特集 2019年4月8日

富山湾の光る宝石、ホタルイカを捕まえたい 2018-2019

こんなに綺麗で美味しい生き物が、地球上から網ですくえるってすごくないですか。

春になると富山湾の深海部から、ホタルイカが産卵のため浅いところまでやってくるのだが、ある条件が重なると砂浜や堤防から網ですくえるほど寄ってくる場合がある。

真夜中のホタルイカすくい、これが富山の地元民にとっては一大レジャーとなっているそうで、それ絶対楽しいやつでしょ!と、私も2009年に参加させていただいた(こちら)。

こりゃ毎年行かなければと思う楽しさだったものの、私の住む埼玉から富山はそれなりに遠い。なかなか休みとやる気の波が合わず保留となっていたのだが、昨年また私の中のホタルイカ熱が再燃した。昨年と今年で4回通った記録をどうぞ。

趣味は食材採取とそれを使った冒険スペクタクル料理。週に一度はなにかを捕まえて食べるようにしている。最近は製麺機を使った麺作りが趣味。

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9年振り2度目のホタルイカ捕りへ

こういう不確定要素の多い遊びは行かなくなるとまったく放置してしまうが、行き始めると何度も通ってしまうもの。昨年はホタルイカの爆沸きとやらを見てやろうと、短期間に富山へ3回も通ってしまった。

その第1回目は3月31日。金曜の夕方に家を車で出発し、そのまま富山湾へと直行した。北陸新幹線の開通で、私の住む埼玉からも俄然近くなったと評判の富山だが、車で行ったのでその恩恵は特になかった。相変わらずの片道7時間コースである。

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富山県滑川市にあるサービスエリアの公衆電話がホタルイカだったので幸先良し。大きいけどダイオウイカではない。

ホタルイカすくいのシーズンは春。年によって変わってくるが、だいたい3月下旬からゴールデンウィーク前くらいまでがチャンスらしい(この時はそう思っていた)。私が行った日こそがきっと今年初の大漁デーだ。

ホタルイカがきっと沸く、そのワクワク感が私を富山まで走らせるニンジンである。

静かすぎる月夜の海

富山湾へとやってきたのは午前1時。予定通りに到着し、予想以上に気が高ぶっている。

まずは前回、といっても9年も前なのでデータとしてはまったく当てにならないが、私が一匹目をとった記念すべき海岸でウェーダー(腰まである長靴)を履く。

爆沸きを期待するポジティブな気持ち、食べる分くらいは捕りたいという現実的な気持ち、一匹でも見られれば御の字という謙虚な気持ち、ここまで来てゼロだったらという不安な気持ち、様々な想いがさっきからずっとランダムに込み上げてきている。猛烈に情緒不安定だ。

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海岸は風もなく穏やかだが、人があまりいない。

海岸付近の駐車場に止まっている車の数はまばらで、ホタルイカを狙う人の数はポツリポツリだった。それも海に入らずに待機している人のほうが多い。

現在のホタルイカすくいは情報戦。携帯電話とSNSが当たり前のインフラとなったことで、地元民ならわざわざ自分で確認しに行かなくとも、知り合いの誰かしらからホタルイカの情報が回ってくるため、当たり日の海はものすごい混雑となるのだとか。

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7時間かけてやってきた砂浜で海面を照らす。そこにあるのは無だけだった。

ガラガラの海ということで期待薄なのはわかっている。でも近未来の情報を知る術はまだ開発されていない。今この瞬間からホタルイカが接岸するのではと勝手な期待をしたのだが、結局この日は夜明けまでずっとハズレだった。

まったく、ぜんぜん、ちっとも、一匹もホタルイカは泳いでいなかった。やる気だけではどうにもならないことがあるんだと、富山の海は教えてくれた。そんな教え、いらないのに。

