特集 2013年7月29日

「ブルーハワイ」は何味なのか

君たちって実際のところ、何味なの?
君たちって実際のところ、何味なの?
夏はかき氷がおいしい季節。定番の味はイチゴ・メロン・レモンといったところだろうか。

それらレギュラー枠に食い込むように、屋台でよく見かけるのがブルーハワイ。ほぼ定番と言っていい頻度だと思う。

ただ、ブルーハワイってどうもおかしい。イチゴやメロンは味を示してるのに対して、色と地名を言ってるだけではないか。その実態は、何味なのだろうか。
1973年東京生まれ。今は埼玉県暮らし。写真は勝手にキャベツ太郎になったときのもので、こういう髪型というわけではなく、脳がむき出しになってるわけでもありません。→「俺がキャベツ太郎だ!」

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味を言ってない味、ブルーハワイ

いつの頃からか、かき氷の定番フレーバーとして認知されるようになったブルーハワイ。子供の頃に初めて見たときは、謎めいた言葉の響きと青という色に衝撃を受けた。
夏祭りにかき氷はよく似合う
夏祭りにかき氷はよく似合う
どこの屋台にもあったブルーハワイ
どこの屋台にもあったブルーハワイ
それゆえ個人的にはブルーハワイとは距離を置いてきた。改めて考えると、味わったことがないかもしれない。同様の方も、意外と多いのではないか。
よく考えると君のこと、知らないかも
よく考えると君のこと、知らないかも
青い食品が漂わせる違和感は健在か
青い食品が漂わせる違和感は健在か
そういうわけで、出かけたお祭りの屋台で初体験かもしれないブルーハワイのかき氷を購入してみた。

店に並んでいたシロップの原材料名を見ても、味の手がかりとなる情報はない。当たり前のようにブルーハワイを名乗っているが、実体は何なのだろう。
綺麗なことは認める
綺麗なことは認める
考えさせられる味わい
考えさせられる味わい
食べてみる。当たり前だが甘い。しかし、ただ甘いだけではない。

ただ、「甘い以外の何か」の味の説明が難しい。明確な他の何かの味ではないのだ。それゆえ、「これがブルーハワイ味か…」と納得しそうになる。
ブルーハワイの正体を知りたい
ブルーハワイの正体を知りたい
いや、納得していいのだろうか。「ブルーハワイと名付けられているからブルーハワイ味」では解釈が単純すぎる。ハワイに行ったことのある私としては腑に落ちないものがある。

ブルーハワイとは何か。各社から発売されているブルーハワイ系シロップを味わって研究してみよう。

早くも明らかになりそうなブルーハワイ

まず最初に試してみるのは、ベル食品株式会社が販売しているシロップ。
北海道からやってきた
北海道からやってきた
味の名は「ブルーハワイ」
味の名は「ブルーハワイ」
ベル食品は北海道の会社で、ジンギスカンのタレなどが主力商品のようだ。タレを扱う流れでかき氷用シロップも売っているのは、なんとなくわかる気もする。

味の表示はきっぱりと「ブルーハワイ」。はっきりそう名乗っている。だからこそ、瓶に書いてあった説明にショックを受けた。
ブルーハワイって言ってたじゃん
ブルーハワイって言ってたじゃん
ピーチとくっきり書いてある。

だとしたら、これはピーチなのではないか。
辺りに漂う桃の香り
辺りに漂う桃の香り
割合をどう解釈すればよいか戸惑う
割合をどう解釈すればよいか戸惑う
瓶を開けると、桃のにおいがふわっと来た。そのまま口にすると、味わいも桃だ。

桃味のブルーハワイ。話が違う。

混迷してきたブルーハワイ研究。ただ、味わってわかったのだが、屋台で食べたのとは明確に違う味がする。ブルーハワイとはどう定義されているのだろうか。
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それぞれに展開するブルー

最初が明らかに桃だったため、話がわからなくなってきたブルーハワイ。続いては株式会社明治屋の製品を試そう。
ハワイ抜き
ハワイ抜き
それが「ブルー」だ。ハワイなきシロップである。

