名古屋駅のすぐ近くに森がある
名古屋駅のすぐ近くに森があるのをご存じだろうか。その名も「ノリタケの森」という。
「ノリタケ」は古くからある有名な陶磁器のメーカー。そのノリタケが運営する博物館やらレストランやら体験工房なんかが、このノリタケの森の中に点在しているのだ。
僕は愛知県の出身なので名古屋駅は今みたいにきれいになる前から知っているのだけれど、当時は駅から少し離れるとパチンコ屋さんばかりが乱立しているイメージだった。それが今ではこんなおしゃれな森ができているのだ。当時はデートするにも困ったものだが、今はいいよなと思う。
この広大な森を抜けた先にそびえる巨大な建物がある。
イオンである。
ノリタケの森に隣接するイオンは、森の荘厳なイメージを損なわないようにか、外観やレイアウトにかなりこだわりがあって、普通だったら広い駐車場を作っているであろうスペースに池があったりするのだ。僕はいろいろな地方都市でイオンを見てきたが、こんなにしゃれたイオンは他に見たことがない。
イオンといえばフードコート
しかしそこは我らがイオンである。外観がどんなにしゃれていようが、入ってしまえば非常に落ち着く。特にフードコートの居心地の良さは自宅の次くらいにランクインする。
ちょうどおなかも空いたのでスガキヤでも食べて行こうかとフードコートをぶらついていたところ「なごや文六」といういかにも美味い名古屋めしを食べさせてくれそうなお店を見つけた。
丼がメインのお店らしく、ディスプレイされたメニューがどれも最高だった。
悩みながら目を横にずらすと、ちょっと見たことがない丼が激推しされていることに気づいた。
焼きそば丼である。天丼やカツ丼などのスター級がそろう中、単独でパネルを独占する推されようだ。しかしなぜ。
お店の推しに応えるかたちで焼きそば丼を注文させてもらった。
そしたらすぐに出てきた。
思わず三度見したが、何度見ても焼きそば丼だった。
見えていないが、焼きそば丼というくらいだから下にご飯が隠れているのだろう。
実物を目の当たりにして冷静になったが、いったい何がしたいのだ。近所で祭りでもあったのか、それとも翌日が遠足なのか。そのくらいの興奮と混乱とが丼の上に共存している。あと狂気も少なからず。
美味い、でも食べにくい
とにかく食べてみることにした。焼きそば丼なのできっとご飯の上に焼きそばが乗っているのだと思うのだけれど、もしかしたらそんな僕らの予想を裏切る何か仕掛けがなされているのかもしれない。
箸をつけてみて驚いた
想像してみてほしい、ご飯の上に焼きそばを乗せて箸で一緒に食べるところを。ものすごく食べづらいから。
ご飯の粒子と焼きそばの線とがまったくもって一致しないのだ。焼きそばをすくおうとするとご飯をないがしろにし、ご飯をすくおうとすると焼きそばが逃げる。箸で一緒に食べるのは無理筋なのである。
きっと試食の段階で誰かがこれに気づいたのだろう、スプーンがついてきていた。その段階で商品化の是非を問えよとも思ったが、スプーンを使って焼きそばを裁断しながらご飯と一緒に口に運ぶと、かなり確実に焼きそば丼を食べることができることがわかった。
確かに美味しい、だけど食べにくい
焼きそば丼はほかほかのご飯の上にあつあつの焼きそばが乗った丼だった。
何かどんぶりであるための仕掛けが施されているのかも、と期待したがそんな小細工はまったくなく、ストレートに焼きそば丼である。あえて家で作ろうとは思わないが、味は想像を裏切らない美味しさ。まあそうだよな、焼きそばもご飯も美味しいもんな。
名古屋はいつも僕らを驚かせてくれる。こういったメニューにたまに出会えるから、僕らは名古屋が嫌いになれないのだと思う。
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