特集 2012年12月1日

世界一辛い唐辛子でうまいつまみができてしまった

ものすごくうまいつまみを開発してしまったので報告します。
ものすごくうまいつまみを開発してしまったので報告します。
世界一辛いといわれる唐辛子、ジョロキア。

ためしに買ってみたらなるほど辛い。確かに最強だ。

この辛さを利用して苦手な食材を克服しようとしていたところ、うっかりうまいつまみができてしまったので報告したいと思います。
1975年愛知県生まれ。行く先々で「うちの会社にはいないタイプだよね」と言われるが、本人はそんなこともないと思っている。(動画インタビュー)

前の記事:深海からサメとイカが上がってきた

> 個人サイト むかない安藤 Twitter

これがジョロキア

ブート・ジョロキアはタバスコの200倍の辛さとしてギネスにも認定されている名実共に世界一辛い唐辛子である。

今回たまたま手に入れることが出来たので一つ食べてみた。
これがジョロキア。鮮やかな赤です。
これがジョロキア。鮮やかな赤です。
見た目は小さめの赤ピーマンみたい。
見た目は小さめの赤ピーマンみたい。
一つ食べてみた、と書いたが実際は一つも食べていない。一つどころか半分のそのまた5分の1くらいのかけらをかじっただけなのだが、それでもここに写真が残っていないくらいに悶絶した。

角田光代さんの小説に、タイの辛い唐辛子を食べて自分の中身と暑いタイの空気とが一体化した、みたいな表現があったような気がするのだけれど、まさにそれである。

ほぼ口に入れた瞬間だった。顔中の穴という穴からいろいろな水が噴き出した。皮膚が溶けているんじゃないかと思うほどに。もうだめだ。

その日はしばらく口の中が痛かった(次の日下痢した)。

その話を知り合いに話したところ、彼も食べたことがあるらしく「飲み会でふざけて丸一個食べたら次の日まで普通の生活ができなかった」と言っていた。想像に難くない。

その恐ろしさを知った上で、記事を書いています。

ジョロキアで世界一辛い柚子コショウを作る

このジョロキア、なんとかして食べられる状態にできないだろうか。

いろいろ調べてみたところ、柚子コショウにするのが一番、との情報を得た。レシピもいくつか紹介されている。

つまり世界一辛い柚子コショウである。それはそれで興味があるだろう。さっそく作ってみることにした。
ゆず。
ゆず。
ジョロキア柚子コショウの作り方は一般的な柚子コショウの唐辛子部分をジョロキアに置き換えるだけである。作業自体はいたって簡単。

ただ、相手がジョロキアだということを忘れてかかるとひどい目にあうので、やってみたい方は最後まで読んで注意点を押さえてください。

まず種を抜いたジョロキアと柚子の皮をフードプロセッサーでみじん切りにする。
手で刻んでもいいんですが、機械でやることをお勧めします。理由は後ほどわかります。
手で刻んでもいいんですが、機械でやることをお勧めします。理由は後ほどわかります。
30秒くらいで粉々になる。
きれいな色ですね。
きれいな色ですね。
きれい、と思って写真を撮っていたところ、体に異変が。
この後この人はくしゃみが止まらなくなります。
この後この人はくしゃみが止まらなくなります。
匂いが痛いのだ。

みじん切りにしたことでジョロキアの辛味成分が空気中に放出されたのだろうか。普通に息を吸うだけで鼻の奥とか唇の荒れたところとかが痛い。僕はこの後エンドレスくしゃみ状態へと突入した。

この後、みじん切りにしたジョロキアと柚子の皮に塩を加えてすり合わせるという作業に入るのだが、これがまた刺激的だった。
量としてはジョロキア5:柚子の皮10:塩1くらいの割合です。
量としてはジョロキア5:柚子の皮10:塩1くらいの割合です。
刻んだ時点からくしゃみが止まらなかったので、マスクをして作業していたのだが、続いて目が焼けるように痛くなってきた。やるならゴーグルもあった方がいいだろう。

次に指先である。薬指に見た目ではわからない程度のささくれがあったようで、特に触れた覚えもないのにトゲでも刺さったような痛みが襲ってきた。

なんだこれ、本当に食べ物なのか。
ちょっとしたささくれが痛い。
ちょっとしたささくれが痛い。
さまざまな痛みを乗り越え、完成したジョロキア柚子コショウがこちらである。
ペースト状になったら完成です。
ペースト状になったら完成です。
これをビンに入れ、冷蔵庫で一日寝かせて完成。
ビンは熱湯で消毒してから使うといいみたいです。
ビンは熱湯で消毒してから使うといいみたいです。
柚子の皮とよくなじませたことがよかったのか、次の日にビンのふたを開けてみると意外なほど爽やかな香りが広がった。目も痛くない。調子に乗って胸いっぱいに吸い込んだらやはりむせたが、それでも昨日に比べてかなり丸くなった感じがする。

箸の先につけてちょっと舐めてみた…

それはやはり世界一辛い柚子コショウだった(また写真がなくてすみません。口に入れた瞬間に風呂上りみたいな顔になりました)。

辛い。

辛さで苦手を克服できないか

世界最辛の柚子コショウができた。

これだけの辛さが手に入ったわけだ。なんとか有効に活用したいと思う。

たとえば自分の苦手なものの嫌いな部分を辛さで紛らわせられないだろうか。美味しいとかマズイとか感じる前に舌を攻撃するのだ。辛さに免じて食べられるようになるかもしれない。

匂いがだめ

苦手を克服、と思って苦手なものをスーパーで探してみたのだけれど、考えてみると僕にはほとんど苦手がないのだ。普段はなんでも食べる。それでも無理に細かい苦手をかきあつめてみた。これらを克服できたらうれしい。

