特集 2017年7月31日

日本唯一のレバニラ専門店が飲み屋として超進化していた

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西東京の清瀬という街に、たぶん日本で唯一の「レバニラ定食専門店」があります。

そこのレバニラ定食が本当に絶品で、よく食べに行くんですが、何やら最近、夜の営業にも力を入れだし、かなり飲めるお店に進化中らしいのです。

これは確かめないわけにはいかない!
というわけで、最近メニューに加わったおつまみの数々を堪能し、さらに最後は、余計なおせっかいまで焼いてきてしまいました。
1978年東京生まれ。酒場ライター。著書に『酒場っ子』『つつまし酒』『天国酒場』など。ライター・スズキナオとのユニット「酒の穴」としても活動中。

前の記事:横浜で知り合ったタケさんにお気に入りの角打ちを案内してもらう


今回、レバニラは本題ではないので、いきなり飲み始めます

西武池袋線の「清瀬」という、あんまりなじみのない読者さんの方が多いんじゃないかっていうマイナーな駅を降り、商店街を歩くこと約5分。
「レバニラ定食 Kei楽」さんへとやってきました。

ここのレバニラ、本気で腰が抜けるくらいうまいんですが、今日の本題は夜の「飲み営業」。
レバニラはあとで登場しますんで、もしどうしても気になるという方は、以前僕が別の媒体で取材させていただいた、こちらの記事を先にお読みいただいても良いかもしれません。
店主の秋元さんの人となり、そして、Kei楽のレバニラの魅力が伝わる内容になっているかと思いますので。
「レバニラ定食 Kei楽」
「レバニラ定食 Kei楽」
木目を基調とした、カウンターのみながらも落ち着く店内
木目を基調とした、カウンターのみながらも落ち着く店内
なんとレバニラだけでこんなに種類が!
なんとレバニラだけでこんなに種類が!
このページにある5種、とりわけ、秋元さんが全国各地で食べ比べ、自分の調理方法に最も合うという結論にたどり着いた「山形県庄内産豚レバー」を使ったレバニラこそ、お店最大の売り。
ですが、秋元さんは非常に好奇心旺盛かつ意欲的な料理人であり、営業を続けるうちに、自然とその他のメニューが増えていってしまったそう。

各種レバーの唐揚げに、宮崎県産鶏せせり焼き、麻婆豆腐をはじめとした中華メニューも数種。
って、この時点で「レバニラ専門じゃないじゃん!」ってツッコミたい方も多いかもしれませんが、確かに原点はレバニラ専門店だったんです。
ただただ、秋元さんのサービス精神が旺盛なだけで……。
「ダチョウのレバ刺し」「たち肝」など、レバー関連の珍しい食材も豊富
「ダチョウのレバ刺し」「たち肝」など、レバー関連の珍しい食材も豊富
そしてそして、見つけましたよ。
これが最近追加されたという、夜のおつまみメニューですね!
これが最近追加されたという、夜のおつまみメニューですね!
「たちぎもの煮込み」に「レバー3種の串カツ」、さらには「冷奴」や「冷やしトマト」みたいな軽い一品もありますね。
こいつは楽しみだ~!
まずは「ピリ辛枝豆炒め」(300円)と生ビール(500円)から
まずは「ピリ辛枝豆炒め」(300円)と生ビール(500円)から
自家製の麻婆豆腐用のタレを使って炒めた枝豆。
皮ごとむしゃぶりつくと、刺激的なスパイシーさがビールに合いすぎる!
お通しの「醤油ニンニク」
お通しの「醤油ニンニク」
これ、Kei楽に来る楽しみのひとつなんですよ。

