はたしてギネスに認定されるのでしょうか
世界最大のギネスに申請するという話がどうなったか気になる。
ワカメ部のツィッターアカウントをこまめにチェックしているけれど、いまだになんの告知もないということは、認定はされなかったのだろうか。
気になっているので、今後も注目していきたい。
板ワカメは、鳥取、島根など山陰地方でよく食べられる食材のひとつだ。鳥取県出身のぼくはこの食べ物が大好きで、子供の頃からバリバリ食べていた。ソウルフードといってもいい。
ずいぶん前になるけれど、当サイトで板ワカメについて記事を書いたこともある。
そんなおり、板ワカメフィリアにとっては聞き捨てならない超ビックなニュースが飛び込んできた。
世界最大の板ワカメが作られるというのである。
板ワカメ、どれぐらいの人が知っているのか、よくわからないけれど、念のためざっくりと説明しておきたい。
板ワカメは、鳥取・島根のスーパーなどで普通に売っている食材で、増えるワカメのような調理が必要な乾燥わかめとは違い、袋から出してそのままバリバリと食べる。
そのままバリバリと食べる以外には、粉々にしてご飯にかけて食べるなどの食べ方があり、湿気ったものはコンロの火で少し炙るなどすれば、より一層美味しくなる。
味噌汁などに投入する食べ方も悪くはないが、わかめ自体にすでに塩味が付いているので、味噌汁が塩辛くなりすぎるかもしれない。
山陰地方では超定番の食べ物だけれど、上京して東京のスーパーでは売っていないということに衝撃をうけた。以降、板ワカメは、新橋にある鳥取のアンテナショップに立ち寄るさいは、売っていれば必ず買って食べている。
そんな中「ワカメ部、副部長」を名乗る人から「世界最大の板ワカメを作る」という情報がもたらされた。
そもそも、板ワカメという、どローカルでマイナーな食材で「世界最大」なんてのは自称すれば即それが世界最大になるような気もしないでもないが、そういうことをあげつらうのはつまり野暮というもので、ここはどれだけばかでかい板ワカメが完成するのか見てみたいという好奇心の方が勝ってしまった。
というわけで「ぜひ伺います!」と二つ返事で鳥取へと向かった。
鳥取県岩美町の網代(あじろ)にやってきた。
世界最大の板ワカメは、この網代で行われる「ワカメフェス」で作られるという。
ワカメ部は、岩美町網代で漁師をしている則定さんと、鳥取市で会社員をしている岸さんたちが中心となって、ワカメや板ワカメの普及と地域活性化を目的とし、2018年に発足した「部」だ。
実は、ワカメフェスは2019年に第一回が行われ、世界最大の板ワカメはその時にも作られている。
しかしその後、疫病のせいで開催中止や、リモート開催などを経て、今年(2022年)は久々にリアルイベントとして復活。世界最大の板ワカメは、前回よりもでかいものを作り、マジでギネスに申請するつもりらしい。
2019年のワカメフェスは、露天やさまざまなイベントが行われ、かなり賑わったようだが、今年は、世界最大の板ワカメづくりと、板ワカメ作りのワークショップのふたつを中心にしたイベントが行われることになった。
もはや板ワカメのみに絞った板ワカメガチ勢向けのイベントの様相を呈している。もちろん、板ワカメガチ勢のぼくは両方に参加したが。
世界最大の板ワカメのまえに、まずは板ワカメづくりのワークショップの様子をお伝えしつつ板ワカメがどのように作られているのかを説明したい。
板ワカメは、子供のころから食べているけれど、どんなふうに作っているのか、に関しては、現物を見て「ワカメを乾かして作ってるんだろうな」ぐらいのことは想像つくけれども、それ以上のことはなにも知らない。
とはいえ、その製法は、海から収穫したワカメを洗って広げて乾燥させてパリパリにする。というシンプルなものだ。
収穫され、水揚げされたワカメは、水でジャブジャブ洗う。
この水洗いの工程が実はけっこう重要で、何回洗うのかによって、出来上がりのときのワカメの塩辛さが変わってくるのだという。洗い終わったワカメは、洗濯ネットにグイグイ詰め込まれ、洗濯機で脱水する。
洗濯機で脱水したワカメは、巻き簾の上に平らに並べていき、天日で乾燥させる。
ワカメの芯を延ばしながら葉っぱが重なるように置かなければいかない。
どっさり重ねて置くと、乾きが悪くなってしまうが、すき間を開けすぎると、こんどは穴だらけのスカスカ板ワカメになってしまう。
