熊が支配する土地、熊本
彼がそのゆるキャラ
「くまモン」という熊のキャラクターだ。2011年3月に生まれた、まだ新しいゆるキャラ。誕生日は3/12、サプライズの日だそうだ。ちょっと無理のある語呂合わせかと思ったが、同日で「スイーツの日」というもっと無茶な語呂合わせもあるそうなので、まだわかりやすい方である。
もともとは九州新幹線全線開業をきっかけに生まれたとのこと
このくまモンの浸透具合がすごいのだ。
具体的な例を挙げて紹介していこう。
公共系
くまモンは熊本県が管理しているキャラクターなので、公共のポスターや掲示に顔を出すことが多い。
たとえばこういった例。
今年の4月1日に熊本市が政令指定都市になったそうだ。そこから生まれる町おこし機運が、くまモンの台頭ぶりを加速させている部分はあると思う。
ちなみに上の写真で左にいるのは熊本城のゆるキャラ「ひごまる」。2007年に生まれたキャラクターでくまモンより年上だが、街中ではあまり見かけない。この点からもくまモンの浸透度の高さがうかがい知れる。
商店街に点在するくまモン。一瞥しただけで複数が視野に入ってくる
県がやってるという町おこしBARみたいなお店もあった。BARの上には立体くまモンがあるのだが
額に鳥の銃撃を受け、瞳孔が開ききっていた
自分で紹介しておいてなんだが、こういったゆるキャラ活用は普通である。どこの自治体でもやってそうなゆるキャラアピール。
では次はどうだろう。
パッケージにくまモン
いわゆる熊本名物の食品には必ずと言っていいほどいるのである。くまモンが。
南関あげ。油揚げの一種らしい。
酒瓶にも。キュートなほおの赤み、その秘訣は飲酒か
肉食獣が草食獣を抱え込んでの「馬刺し」は自然の厳しさを感じさせる
このくまモン、他より顔がちょっと素朴な気がする
この棚ぜんぶくまモン
BLACKモナカアイスは何が熊本なのかと思ったらモナカに竹炭が練り込んである
名物の他にも、全国で売ってる商品の熊本限定パッケージにも、くまモンがいる。
おなじみ、麦とホップにも熊本限定パッケージが
これらは地元でも普通に食べられている物だろうし、ということは熊本では各家庭の冷蔵庫に必ず一頭はくまモンが潜伏していると思って間違いない。
まあでも、町おこし的ニュアンスも強い商品達でもある。こういうとこにゆるキャラ、いがちだよね。普通といえば普通。では、これはどうだろう。
くまモングッズが多すぎる
商店街を歩くと10mおきにくまモングッズが売られている。どのゆるキャラもグッズの一つや二つ作られてると思うが、ちょっと多すぎるのだ。そして展開が幅広すぎるのだ。
洋服屋にはくまモンソックス
本屋にはブックカバーだ
別の本屋はくまモンサーカス中
ダイエーも入るとまず最初にくまモン。文具やキーホルダーなど
薬局では絆創膏
時計屋でくまモンウォッチ
ドンキホーテのショーウィンドウはくまモンに占拠されている
ゲームセンターでもあふれかえるくまモン
トラックにもくまモンが貼ってあった。全然タッチの違う熊が同席
くまモン推しのドーナツ屋
そのへんの店の業務用雑貨が唐突にくまモンだったりする
スーパー、薬局、本屋、時計や、服屋、ゲームセンター、コンビニ…。
とにかくあらゆるジャンルの店でくまモングッズが売られている。
くまモンオフィシャルサイトのグッズコーナーを数えてみたところ、165種類あった。おかげで、街を歩いてるとほんとに10mおきにくまモンがいるのだ。
そろそろ浸透度を実感してもらえただろうか。でも、これで終わりじゃない。
インディーズくまモン
くまモンシティ・熊本の真骨頂はここからだ。くまモン、やたらいるだけじゃなくて、みんなくまモンが好きなのだ。自治体が町おこしのためにゴリ押しで配置してるわけじゃなく、本当に人気者なのである。その証拠が、このインディーズ系くまモンの多さ。
ツボ押しのくまモンはなんだか素っ頓狂な顔
別の整体院では珍しい横顔のくまモンが登場
求人系くまモン
あどけなさがたまらない、勧誘くまモン
ほおの赤丸が大きいくまモンは総じてあどけなく、可愛い
ラーメンくまモンは親戚のおじさんっぽい雰囲気
旅行会社の看板。ツアー先にも現地のゆるキャラがいるはずだがくまモン愛に押され気味
保険屋くまモンはなんと折り紙
ヌーブラの安さに降参のくまモン
落書きタッチのくまモン
コンビニでプラプラする仕事に就いたくまモン
ついに壁画になったくまモン
これはくまモンではないが明らかに意識していると思う
インディーズくまモンの参入により、ただでさえ10mおきだった街中のくまモン間隔が、さらに縮まり5mおきくらいになった。
このあたりでは人間よりくまモンの方が多い。…というのはさすがに言い過ぎだが、比較対象を「とんかつに醤油かける派の人間」くらいまで絞ればくまモンに勝算があると思う。
熊本は完全にこの熊に支配されているといっても過言ではない。
それを踏まえて、記事は次ページに続きます。
ここから本題
長くなったが、ここまではこの記事の助走段階に過ぎない。
みなさんにくまモンをたくさん見てもらい、その姿を目に焼き付けてもらうための2ページだった。
いよいよ本題にはいるのだが、まずはこのキャラクターを見てほしい。
これは僕が今、EXCELのオートシェイプで適当に描いたウサギのキャラクターである。仮にウサ彦と名付けよう。このウサ彦、適当だけあって全く見覚えのない仕上がりとなっているが、これに、ちょっとカラーバリエーションをつけてみることにしよう。黒いウサギだとかっこいいかな…。
く、くまモンじゃん!!!!!!!!!!!!
