特集 2018年11月22日

うなぎ屋のまかない食べ歩き

まかないがうま過ぎるのでうなぎ屋に就職したい

飲食店で働くメリットのひとつに“まかない付き”がある。

わたしもレストランや宿泊施設で働いていたことがあり、その時は毎日おいしいまかないをありがたく頂戴していた。

これが高級食材を扱う飲食店だったら、どんなまかないが出るのだろう。

気になる飲食店の中から、今回はうなぎ屋のまかないを食べ歩き、ぜいたくな気分に浸ってきた。

1988年静岡生まれ・静岡在住。平日は制作会社勤務、休日は大体浜名湖にいる。
ダイエット目的でマラソンに挑戦するが、練習後温泉に入り、美味しいものをたらふく食べるというサイクルを繰り返しているため、半年で10kg近く太る。

前の記事:あのアイテムはうちの地元だけ!?~ローカルスクールアイテム大募集~


うなぎ屋はまかないで、うなぎを食べる

そもそもうなぎのような高級食材を、うなぎ屋は自分たちのまかないとして食べるのだろうか。

店で買うと1尾2,000~3,000円はするし、食べたいと思って気軽に食べられるものでもない。もしかして、「うなぎは売り物。まかないとして食べるなんてとんでもない」なんて世界では…

本当にそうだったら、うなぎ屋に就職すればうなぎが毎日食べられると思っていた自分が恥ずかしい。

うなぎ屋はまかないでうなぎを食べるのか?
以前パンダみたいなうなぎ・パンダうなぎを見せてくれた天保養魚場のご主人に聞いてみた。

 

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浜名湖観光で訪れる人も多い天保養魚場。うなぎ料理を食べるだけでなく、うなぎ料理になれる顔出しパネルがあるのも魅力のひとつ
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お話を聞かせてくれたのは、CEOの山下昌明さん

鈴木
「しょっぱなからなんですが、うなぎ屋さんはまかないでうなぎを食べるんですか?」

山下さん
「はい、食べます」

鈴木
「食べるんですか!!!(よかった~~~!!!)どんな風に食べるんですか?」

山下さん
「普通に蒲焼にして食べます。でも、自分たちで食べるのはお客さまには出せない弱っているうなぎとか、大きくなり過ぎたうなぎなので、お店で食べるものとはちょっと違うと思います」

鈴木
「どう違うんですか?味が変わるんですか?」

山下さん
「うなぎはやはり鮮度が大事で、弱っているうなぎだと開いて焼いても縮まらないんです。いいうなぎだとキューッと縮んで肉厚になっておいしいんですが、弱っているうなぎは縮まらず薄肉のまま。スーパーでいいうなぎを買いたいなら、肉の厚さを見てください。新鮮なうなぎは、肉厚です」

鈴木
「ひぇ~初めて知った!!勉強になります!!大きくなり過ぎたうなぎも、味が劣るんですか?」

山下さん
「大きくなり過ぎたうなぎは味が劣るというより、小骨がきつくなったり、皮が厚すぎたりして、商品価値が下がります。自分たちで食べるのはそんなうなぎなので、子どもの頃は家でも出たんですが(山下さんは2代目)うなぎは嫌いでしたね。」

鈴木
「ということは、山下さんのお子さんたちも…?」

山下さん
「はい、3人いますが、3人ともうなぎ嫌いでした」

鈴木
「嫌いなものがぜいたく!!!」

山下さん
「ちなみにわたしが子どもの頃は母が弁当にうなぎを入れてくれて、それは好きでした。学校へ持って行くと、周りの友だちが羨ましがってから揚げや玉子焼きと交換してくれるから」

 

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うなぎ<<<<<から揚げ・玉子焼き

まかないを食べたいなら「ボクめし」がおすすめ

山下さん
「弱っているうなぎや大きくなり過ぎたうなぎをお客さまに出すことはできませんが、『ボクめし』というまかないがルーツのメニューがあります。
ボクめしは、昔養鰻場で働く池番※のまかないとしてできたもので、ぶつ切りにしたうなぎと薄く切ったごぼうを甘辛く煮てごはんと混ぜて食べます」

※池番…養鰻池を管理する人

鈴木
「僕、飯…?」

山下さん
「ボクめしの『ボク』というのは、大きくなり過ぎたうなぎ『ボクうなぎ』の『ボク』です。うなぎは、シロコ→クロコ→ヨウチュウ→ヨウダイ→チュウボク→オオボクと大きくなっていくんですが、このチュウボク・オオボクのことを『ボクうなぎ』といいます。
ボクうなぎは人の腕くらい太くなってしまったうなぎで、先ほどもお伝えしたように小骨や皮がきつく商品価値が低いため、まかないの材料になりました」

 

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ボクうなぎは昔は通常の約3倍、今も約1.5倍はあるそう…喧嘩強そう!