しかも、乾燥すると縮むので、その縮みしろを想定しながら並べなければいけない。巻き簾の端っこにワカメをかけるように並べると、縮んだときにワカメが引っ張りあって、ピンとした板ワカメになるというが、ちょうどいい量でうまいこと並べるのはなかなかむずかしい。
板ワカメ、製法はシンプルだが、作り方は微妙にむずかしい。
網代ではかつて板ワカメを製造する業者がいくつもあったそうだが、今では一人だけになってしまったという。その一人が、ワカメ部部長の則定さんだ。
則定さんは、奈良県から鳥取に移住し、主にワカメ、もずくといった海藻を採る海女などの仕事を行いつつ網代で暮らしている。
則定さんの経歴がちょっとおもしろかったので、少し詳しく伺った。
則定さんは2016年、たまたま知った鳥取への移住ツアー募集で、他の参加者がインフルエンザで欠員したため、偶然参加できることになり、縁もゆかりもない鳥取にやってきて、移住する事を決めた。
その後、地域おこし協力隊として、網代に住みはじめ、地元の物産の商品開発などを行っていたところ、引退する漁師からかんこ船を譲り受けることになった。かんこ船とは、海岸付近で漁を行う小型の船のこと。
それから船の免許を取得し、地元の漁協に入り、海女としてワカメやもずくなどの海藻漁などを行いつつ、板ワカメの製造、地元の産品を使った商品の開発、販売などをひとりで行っている。
則定さんは、当初「板ワカメだけは絶対にしない」と、決めていたという。なぜなら、作るのが大変で手間がかかる割に、あまり儲けにならないからだ。
しかし現在、網代では自家で消費するための板ワカメを作る漁家はあるものの、製造販売しているのは則定さんだけになった。
当初は、2019年のワカメ部発足のさいに、ワカメフェスで販売するため少量だけの生産だったものの、鳥取県民からの板ワカメの需要が意外と多く、現在も製造を行っている。
板ワカメの作り方だけでなく、ワカメ漁も、誰もやらなくなってしまうと技術やノウハウはそこで寸断されてしまう。則定さんが途切れさせないよう、ワカメ部の活動を通して、楽しみながら継承している……というかたちだ。
板ワカメ好きとしては、ただただ頭が下がるのみである。
さて、すっかり話がそれてしまったが、世界最大の板ワカメだ。さっそく、世界最大の板ワカメを御覧いただきたい。
網代産のワカメ55キロを、たたみ8畳分の簾の上に広げて、3時間ほど干したものがこれだ。ちなみに下の画像が、干す前のワカメ。
縦7.7メートル、横1.6メートルのばかでか板ワカメがそこにあった。
板ワカメは、天気がよければ、天日干しだけで十分に乾くらしいけれど、あまり太陽が出ていないと、機械の乾燥機で乾かすことになってしまう。
この日は、日が陰っており、あまり天気が良くなかったが、ワカメを巻き簾に並べていると、だんだん日が出てきて、かなり暑くなってきたため、3時間ほどでかなりパリパリに乾いていた。
この世界最大の板ワカメ。なんと、このあと適切な大きさに切り分けられ、鳥取市内の飲食店で提供されることになる。
このばかでかさを保つのは、この日のこの瞬間しか無い。しっかりと目に焼き付けておきたい。
さて、板ワカメフェスから数日後、自分の作った板ワカメが手元に届いた。
驚くことに、板ワカメは自分で作ってもこんなにパリパリになるのかというほど板ワカメであった。自分で作ったといっても、材料を巻き簾の上に並べただけではあるが。
塩味も、天然のワカメを強く感じる塩辛さがありつつも、ワカメの風味もしっかりとあり、うまかった。
スーパーなどで売られている板ワカメには、調味液につけて乾かしたものなども売られており、それは口の中にいれた途端うまみがガツンときてうまいのだが、網代の板ワカメのように、洗って干しただけというシンプルな板ワカメは、食べているうちにだんたんとうまみがましてくる。
どちらの製法もそれぞれにうまい。みんなちがってみんないい。板ワカメを無心に食べていると、詩人みたいな心持ちになる。
板ワカメは、いろんな食べ方で食べられると思うけれど、やはりそのままバリバリ食べるのがいちばんうまい。
世界最大のギネスに申請するという話がどうなったか気になる。
ワカメ部のツィッターアカウントをこまめにチェックしているけれど、いまだになんの告知もないということは、認定はされなかったのだろうか。
気になっているので、今後も注目していきたい。
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