というわけで今回、大根の皮問題が発端となった「皮だけおでん」を作ってみたら、思った以上に嬉しい気づきを得ることができました。以下、箇条書きで。
・大根の皮、捨てずに鍋へ
・おでんに鶏皮、今後は必須(ただし少量でも良さそう)
・ワンタンってなぜおでんだねの定番じゃないの?
・そもそもこれはおでんなの?
家でおでんを作ろうと大根を桂剥きしているとき、いつも思います。「この皮、捨てるのもったいないな」と。
そこで、皮は取っておいて、おでん作りを終えたあとにキンピラなどにするわけですが、それはそれで美味しいながらも、ひと手間ではある。時間に余裕のあるときはいいけど、そうでもないとやってられない。そこで先日、ふと思い立って、本体の大根と一緒に皮のほうも鍋にほうりこんでおいたんですね。そしたらこれが、本体よりうまかった!
そこで、大根に限らずいろんな皮だけでおでんを作ってみたらどうだろう? という実験をしてみた結果、得た気づきについてご報告します。
そもそも「おでん」って、我々酒飲みにとっては、鬼門ともいえる、ちょっとやっかいな料理です。
「酒のつまみとしてベストなのか?」と聞かれればそうとも言いきれない。「ごはんのおかずになるか?」と聞かれても明言できない。「では嫌いなのか?」と聞かれれば、もちろんそんなことはない。また、関東風や関西風、静岡おでんに沖縄おでん、味や特徴も幅広すぎてひとくくりにできない。大阪でおでんのことを「関東煮(かんとだき)」と呼んだりするからさらにややこしい。
しかもですよ、「じゃあどのおでんだねがいちばん好き?」と聞かれて「ちくわぶ!」と答えると「あんなものは認められない」と怒りだす人がいたりする。そう、おでんをいっそうややこしくしているのが、無数に存在する「好きなおでんだね」問題なのです。
なので、今からする僕の発言が、多くの人を敵に回す可能性のあるものだということはわかっているんです。それでも自分の心に嘘をつくことはできないので、言います。
実は僕、「おでんの大根と練り物にあまり興味がない」んですよね。
「えー! あのおでん界の二大巨頭に? じゃもう、食うなよ、おでん!」という読者の方の声が今にも聞こえてくるようですが、あくまで個人的趣味嗜好だからこればっかりはしかたない。なのでけっきょく、偏った好き勝手な具材を入れて作る「家おでん」が、何も考えずに楽しめていちばん好きだったりします。
とはいえ大根、家族は好きだし、体にもいいだろうし、基本的には家のおでんに入れること、多いです。で、冒頭の皮問題にいつも悩まされていたというわけ。
そこで今回は、最初っから「皮が主役!」という意識で、作っていきたいと思います。
これもそのまま入れちゃいましょう。
ちなみに、皮だけのおでんを作ろうとすれば、必然的に「本体はどうする?」問題が浮上する。というわけで、鍋を2個用意し、「皮だけおでん」と「普通のおでん」の2種類を作っていくことにします。
好きな具しか入れないから真っ白になりがち。
ちなみに我が家のおでんは基本、具材を煮込んだ鍋に市販の「白だし」を味加減を見ながら適量加えるだけ、という雑なものなので、今回もその作りかたで。ダシは各食材から出るし、それでじゅうぶん満足できます。旨味が強い、鶏の手羽先や手羽元を入れるのが個人的なポイント。
この時点では、「京料理」と言われても「貧困」と言われても納得してしまいそうな不思議な雰囲気をかもしだしていますね。
ここに、用意した以下の「皮食材」を加えていきましょう。
・鶏皮
・ワンタンの皮
・肉まんの皮
・あぶらあげ(餅巾着の皮と考え)
あと、なくてはならない「玉子」に関してはどうしようか。まさかむいたカラを入れるわけにもいかないし……。と考えた結果たどりついたのが、
・皮蛋(ピータン)
もちろん理由は、漢字表記に「皮」の文字が入っているから。
今回はいいダシの出る鶏手羽が入れられないので、代わりに鶏皮を入れてみることにしました。煮立った鍋にさっそく投入すると、
いきなりおでんって感じじゃなくなってますね。そこにあぶらあげも加え、残りの食材はあまり煮込みすぎるのもよくないだろうと判断し、一晩寝かせます。
このスープをちょっと味見してみて驚いたんですが、これがいわゆるおでんとは方向性が違うものの、めっちゃくちゃうまい!
