ハトシ
長崎の食べ物と言うと何を思い浮かべるだろう。
ちゃんぽんだろうか、カステラだろうか、トルコライスだろうか。
いや、ハトシだろう。
先日長崎に行ったばかりの僕にとって、いまや長崎の食べ物といえばハトシなのである。そのくらいインパクトがあった。
初めて行く土地には知らない食べ物があって面白いですよね。
かす巻。
ジューシー柑。
ハトシ。
ハトシ?
かす巻もジューシー柑も正直食べたことはないけれど、なんとなくどんな味なのか想像できる。でもハトシはわからない。
伝統を掲げたちょっといい店で、市場のかまぼこ屋の店頭で、中華街で、僕がいる間、長崎の町のいたるところで「ハトシ」という文字を目にした。
空港でも。
町でも、ハトシ。
だからなんだよそれ。
ハトシはかまぼこ屋で売られている
店頭から魚のダシの効いた香ばしい匂いが漂うかまぼこ屋さん。こういう匂いのところに、ハトシは売られている。
これがハトシ。
横から見たハトシ。
こういうお店に売られていることが多い。
かじったハトシ。
ではハトシとは何か
ハトシの正体は鯵やエビのすり身をパンでくるみ、油で揚げたものである。中がすり身なので手にするとズシリと重い。練り物を詰めた皮の厚い揚げ春巻とでも言おうか。
注文する時のイントネーションがわからなくて悩んだ。ハトシ↑、ハ↑トシ?
味について書くのが遅くなってしまったが、てっとりばやく言うとうまい。うまいから長崎に行ったら絶対食べた方がいい。
カリッと揚がったパン生地をかじると香ばしさの後にうま味がジュワッ!と広がる。そして歯ごたえのあるエビのすり身、ぷりぷりだ。僕は機会がなかったが、これ揚げたてはそうとううまいに違いない。
お店によっていろんな形のハトシがある。
形は違えど、すり身をパン生地で包んで油で揚げたものであることに変わりはない。
ところでハトシという名前はどこから来ているのだろう。
売り場のおばちゃんは言う。
「ほら、ハトがエビ、シがパン。それでハトシ、ね。」
ぜんぜんわからないのだ。
ちゃんぽんもたいがい何言ってるのかわからない名前だが、ハトシはそれ以上である。聞いただけでは想像すらできない。
しかし美味しいから仕方ない。
うまいとはいえハトシ、いわば練り物がずっしり入った揚げパンである。二本くらい食べるとごはんいらない。僕が中学生なら毎日これがおやつでよかった。
また別のお店のハトシ。お店によって長さ形が違うが、だいたいどれも同じ味なので安心だ。
これはチーズが入った亜種。
ハトシは明治時代に中国(清国)から伝えられた料理「蝦多士(ハトシ)」からきているのだという。長崎では伝統の卓袱(しっぽく)料理の一品として取り入れていたハトシを、単品でメニュー化したものなのだ。しっぽく料理をちゃんとしたお店で食べようとすると結構高いが、ハトシ単品ならばこうして手軽に食べることができる。
この旅で合計6本のハトシを食べました。
ハトシでおなかいっぱい
長崎に住むライターT・斎藤さんにハトシのことを聞いたところ
「たまに無性に食べたくなる」と言っていた。わかる。
長崎にいる間に食べ過ぎて気持ち悪くなっていたのだけれど、こうして記事を書いているとまた食べたくなってくるのだ。
ハトシ、ローソンで売ってくれないだろうか。