特集 2018年4月12日

将棋の駒と発泡酒を作っている「王将」タワー

「タワー」の名にふさわしい巨大な王将
「タワー」の名にふさわしい巨大な王将
バファリンの半分は優しさでできているというが、将棋の駒の95%は山形県天童市で作られているという。

その天童市に、将棋の駒と発泡酒が一緒に作られている場所があると聞いた。駒なのか、酵母なのか、よくわからない。実際に確かめに行こう。その場所の名前は「将棋むら 天童タワー」である。
1975年宮城県生まれ。元SEでフリーライターというインドア経歴だが、人前でしゃべる場面で緊張しない生態を持つ。主な賞罰はケータイ大喜利レジェンド。路線図が好き。(動画インタビュー)

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天童の将棋の駒推しを見る

天童駅に降り立ったのは今年2月のこと。ちょうど藤井聡太五段が六段に昇段した直後である。これは藤井聡太六段ブームも来ているのでは……と期待したのだが、思っていたより街はひっそりしていた。朝早すぎたのかもしれない。
改札を出ると目に入る「あなたの旅に、王手」。旅の始まりから早くも攻めの姿勢
改札を出ると目に入る「あなたの旅に、王手」。旅の始まりから早くも攻めの姿勢
駅前のポスト。王将が乗っている
駅前のポスト。王将が乗っている
郵便と将棋。切手か王手かといった取り合わせである。お土産をもらったのでテレビの上に置いといた、みたいな「とりあえず感」すら感じる(昔のブラウン管テレビは奥行きがあったので上に物が置けたんです)

さて、ここから天童タワーまで徒歩30分以上はかかる。タクシーを使ってもいいが、ポスト同様そこかしこに将棋の駒をモチーフがあるので散策してみた。
マンホールにも将棋の駒
マンホールにも将棋の駒
天童市役所のポストにも王将が。そしてコンクリート製のチェーン止めまで将棋の駒の形……!
天童市役所のポストにも王将が。そしてコンクリート製のチェーン止めまで将棋の駒の形……!
鉄製の将棋の駒型チェーン止めもあった。黄色が鮮やか。
鉄製の将棋の駒型チェーン止めもあった。黄色が鮮やか。
ここにも将棋の駒が……と思ったら矢印だった
ここにも将棋の駒が……と思ったら矢印だった
将棋の駒ばかり探していると、五角形っぽいものまで将棋の駒に見えてきてしまう。「将棋の駒アイ」が視界にインストールされた感覚がある。
別のタイミングでイオンモール天童にも行った。外観から馬の推しっぷりがすごい。逆さになった馬は「左馬」と呼ばれ、これも縁起物。
別のタイミングでイオンモール天童にも行った。外観から馬の推しっぷりがすごい。逆さになった馬は「左馬」と呼ばれ、これも縁起物。
店内にもちょいちょい将棋の駒モチーフがあるが……
店内にもちょいちょい将棋の駒モチーフがあるが……
やっぱり将棋の駒に見せかけてそうじゃないやつに引っかかってしまう。
やっぱり将棋の駒に見せかけてそうじゃないやつに引っかかってしまう。

国道を北上しながら不安になる

さて、天童市役所のそばには川が流れており、そこに架かる橋にも将棋の駒がドーンとあった。
王将がドーン!
王将がドーン!
金将もドーン!
金将もドーン!
川沿いを歩くと、次から次へと将棋の駒が現れる。
川沿いを歩くと、次から次へと将棋の駒が現れる。
地元の人は「飛車の橋」とか行ってるんだろうか。駅前からタクシーに乗ったら「桂馬の橋を渡ってちょっと行ったら止まってください」とか指定するのだろうか。

川は国道13号にぶつかり、ここから先は国道沿いに北上する。歩道橋の上から目的地の方向を眺めると、遠くに将棋の駒の形が見えた。意外と近いんじゃないか……その時はそう思った。
将棋の駒が遠くにあるのがわかる。なぜなら将棋の駒アイがインストールされているから
将棋の駒が遠くにあるのがわかる。なぜなら将棋の駒アイがインストールされているから
将棋の駒目指して国道沿いを北へ。15分以上歩いても誰ともすれ違わない
将棋の駒目指して国道沿いを北へ。15分以上歩いても誰ともすれ違わない
将棋の駒モチーフのものもすっかり姿を見せなくなってしまった。「熊」や「兎」も駒があったらいいのに。兎の駒は前に2マス飛ぶ。
将棋の駒モチーフのものもすっかり姿を見せなくなってしまった。「熊」や「兎」も駒があったらいいのに。兎の駒は前に2マス飛ぶ。
子どもの頃、探検のつもりで幹線道路沿いを歩き続け、遠くに行きすぎて半泣きで歩いて帰ったのを思い出した。ビュンビュン通り過ぎる車が自分を無視しているようで心細かった。

あれからだいぶ大人になったが、今は「間違えてない?」という不安でいっぱいだ。何度もGoogleマップを確かめる。そしてその瞬間がついに来た。
ん? あれは……「王将」……!
ん? あれは……「王将」……!
で、でかい……!
で、でかい……!
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タワーを彩る多様なコンテンツ

