うわばきを買った
値段は1000円弱。ブランドは懐かしのムーンスター。
名前書いた
箱から取り出してみると、ずいぶんぐにゃぐにゃだ。明らかに外向きではないのだが、悪い奴らはけっこう大胆に遠くまで歩き回っていた。
今思えば、その辺りの「かまわなさ」が何となく「無頼」みたいなイメージを演出していたんじゃないかと思う。履物にこだわっていたんじゃ悪くはなれないのだ。
わかるかい
室内で履いてみた
久しぶりに履いてみるととても薄い。ビーチサンダルなどよりも、ぴっちりと足のサイズに合わせているために、そう感じるのだと思う。
なんだか素足でいるよりも、地面との距離を近いような気がする。これから「外に出よう」という気持がある分動揺しているのかもしれない。大丈夫か、おれ。
外に出ました
道路を歩く
なんだ、楽勝だ。早朝だし、誰もいないし。家の中でビビっていたのがバカみたい。
…そんな風に平静を保てたのは、最初の1分くらいだった。
家から100メートルくらい離れたら…
もう全然落ち着かないです…
あー、ダメだ。
こういう風に路上でちょっとだけ変なことをしている状況、僕はすごく弱い。自分で知っていたのだが、こんなに早い段階で「あー、ダメだ」が来るとは思わなかった。
ここから先、僕の経験する時間は、片栗粉でとろみをつけたように重たく濃度を増して行く。
電車に乗って浅草へ
今回はこのまま、浅草に向かう。僕の小学校の頃の修学旅行の行き先は東京で、浅草にも行った。そして(僕の記憶の中のことで冷静に考えるとおかしいのだが)どうも、そこでもうわばきで歩いているやつがいたような気がするのだ。
んー?
実際にそんなやつはいなかったかもしれないが、そういうイメージが僕にあるのは事実。そしてそれが、僕の中である種のルサンチマンを形成しているように思えてならない。
今回はその辺りのことを、うわばき履いて克服できないかな…と思っている。でも難しそうだなあ。
いつもの駅が恐い
ツイッターに逃げる
電車の中
電車は公共物というイメージが強くあるので、その中で少し変なことをしているのはさらに気が重い。
悪い奴らもこういう気持ちと戦いながら電車に乗っていたのだろうか。
思わずツイッターに弱音を吐いてしまった。
いくらなんでも本音過ぎたか
煽り
「うわばきかっこいー!」
友人からメールが来た。
ツイッターを見ておきながら、わざわざ携帯のメールに送ってくる辺りがなんとも心得ている。直撃だ。
悪いやつを目指しているのに、なんでいじめられっこみたいなことになっているのか。
上野で乗り換え(元気ない)
うわばきよ、お前エスカレーターなんて見るの初めてだろ
だいぶテンションが下がっていたが、この「うわばきでエスカレーターに乗る」のは興奮した。希少な組み合わせだ。うわばきで外に出てよかったと、乗っている間だけ思った。
でも何がすごいのか説明できない
雷門に到着
この日は三連休の中日。混雑を避けるために出来るだけ早めに出てきたのだが、それでも人は多かった。
雷門前でピース
なんでピースしたのかよくわからない。ただ、こんなにうわばきを気にしているピース、世界にないということは確かだ。
ところどころ大きくなったり小さくなったりしています
おれがうわばきだから通行人に三脚を蹴られた
門を抜け、仲見世通りに入って行く。ここの石畳がなかなかかっこい。
仲見世
靴屋の前で自分にプレッシャーをかける
もの言わぬうわばき
500円と手頃(買ってみたらベニヤ板みたいな素材で出来ていた
木刀を買う
ここでアイディアが閃いた。木刀はどうだろうか。あれは修学旅行で悪いやつが買っていた気がする。
ああいうのがあれば、もうちょっと堂々と行けるんじゃないだろうか。
なかなか鞘から抜けない
やっと抜けた…
が、なんか逆効果だ。矢印が収まりきらないくらいの気分である。
そしてこの後、自分撮りの三脚の片付けをしている間に木刀を盗まれた。全然惜しくないのに悔しい。
お参り写真
最後に浅草寺にお参りしてこの試みを終了にしよう。この辺まで来ると人が多くてさすがに三脚は迷惑になる。周りを見渡して一番人の良さそうなおばちゃんに、僕がお参りする写真をお願いした。
カメラを渡して
うわばき企画なのに、肝心のうわばきが写っていない。
撮り直しを要求するわけにもいかないですよね
しかし、これが客観的な視点なのかもしれない。家から僕がずっと気にしていたうわばきも、人の目には全然入っていなかったのだろう。
浅草寺を出てスカイツリーとピース(少し笑顔)
…外をうわばきで歩き回っていた悪い奴らも、こういう過程を経て大人になっていったのかな。ともかく、あの頃出来なかったことをやり遂げました。
イニシエーションうわばき
ちなみに、この日は38℃を記録した猛暑の日。正午になっても外にいたら、頭がクラクラしてきた。スポーツドリンクを何本も飲んでも、一日中喉が渇いていた。
少年時代のあの時出来なかったことをこんな風に逐一やり直していたんじゃ、全然身が持たない。
最後にうわばきの汚れ具合見たら、ガムのカス踏んでた