レバニラのタレを作るときに煮込んだ、いわば「ダシがら」だというニンニクなんですが、ねっとりムッチリとした食感と濃厚に凝縮された味わいが、白米もお酒も無限に進んでしまう味。
本日同行していただいているおふたり
本日同行していただいているおふたり
一品一品のボリュームがたっぷりなので、ひとりであれこれ食べるのには限界があるお店。
そこで編集部を通して募ってもらったところ、名乗りをあげてくれたのが、編集部古賀さんと、「最近になって『あれ、もしかしてレバーってうまい……?』と思い始めたレベル」だという、ライターの井口エリさん。
あ、そのくらいの感じ、Kei楽のレバーを食べてもらうのにぴったりじゃないすか!
どんな反応をしてくれるか楽しみだな~。
冷奴(250円)
冷奴(250円)
地元清瀬「和泉屋豆腐店」のお豆腐に、ニンニクとラー油の効いたタレをたっぷり乗せた冷奴。
まず豆腐自体が、大豆味濃厚でうますぎます。
だからこそ主張の強いタレとも渡り合えていて、う~む、250円の冷奴ひとつとってもこの美味しさとは、相変わらずすごいお店だなぁ。

絶品おつまみをどんどん注文

こちらが店主の秋元修さん
こちらが店主の秋元修さん
いかにも仕事命の料理人といった佇まいが、信頼感抜群ですよね。

もともとご実家が別の場所で「慶楽」という中華料理屋を営まれており、そこで修行を積んだのち、このお店をオープンされたそうです。
その際、「街にごく普通の中華屋が一軒増えたところで、地元の人は昔からあるお店に行くだろう。ならば、他のどこにもないお店を作るしかない!」と、得意料理であったレバニラの専門店にしたのが、お店の成り立ち。
レバー3種の串カツ(2本 400円)、黒ホッピーセット(400円)
レバー3種の串カツ(2本 400円)、黒ホッピーセット(400円)
串カツに触れる前に触れさせてください。
ホッピーのナカの濃さ!(参考記事:ホッピーのナカの量に一喜一憂し、最後は台無しに

そして、ほう、以前から「唐揚げ」はメニューにあって大好物だったんですが、「串カツ」ときましたか。
どれどれ……。
ちょっとぉ、ボリュームありすぎて持つとこほとんどないじゃないですか!(ただただ嬉しい)
ちょっとぉ、ボリュームありすぎて持つとこほとんどないじゃないですか!(ただただ嬉しい)
清瀬産のトマトを使った華やかな味わいのソースをつけて、ガブリ!
清瀬産のトマトを使った華やかな味わいのソースをつけて、ガブリ!
うめ~……
うめ~……
鶏、牛、豚、3種類のレバーが1串に刺さっているんですが、トロッととろけるような鶏、少し歯ごたえがあって上品な香りの牛、これこれ! と膝を叩きたくなる豚、三者三様ながら、どれもとにかく美味しすぎるところが共通点。
すごく大ぶりなので、満足感もとんでもないっす。

それはいいとして、うまいんならもっとニッコリと笑えばいいものを、なんでこんなに険しいツラしてるんすかね、自分。
そのあたりの表現力、これから精進していきたいと思います。
最終的に、任務を遂行し終わったあとの必殺仕事人みたいな状態に
最終的に、任務を遂行し終わったあとの必殺仕事人みたいな状態に
「どういうこと? 今まで食べてきたレバーと次元が違う!」
「どういうこと? 今まで食べてきたレバーと次元が違う!」
「え? レバーってこんなに美味しいんですか?」
「え? レバーってこんなに美味しいんですか?」
はい、100点満点のリアクションをありがとうございます。
たち肝のカツ(400円)
たち肝のカツ(400円)
完全に初めて聞く料理ですね。

たち肝とは豚の「脾臓」のことで、もつ焼き屋だと「チレ」なんて呼ばれる、ふわふわとした食感が特徴の部位。
この厚み!
この厚み!
そこらの定食屋のとんかつくらいのビッグサイズです。

これまた先ほどのソースをつけてほおばると、柔らか~いロースカツの脂身にも近いような旨味と、レバーっぽい風味のいいとこ取りって感じで、はっきり言って最高!
う、うますぎる~……。
何? 誰かに怒られたの?
何? 誰かに怒られたの?
たち肝の煮込み(500円)
たち肝の煮込み(500円)
たち肝、煮込みにすると良いダシ出るんですね~。
オーソドックスな豚モツを使ったものよりも上品な味わいで、特に井口さんはとても気に入られた様子。
身もゴロゴロ
身もゴロゴロ
庄内豚レバーペースト(580円)
庄内豚レバーペースト(580円)
見た目はごく普通ですが、実は、ゴマ油、豆板醤、甜麵醬などを使った中華風の味付け。
これがクセになるんですよね~。

珍しい「ダチョウのレバ刺し」登場!