歩道橋の上から将棋の駒が見えたのは「近い」のではなく「デカい」からだった。ラスベガスではホテルがデカすぎて遠近感を失うのと同じ理屈である。

ラスベガスはカジノを中心とした一大リゾート地であるが、「将棋むら 天童タワー」も将棋に限らずなんやかんやとコンテンツが揃っていた。
「出羽三山神社御分社之地」「さわやかな喉ごし」「ブルワリー」「奥の細道 芭蕉庭園」……将棋以外の単語の盛り合わせ感がすごい
「出羽三山神社御分社之地」「さわやかな喉ごし」「ブルワリー」「奥の細道 芭蕉庭園」……将棋以外の単語の盛り合わせ感がすごい
そしてそびえ立つ交通安全の碑(もちろん将棋の駒モチーフ)
そしてそびえ立つ交通安全の碑(もちろん将棋の駒モチーフ)
タワーの横には鳥居が立っている。雪深いため出羽三山分社や芭蕉庭園には入れず。残念
タワーの横には鳥居が立っている。雪深いため出羽三山分社や芭蕉庭園には入れず。残念
「天童タワー」という名前だが、高層階の塔がそびえているわけではなく、中に入って目にするのは広々としたお土産屋さんフロアである。駐車場の広さからすると、バスツアーが最後に寄ったりするような場所なのかもしれない。
巨大な将棋の駒は非売品。重そう。もらったらどこに置こう。
巨大な将棋の駒は非売品。重そう。もらったらどこに置こう。
将棋の駒を作る実演販売のコーナーがあったが、やはり朝早すぎて人がいなかった
将棋の駒を作る実演販売のコーナーがあったが、やはり朝早すぎて人がいなかった
それぞれが意思を持って動き出しそうなくらい駒がある
それぞれが意思を持って動き出しそうなくらい駒がある
「出羽桜」など地酒もたくさん。今気がついたけど、棚の上に「地酒」と書かれた駒が。
「出羽桜」など地酒もたくさん。今気がついたけど、棚の上に「地酒」と書かれた駒が。
出羽三山に芭蕉に地酒に駒である。小さな山形がここにぎゅっと濃縮されている。が、まだまだ天童タワーは王手を繰り出してくる。ここは「発泡酒工場」でもあるのだ。

ビールの中に小さな山形

いったん外に出て、改めて外観を見てみよう。
巨大な王将の下に、なにやら銀色に光るタンクが並ぶ。
巨大な王将の下に、なにやら銀色に光るタンクが並ぶ。
1つ1つのタンクが大きく、パイプが張り巡らされている。本当に「工場」だ。
1つ1つのタンクが大きく、パイプが張り巡らされている。本当に「工場」だ。
工場って郊外のそれなりの敷地に満を持して作るようなイメージがあった。国道沿いのお店の一角にだって、別にお酒の工場を作っていい。そうか、そうだよな……と一人で納得する。
発泡酒のラインナップ。「旬選」は旬のフルーツとピルスナーのブレンド。ラベルも将棋の駒モチーフ
発泡酒のラインナップ。「旬選」は旬のフルーツとピルスナーのブレンド。ラベルも将棋の駒モチーフ
発泡酒は全部で6種類もあり、うち4種類はフルーツビール。さくらんぼ、りんご、ぶどう、ラフランスと、全て山形が産地のもの。ピルスナーをベースに果汁を加えて作っているらしい。発泡酒の中にも小さな山形がある。
試飲させてもらいました。季節は2月下旬。天童は雛飾りでも有名とのことで、大量のひな人形をバックにいただきます。
試飲させてもらいました。季節は2月下旬。天童は雛飾りでも有名とのことで、大量のひな人形をバックにいただきます。
おいしい。りんごを試飲させてもらったのだけど、ホップの苦みの中にふわっとリンゴの甘みを感じる。これはスイスイいってしまうやつだ。店員さん曰く、さくらんぼだともう少し酸味が強くなり、ギネスビールに近い味になるらしい。

しかしなぜこの地でお酒を……?と、お店の方に聞いてみたものの「さぁ……」という反応だった。ただ、全国で地ビールがブームになったころにできたらしい。ブームに乗ったというにはあまりに設備が本気だ。天童タワー、いろいろと全力である。
外の自販機コーナーにあったテーブル。これも将棋の駒……と思ったら八角形だった。
外の自販機コーナーにあったテーブル。これも将棋の駒……と思ったら八角形だった。

サービス精神 from 山形

遠くからでもはっきり分かる「王将」、神社や日本庭園を取り入れ、発泡酒工場まで作ってしまう。全方位にサービス精神が発揮された場所であった。

ここでこのサービス精神が途絶えるとは到底思えない。この先、建物の裏手に日本海(プール)が出来ても驚かないと思う。
イオンモール天童には休憩スペースに詰め将棋があった。五手詰め。
イオンモール天童には休憩スペースに詰め将棋があった。五手詰め。
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