特集 2021年3月1日

“溶け映え”食材を探せ!混浴温泉湯豆腐大作戦

いつもの湯豆腐鍋に「重曹」を足すだけで、豆腐がとろっとろに溶けだし、それはもうまろやかで、夢のような美味しさに早変わり。そんな「温泉湯豆腐」を晩酌のときに作って、よく食べています。

これ、なぜ豆腐が溶けるかというと、熱湯に入れることでアルカリ性になった重曹にはたんぱく質を溶かす性質があり、豆腐はたんぱく質の結合体なので、その結合がほどけてしまうということらしいんですね。

ならば、たんぱく質含有量の多い他の食材を入れたらどうなるんだろう? 豆腐以上に「溶け」ることで「映え」る「溶け映え」食材はないだろうか!?

今回は、そんな実験をしてみようと思います。
 

1978年東京生まれ。酒場ライター、他。酒カルチャー雑誌「酒場人」監修をはじめ、いろいろとやらせてもらってます。(インタビュー動画)

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大好き!「温泉湯豆腐」

そもそも「温泉湯豆腐」とは、佐賀県の名湯「嬉野温泉」の名物料理。湯豆腐を作る際に普通の水ではなく「温泉水」を使用することによって豆腐が溶け、ふわふわとまろやかで、まるで淡雪のような食感の湯豆腐になるのだそう。

その秘密はもちろん嬉野温泉の泉質。弱アルカリ性の「重曹泉」で、それを人工的に再現するに、湯豆腐に重曹を足すというわけですね。

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天然温泉ではないので、「銭湯湯豆腐」と呼んでもいいかもしれない

そこで僕は思ったわけです。重曹のアルカリ性がたんぱく質の結合をほどくなら、たんぱく質含有量の多い他の食材もとろとろに溶けたりしないだろうか? と。

そこで調べてみたところ、たんぱく質が多めの食品は主に、豆腐に代表される「大豆製品」、それから、脂身の少ない「肉類」、「卵類」、「魚介類」、「乳製品」などのようです。

これらのうち、例えば真っ先に「チーズ」が思い浮かぶ乳製品は、熱を加えれば勝手に溶けてしまうイメージだから除外。魚介類は「結合」に重きを置いて「練りもの」を中心に。などとなんとなくの方針を決め、「溶け映えしそうかも?」という食材を買い集めてきました。

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スーパーの人、思っただろうな。「こいつ、帰って何作るんだ?」って

混浴開始

というわけで、今日はこれをもう、一緒くたにひとつの鍋で煮ていってしまおうと思います。

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こんなふうに

試す具材は

・木綿豆腐
・絹ごし豆腐
・高野豆腐
・厚揚げ
・がんもどき
・あぶらあげ
・鶏肉
・豚肉
・牛肉
・ゆでたまご
・練り天
・魚河岸あげ
・ちくわ
・かまぼこ
・カニカマ
・魚肉ソーセージ

の16種類。

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念のため

それでは煮ていきましょう。まずは水を加え、沸騰するまで強火にかけます。

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さっそくしゃしゃりだしたのは体重の軽い油揚げと高野豆腐

作りかたとしては、ここに重曹を加えるだけ。温泉湯豆腐を作る際の重曹の量は、水1リットルに対して小さじ2。

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きっちりと計って
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投入

すぐにぶくぶく〜とすごい泡がたちはじめますので、吹きこぼれないように火加減を調整して、

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10分ほど煮てみました
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アクを取ってみると……

ご覧のように、煮汁が完全に白濁していて、まるで豆乳鍋のようですね。無論、豆腐が溶けた影響。

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それでは食べ比べていきます!
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「木綿豆腐」

ここからは全16の食材をひたすらレビューしていきます。超個人的な「溶け映え度」も添えて。

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「木綿豆腐」

まずは木綿豆腐から。

写真を見てもわかるように、完全に豆腐の角が取れ、そしてひと回り小さくなって、明らかにとろとろな質感に変化してますよね。

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ポン酢でいただきます

こ〜れ〜が! もう! 最っっっ高なんですよ!

ただ、ひとつだけ懺悔しておくことがあります。完成した鍋には絹と木綿の2種類の豆腐が入っているはずなんですが、どっちも溶けていて見分けがつかない。そこで、とりあえずこちらを試食してみたところ、文句のないとろとろ具合で、食感に木綿っぽいざらっとした感じも一切ない。そこで「こっちが絹で間違いないだろう」と判断し、手元のメモにも「絹:満点星5つ」の評価を書き込みました。

ところが、この次に出てくる豆腐を食べてみて驚きました。食感がこの倍はとろっとろなんですよ! ということはこれ、木綿か? 木綿豆腐がこんなにきめ細やかな食感になっちゃうの? 恐るべし温泉湯豆腐。

そこでいったん評価を改定しまして、木綿豆腐の結果はこちら。

溶け映え:★★★★☆

「絹ごし豆腐」

そんな噂の絹豆腐。

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「絹ごし豆腐」

さっきの流れで食べてみて本当に驚きました。これ以上ないと思っていたふわとろ感が、木綿の倍以上! 体感としてはもはや液体。

普通に食べるよりも大豆の味を濃く、甘く感じるのも温泉湯豆腐の特徴で、いや〜ただのスーパーの豆腐がこんなごちそうになってしまうなんて、重曹の力ってすごいな〜。

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なかまでしっかりと食感が変わってるんですよね

というわけでこんどこそ文句なしの!

