たまごは偉大
当たり前のことなのだが、今回改めてたまごってすごいと思った。焼いても茹でても、生でも熱々でもおいしくて、こんなに万能な食材はほかにないのではないか。
もし死ぬまで一種類の食材しか食べれないとしたら、私だったらたまごを選ぶと思う。
なので、ヴィーガンの人がゆで卵が恋しくなる気もよく分かる。
ヴィーガン棒たまごが、ゆで卵ロスを埋めてくれると良いと思う。
ツイッターでこんなのも見つけた。世の中は知らないことだらけだ。
世の中には、ロングエッグと呼ばれる業務用の長いゆで卵が存在する。
ドイツでは近日、そんなロッグエッグのヴィーガン版が売り出されると噂に聞いた。
ロッグエッグのヴィーガン版? あまりにも興味深い。発売される前に自分で作ってみた。
長いゆで卵と言う不思議な食べ物をご存知だろうか。
日本では「ロングエッグ」などの名前で知られている業務用商品で、棒状に加工されたゆで卵のことを言う。簡単に言えば金太郎飴式ゆで卵だ。
私の住むドイツでは「Stangenei(棒たまご)」と言う名前で知られているものなのだが、ケータリングや食堂などでサンドウィッチに挟んだりデコレーションに使われたりしているようだ。
この「棒たまご」と言う響きがとても好きなので、この記事では長い棒状のゆで卵のことを「棒たまご」と呼ぶことにする。
この棒たまごがいつどこで誕生したのかは不明だが、デンマークの大手たまご会社 DANÆG のウェブサイトによれば、1973年に初めて棒たまごを販売したとあったので、1970年代には確実に世に存在していた様子だ。
殻を剥く手間も省ける上、常に黄身がきれいに中心に来ているので、黄身の入っていない端っこの部分もない。
また黄身がしっかり白身に張り付いているので、スライスする際に黄身が剥がれ落ちてしまう恐れもない。
なんと画期的な商品なのだろう。
で、それがどうしたって話だが、数年前に棒たまごの存在を知ってからずっと憧れていたのである。
その憧れのきっかけとなった動画が、こちらだ。
ドイツの人気子供番組「だいすき!マウス」である。
この番組ではたまご工場で棒たまごが作られる過程が紹介されているのだが、たまごがどんどこ割られ、加工されていく様子は、ドイツ語がわからなくても十分楽しめる。
そして私の好奇心をくすぐったのが、このシーンだ。
棒たまごの作り方を、細長いビーカーとパイプを使って再現してくれていたのだ。
よく見てみると、なるほどそんなに難しいものではないみたいだ。
これなら自分でも作れそう!絶対いつか作ってみようと心に決めたものの、特に作るきっかけもなく数年が過ぎた。
ところが先月、友人と棒たまごの話をしていたら、彼女がこんなことを教えてくれた。
ヴィーガン版の棒たまご?!なんだそれ!
展開があまりにも激しいので、少し話を戻そう。
ヴィーガンとは、日本では完全菜食主義と訳されることが多く、動物性食品を食べない、動物性製品を消費しない主義の人を示す。
ごく最近始まった活動かと思っていたが、実は1944年からある言葉だそうだ。
2020年に行われた調査によるとドイツの人口の約3.6%がヴィーガンだそうだが、ヴィーガンの食生活では肉や乳製品以外にも、たまごも動物性食品なので避けることになる。
しかし、そんな食生活を続けているとたまご料理が恋しくなることもある。そんな人のために、世の中にはすでに様々な代替卵商品が存在する。
日本でも代替卵商品が登場している。見た目はたまごそのものだ。すごすぎる。
そしてつい最近、ドイツでは「ヴィーガンだけどゆで卵が食べたい!」と思う人のために、ベルリンのヴィーガン食品会社「Veganz(ヴィーガンズ)」が植物性茹でたまごを開発中であることを発表したのである。
それも、一つ一つを卵の形に整形せず、棒たまごの概念を活かして金太郎飴式のヴィーガンゆで卵を作っていると言うのだ。
開発中のヴィーガン棒たまご。よく見ると練り物っぽさもあるが、パッと見たところではたまごにしか見えない。
工業製品化された不自然な加工食品である棒たまごと、自然保護を目的とするヴィーガン文化の絶妙なコンビネーションである。一見矛盾しているようだけど、理にかなっている気もする。
よし、これを家で作ってみようじゃないか!