ダメすぎた一番の理由は、頭上で輝くまん丸のお月様だろう。ホタルイカが接岸するためには、「月の出ていない暗い夜」という大切な条件があるらしいのだ。

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見事な月夜。苦し紛れにツイッターを検索したけど有益なホタルイカ情報は得られなかった。

夜になると産卵のために真っ暗な深海から上昇してくるホタルイカは、海面が暗ければどんどん上がってくる。逆に月明かりを感じれば途中で浮上をやめるため、網ですくえるようなところまで接岸してくることもないのだ。

これは満月の夜だとわかって来た私が悪い。正直こんな事態も覚悟してはいたのだが、お月様が厚い雲に隠れて一発逆転という未来を信じたのだ。

月明かりが憎いと思ったのは、生まれて初めてかもしれない。せめて一匹くらいはいると思ったのだが、甘かった。

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獲物はリリースしたカニ一匹。

理論武装でホタルイカに挑もうじゃないか

大丈夫、1日でダメだったら2日粘ればいいだけの話。そのための金曜出発だ。わずか1日のずれで結果が大きく変わるのが自然相手の遊びである。昨夜と条件が変わらなければ結果も同じという不安はあるが。

悔し涙で枕を濡らした仮眠から目を覚ましたところで、夜のホタルイカタイムまでの時間つぶしに、滑川市にある「ほたるいかミュージアム」へとやってきた。ここも9年振りの訪問だ。

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ホタルイカの記述がひらがなだったりカタカナだったりで落ち着かないが、それが日本語だよなと思った。

ホタルイカは情報戦といったが、情報には外部から収集するデータと、内部に溜め込んでおく知識がある。

敵を知り己を知れば百戦危うからず。ホタルイカをすくうための環境条件を変えることはできないが、ホタルイカの知識を増やすことで、その距離を縮めて勝率を上げることは可能なはずだ。

このミュージアムに集まっているホタルイカの情報量は日本一。そこには捕まえるための有益なヒントもたくさんあるのだ。

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接岸しすぎて打ち上げられた状態を「ホタルイカの身投げ」と呼ぶ。これがどうしても見たいのよ。
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やっぱり満月はダメかと絶望的な気持ちになる。
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いやでも月が雲に隠れればチャンスがあるのだという希望も!
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ホタルイカは食べられる天然記念物。一般人が網などで捕ることも、港や海岸にゴミを捨てたり迷惑駐車をしないかぎりは許容されている。

こうしてホタルイカの知識を増やした訳だが、日にちを選べる状況下でなければ、実はあんまり意味はない。どんな状況でも今晩行くしかないんだもの。それでも、なぜ富山湾でホタルイカが沸くのか、なぜこの条件だと沸くのかなど、詳しく知ったうえで捕ることで、その充実感は何倍にもなるはずだ。

ホタルイカのタッチプールというのがあったので、ここで実物を触っちゃうと今夜予定されている9年ぶりの再開の喜びが薄れるかもと思いつつ、イメトレも大切だよなと迷いつつもタッチ。

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いま会いにいけるホタルイカ。

その透き通る体を掌ですくった瞬間、小さな口で甘噛みしてくるこの感じ、そしてライブ会場のサイリウムのようにはっきりと光る腕で威嚇してくるこの姿、あー、懐かしい。

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アイシャドーが光っていてかっこいい。

噛まれるとまあまあ痛いよ。

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かわいがった上でホタルイカのフライをいただく。なんかごめん。

さらには真っ暗な空間で大型水槽に放たれたホタルイカを網で引き揚げる、この時期だけの発光ショーを観覧し、もうかなり満足してしまった感があった。

おとなしく温泉でも入って帰るかという選択肢もあるが、すべてが今宵訪れる大漁へのプレリュードだと信じたて夜を待つ。

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昼飯の回転寿司でもホタルイカ。心のどこかで自力採取をあきらめているのは否定しない。
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ホタルイカの天ぷらがうまかった。
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そして回転寿司屋に貼ってあった富山湾からのメッセージ。ですよねー。
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