アドビの雰囲気を感じる
アドビ川英語だとAdobe Creekつまり小川である。全長は22.9km。
アドビシステムズ創始者の一人ジョン・ワーノックの自宅がそのほとりにあったことが社名の由来だそうだ。
とはいえ彼の自宅がどこだったかはわからないので、アドビ川上流から下流までの3箇所をとりあえず見て、その雰囲気を感じたい。
アドビ川のうち7kmしかグーグルマップに表示されてない。水源はさらに南西にあるのにその途中がない。
まずはアドビ川の上流に向かう。
全長22.9kmといいながらグーグルマップ上には水源と7km弱の川しか表示されないのが既に不安なのだが、便宜的にこの7kmの始まりを上流とよぶ。
既に企画が骨折している気がしつつも、限られた時間の中でがんばりたい
移動はUBERで
移動はアメリカで流行っているというUBERをまず使ってみることにした。現在地と行き先をスマホ上で指定すると、登録された運転手が乗用車でやってきて送迎してくれるサービスだ。
登録して数分するとトヨタの車がやってきた。さあ、出発だ。
便利な世の中になったな~。
UBERは目的地を住所で指定するのだが、まちがって目的地を”通りの名前”にしてしまった。
するとなんと、それだけの情報で走り始めてしまった。「これ、着くのかな……」と思いながら黙って窓を眺める。
そしてなんだか行きたい方向と違う方に車は走る。
「通りのどこに行きたいの?」と聞いてくれればいいんだけど、そういうことはなかった。なんでだ。結局違う目的地に着いてしまった。
でも、改めて説明すると、間違った場所から本来の目的地までは無料で送ってくれた。諦めなければなんとかなるのがアメリカだ。
そんな感じで冷や汗をかきながら、とりあえずアドビ川の上流付近についた。
これがアドビ川の近辺のようすだ
アメリカらしいでかい家が建ち並ぶ。道も広い。
一家に車が何台もあるのがデフォルト。たぶん裕福な人が住む町なのだろう。
いい雰囲気の道が続く
……で町はいいけど、川はどこなんだという話だ。このあたりのアドビ川は家々に取り囲まれていて、部外者は見ることができないようだった。アドビクリエイティブクラウドに毎月お金を払っていてもここでは部外者である。
ただ、もしアドビシステムズの創始者ジョン・ワーノックがこのあたりに住んでいたとすれば、きっとこういう景色を観ていたのだろう。それが今のアドビにつながっているはずだ。
歩いて見てみよう。
変形ツールの原型か
なんというフォントだろう。パス選択ツールっぽい矢印もある
新聞がおちている。レイヤーを示唆するものだろうか。
歩道との境界がブロックではなく、地面を寄せて作られている。なにツールだろうか。コピースタンプ?
いや、ジョン・ワーノックはPhotoshopを作ったわけではないが、ついそういう目線で見てしまう。
墓地があった
もうすこし歩いてみよう。すると墓地が見えてきた。
おや、墓地が見えてきた。
白い門の奥には広大な墓地が広がっていた。
「アルタメサ記念公園」という特定宗教に属さない墓地のようだ。アドビ川(グーグルマップ上の)上流には墓地があるわけだ。
とうぜん中を少し見てみたい。
さすがアメリカのお墓。見たことない形の墓標が、見たことのない配置で並んでいる。
特定宗教に属さない(non-denominational )だけあっていろいろな墓石が並ぶ。
左下のように地面にプレートが埋まってるだけのタイプもあった。
供物として花ももちろんあったが、アメリカ国旗が立ててあるのがアメリカらしいなと思った。
一見して墓石はファミコンのカセットみたいな形がスタンダードのようである。
それとは別に独特で目立つ墓石もあった。見ていて興味深い。
ラブラブなお墓
彫刻がきれいなお墓。
石像が付いたお墓
いろいろ合体したお墓
スティーブジョブズの墓があるらしい
ところでこの墓地に有名な人は眠っているのかな、とスマホを取り出して調べてみると、なんとスティーブジョブズの墓があるらしい。
展開が急すぎてやや困惑するが、一応訪れてみようとネット情報を頼りに立ち寄ってみることにした。
このあたりにあるらしいが……。
ジョブスの墓はないらしい
情報を元にたどり着いたのは、入口近くの一度歩いたはずの場所であった。
さっき来たときには見当たらなかったけどなあ、リンゴの形の墓石……、というのは当然で、ジョブズの墓には墓標がないそうなのである。
墓標がないってどういうことだ?と思って行くと、そこはこのようになっていた。
写真中央がジョブスが眠る場所……らしい
たしかに墓標はない。というか何もない。
墓標がないのは、実在よりも非実在のほうが本質を含むという禅の思想を愛したジョブズの思惑だろうか――。
「ほんまかいな」と、出身でもないのに脳裏を関西弁が駆け抜けてしまう。
拍子抜けしたところで、さてアドビ川である。上流ではどうしても見られないようだ。中流へ急ごう。