溶け映え:★★★★★

「高野豆腐」

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「高野豆腐」

引きあげた瞬間思いましたよね。「えっと……誰?」って。

消去法でいくとこいつ、高野豆腐ですね。お湯に入れた瞬間はあんなにはしゃいでいたのに、どうしちゃったんだよ!? っていう、3歳児的なテンションの上下っぷり。

味のほうは、普通の豆腐ほどトロトロでもなく、シュワっとした感じ。こんなに溶けても結束力はまだ残っている感じ。高野豆腐らしい風味もしっかり残っていて美味しくはあるんですが、こんなに溶けちゃうと逆に温泉湯豆腐の具には向かないのかもしれません。

溶け映え:★★☆☆☆

「厚揚げ」

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「厚揚げ」

引きあげた瞬間ふたたび思いましたよね。「えっと……君も誰?」って。

なんとも消去法の多い今回の検証ですが、消去法でいくとこいつは、厚揚げでしょうね。他に思い当たる節がないもん。

見ての通り重曹に身ぐるみをはがされてしまい、なんとも哀れな姿となりはてた厚揚げ。きっちりと、それこそ絹豆腐と遜色ないほどうまいんだけど、それはそれとして、持ち味の皮が鍋のなかに霧散してしまうのでは、温泉湯豆腐の具にするのは失礼という気がします。

溶け映え:★☆☆☆☆

「がんもどき」 

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「がんもどき」

う〜む、美味しいは美味しいんだけど、豆腐と厚揚げの中間の中途半端さというか……。カリッと香ばしく焼いた時の力強さをしっているだけに、なんだか失恋して急に10kg痩せてしまった友人を見ているようで……。

溶け映え:★☆☆☆☆

「あぶらあげ」

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「あぶらあげ」

ここにきての「なぜ!?」案件発生。あぶらあげって、それこそ厚揚げやがんもの「皮だけ」みたいな食材のイメージだったんですが、しっかりと存在感をキープしてるんです!

さらに驚くべきはその食感で、今まで味わったことがないほど、究極になめらか! とろっとふわっと、そしてじゅわっと、これはまさに「飲めるあぶらあげ」!

あぶらあげが飲めることがいいのかどうかは別として、ポン酢と絡ませたら官能的な美味しさでした。

溶け映え:★★★★★
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「鶏肉」 

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「鶏肉」

今回は脂の少ないムネ肉を使ってみました。

これまでとは違い、素の素材である肉類こそ未知のゾーン。結果、ほぼ効果を感じません。

というか、重曹を使って肉を柔らかくする他の方法とかはなんかありそうだし、料理が上手な人や科学に強い人からしたら「お前、何やってんの?」ってな感じなのかもしれませんが。

豆腐の溶けたつゆの優しい味わいとマッチしているという意味で、かろうじてこんな評価かな。

溶け映え:★★☆☆☆

 「豚肉」

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「豚肉」

赤身肉の薄切りの切り落としを使ったんですが、鍋のなかでなるべく散らないようにとほぐさないで入れたのが裏目に出て、ぎゅっと固まったまま煮あがってしまいました。

これまたぜんぜん効果を感じないかな。そして、僕の大好きな、あんなにもポテンシャルを秘めた豚肉に対して、ちょっと失礼でもある食べかたかもしれません。もうしません。

溶け映え:★☆☆☆☆

ただ、豆乳鍋感覚で、普通に薄切りの豚バラ肉などを加えるのはありかと。

「牛肉」

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「牛肉」

豚肉に同じくかな〜……。そもそもこういう厚みのある牛肉をただゆでて食べた経験がないし、いくらポン酢をまとわせようとも、噛みすすめているうちにどうしても無味乾燥なビーフジャーキーを食べているような気分になってきます。

残りはステーキ風に焼いて食べましたが、そのなんと美味しかったことか。

溶け映え:★☆☆☆☆

「ゆでたまご」 

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「ゆでたまご」

熱を加えることによって白身が固まる、つまりそれって、タンパク質が結合してるってこと? と期待値の高かったゆでたまご。そう単純なもんでもなかったようで。

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な〜んも変わらん
溶け映え:★☆☆☆☆

「練り天」 

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「練り天」

スーパーの練りものコーナーから、「玉ねぎ坊主」という玉ねぎ入りの練り天を選んでみました。

あ、やっと肉〜卵ゾーンでごぶさたしていた「溶け映え」感が戻ってきた感じ。周囲が若干とろとろしてるかも。

ただ同時に、練りものって魚や野菜由来の強い旨味が特徴だと思うのですが、それも一緒に溶けだしちゃって、ちょっと味がぼんやりしてるかも。ポン酢がないとものたりないというか。

溶け映え:★★☆☆☆

「魚河岸あげ」 

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「魚河岸あげ」

僕の大好物、紀文の「魚河岸あげ」。これはいい!