だっておかしいだろ。味なのにハワイっておかしいだろ。ハワイは島だろ。俺たちはぼんやりしたイメージでハワイとつけたりはしない。だからブルー。

そういう解釈でよいだろうか。ハワイに安易に流されない姿勢には共感も覚える。ただ、ブルーって、色であってやっぱり味ではないだろう。
どうしてもブルーって言いたかったのか
どうしてもブルーって言いたかったのか
封が王冠なのがトラップ
封が王冠なのがトラップ
そんな情報不足を補うためか、でかい「ブルー」の下には「ラムネ風味」との表記が。なるほどわかりやすい。

いやいやいや、だとしたらラムネと名乗るべきではないのか。ハワイには流されなかったけど、ブルーには流されてるではないか。
さっきのより色が濃い
さっきのより色が濃い
謎だった比率の意味はイラストで解決
謎だった比率の意味はイラストで解決
ただ、そういう揺れてる感じは嫌いじゃない。約束通り、香りはラムネ、味わってみてもラムネだ。

でも名前はあくまでブルー。ラムネという言葉の懐かしい響きよりも、ブルーという言葉のクールな感じを出したかったのか。そういう年頃なのかもしれない。

食べてみるとわかるが、ラムネゆえにハワイな感じは全くない。ハワイを取り除いた誠実さがそこにある。

レトリックを駆使するハワイ

続いて紹介するのは、肉まんなどで知られる井村屋株式会社のシロップだ。
軽いプラ製容器
軽いプラ製容器
また違う名乗り方が登場
また違う名乗り方が登場
「氷みつ」とクラシカルな言葉を大きく出しておいて、味としては「ハワイアンブルー」と命名。ブルーハワイの倒置法だ。

ブルーハワイが「青いハワイ」であるのに対して、「ハワイの青」であるハワイアンブルー。語順を変えて何か印象が変わるかと思ったが、そうでもない。
味情報なし
味情報なし
覚えのある香りと味
覚えのある香りと味
これまでと違い、パッケージに味の説明は皆無。いよいよ謎めいてきたが、開けてみると記憶にある香りが。味もそうだ。ラムネのようだが、少し違うか。

なんだろうと思ってメーカーの商品ページを見ると、「夏の海と空をイメージさせる爽快なサイダー風味のシロップです」と説明があった。確かにサイダーっぽい味だ。

ハワイアンブルー=サイダー風味。うーん、どうだろう。ブルーはともかく、ハワイが釈然としない。自慢話のようで恐縮だが、ハワイに行ったことのある経験を踏まえての意見だ。
空港にて
空港にて
ちなみにここまでの3つは、旅先の北海道滞在中に購入したもの。帰りの飛行機に乗る前の手荷物検査では、液体入り容器のため取り出して空港係員に見せた。

「こいつどんだけブルーハワイ好きなんだ」と思われたに違いない。休憩室でも「今日ブルーハワイ野郎が来てさあ」と噂になったのだろうか。
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パンに進出したブルーハワイ

北海道では当サイトの編集部員・古賀さんとも一部合流。古賀さんのこちらの記事では、北海道のパン屋にあったブルーハワイ食パンが印象的だった。
食品として心配なビジュアル
食品として心配なビジュアル
パンにおけるブルーハワイ情報を教えてもらって、私もそのパン屋「北欧」の別店舗に行ってみた。
新札幌の店
新札幌の店
ブルーハワイパン、人気なのか…
ブルーハワイパン、人気なのか…
シンプルなブルーハワイ食パンはなかったが、それを用いた「トロピカルブルーハワイサンド」なるものがあった。「人気のブルーハワイパンを使った」と書いてあるけど、そうなのか。

戸惑っていると並んでいた2つのうち、1つをおばちゃんが躊躇なく取っていった。売り切れてはまずいと思って私も慌ててトレーに乗せる。
安定のブルー
安定のブルー
ひとくちかじってやってきたのは、「おお、ハワイ!」という思い。シロップのブルーハワイでは感じなかったハワイがそこにある。

