
本屋×居酒屋なハイブリッド店舗



画像の右手奥に光るのが京都駅、つまり近い。
酒場の看板、雑誌の棚、自販機のライト、そして提灯がブラリ。この雑多なハイブリッドさ、良酒場のにおいがプンプンする。

手づくりの居酒屋スペース



コンビニの4割くらいのスペースくらいだろうか。
店内はテーブル席がふたつと、壁の両側に立ち飲みカウンター。素朴な木の質感がなんとも心地よい。いかにもハンドメイドって感じだ。この日は常連さんらしき人たちが仕事の話でもりあがっていた。
仕事の話といっても和やかなムード。この空気もいかにもハンドメイドって感じだ。
書店で飲むというと、てっきりこぢんまりしたスペースしかないものだと思っていたけれど。



書店は仕入れれば仕入れるだけ、請求をするまでは一旦その本の金額を立て替えないといけない。
さらに売れ残った本を返品するときの費用は実費らしいので、思い切ってお店に置く本を減らすというのは正しい判断なのかもなぁ。

リーズナブルすぎてビビる



常連さんグループの席に相席して、とりあえずのビールを注文。ドリンクメニューはレジの後ろに短冊状のメニューがある。



短冊状のメニュー、最初はちゃんとメニュー用の紙を使っていたのだろうが、途中で増えた分のお酒が普通の白い紙になっているところが味があっていい。





フッと現れてビールケースを片づけはじめたので、最初「酒屋さんかな」と思ったが、おもむろにサーバーからビールをついだので頭が混乱する。
「誰なんですか」
「酒屋、酒屋!」
「絶対ちゃうやん、だって笑ってるもん!」



ここでは家族や仕事仲間ぐるみでお店を切り盛りしていて、普段お店に立っているのは、遠藤さんとお兄さん。さらにこうしてピンチヒッターが駆けつけ、そのうえお店が繁盛してくると、常連さんが自分で料理を運んだり、テーブルを片づけたりするそうだ。
もはやアットホームさを通り越して、家のリビングで飲んでいるよう。ゆるく心地のよい雰囲気が店内に流れていて酒が進む。ついつい椅子のうえで体育座りをしそうになった。

嗚呼、素晴らしきせんべろ



というか、ほぼ店内も料理も全部手づくりなんだよね。



ちょっと前まで本屋さん専業だったおじさんふたりが、これほど豊富なメニューをつくりこなしているとは。超ハイスペックおじさんだ。





お客さんの好みに応じてどの角度からも玉を打ち返してくれる、スーパーバッターのような心遣いだ。



せんべろ酒場として最高の心地よさとおトクさ。どれだけポテンシャルが高いんだ遠藤書店。1000円でも十分満足できるぞ。

謙虚すぎる経営方針



遠藤さん:お店の売上が落ちて、どうしようかと考えていたところに「料理が好きなら飲み屋をしたら」って知人がアイデアをくれてねえ。
――なるほど、全部手が込んでいておいしかったです。ただ、安すぎません?
遠藤さん:本って利益率が悪いんですよ。たとえば800円の本を売っても利益は2割……160円程度にしかならへん。
――本って仕入れたら売れたぶん総取りじゃないんだ。
遠藤さん:そうそう。そんな商売をずっとやってきたから、いざ飲み屋をやるとなっても、多めにお勘定取るなんてことはできへんねぇ。
――ええ~!売上の補填に居酒屋するなら、もうちょっと取ってもいいと思うよ~? お父さん~!
遠藤さん:はははははは!
謙虚かよ。



9段って名人とか、終身名誉監督とか、生ける伝説とか、そんなんじゃないのか。
やっぱりハイスペックおじさんじゃないか。なんでそんなスゴイことを言わないんだろう。謙虚すぎやしないか。

開店から1年を経て



なにより、閉店後の静かだった店内に人が集い、活気づいているのが嬉しいと話してくれた。



個人経営の書店がどんどんお店を畳んでいくなか、新しい挑戦を取り入れながらお店を続ける遠藤書店。
これからも長く続いてほしいと思う。












この地で80年続く遠藤書店。お昼間の本屋業務は宅配が主のため店内の在庫はあまりありませんが、ぜひお取り寄せで本をご購入ください。
・取材先
遠藤書店(立ち飲みENDO)
075-691-8403
京都府京都市南区東九条北烏丸町33
16:00~23:00(LO22:30)
第二・三木曜はお休み
