディングドレスなどに使われるポリエステル製の布を取り寄せ、装着しました。
最初、てきとうに勘だけで面ファスナーを貼っていったところ、笠と布を貼り合わせるところが微妙にずれるという事案が発生。やはり、直径*3.14で円周を計算し、等間隔になるよう割り算をしなければいけませんでした。算数め……。
さて、オーガンジー製の垂衣の外側には、ビニールも取りつけなければなりません。これを取りつけなければ飛沫感染防止にならないような気がします。エビデンスはありませんが。
本当は、コンビニのレジ前などで使われている薄いビニールを購入しようとおもいましたが、このご時勢で入手が困難になっており、しかたなく、すこしばかり上等のポリ袋を取り寄せ、これを切り開いて笠の縁にはりめぐらせることにしました。
そんなわけで「対COVID19用ソーシャルディスタンス市女笠」は完成しました。
せっかく作ったソーシャルディスタンス市女笠。家の中でかぶっていても、宝の持ち腐れです。というわけで、近所を散歩でもしてみましょう。
5月のあたまぐらいから、急に気温が上昇しはじめ、すでに初夏の陽気になることもしばしば。そんななか、ソーシャルディスタンス市女笠をかぶって散歩すると……暑い。
多少の暑さは覚悟していたものの、笠の周りにぐるりとはりめぐらしたポリ袋が完璧な仕事をしており、笠をかぶって数分で汗がじんわりにじみ出るほどの蒸し暑さにはなります。まるでビニールハウスの中にいるような感覚です。(ちなみに、下は空いているので、息苦しさはありません)
しかし、こういうこともあろうかと、簡単に取り外しできるよう、ポリ袋は面ファスナーを使って笠に装着したのです。
というわけで、外側のポリ袋はいったん取り外します。
垂衣だけになると、たちまちなにをしているのか、意味がわからなくなります。とくに、ちょっとした風でふぁっさーと垂衣が舞い上がるので、飛沫防止もくそもありません。ただ、市女笠をかぶった物好きなおっさんが歩いているだけです。
日除け笠としては有能
ソーシャルディスタンス市女笠。
だれもが思いつくも、実際に作っているひとはなかなかいなかったので、あえて作ってみましたが、ちょっとの風だけで垂衣がけっこう自由に舞うので、どれほど飛沫感染防止になるかは疑問です。
もちろん、ポリ袋をかぶせればけっこうよさげな気はしますが、これからの季節、ポリ袋をかぶって活動するのも限界があるとおもわれます。
それとは別に、純粋に「両手のあく日除け笠」としてのポテンシャルはけっこうあるような気がしました。
数年前に、小池TOKYO都知事が、陣笠風の日笠を披露してましたが、それを使うくらいであれば、この垂衣つきの市女笠を使うのがいいとおもわれます。
以上、よろしくご検討ください。