そもそもが白身魚のすり身と豆腐を合わせたものだから、温泉湯豆腐に向いていないはずがない。そしてご覧の通り、まわりの皮がたゆんと溶けかかりながらもまだまだ原型を保っている。中身は若干もとのしっかりとした食感を残している。その結果、外はカリッとなかはふわとろなたこ焼きの逆的な、おもしろい美味しさが生みだされています。

溶け映え:★★★★☆

「ちくわ」

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「ちくわ」

やってみないとわからないもんですね。いろいろと。

この、温泉に浸かって見るからにやる気をなくし、湯当たりしたようにも見えるちくわ。食感もそんな感じで、ふにゃふにゃなんだけど中心部のプリプリ感も残っている結果、どこかチグハグな味わいに。

溶け映え:★★☆☆☆

ただし、また別のちくわなら印象が変わる可能性もあり。

「かまぼこ」 

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「かまぼこ」

ほんの少しだけやる気がなくなってしまったような、そもそももとからこんなやつだったような。

溶け映え:★☆☆☆☆

「カニカマ」 

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「カニカマ」

カニを模した繊維のからまりがほぐれ、鍋のなかで散り散りになってしまい、かき集めるのに苦労しました。つまり、温泉湯豆腐の具には向きませんでした。が、もとの食感よりもだいぶふわりとろりとした口当たりになり、カニ風味もしっかりとある仕上がりはなかなかの美味しさ。これ、今回の手法を使った別料理にしたらもっと映えるかも。

溶け映え:★★★☆☆

「魚肉ソーセージ」 

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「魚肉ソーセージ」

ちょっと見たことない感じに仕上がりましたね……ギョニソ。

ただおそるおそる食べてみると、これが意外にも悪くない。いや、むしろいい!

練り天同様ちょっと味は抜けてしまってる感じもあるんですが、だからこそポン酢とあう。全体的にぷるんぷるんなんだけど、食感もちゃんと残っていて、どこか練りものっぽくもある。

例えばこいつに「ピンク天」なんて別の名前がついてて、どこかの地方でのみメジャーなおでんダネだったりして、夜な夜な街の屋台で「オヤジ、ピンクひとつ」「あいよ」なんてやりとりがくりひろげられていたとする。それを一度、旅情とともに味わってしまったら、もうピンク天なしのおでんではがまんできない体になってしまうような気がする。

重曹でとろけさせた魚肉ソーセージ、可能性感じました。

溶け映え:★★★★☆
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おまけのアレンジレシピ

というわけで、検証はここでおしまい。

最後に、おもしろい仕上がりになった「カニカマ」を使ったおまけのレシピを思いついたので、試しにちょっと作ってみようと思います。

作りかたは簡単で、

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崩した絹ごし豆腐とカニカマ適量を鍋で煮て
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重曹で溶かします

ここに炊いたお米を加えて、好きに味つけするだけ(今回は白だしを足しただけ)なんですが、それで「温泉ふわとろ雑炊」的なものができないかな〜? と。

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試作版「温泉ふわとろ雑炊」
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ほうほう、なるほど

これは、やりましたよ。うまい!

わざと豆腐やカニカマを崩すようにしがなら煮たことにより、見てのとおり原型はほぼなし。そのとろとろ感、大豆の旨味、カニの風味が優しい味でまとめられた、上品なんだけど満足度の高い雑炊になりました。

というか、雑炊というよりもちょっとリゾットっぽい食感だなと思い、

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オリーブオイル&黒コショウ

を足してみたところ、さらに満足度がアップ! チーズを使わないヘルシーリゾット的な?

ただし、温泉湯豆腐には「重曹を入れすぎると苦味が出てしまう」という注意点があります。この雑炊にも若干のそれを感じなくはなかったので、重曹は規定量より少なめでもいいかもしれないな。


以前からたびたび家で温泉湯豆腐を食べながら、「他の食材入れたらどうなるんだろうな〜?」と思っていたのですが、今回の「混浴大作戦」により一気に検証できて、個人的にもだいぶ気持ちがすっきりしました。

結果としては、

・絹ごし豆腐最強!
・油揚げが大健闘!
・魚肉ソーセージが大穴だった!

といった感じでした〜。

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