冷めたステーキはローストビーフ
たとえばこんなシチュエーションを思い浮かべてみてください。
久しぶりに有給休暇をとったある日。あなたは、今日は1日、ただダラダラと好きなことをして過ごそうと決めていた。
よし、お昼は大好物のステーキを焼いて欲望のままにむさぼり食べよう! そこで、買っておいたステーキ肉を焼き始めます。
うんうん、いい具合のレア加減でステーキが焼きあがったぞ。あとはステーキソースをぶっかけて食べるのみ! いやっほ〜!
……と、最高潮になったテンションを一気に急下降させる出来事が。
突然スマホから鳴り響く着信音。画面を見ると、取引先の小さな会社の社長から。う〜む、今日休むってことは伝えてあるのに電話をかけてきたってことは、なにか緊急の用件かもしれない。出ないわけにはいかないよなぁ……。
「はい、もしもし」
はたして社長の用件は、明日でもなんの問題もないようなちょっとしたデータの修正依頼。しかも、それよりもそのあとのど〜〜〜でもいい世間話のほうが異様に長い。やっと電話が終わったのはなんと30分後でした。
その直後、あなたが目にすることになるのは、そう、
こんなに悲しいことがあるでしょうか? 今、想像しただけでぽろぽろと涙がこぼれてしまった方もいらっしゃることでしょう。
だけど、安心してください。何度でも言うけど、冷めたステーキはほぼほぼローストビーフだから。うまく気持ちのスイッチさえ切り替えられれば、もう悲しまなくても大丈夫だから。
というわけでさっき焼いたステーキ肉、いったんまな板に戻して、斜め薄切りにカットしていきましょう。
冷めたステーキ、ローストビーフでしょ? っていうかローストビーフって、冷めたステーキだったんだ!(極論)
さぁもう大丈夫。本来、あなたは強い。ここからは、私の後押しがなくても今日を乗り越えていけますね?
味のバリエーションを楽しむことだってできた。むしろ優雅なランチになったじゃないですか。
え? 赤ワイン? まだ昼だけどって? 今日、休みなんでしょ? 開けちゃえ開けちゃえ!
というわけで、「冷めたステーキはローストビーフ」は、
のびたうどんは伊勢うどん
たとえばこんなシチュエーションを思い浮かべてみてください。
ある土曜日の昼さがり。今日はたまった家事を一気に片づけるつもりの日。お昼ごはんはパパッと冷凍のさぬきうどんをゆで、冷やでつるつる〜っとすすって、午後もまたがんばろう!
ピピピピ! とゆであがりを知らせるタイマーが鳴る。同時にスマホから鳴り響く着信音。画面を見ると、またあの社長からだ。う〜む、休日に電話をかけてきたってことは、なにか緊急の用件かもしれない。出ないわけにはいかないよなぁ……。
「はい、もしもし」
以下省略して30分後。
とっさにキッチンタイマーとコンロの火を止めたまま放置してしまっていたキッチンに戻り、鍋を見てみると、
ここで泣きながらのびうどんをすする時間も人生において一興ではありますが、やっぱりこんなときは思いきって、新しいうどんをゆで直しちゃいましょう。
え? このうどんはどうするんだ、捨てるのか? って、いえいえ、とりあえずあら熱がとれたら、タッパーにでも移して冷蔵庫にしまっておいてください。そしていったんそのことは忘れ、新しいうどんのコシをぞんぶんに堪能してください。
さて、翌日曜日、冷蔵庫ののびうどんはどうなっているかというと、
水気をたっぷり吸い、太さは昨日の2倍くらいになってるでしょうか。だけどあれ? この麺、なにかに似てません?
ざるで水気を切ったら熱々のうちに
「伊勢うどん」とは、三重県伊勢市のご当地うどん。たまり醤油がベースの黒くて濃厚なたれを絡めて食べるのが主流で、最大の特徴は麺の太さ。
「伊勢うどん」の画像検索結果
ではなぜそんなに麺が太いのかというと、極太の麺を1時間以上もゆでて作るからだそうで、一般的に「コシ」が大事と思われがちなうどんの世界においては異端児的存在です。
江戸時代、伊勢神宮への参拝客たちにいつでも提供できるように常に麺をゆで続けるスタイルの店が誕生し、またその優しい食感が長旅で疲れた旅人の疲れを癒すと喜ばれ、広まっていったという説があるそう。
武蔵野うどんや吉田うどんのガチガチさ、さぬきうどんのコシもいいけど、ゆっくりと身体を休めたい日曜日のお昼には、こんなうどんもまたいいじゃないですか。
※伊勢うどんのたれが家にない場合は、「伊勢うどん たれ レシピ」などのワードで検索すると、家庭にある調味料で作れる方法があれこれ出てきます。
いやもちろん、あくまでも伊勢うどん“風”ではあるんですが、この究極にもちもち、ぷにぷにのうどん、はっきり言って僕は大好きです!
というわけで、「のびたうどんは伊勢うどん」も、もちろん
成型肉のサイコロステーキはハンバーグ
最後はこんなシチュエーションを思い浮かべてみてください。
最近、基本はテレワークだけど、月に一度の出社日はあいかわらずある。その帰り道、スーパーに寄ると成型肉のサイコロステーキが割引になっていた。今日は凝ったものを作る気力もないし、たまにはこんなのを焼いて、簡単にすませるのもいいかと、買って帰ります。
ところが無心でサイコロステーキを焼いていると、話半分で聞いていた土曜日の社長からの電話、そこで聞いた自慢話が突然フラッシュバックします。
「いや〜、この前銀座で高級ステーキを食べたましたんやけどな、本物の肉っちゅうのは違いますな! 一度あそこで食べるともう、スーパーの肉なんか食べられませんわ。はははは……」
悔しいね。気持ちはわかります。でも、大丈夫。あなたは強いから。
そもそも成型肉のサイコロステーキって、「ステーキ」と名前が付いてるからちょっと切ないんだと思うんです。だけどこれ、考えてみるにむしろ「ハンバーグ」じゃないですか? だってハンバーグって、ひき肉を成型したものでしょう。形さえ違えど、このサイコロステーキ、ビーフたっぷりのハンバーグと言えません?
というわけで方針変更。
脂がすごく出るので、いったん上の写真のようにフライパンの片側に寄せ、フライパンを傾け、余分な脂をキッチンペーパーなどで拭きとります。胸焼け対策。
そしたらそこに、こんなのを投入しちゃいましょうか。
ほらほら、ハンバーグ! しかも優しい誰かによってすでに食べやすくカットされている! 一般的なハンバーグと比べるとちょっとドット感が気になるかもしれませんが、むしろレトロゲームっぽくてかわいいですよ。
これがもう、当初のステーキ気分さえとっぱらってしまえば、牛のうまみぎっしりの完全に美味しいハンバーグ! 普通に週一で食べたい!
というわけで「成型肉のサイコロステーキはハンバーグ」ももちろん、
というわけで、途中から、いやかなり序盤から自分がなにを書いているのかわからなくなってはいましたが、とにかくちょっと視点を変えるだけで、悲しい食卓も楽しい食卓になりえるということは間違いありません。「リカバー飯」とでも言いますか。またいくつかネタがたまったら、ご報告させてください。
それと最後にもうひとつ大切なことを。ストレスは健康にとって最大の敵。仕事上のつながりであればどうしても避けられないと考えてしまいがちですが、人間関係の悩みがある場合、思いきってその職場から逃げ出してみるというのもひとつの手です。
世界にひとりだけの大切なあなたが心配だからこそ思うこと。たまには少し休んで、ゆっくりと考えてみては?