豊富な種類のレバーを扱うKei楽でもひときわ珍しいのが、毎月「1」の付く日限定で提供されている「ダチョウのレバ刺し」。
ダチョウのレバ刺し(750円)
ダチョウのレバ刺し(750円)
お店の営業を続けていくなかで知り合った業者さんから、特別に仕入れているそう。

今や牛や豚のレバ刺しを食べることは至難の技という時代になってしまいました。
そんな中、このビジュアルに心惹かれる方も多いのでは?
ほらほら、艶めかしい~
ほらほら、艶めかしい~
ゴマ油×ハーブソルト、もしくは醤油ダレにつけて頂いてみると……
ゴマ油×ハーブソルト、もしくは醤油ダレにつけて頂いてみると……
またその顔か
またその顔か
口からネギまではみ出させて、お恥ずかしいといったらないですが、これがとにかく絶品!

このメニューは以前からあったので、何度か食べたことがあったんですが、ダチョウのレバーはエサや個体差によって味にかなりの幅が出るそう。
今日のものは、特に脂が乗りまくっていて、どこかフォアグラを思わせるような上品かつ濃醇な味わい。

何より、記憶から消えかけていた“レバ刺しの味”が、バーン! と一気に脳内に広がって、お好きな方には特にたまらないんじゃないでしょうか。
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今回の記事はもうひと展開あります

さて、いろんな角度からレバーの美味しさを味わえるKei楽の夜メニューの数々はどれも絶品で、それらを心ゆくまで堪能した我々。
普段なら「あ~美味しかった! HAPPY END☆」で終わるところなんですが、今回はもうちょっとだけ続きます。


Kei楽には個人的にも何度もおじゃましていて、僕の「酒場ライター」という仕事も把握してくれていた、店主の秋元さん。
以前何気なく「もし今度お店に来た時は、夜の営業の参考にさせてもらいたいから、リクエストがあれば何でも言ってくださいね」なんておっしゃってくれていたんですね。

もちろん秋元さんなりのサービストークであることは明白なんですが、今回はいい機会なので、バカ正直に、本当に個人的リクエストをお伝えしてしまいました!


その内容は、およそこんな感じ。
【1】キンミヤ焼酎を置いてほしい(割ものに一番合うと信じているので)
【2】現在は黒しか扱っていないホッピーの、白も置いてほしい(個人的に好きなので)
【3】壁に短冊メニューがほしい(酒飲みはそれを眺めながら飲むのが好き)
【4】今でもじゅうぶん安いけど、何か飛び抜けて安いお酒メニューがほしい(酒飲みはそういうの見つけるのが嬉しい)
【5】酒とつまみがまとまっている見やすいメニュー表を作ってほしい(なんなら自分で作りたい)
……図々しいにもほどがありますよね。
が、もちろん全部ダメ元、「そんなの無理だよ~」と言われ、愚かな自分を読者の方に笑ってもらえたら、それもまたオチになるかな? くらいに考えていたんですよ。

が、秋元さんに書いてきたメモをお渡しすると……
予想外に真剣に検討してくださり、なぜか漂う緊張感
予想外に真剣に検討してくださり、なぜか漂う緊張感
「酒とつまみのメニューはこないだ一応作ってみたんだけど」
「酒とつまみのメニューはこないだ一応作ってみたんだけど」
なるほど、これがあればじゅうぶんですね!

……が、せっかくの機会なので、試しに「安酒飲み的に心惹かれる別バージョン」を僕に作らせてもらえないでしょうか!?
後日持ってくるので、気に入らなければその場で破り捨ててください!


「飛び抜けて安い酒メニュー」に関しては、「例えば、単なる焼酎の水割りだけ350円で出すとか……」とご提案してみると、
「水割りなら、焼酎単品を頼んで卓上の水で割ってもらえたら、250円なんだけど」
「水割りなら、焼酎単品を頼んで卓上の水で割ってもらえたら、250円なんだけど」
と。
に、250円!? それ、とんでもないですよ!
差し支えないなら、メニューに記載しましょう!
「短冊メニューなんて貼れそうなスペースは……あるな」
「短冊メニューなんて貼れそうなスペースは……あるな」

ここから後日談

以上のような無茶なご提案に対するKei楽からの回答はどのようなものだったのか!?