ようやくアドビ川とご対面
再びUBERに乗って、上流から中流に向かう(さっきの場所も中流なのだが心の持ちようである)。地図でアドビ川に橋がかかっているのを確認したので、こんどは川の姿が見られるはずだ。
勇気を出して助手席に乗ったものの、やはり会話はできなかった。
ついた。右手のフェンスがあるところがアドビ川だ
10kmくらい下った橋のすぐ近くに降り立つ。道路がそのまま延びたようではあるが、橋がかかっているのがわかる。いよいよだ。
「ADOBE CK」と書いてある
橋には「ADOBE CK.」と書かれている。アドビ川の証拠である。
興奮と緊張が混ざった気持ちを胸に、ゆっくりとフェンス越しに見下ろす。
ほぼドブ川である。
アドビ川の中流はコンクリートで固められていてドブ川のようになっていた。おお、これが夢に見たアドビ川……。
ほとんど枯れていて、水たまりのような水面は下流ではなく風が吹く方に流れていた。
南京錠がかかっていた。アドビ川のドングルだろうか。
落書きみたいなものがされている。読めないけど掲載してもOKな内容であることを祈る
以上。細かく見るような箇所もないので諦めて、記念写真。
この様子だけを見ると、よくこの川を社名にしたもんだと思う。アドビの華やかなイメージに、由来となったアドビ川が全然追いつけていない。
いや、ジョン・ワーノックがアドビシステムズを立ち上げたころは違ったのだろうか。それか先ほど見られなかった上流に住んでいたのか。
諦めきれず近くにあったもう一つの橋に来てみた
相変わらず。こちらも立った瞬間に足を滑らしそうな川。
ちょっとした悲劇が顕在化する形にはなったが、アドビ川はアドビ川である。気を取り直して周辺の住宅がどうなっているのかも見ておこう。
アドビ川はあんなのだったが、この辺は住宅がおおい。もしかしたらこのあたりにワーノックさんが住んでいた可能性もあるので、周辺がどうなっているのか心を澄まして見ていこう。
半数の家にバスケットボールのゴールが置かれていた。
兵馬俑の像があるお宅も1件。
こういう家に住みながら会社を立ち上げたら社名をアドビにするだろうか
しない気がする。
上流と同じく、大きな一軒家が建ち並ぶ裕福そうな住宅街であった。このあたりにワーノックさんが住んでいたとしてもおかしくないと改めて思う。
住宅地なのに清々しい景色だ。ぼくにはしょぼくれた川にしかみえないけど、ワーノックさんはこよなく愛したのかもしれない。
さらに下流へ
聖地巡礼の旅の最後は、川の下流へ向かう。
今度はUBERと似たようなサービスである「Lyft」を使ってみることにした。
これもスマホで車を呼んで、地図で目的地を指定するだけでそこまで連れて行ってもらえる。とても便利だ。
が、目的地の設定ミスで高速道路の上に降ろされそうになった。
Lyftは地図にピンを落として目的地を指定する。本当は高速道路の横の一般道の途中に行きたかったのに、ズレて高速道路の上にピンを落としてしまい、まんまと高速道路で降ろされそうになった。
UBERもLyftも便利なサービスなのだが、二回失敗して落ち込んだ。(融通効かないな~とも思うけど。)
さて下流にたどり着いた。橋から川を眺めてみよう。
アドビ川下流にかかる、たぶん最後の橋。
水量は増えたが先ほどのドブ川の延長、という感じはぬぐえない
案の定、である。コンクリートで固められ、どよんと淀んだアドビ川の姿がそこにあった。底が見える程度で水量をたたえている。
さらにアドビ川下流へと続く川沿いに、散歩用の小道が続いている。地図によると川は最終的に「ソープ池」に注いでいくようになっている。そこを見てみたい。
川沿いに散歩用の小道が続く。急に自然豊かになった。左手の草むらが深く、川の様子は見えない。
アメリカの植物はなんか……
トゲトゲしている。
ひらけたところにきた
しばらく川が見えないまま小道を進むと、開けた場所についた。周りを見ても家はない。ワーノックさんとは明確に無関係な土地だ。
向こうには広大な沼地が見え、左手に水面が見えた。アドビ川だろうか?
水面が見える。あーこれは。
もう池と言っていいほどに水を蓄えている。
さっきまでのアドビ川じゃない。
鳥よ、これは池か。
ここはもうソープ池だろう。アドビ川は終わった、急に。よってこの記事も急に終わらざるをえない。
ちなみにアドビ川とソープ池がまじわる辺りは湿布のにおいがした。
以上、アドビ川散策でした。
ジョン・ワーノックが見たアドビ川の景色は一体どのようなものだったのだろう。社名にしたくなるほど美しかったのか。それはわからなかったが、とりあえずアドビ川の一部を見ることができた。
地図に書かれていなくて今回見ることができなかった川の部分が、社名にしようと思わせるほど魅力的だったのかもしれない。だいたいの史跡は見るとがっかりするものが多いので、僕の中でアドビ川は半分現実で半分虚構にしよう。