鶏料理に自信がある居酒屋とかに行くと、たまに具なしの「鶏スープ」がサービスで出てきて、「いろいろ食べたけど、けっきょくこれがいちばん美味しいねぇ」なんつって帰ることがありますが、そういう系のスープ。え、鶏皮、めっちゃいいダシ食材なのでは……。
豆腐は本家から拝借。
さて翌日、残りの皮食材を加えていざ実食といきましょう。
ただ、ピータンがちょっとこわい。ピータンを煮込んだ経験がないので、鍋に入れてどうなるかわからない。煮立った鍋にポチョンと落とした途端、ジュワッと溶けてしまって、鍋が一瞬で漆黒の闇に包まれたりしないだろうか。そんな心配もあって、いったん皮だけおでんの鍋からスープ適量をさらに新しい鍋に移し、
を作りました。ここにラーメン入れたら絶対うまい。けれども、
しばらく火にかけてみますが、溶けてしまうということはありません。スープの味もぜんぜん大丈夫。
というわけで、
ものすご~く後ろめたいことをしている気になりましたが、取り出した肉まんの具はご飯のおかずにしたら不思議な美味しさでした。
で、なんだかこっちの鍋のほうが収まりがいいようなので、ここに分家から大根の皮をはじめとした具材を引っ越しさせてきまして、
あらためて全容を眺めてみましょう。
なんだろう、この見慣れぬ感じ。中国のどこかの地方の薬膳料理といわれれば信じてしまいそうではありますね。
さっきの「おでん論」に戻りますけど、そもそもですね、僕、おでんの大根ってちょっともてはやされすぎだと思うんですよ。世間的に。「おでんは大根につきる!」「ジュワッと味の染み込んだ大根が何よりの主役!」なんてセリフをしばしば聞きますが、うん。嫌いじゃない。嫌いじゃないけれども、僕は、ちくわぶや豆腐やジャガイモや厚揚げやウインナーのほうが好き。なんならコンニャクのほうが好き。
そんな僕の超個人的感想というのが大前提ではありますが、大根の皮、やっぱり本体よりうまい!
なんていうか、外側の皮面に、まだ若干の「ハリ」が残っているんですよね。それでいて、内側はジュワッと柔らかいいつもの大根。なので、いわゆる普通の大根よりも、食感が楽しい。味も本体より濃いような気がします。
ちなみに、試しにひとつ、こんなものも用意しておきました。
これまた、皮目と内側の食感の違いは楽しめるんですが、本体部分の体積が大きすぎて少々アンバランスな印象。皮だけ、本体、どちらと比べてもちょっと中途半端かもしれません。
煮込み続けてふわっとろっとしたその身に、鶏皮の旨味たっぷりの黄金スープが飽和状態まで染みこんでいる。至高です。
とろとろの具なしワンタンをすすりこむと、鶏皮の旨味たっぷり黄金スープの旨味が口いっぱいに広がる。究極です。おでんにワンタン、いいな。
スープをたっぷりと吸っていて、箸でつかもうとすると崩れてしまい、原型を保とうという意思が感じられません。また、肉まんの皮ってこんなにも味が濃かったんだな、というのも再発見。口に入れた瞬間、スープどうこうよりも「肉まんの味!」と主張してきて、美味しくなくはないけど、おでんに入れる必然性はないかも。って、もともと肉まんだったものを解体しておいて勝手に言われても、本人としてはいい迷惑!
しばらく煮込んであるにも関わらず、ただ温まっただけの、つるっつるのピータン。その頑固さはコンニャクに近いものがありますね。おでんには入れず、ピータン豆腐などで味わうのが吉。
それから鶏皮。今回は鶏皮だけが100グラムくらい入ったパックを買ってきて入れたのですが、ちょっとつまむぶんには美味しいんだけど、量が多すぎてそのまま消費し続けるのは無理がありました。
そこで、最近、本来の用途に限らず、あれこれ料理に使ってみるのにハマっている「ホットサンドメーカー」に、おでん鍋から取り出した鶏皮をブロッコリーと一緒に詰め込み、
みたいな感じで食べたほうが美味しかったです。やっぱり鶏皮の醍醐味はカリカリ感。おでんにおける鶏皮は、あくまで「ダシ」と考えるのが良さそうかも。
そして3日目の朝、絶対にやってみたくて、最後の皮おでんスープに市販の中華麺を投入。
を作ってみました。卵は本家から拝借。
これが、もっと鶏白湯スープのラーメンみたいになるかと予想していたら、意外とおでん味。3日目にして全体的に味が落ち着いてしまったのと、大根の風味がかなり「おでん感」に強く影響を及ぼしているよう。
鶏皮ダシのラーメンは、またあらためて作ってみようかな。
というわけで今回、大根の皮問題が発端となった「皮だけおでん」を作ってみたら、思った以上に嬉しい気づきを得ることができました。以下、箇条書きで。
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・おでんに鶏皮、今後は必須(ただし少量でも良さそう)
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