特集 2017年12月9日

閉鎖間近の農連市場に行ってきた

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老朽化のため2017年10月末で閉鎖されてしまった沖縄県那覇市にある農連市場。閉鎖を間際にして、あの雰囲気は変わってしまったのか?おばちゃんたちは元気だろうか?閉鎖直前の様子を見に行ってきた。
大阪出身。美味しいものと猫には目がない永遠の離島トラベラー。泡盛好きが高じて泡盛マイスターの資格を習得。最近のお気に入りは『時雨』。

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近年発展目覚ましい那覇市にありながら、戦後沖縄の原風景を垣間見られた「農連市場」。建物の老朽化を理由に、惜しまれつつも2017年10月末をもって閉鎖された。
南北に分けられた市場のうち、北側エリアはすでに解体工事が終わっており、10月17日には新施設「のうれんプラザ」がオープンしている。
かつての農連一場北側の交差点(2010年頃)
のうれんプラザが建った
のうれんプラザが建った
多くの車が通行する大通りからは見えにくい場所、ガーブ川を越えたあたりにある農連市場。
開発が進むごとに足が遠のいていたが、閉鎖を間近にしてどんな風になっているのだろうか。
久しぶりに訪れてみることにした。

変わる風景と変わらない風景

取材に訪れた日は10月26日。翌週には農連市場が閉鎖され、すべての店子は新しくできた「のうれんプラザ」に移動するとニュースで言っていた。
だから正直、農連市場が開いていても活気がなかったり、そもそもお店が軒並み引越し前の閉店状態だったりするかもしれない、と思っていたのだ。実際訪れるまでは。

時刻は朝の4時半。農連市場がもっとも賑わいを見せる時間だ。
大通りから中に入ってみると。
あれ?この風景。あれ?この感じ
あれ?この風景。あれ?この感じ
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市場周辺のお店は以前と同じように営業中
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真夜中商店
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バイクに野菜を積む農連スタイルもそのまま

そして農連市場の看板がある場所に行くと、農連市場は以前と変わらず当たり前のようにそこにあったのだ。
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まだ夜が明ける前なのに、賑やかな人の声が聞こえてくる
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農連市場の中へ

中へ入ってみよう。
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1953年(昭和28年)に市場が開設されてからそのまま使用している木造・トタン屋根。
老朽化は進んでいるが、この景色、この雰囲気はここでしか見ることができないもの。
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お店も健在。野菜や果物なども以前と変わらず並べてある。
現役の手洗い場
現役の手洗い場
何気ないのに味がある柱
何気ないのに味がある柱
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市場の開設当初からお店を営むおばさんも元気に営業されていた。
 以前、取材の際にたいへんお世話になった屋良商店さん
以前、取材の際にたいへんお世話になった屋良商店さん
屋良商店さんに「のうれんプラザへの引越しはいつ予定されているんですか?」と伺うと、「週末に引っ越そうと思っていたけど、台風だから引っ越せるかわからない」とおっしゃっていた。
そう、閉鎖間近にして最後の週末は台風だった沖縄。「間に合うかな?」と笑っておられたが、その表情には不安も心配も全くなさそう。長年たくましく商売を続けてきた懐の深さのようなもの垣間見たような気がした。
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こちらは農家のみなさん。
農連市場では1日310円を払えば誰でも場所を借りることができるのだが、こういう制度があるのは天候によって畑に行けない日もある農家さんのためだと、以前市場事業協同組合さんが言っていた。
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休憩されていた農家のおばさんは
「40年間ここでやってきたから正直さみしいよ。でも時代の流れだからね」と。
長年一緒にやってきた仲間たちは、移転のタイミングで辞める人もいるが、大半はそのまま続けるそうだ。また、新しいのうれんプラザにも農家の人たちが集まるスペースが確保されているので、そこはとても心強いとおっしゃっていた。
「お客さんもいまは変わらず来てくれているよ。向こう(のうれんプラザ)にいったらどうなるかはわからないけど、行ってみないとはじまらないからね!」とも。
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なんだかここでおばさん達と話していると、この場所が閉鎖間近であることを頭では理解しつつも、人や雰囲気や見える風景が以前と同じすぎて、本当になくなってしまう実感が薄れてくる。

何人かとお話をさせていただいたが、みなさん今後のことは不安もありつつ、がんばりたいとおっしゃっていた。でも最も耳にしたのは「この場所がなくなってしまうのは本当に寂しい。建物だけは残してほしい」ということ。
取り壊された跡地はホテルになるという話も聞いたが、この建材を使って農連市場風のロビーとかにできないものだろうか。さすがにちょっと無理だろうか。
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取り壊し工事は現在進行系なので、現時点の農連市場の様子がどうなっているか分からないが、もうあの景色に会えないと思うととても寂しいものだ。

のうれんプラザは?

まだ早朝だが、屋良商店さんがのうれんプラザも開いているよ!と教えてくれたので行ってみることにした。
 10月17日に落成したのうれんプラザも市場同様、深夜から営業するようだ
10月17日に落成したのうれんプラザも市場同様、深夜から営業するようだ
あれ?
あれ?
なにもない!
なにもない!
この時点の「のうれんプラザ」はまだガラーンとしており、あれ?本当にあと数日でオープンするの?とちょっと心配になるレベルだった。
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一店舗だけお店があったが、オープン前の準備をしているだけで、実際営業しているお店は無かった。

のうれんプラザは取材に訪れた数日後の11月1日(水)にグランドオープンした。
旧農連市場との別れを憂いてばかりではなく、新しい農連市場にも期待したい。
近々、のうれんプラザにも足を運んでみよう。あの元気なおばちゃん達に会いにいこう。
 農連市場に住み着いていた猫たちも、新しい住処を見つけているといいのだが
農連市場に住み着いていた猫たちも、新しい住処を見つけているといいのだが
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