「止まれ」が自由だ
まずそもそものきっかけは、自宅の近所で下水道工事が行われていたこと。
で、一度掘った道路が埋め戻されて、こうなっていた。
消えてしまった「れ」を、かなり一生懸命再現している。これから先読んでいただけると分かるが、じょうずな「れ」だ。
で、出かけた先で、こんどは下のような「止まれ」を見つけた。
「ま」がかわいい。
あー、テープで応急措置する「止まれ」ときどき見るよねー、と思い、同時に「これを集めてみよう!」と思った。こういう地図に載っていないものを集めるというのは重要な仕事なのだ。たぶん。
Twitterで高らかに宣言。
そして他力本願。
と、募集してみたら、すぐさま集まること集まること!びっくりした。
テープとスプレーとを見比べると、テープのほうが標識っぽい。たぶん、スプレーだと、書いた人の字になっちゃうからだと思う。
それがもっとも現れるのが「れ」の二画目の最初のところだ。
左のは正式な「止まれ」に近い、テープならではの省略体。真ん中は手書きをテープで再現。そして右は完全手書き体。
いやまあ、だからなんだ、って話なんだけど。ひらがなって、テープで書くようにできてないんだなー、と気がついた次第。テープっぽさをなんとかしようとした結果のひとつが
修悦体なのだな、と思った。
それにしても「れ」がゲシュタルト崩壊してきた。
送ってくださった
@hiromi_kd さん も「『れ』に迷いが見られます」とおっしゃっている。かなり練習を積んだようだ。(あとから子供が落書きしたのかな?)
上のものなどを見ると、配管工事ならではの「文字の一部だけ書き直し」がさらに事態をややこしくしていることがよくわかる。
なかなか「あっ!」の話しに行かないですが、もうすこし「止まれ」を。
カタカナという発明
「れ」の難しさをカタカナにしてしまうことで解決している例も通報いただいた。
思えばひらがなが発明された時のメディアは毛筆だったのだ。どだいそれをテープで再現するというほうが無理というもの。
だから「と」はひらがなで残っているが「マレ」はカタカナで良いじゃないか、というのが上の事例だ。「ま」の一部分がのこっているが、そんなことは気にしないのだ。
いやまてよ、カタカナの発明時も毛筆か。
二度見させることで停止をうながす作戦だとしたらたいしたものだ、と思っていたら、送ってくださった
@hikaru190 さんによればその後書き直されてしまったとのこと。深読みしすぎだったようだ。
というか、みんななぜ撮ってるんだ
それにしても、ぼくが他力本願で募ったその日のうちにこれだけ集まるとは。
これはつまり、みんな普段から手書き「止まれ」が気になっていたということだ。
とくに
@nass70 さんときたら、すでに「手書き交通案内がかわいい」と銘打って収集していた。すばらしいー!
カメラがデジタルになり、携帯電話機にカメラが搭載されて久しいが、その成果がつまりこういうことなのだ。テクノロジーはぼくらのような収集癖のある人間の味方だ。
で、「あっ!」
で、こういう個性的な「止まれ」群を見て思い出したことがあった。
以前読んだ読売オンラインの記事で、路面に「あっ!」と書かれている街が大阪にある、というものだ。(いちおう当時の記事URL載せておきますが、例によってもう消えてます→ http://www.yomiuri.co.jp/e-japan/osaka/news/20121013-OYT8T00102.htm)。
場所も分かったので、これは行ってみるしかあるまい。先日ちょうど大阪へ行く用事があったので、ついでに最寄りの駅へ向かった。大阪モノレールの南摂津駅である。
大阪モノレールにはよく乗るが(もちろん千里の団地見に行くためにだ)この駅では初めて降りた。こうして見るとモノレールの駅舎って高いところですごい存在感をはなってる。
自宅から遠く離れた大阪は摂津だが、駅周辺は典型的な郊外の風景で落ち着く。やっぱり
こういう光景がすきだなー。
とはいえ、目的地周辺は安威川と淀川に挟まれた、細かい水路がぐねぐねと走っている街で、ロードサイド的な風情から急にこういう感じになる。こういうのもすき。
マンションマイ橋。
町工場マイ橋。
たぶんもとはマイ橋だっただろうものが駐車場になって柵で囲われてトマソン的なものに。
写真をご覧いただければ分かるように、雨に降られた。冷たい雨。でもご覧のように道中楽しかったので、気にならなかった。
ぼくは気にならなかったけど、週明けの昼、カメラ片手に男がふらふらと降りしきる雨の中歩いている様子はさぞかし不審だったと思う。
杭打つスキルがあるんなら自分で始末しなさい。
なんできみがそんなに偉そうなのだ。あと草花踏みにじるのもやめなさい。
そうそう!それが正しい態度!
