特集 2023年10月24日

できてる仕草だけで出し物は成り立つか

できるのか!?

切り紙、ルービックキューブ、フラッシュ暗算…。そういう特技を披露する時に大事なのは、出し物ごとにある「できそうな仕草」である。

これがすごく大事だ。むしろこれだけでいい。

1987年東京出身。会社員。ハンバーグやカレーやチキンライスなどが好物なので、舌が子供すぎやしないかと心配になるときがある。だがコーヒーはブラックでも飲める。動画インタビュー

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「できる」と「できてる仕草」は別

ルービックキューブをそろえられる人になりたいと思い、解説のサイトを見ながらやってみた。

できた!(手は子どもの)

キューブの中で何が起きているのか全然分からなかったが、とにかく説明通りにやったらできた。

ついに憧れの「ルービックキューブをそろえられる人間」になれた。しかし見える景色が変わらない。あのクレバーで、器用そうな雰囲気が僕に無いのだ。

口笛でも吹きながら指先だけでキューブをカチャカチャ回してポイっと完成させたいのに、その気配が全くない。「できる」ことと「できてる仕草」は別なんだ。 

仕草だけやってみよう

結果に至る過程がスマートでないと見てられない。つまり「できてる仕草」が大事なのだ。

いや、むしろ仕草こそが大事、結果はどっちでもいいのではないか。

「?」の部分を確かめたい

できてる仕草だけで出し物は成り立つのではないか。試してみよう。

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演目1.紙切り

ちょうどデイリーポータルZの集まりがあった。出し物を用意したので見てくださいと声を掛ける。

お話し中すみません

仕草だけ行うことは説明してない。しなくても大丈夫だろう。仕草だけで満足できるはずだから。 

落語の出囃子のBGMをかける。そういう雰囲気づくりも大事だと思うので
最初なので自分でお題を決めさせてもらった。「ハロウィン」です

事前に紙切りの動画をいくつか見て仕草を勉強した。意識したのは以下の点である。

  • 体を揺らしながら切る(でも立って切る場合はそこまで大げさに揺れなくてもいい)

  • 途切れないようにおしゃべりをする

  • 紙を回しながら細かく切る

うまい紙切りのポイントではない。紙切りができてそうな仕草のポイントである。これを、堂々とやる。

この仕草を自信満々にやったら、めちゃくちゃに切った紙でも何かができたように見えるかもしれない。

「死者の魂がこの世に帰ってくるからっていうのがハロウィンの仮装の起源らしんですけれども」
「それって日本のお盆とちょっと似てるんですよね。だから日本でハロウィンを祝うとご先祖様が二往復することになってしまう」
「そんなに頻繁に呼ぶんだったら親族でも交通費ぐらい払ってやらねえといけませんね」
みんなの笑顔

準備してきた話をする。成果物への期待感もあり、いい雰囲気だった。でも僕だけは知っている。見せたいのは今ここでやっているこれであって、成果物は無いのだ。

始めて2分ほど。話が終わったので紙も切り終えた。

「そんなお話でございました。そして、こちらがですね」
「ハロウィンの話をしながら切った紙、でございますね」
「ありがとうございました」
あ、笑顔だ…!

感心ではなく「ズコー」となっている。でも笑っているからいいじゃないか。

皆さんからは「あの人どういう感情なの?」「心理テスト?」「気持ちが強い」と好評だった。 

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皆さんが優しいだけなのでは、と一瞬思ったが、これは優しい気持ちになれる出し物だ、と言い換えることもできる。

誰かが何かを頑張っている。何もできなかったとしても。

お題くれた人にあげるやつもやった
この後、松本さんが「よく見るとイチョウの木の根に見えるね」とフォローしてくれたが、
「違います。これは【イチョウの話をしながら切った紙】です」と突っぱねてしまった

 出し物の様子、動画でもどうぞ。BGMを止めてもう一回やった時のものです。

(こんな感じであと二つ出し物をやります。そしてデイリーポータルZには、編集部の藤原さんが作っている仕草だけの手品の動画シリーズもあります。併せて見てください)

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お題をもらってもう一度

何かを作る気がない、とバレた後はどうなるだろう。お題をもらってもう一度やった。

ライターのりばすとさんに「イチョウ」というお題をもらう
形が分かりやすい。しかし絶対にイチョウは切らないぞ、という強い気持ちで始める

突然出されたお題で数分しゃべる練習もしてきたのだ。銀杏は踏んだら臭いから、そうなる前にみんなで拾おうよ、という話をした。

「しゃべりが薄い」という心ないヤジが聞こえた。江ノ島さんだった

ヤジに動じるのはできてる仕草ではない。薄いまま堂々としゃべっていた。 

「そして、そんなお話をしながら切ったこちらがですね」
「イチョウの話をしながら切った紙、でございますね」
「ありがとうございました」
拍手をもらいました

⏩ 撮影の現場でもこれ記事になるのか?とざわついた本企画、2ページ目へ!

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