山下さん
「お店で出しているボクめしは白焼きにしたうなぎをごぼうと一緒に煮てるんですが、本来はぬめりをよく取って、生のままぶつ切りにしてごぼうと煮込むんだそうです。そうすると身がほっこり煮あがって、ほろほろした食感が楽しめます」

鈴木
「白焼きは焼いてあるので、それはそれで香ばしさも残っておいしそうですね。ルーツがわかったので、あとは食べて確かめるほかありません。ボクめしを1つお願いします!!」

甘くて優しい味~天保養魚場のボクめし

まかないとして昔から受け継がれてきたぼくめしを、早速いただくことにした。

 

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うなぎ重(並)は3,300円なので、それに比べるとボクめしはリーズナブル

 

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調理している様子を見させてもらおうと思ったら、気づいた頃にはほぼほぼできていた。できるスピードの速さもまかないならでは…?

 

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じゃ~~~ん!!こちらがお待ちかねのボクめし丼
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 錦糸卵や大葉が入っているので彩りもきれい

 

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メニューに書いてあった通り、おさじでガツガツ掻っ込ませていただいた

みりんと錦糸卵のおかげか、ほんのり甘く優しい味だった。
ごぼうは元々うなぎの臭み消しのために入れられていたそうだが、このシャキシャキ感もいいアクセントになっている。

うなぎも予想以上に入っていて、食べ応えも満点!!

「うなぎが食べたいけど3,000円超えは厳しいな…」というお財布事情の時にはピッタリだ。

山下さんいわく、ボクめしは養鰻場のお母さんたちがそれぞれの味で作っていたものなので、場所によって味も変わるのだそう。
せっかくなので、ほかのうなぎ屋のボクめしも食べ歩くことにした。

2件目でつまずく

静岡県浜松市には多くのうなぎ屋があるが、探してみるとボクめしをメニューとして置いているところはかなり少なかった。

天保養魚場の次は、リーズナブルな価格でうなぎを楽しめると評判を聞いた、湖西市新居町にある舟宿といううなぎ屋へ向かった。

ボクめしはこの新居町で生まれたものだそうだ。発祥の地ならではシンプルなボクめしが味わえるのではないか。

期待に胸を膨らませて向かったところ…

 

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惜しまれつつ閉店していた(写真は元店舗)

ナビに従い目的地周辺をグルグルしても一向に舟宿らしき店は見つからず、近所の方に聞いたところ「舟宿さんはねぇ~辞めちゃっただよ!」とのこと。う~ん、残念!!

せっかく新居町まで来たので、近くにあった国指定特別史跡・新居関所で写真を撮ってその場を去った。

 

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全然関係ないけど、めちゃくちゃいい天気じゃないですか?

蒲焼のたれ好きには最高~中ノ庄のボクめし

出張や移動で浜松駅に立ち寄るついでにサクッとボクめしを楽しみたい!という方は、駅近の中ノ庄がいい(なんならわたしも出張へ行く前ここで腹ごしらえしていきたい)

 

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落ち着いた佇まいに思わず財布の中身を再度確認したが、価格設定は良心的だった

 

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ボクめしのセットを頼むと付いてくるうなぎ骨せんべい。このうなぎ骨せんべいが手が止まらなくなるほどうまく、店の在庫を全部買い占めたくなった

うなぎ骨せんべいのうまさに震えていると、ほどなくボクめしのセットが運ばれてきた。
こちらが中ノ庄のボクめし。

 

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ひつまぶしのような見た目だが…

 

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ちゃんと薄く切ったごぼうが入っていたので、ボクめしに間違いなし

 

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こりゃたまらんな

中ノ庄のボクめしは甘みが少なく、蒲焼のたれがごはんにしっかり浸透したうなぎ重を食べているようだった。うなぎ重のように白飯ではないので、どこから食べても蒲焼のたれの味がして、蒲焼のたれファンにはたまらない逸品だ。

天保養魚場の後そのまま渡り歩いたのでぶっちゃけこの日二度目のボクめしだったが、ペロッとたいらげてしまった(引かないで)

家で食べられる贅沢~かわべのうなぎのボクめし弁当

ボクめしは元々、池番が短時間でササッと食事を済ませられるようあみ出されたまかないだ。

そのルーツに近い弁当というかたちでボクめしを提供しているうなぎ屋が1件あった。

 

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舟宿と同じ、ボクめし発祥の地・新居町にあるかわべのうなぎ

 

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ボクめし弁当は事前予約が必要だったので、予約して改めて受け取りに行くことに

待ちに待ったボクめし弁当受け取り日が来た。2食続けてボクめしを食べた日から2日しか経ってないが、それでも心待ちにしていた。
 

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待望のボクめし弁当、我が家へ到着

ボクめし弁当は今回食べたボクめしの中で一番素朴な味だった。
うなぎはほろほろ、ごぼうもクタクタになるまで煮詰めてあって、これが昔池番が食べていたボクめしに限りなく近いボクめしではないかと思った。

そして冷めていてもうまい!!
これなら10個食べられる。

合計3つのボクめしを食べたが、それぞれ味やトッピングも違い、それぞれ楽しめて大満足だった。

うちの会社もまかないでボクめし、出ないかな~。


LINEスタンプもうなぎ

天保養魚場の山下さんとLINEでメッセージのやりとりをすると、時々おいしそうなスタンプが送られてくる。

まさにうなぎ屋やうなぎ好きのためのスタンプだ。

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空腹時送られてくるとつらい

【取材協力】

天保養魚場 http://www.unagi-tenpo.com/


 

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