まずはお手本となる棒たまごを、業務用スーパーに買いに行った。が、巨大な倉庫型の業務用スーパーで特定の商品を見つけるのは至難の技だった。
お店を探し回ること小一時間。冷凍食品売り場の冷凍ピザの隣に棒たまごを見つけた。
ついに、念願の棒たまごを食べる時が来た。
棒たまごを手に、今回撮影を手伝ってくれる友人ジュンシェンのスタジオへ向かい、一緒に棒たまごを開けてみた。
本物のたまごでできてるはずなのに、なんだかニセモノっぽい味がするのだ。
匂いは間違いなくゆで卵なんだけど、味にはほんのり酸っぱさがある気もする。材料を確認すると、卵黄と卵白以外にもクエン酸とでん粉が加えられているらしい。
また加工と冷凍のせいか食感もゴムっぽい。そういう練り物だと言われればまあ食べれなくはないのだが、たくさんは食べたくない。ちょっと残念である。
よし、本物を確認できたので、次は本気のニセ物を作ってみよう。
ヴィーガンゆで卵というものはすでに世界中で色んな人が作っているものらしく、レシピを見つけるのは難しくなかった。
レシピを見ていくと、こんな感じのシリコンのたまごの型を使ってヴィーガンゆで卵作っている人が多い。
ただ今回は棒状のゆで卵を作るために細長いビーカーを用意したので、液体っぽい状態で流し込める「卵白」と「卵黄」のレシピを選んでみた。
まずは、卵白。有望なレシピが2つあったので、今回は両方試してみることにした。
卵白レシピは、両方とも材料を全てミキサーにかけ、火にかけて沸騰してきたら型に流して固める、と言うシンプルなものだ。豆腐と豆乳の寒天ゼリーを作るような感じである。
一方、卵黄の方はねっちりしているので液体のように流し込めるようなレシピがあまりなかったが、一番液体っぽいこちらのレシピを使うことにした。
卵黄のレシピでは、Aの材料をミキサーにかけている間に、Bの材料を鍋に入れて軽く沸騰するまで加熱する。沸騰したらBをAに加えて一緒にミキサーにかけるだけである。
これでレシピと材料の準備は整った。早速試してみよう。
まず、後でたまごが出てきやすいようにビーカーに油をぬる。
レシピ1では、材料全てをミキサーにかける。
今回初めてブラックソルトというものを買ったのだが、これはヒマラヤの黒い岩塩でヴィーガンたまごに硫黄の香りを加えるためのものらしい。
乾燥した状態だと匂いがしなかったブラックソルトだが、液体と交わるとすごい硫黄の匂いがするようだ。スタジオに巨大なおならが放たれたようで、笑うしかなかった。
気を取り直して液体を鍋で加熱する。不思議なことに、加熱すると強烈な硫黄臭さは消えていった。
これで2種類の卵白ができた。とりあえず、1時間ほど冷やして固めてみよう。
卵白が固まったっぽいので、ここで中心に挿していた試験管を抜く。
せっかちな性格なのでこの時点で試験管を抜いてしまったが、本当はもう少し硬くなるまで待った方が良かったのかもしれない。
次に、この空洞部分に入れる卵黄部分を作る。
卵黄のレシピでも初めて見る材料がいくつかあった。例えば、この栄養酵母ことニュートリショナルイースト。
ニュートリショナルイーストとは、酵母を発酵させ、加熱して乾燥させたものだそう。お店で買うニュートリショナルイーストは、パラパラしたフレーク状態である。
チーズやナッツに通じる味がするため、ヴィーガンレシピではチーズなどの動物性旨味成分の代わりに使われることが多い。直接ふりかけたり、ソースなどに加えても良いそうだ。
レシピのニュートリショナルイーストは、黄身に旨味を与える役割を果たしているのだろう。
もう一つ、呪文のような材料だったのがグアーガム。
グアーガムは、インドなどで採れるグアー豆から作られる食物繊維で、増粘剤として幅広い食品で使われているそう。全く聞いたこともないものだった。
レシピではほんの少量しか使わないのだが、これが黄身に粘りを与えているようだ。
同時に、レシピの(B)の材料を火にかけ、軽く沸騰させる。
あとは冷蔵庫で固めれば、包丁で切るだけだ!
いよいよ、一晩冷蔵庫で寝かせた棒たまご達をシリンダーから取り出す時が来た。
予定より柔らかくできてしまったが、見た目は十分ゆで卵っぽい。早速味見してみよう。
棒たまご自体にあまり味付けをしていないので、柔らかーい豆腐味の何かを食べているようだ。もうちょっと弾力が出るように工夫すれば悪くはないかも。
しょうゆをつけて味は良くなったが、やっぱり食感がなさすぎるのが問題なようだ。
もう少し固めに作って、たまご自体に味をつけたらもっとおいしくなると思うが、ゆで卵とは程遠い食べ物である。でも正直、冒頭で紹介した本物の棒たまごよりはおいしいかった。
とにかく、私はもう自家製ヴィーガン棒たまごはお腹いっぱいだが、今度はお店でヴィーガン棒たまごが売り出されたら買ってみようと思う。
当たり前のことなのだが、今回改めてたまごってすごいと思った。焼いても茹でても、生でも熱々でもおいしくて、こんなに万能な食材はほかにないのではないか。
もし死ぬまで一種類の食材しか食べれないとしたら、私だったらたまごを選ぶと思う。
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