という感じで道くさくいながら進んでいったら、ぐねぐねの道の先に急に「あっ!」が現れた。
ぼくが「あっ!」って言っちゃったよ。
道路標識における小書き文字の難しさ
ほんとうにあった!
平日の昼間で人気のない住宅街をうろうろ歩いてようやく辿り着いた「あっ!」。じんわりと得体の知れない達成感がこみ上げてきた。
前述したように元の記事が無くなってしまい、記憶も定かではないんだけど(なぜ保存しなかったのか!)、ここらへんのぐねぐねした道は見通しが悪く、しばしば事故が起こっていたらしく、その対策としてより目を引く表示にしたのだとか。
それにしても、よく見ると「あっ!」ではなく「あつ!」に見える。この日は寒い日だったが、真夏に見たらしっくりと来るだろうか。
真上から見るわけではない路上の文字における小書き文字の難しさである。「あ」より「っ」のほうが手前にあるだけに、よけい小さく書かなければならない。
で、この先にもう一つある。
角を曲がると、向こうに小さく見えた!
画面右下の手書き「とまれ」もかわいい。
それにしても、初めて見たぼくの目は確かに引いたけど、地元の人は慣れちゃってるんじゃないかとも思う。どうなんだろう。
いやー、ほんとちょっと思いついてなげかけるとみんなが教えてくれる。いい時代になった。インターネットってすてき。
それにしても、関東にもあるんだ!しかもそんなに遠くない。これも見に行かなきゃ!
ここも川沿いだ
埼京線の戸田公園駅が最寄り駅。はじめて降りた。
駅前には「
歯医者キャラ」がいた。なぜ熊。というか、熊だよねこれ。
現場までおよそ2km。けっこう距離があった。倉庫が続く魅力的な道をてくてくと歩く。楽しい。
途中倉庫の扉が開いていたので、そっと覗いてみたり。楽しい。
地図を見てもらうと分かるが、さきほどの大阪の例と同じように、ここも大きな川(今回の場合は荒川)の氾濫原にある町だ。「あっ!」はこういう場所に発生しやすいのか?
ちなみに最寄り駅はこの戸田公園駅と三田線の西高島平駅のどちらかだった。ちょうど同じぐらい離れている。なぜ西高島平にしなかったかというと、「あっ」そっちのけで高島平の団地を見に行ってしまいそうだったからだ。魅力的な団地の誘惑には抗いがたい。危うきには近寄らず、だ。(結局帰りに行っちゃったけど)
まさかの!
ざっくりとした重機の置き方
戸田市にもいた!淡々と犬表現。すごんだり申し訳なくなっていたりしない。
飼い主がどうにかせねばなるまい、と思わせる自然体の犬。大阪のあれはなんだったのだ。
どこに行っても楽しい。一度でいいから退屈する町に出会ってみたい。
で、問題の場所に近づいてきた!
大きな倉庫街の前。ここだ!
大阪とはだいぶ趣を異とするダイナミックな通り。ひっきりなしに車がやってきて、渋滞状態。なかなか確かめられない。もどかしい。
ようやく流れが途切れたものの…嫌な予感がする…
なんと!なくなっている!
そうなのだ。なくなっていたのだ。「あっ」って言ってるポーズで記念写真でも撮ろうと意気込んでいたのに!
ストリートビューと比べてみると、この矢印みたいな減速マークがはっきりしていることから、どうやらこれを新しく書き直したときに消されてしまったようだ。
いやもうほんとがっかり。せっかくここまで来たのに。道中楽しかったからいいけどー。
道路をよく見ると、削ったような跡があった。無念。
他の例をご存じの方、教えてください!
というわけで、いまのところ「あっ」標識は大阪の一例のみとなっている。もしほかにもあるよ、っていうのをご存じのたかがいらっしゃったら、ぜひ教えてください!見に行きます。
きたる2013年の3月3日に、カルチャーカルチャーで「坂サミット」というイベントが行われます。坂好きが集まって坂談義。ぼくは「高低差50cm以下の"Aカップ坂"」をテーマに出演しますよ!詳しくは→
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