確かにパンダだった
説明は後からするとして、とにかく見てほしい。
こちらが港で噂のパンダうなぎ
わたしたちの知っている従来のうなぎ
もはや別の生き物
このパンダうなぎは、静岡県浜松市にある『天保養魚場(てんぽうようぎょじょう)』で飼われている。
ことの発端はわたしが『浜松経済新聞』という超ローカルな媒体でニュースを読んでいた時、浜名湖のとある施設でパンダうなぎの展示と愛称の募集を行っているという記事を見つけたことだ。
この施設は、地元の養鰻業者にパンダうなぎを譲り受けたという。
どこの養鰻業者かと思ったら、わたしが好きで給料が入ると足しげく通ううなぎ屋『天保養魚場』だった。
突然ですがここで最高のやつを載せておきます(天保養魚場のうなぎ丼)
せっかくなので話を伺おうとしたら、施設に譲ったパンダうなぎとは別のパンダうなぎがさらに見つかり、飼育もしていた。
パンダうなぎって、そんないるの?
10万匹に1匹の逸材
天保養魚場では偶然パンダうなぎが複数匹見つかったが、実際は10万匹に1匹2匹いるかいないかのレアものだそうだ。
そもそも、なぜこのようなパンダ柄になるかが一番の気になるところだが、そのメカニズムは解明されていない。余計気になる。
先天的に色素がうすいアルビノとも少し違うし(目はほかのうなぎと同じように黒いし、からだも真っ白ではないため)、突然変異という言葉で片付けていいものなのかと代表の山下さんはいう。
天保養魚場CEOの山下昌明さん。『CEO』は『ちょいエロおやじ』の略という鉄板ネタと共に自己紹介
天保養魚場にいるパンダうなぎは、養殖しているうなぎの中から山下さんが見つけてピックアップしたものだが、自然界にもパンダうなぎはいる。ただ、ほかのうなぎと見た目があきらかに違うため天敵に狙われやすく、大きく育つことなくいなくなってしまう、悲しい運命だ。
うなぎが餌を食べている様子。養殖池にいるとはいえ、この中から見つけるのものなかなかすごい
施設や天保養魚場で飼われているパンダうなぎは選ばれしパンダうなぎだ(さっきからうなぎの記事を書いているのにパンダパンダとややこしい)
食べられるの?味は?
パンダうなぎが通常のうなぎと違うのは柄だけで、味は恐らく変わりはない。
実はパンダうなぎ以外にも同じような割合で真っ白のうなぎが誕生することもあり、昔から真っ白のうなぎは神様の使いとしてあがめられてきた。
以前天保養魚場にいた真っ白のうなぎ。ウーパールーパー感がある
パンダうなぎは特に神様の使いとは呼ばれていないが、パンダうなぎも、白いうなぎも、気持ち的には正直食べづらい。
従来のうなぎの蒲焼を注文して、パンダうなぎや白いうなぎの蒲焼が出てきたらなんとも言い難い複雑な気持ちになる。
問屋や組合が見つけた時点で施設に譲ったりペットショップに売ったりすることが多いのでわたしたちに食事として提供されることは滅多にないが、仮に出てきたら、さばく時点で何とも思わなかったのか問いただしたい。
キリストは最後の晩餐でうなぎを食べていた?
天保養魚場では大きな水槽に入れてパンダうなぎを飼育している。
水槽にいるのはパンダうなぎで、下のPOPは完全にパンダである
パンダうなぎももちろん気になるが、それより先に気になったのが水槽の上に飾られた絵。
水槽右上に注目
『最後の晩餐』(レオナルド・ダ・ヴィンチ作)
なぜこんなところに『最後の晩餐』が?
山下さんに聞くと、この『最後の晩餐』の絵は今うなぎ業界で激熱らしい。
というのもここ数年で、この絵の中にうなぎ料理が登場している、つまりキリストが最後の晩餐でうなぎを食べたという説が出てきたからだ。
『最後の晩餐』のこの部分、うなぎが指している先の料理。
うなぎは山下さんが持っているオリジナルの指示棒。うなぎ自らうなぎを指し説明しているうなぎ愛あふれる時間…
これがうなぎのグリル料理ではないかという説が
調べてみると、絵の修復作業が進み細部まで判別できるようになった結果、専門家によりこの料理は『うなぎのグリルとオレンジスライス』と発表されたそうだ。
よく「明日地球が滅亡するとしたら〇〇を食べたい」とか「どうせ死ぬんだったら〇〇をたらふく食べたい」とか言うが、キリストも同じようにうなぎを食べていたのかと思うと親近感がわく。
わたしだったらオレンジスライスじゃなくてうな重を希望する。
うなぎの性格を垣間見る
わたしが水槽を訪れた時、パンダうなぎは岩陰に隠れてじっとしていた。
じっ…
なかなか動かずしばらく待っていたが、実はこの水槽にはパンダうなぎが2匹もおり、1匹が近づくともう1匹はかなりあらぶった。
ぬーん…
シャアッッッ!!!
怖い。急に怖い。
仲はあまりよろしくないようだ。
山下さんによると、うなぎは大勢でいる時はほかのうなぎに攻撃するようなことはあまりないそうだが、この水槽のように、2~3匹など少ない状況になると攻撃的になることが多いそう。
俊敏な動きと目の本気度に戦慄する。
養殖のうなぎと自然界で育ったうなぎとでも、性格や見た目の違いがある。
養殖のうなぎは天敵も少ない安心・安全の守られた環境下で育つため、性格も見た目も穏やかだ。
一方、自然界で育ったうなぎはワイルドで、見た目もあごがしゃくれ鋭い顔つきになる。
守られた環境下で育ったパンダうなぎはまさにお坊ちゃまタイプ
施設に譲ったパンダうなぎのことも山下さんは「養子に出した」と言っていた。
MAX50年くらいは生きる
わたしたちが食べるうなぎは1年ほど育ててあの大きさになり、さばかれ、食事として提供されている。
パンダうなぎをこのまま飼育し続けるとMAX50年くらいは生きるので、最後まで飼えば相当でかくなるそうだ。
しかし先ほど喧嘩シーンを見た通り、うなぎは想像以上にファイティングスピリッツを持っており、ポテンシャルも高い。
天保養魚場では今いるパンダうなぎ以外にこれまでも何度かパンダうなぎを飼ってきたそうだが、脱走を図っていなくなっている。
今いるパンダうなぎがいつまで拝めるか、密かに見守っていきたい。
パイの次はこちらへどうぞ
今回見学させてもらった天保養魚場は、4月中旬~9月下旬まで養鰻場を見学できるツアー『浜名湖うなぎ探検隊』を開催している。
記事に登場したパンダうなぎも見学でき、夏休み旅行に最適だ(脱走していなかったらごめんなさい)