ここからは、少し日にちをあけて再びお店におじゃました際のレポートをお送りしたいと思います。
以下、飲み屋としてさらなる超進化を遂げたKei楽の姿をご覧ください!


【1】キンミヤ焼酎を置いてほしい
キンミヤ入りました!
キンミヤ入りました!
【2】現在は黒しか扱っていないホッピーの、白も置いてほしい
白ホッピー入りました!
白ホッピー入りました!
【3】壁に短冊メニューがほしい
短冊メニュー入りました!
短冊メニュー入りました!
【4】今でもじゅうぶん安いけど、何か飛び抜けて安いお酒メニューがほしい
飛び抜けて安いお酒メニュー入りました!安っ!
飛び抜けて安いお酒メニュー入りました!安っ!
【5】酒とつまみがまとまっている見やすいメニュー表を作ってほしい

これですが、「なんなら自分で作りたい」なんて言ってしまった手前、じゃあどんなメニューがいいか? 大前提として見やすく、飾りっ気はあえて排除し、経年劣化がむしろ味になるようなものが……って感じで、相当に悩みつつも、実際に試作版を作ってみました。
それがこちら(クリックで拡大)
それがこちら(クリックで拡大
日本酒やサワーなどの銘柄は店員さんに聞いてもらうことにして、極力シンプルに。
そして新たに加わった「キンミヤ焼酎の水割り」(250円)は、どーんとではなく、あえてさりげなく配置することで、上から目で追っていった時のサプライズ効果を期待。
……って、自分が何屋なんだかさっぱりわからなくなってきましたが。

これをプリントして持って行ったところ、
ひとまず使ってもらえることに
ひとまず使ってもらえることに
うわ、何この新しい種類の感動!
自分の作ったメニューが実際にお店に置かれると、なぜか目頭が熱くなるものなんですね。
知りませんでした。
そうそう、こうやってグラスかなんかを上に置かれちゃって
そうそう、こうやってグラスかなんかを上に置かれちゃって
その積みかさなりが、やがて味になる
その積みかさなりが、やがて味になる
立派な味わいメニューになるんだぞ……。


あ、そうそう、あとですね、先日別件で、
合羽橋の道具街
合羽橋の道具街
へ行ったんですよ。

そこで思いついたのが「赤ちょうちん」!

リクエストには書いていなかったけど、そうだ、店頭に赤ちょうちんがあれば、そこに吸い寄せられていってしまう生き物じゃないですか! 我々酒飲みは。

飾る場所がなかったら家で使えばいいし(何に?)、お店への個人的なプレゼントとして、赤ちょうちんを購入。
これも勝手にお持ちすると、
受け取ってもらえました!
受け取ってもらえました!
強い! これは強いぞ!
強い! これは強いぞ!
以上、たぶん日本で唯一のレバニラ専門店「Kei楽」が、飲み屋としてものすごいパワーアップをしてしまった様子のレポートでした!
「清瀬? 遠そうだなぁ」という方も多いと思いますが、わざわざ食べに行く価値のある料理たちだと思うので、ご興味ある方はぜひ~。

おっと、そういえば肝心の「レバニラ」をご紹介してなかったですね。
危ない危ない。

丁寧な下処理をし、自家製の香味醤油を使ってジューシーに炒め上げられたレバーは、甘くて良い香りがして、舌触りなめらかでありながらも、ガツンと力強い味わい。
定食で頼んだ日には、むさぼるようにかっこんで、お皿の上にな~んにも無くなっちゃってから、「は! 俺は今、一体何をしていたんだ? あ、レバニラ定食食ってたのか」と気づかさるほど。

写真は、レバニラ炒め(山形県庄内産豚レバー・単品ちょっと少なめ)(780円)。
その美味しさは、苦手だった良い顔のリアクションが自然にできてしまったことから察してください
その美味しさは、苦手だった良い顔のリアクションが自然にできてしまったことから察してください
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