ただ待てよ…と思って、パン部分だけを改めて食べてみる。口の中からハワイが消えた。ごく薄く甘い感じがあるかないか。率直に言えばザ・パンの味だ。

「ハワイ!」と思ったのは中のフルーツとクリームゆえだと悟る。色や名前に流されないのは、やっぱり私がハワイに行ったことがあるからだろう。

鼻腔を襲うハワイ

話をシロップのブルーハワイに戻そう。続いて検証するのはサンクラウン果精株式会社の製品だ。
かき氷っぽいビジュアルの「氷」
かき氷っぽいビジュアルの「氷」
ブルーハワイに回帰する名前
ブルーハワイに回帰する名前
味の表記は「ブルーハワイ」。パッケージのどこにも味の説明はない。念のためメーカーのサイトも見たが、解説なし。

俺はブルーハワイだよ、それ以上でも以下でもない。自明のこととしてのブルーハワイ。このわからない感じがブルーハワイの魅力だ。開封してみよう。
ガーンと放たれるハワイ
ガーンと放たれるハワイ
…あれ、知ってる味するぞ
…あれ、知ってる味するぞ
開けて驚いたのは、これまでにない勢いで漂うハワイ臭。濃さが違う。そしてにおいの質もハワイアンだ。

ハワイに行ったことのある私の中にある、ハワイのイメージの香りがする。ハワイがここに詰まってる。これこそブルーハワイかもしれない。

そう思いながら味わってみる。舌に広がるのはハワイ味、ではない。あれ、この味わかる。わかっちゃう。桃の味だ。一緒にハワイに行った妻に聞いても桃だと言う。

神秘のベールに包まれたハワイ味ではなく、ピーチフレーバー。そうじゃない、私がブルーハワイに求めていたのは、そういうことじゃない。

そもそもブルーハワイって何なの

すっかり根付いたかき氷におけるブルーハワイ。その名の由来は、カクテルの「ブルーハワイ」とされることもあるようだ。

カクテルのブルーハワイは、ラム・ブルーキュラソー・パイナップル果汁・レモン果汁を合わせたもの。確かにハワイアンな感じがする。
ブルーハワイの重要要素、ブルーキュラソー
ブルーハワイの重要要素、ブルーキュラソー
ブルーという色こそ着色料によるものだが、キュラソーはオレンジの皮の香りがついたリキュール。ゆえに、かき氷のブルーハワイの根拠をカクテルのブルーハワイに求めるなら、それらが混ざった味ということになるだろうか。

ミステリアスなブルーハワイ

最後に紹介するのは、ハタ鉱泉株式会社のシロップだ。ラムネの生産量が日本一の会社であるらしい。
「氷つみ」ではない
「氷つみ」ではない
ブルーハワイだが味情報なし
ブルーハワイだが味情報なし
味の名前はブルーハワイ。パッケージにもメーカーサイトにも味の説明はない。
下手すると出すぎちゃう開け口
下手すると出すぎちゃう開け口
開けて香りを嗅いでみる。…何のにおいか、わからない。ラムネ生産量日本一の会社ゆえにラムネ臭もあり得ると思ったが、そういうわけではない。嗅ぎ直して考えてみても、よくわからない。
味わっても謎
味わっても謎
口にしてみる。やっぱり何の味かわからない。

かき氷にはただの白いみつもあるが、あれと同じというわけではない。全く別物の香りと味なのだが、説明できない。妻の感想も「…なんだろう、かすかにオレンジっぽい?でも違うかな…」と曖昧。

だからと言って自分の中のハワイ観と重なるわけでもない。なんだろうね、という味。「ブルーハワイ」という言葉のわからなさとは重なっているかもしれない。

屋台のかき氷屋、ラムネ味の絵が謎
屋台のかき氷屋、ラムネ味の絵が謎

ブルーハワイ=自由味

いろいろ味わってみたブルーハワイ。結論としては「いろいろあるね」ということになる。言葉の意味がわからない分、勝手にやっていいのかもしれない。ブルーハワイは自由の味がする、と大きなことを言ってしまおう。

屋台のかき氷屋では、味の名前にその絵がしばしば添えてあるのだが、写真のラムネ味の絵はカッパ。これまた自由だ。
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