まず最初の苦手がこちら、黒オリーブである。
だめだ。
だめだ。
何かの機会に(たぶん安かったんだと思う)おしゃれな食材だな、と思ってかっこつけて買った黒オリーブである。一粒食べてだめだと思った。

たぶん僕が庶民だからだろう。クセのある地中海風味がどうしても合わなかったのだ。主にその芳醇な香りが苦手。

改めてちょっとかじってみた。
やっぱだめだ。
やっぱだめだ。
ここでジョロキア柚子コショウの登場である。その痛みを伴う爽やかな香りで黒オリーブの香りを封じ込められないだろうか。
すでに匂いで勝っている。
すでに匂いで勝っている。
こんな感じで乗せてみた。
こんな感じで乗せてみた。
黒オリーブにジョロキア柚子コショウを乗せてみると、香りはさすが柚子コショウが勝っている。おお、これならば食べられるかもしれないぞ。
いいんじゃないか。
いいんじゃないか。
一息に食べてみた。
うひゃあ。
うひゃあ。
!
ぜんぜんだめだ。

まず何がダメだって、ジョロキア柚子コショウが辛すぎるのだ。

あの量食べただけで30分くらいひざを抱えてガタガタ震えた。思い出しながら書いている今でも唾液がでる。

あと不幸なのは辛さの後ろに僕が苦手な黒オリーブの香りがしっかりと残ったところだ。まったくごまかせていないのだ。むしろ辛い分損したといえる。

ひざの震えがおさまったところで次行きたい。

食感がだめ

ラッキョウである。あのシャリシャリとした食感が苦手なのだ。

子どもの頃、家の縁側で母親がラッキョウを漬けていたことがあって、あの独特の甘い酢の匂いはなんとなく懐かしくて嫌いではないのだ。でもいかんせんシャリシャリしていてだめだ。

果たして辛さでこの苦手食感を克服できるのか。
10年くらいぶりに食べると思います。
10年くらいぶりに食べると思います。
お灸みたいですね。
お灸みたいですね。
これはだめだろうなー。
これはだめだろうなー。
考えると躊躇してしまうので一気に行こう。はい、パクッ!
ゴーー!
ゴーー!
ニュースです、シャリシャリしたラッキョウのあの食感はばっちり残ります!しかもそれに前後するようにしびれる辛さが押し寄せてくるので注意。痛シャリシャリである。

その後は堰を切ったように汗やらよだれやら涙やら、とにかく水分が途切れることなく出続けた。
水とか飲んでも無駄ですから。
水とか飲んでも無駄ですから。
辛さでのおかげで味はよくわからなかった。でも苦手な食感はちゃんと感じた。損だ、これ辛いだけ、損だ。

というわけでジョロキアをもってしてもラッキョウ、克服できませんでした。

次のページで奇跡が起きます。

味がだめ

最後はブルーチーズである。ちょっとクセのあるおつまみとしてワインに合わせてみたり、好きな人も多いかと思うのだが、なにしろ僕はあのカビの味がどうしても苦手なのだ。ホコリっぽい学校の資料室みたいじゃないか、あの味。
どうせ苦手なので安いやつ買ってきた。
どうせ苦手なので安いやつ買ってきた。
しかし見るからにカビている。

フタをあけたとたんに部屋が学校の資料室に見えた。きっといまカビの菌糸がわいわい言いながら空気中に飛び出しているにちがいないのだ。ああファブリーズしたい。
味のわかる大人になりたい。
味のわかる大人になりたい。
あえてカビたっぷりのところを切り取ってジョロキア柚子コショウを乗せてみた。一見しゃれた小料理屋で出てきそうな見た目ではある。
でも明らかにカビてる。
でも明らかにカビてる。
鼻をつまんで失礼します。
鼻をつまんで失礼します。
これまで2敗しているので正直あまり期待はしていないのだけれど、さて、チーズのカビ味は辛さでなんとかなるものなのか。
うむ。
うむ。
え!
え!
え!
…おいしい。

(はいいま奇跡おきましたー)

信じられないことが起きた。

まず辛くないのだ。意味がわからない。
意味がわからないからもう一回食べてみた。
意味がわからないからもう一回食べてみた。
やっぱり辛くない。

写真のとおりジョロキア柚子コショウを増量してみたのに、だ。
やっぱりうまい。
やっぱりうまい。
どうしたことか、うまいのだ。

あの舌がしびれるほど辛かったジョロキアがチーズのコクに完全に封じ込まれている。それと同時にチーズのカビ臭さが柚子の香りにうまく押さえ込まれているのだ。焦る、これ焦る。予想外すぎて、焦る。

もしかしたらジョロキアとブルーチーズの組み合わせってとんでもない財宝なんじゃないだろうか。記事を書く前に特許とっておいた方がよかったのかもしれない。そのくらいうまい。
結局この組み合わせで半分くらい食べてしまった。
結局この組み合わせで半分くらい食べてしまった。
苦手だった食材がうまいつまみに変わった瞬間である。

まねしてみてください

黒オリーブとラッキョウはどうにもできなかったジョロキアだが、ブルーチーズとは完全に融合した。苦手を克服するつもりが、うっかりうまいおつまみを開発してしまったことになる。大丈夫か、僕はこれから後ろから狙われたりしないだろうか。

ジョロキアが手に入ったらぜひ柚子コショウにしてブルーチーズを買ってきてもらいたい。今のところこの組み合わせ以外はひたすら汗をかいてのた打ち回るだけなのでお勧めしないですが。
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