僕のウサ彦が、一瞬にして熊本の人気ゆるキャラ、くまモンになってしまった!
そう、くまモンって、実は色なのである。名前に囚われると熊要素に目がいってしまうが、実は熊じゃなくてもくまモンっぽいのだ。
そしてこれはキャラクターに限ったことではない。少なくとも僕は、大通りを何往復もしているうちに、すっかり何でもくまモンに見える病気にかかってしまった。
くまモン
どこから見てもくまモン
くまモン
ほら、くまモン
くまモン
完全に一致
赤、黒、白、この組み合わせがすべてくまモンに見えてきただろう。もしかして見えない人がいるかも知れないので、念のためちょっとくまモンっぽくしてみよう。
これでも見えなかったら、1ページ目に戻ってもう一度くまモンの写真をぜんぶ見直してほしい。
経験上、30分もくまモンを見続けると80%の人が、1時間で98%の人が、くまモン病に罹患する。いちどかかってしまえば、上のような加筆がなくてもくまモンに見えてくる。赤、黒、白、の組み合わせであれば、なんでもくまモンに見える。
進行する病
なんでもくまモンに見えてしまうくまモン病。
この病気は進行性のものだ。たとえばさっき挙げたこれ
は誰でもくまモンに見えると思うが、僕レベルになると、これ
くまモン的なるもの・くまモン的でないもの
まだ病歴が浅い人は、何でもくまモンに見えるというわけではない。
視点を変えると、同じ赤黒白であっても、病歴が浅い人でもくまモンに見える「くまモンっぽい物」と、病気の進行した人だけがくまモンに見える「くまモンっぽくない物」があるようなのだ。
僕はくまモン病研究の第一人者として、この問題にも仮説を用意した。くまモンっぽさの判定指標である。
オリジナルくまモンをよく見てみよう。
ざっとこれだけの点に気づく
こんな特徴がある。これと共通点が多い図柄が、くまモンに見えやすいはずだ。
これを要素の重要さに応じて点をつけたのが下記のリスト。
条件のあとのカッコ内は得点で、足していけばくまモンに見える度合いが計算できる。
すべての項目を満たす、満点の図形
すべての項目を満たさない、0点の図形
街のくまモンたち
これを街中の看板にも適用してみよう。
×××○で1点。微くまモン
×○××で2点。上級者向けくまモン
○××○で6点。まあまあ、くまモン
○○○×で9点。ほぼ、くまモン
○○○○で10点。完全にくまモン
だんだんくまモンっぽくなっていくのを感じてもらえただろうか。
まあ当然、僕くらいの重症患者になれば、得点に関わらず全部くまモンに見えるのだが。
くまモン物体
いままで看板等の平面の図ばかり見てきたが、三次元世界にもくまモンは存在する。
そして同じように、くまモン採点表が使用可能だ。
おなじみのこれも今となってはゆるキャラにしか見えない(○×○○ 8点)
健康にいいくまモン(○×○× 7点)
時速60キロで走るくまモン(○○○× 9点)
くまモン虫干し中(××○○ 3点)
東京でもよく見るくまモン(×××× 0点)
繰り返しになるが、得点はあくまで病歴が浅い人向けの判定法であり、末期患者にとっては、赤黒白で構成されていれば0点でもくまモンであることに注意してほしい。
中学7年生かな、くまモン(○○×○ 8点)
街の交通安全を守るくまモン(○○×× 7点)
回収待ちのくまモン(×××× 0点)
もう何の話だか分からなくなってきてると思うので、改めてくまモン(○○○○ 10点)
深刻な風土病
くまモン病は医学界ではまだ知名度が低いものの、熊本でのみ罹患する深刻な風土病である。観光やビジネス等で訪れる方はぜひいちどかかって、この奇妙な感覚を味わってほしい。なお、治療法は現在確立されていない。
これを見て気づいたが、エヴァンゲリオン風表記も完全にくまモンである。