特集 2024年12月14日

沖縄の知られざる地味おやつ「うむくじ天ぷら」

めちゃくちゃ地味な見た目だけど、食べたらスゴい紅芋のおやつ。沖縄のポン・デ・ケージョこと「うむくじ天ぷら」をご存じだろうか。

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沖縄が誇る地味スゴおやつ

沖縄銘菓ときいて真っ先に浮かぶのは「ちんすこう」や「紅芋タルト」だが、それらはお土産よりの食べ物で沖縄に住んでいるとあまり食べる機会がない。沖縄県民にとってはおばあちゃんや親戚から大量に配られる「サーターアンダギー」のほうがまだなじみがあるぐらいだ。

そんな沖縄県民にとっての普段着おやつのひとつに、沖縄県外ではあまり知られていない「うむくじ天ぷら」というものがある。

沖縄の方言で「うむくじ(んむくじ)」は「芋くず」を意味し、「うむくじ天ぷら」の他、「うむくじアンダーギー」とも呼ばれている。文献などを見てみるともともとは芋くずにニラなどをまぜたしょっぱい揚げ物だったらしいのだが、現在は沖縄の特産品である紅芋と芋くずを使ったものが主流になっている。

モチモチとした食感、素朴な甘さがクセになる間違いなく万人におすすめしたい沖縄の普段着おやつなのだが、見た目があまりにも地味すぎるためあまり日の目を見る機会がないように思う。そんなうむくじ天ぷらに今回はスポットをあてたい。

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うむくじ天ぷら、その実力に慄け 

まずはその姿をご覧いただこう。

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ずんぐりとした俵型の茶褐色の揚げ物、それがうむくじ天ぷらだ。

天ぷらといっても周りに衣がついたタイプの天ぷらではなく、いわゆる素揚げ状態のもの。天つゆやソースなどはつけずにそのままいただく。
とにかく地味な見た目、というか無造作に置かれていたら一瞬「えっ」と思うような見た目なのだがその実力たるや。

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かんでみるともちっとした食感に、紅芋ならではの上品な甘みがじゅわ〜っと油ともに染み出してくる。ブラジルのパン、ポン・デ・ケージョを想像してもらうとわかりやすいかと思う(あちらはタピオカ粉でできている)。永遠に咀嚼していたくなるおいしさだ。

 

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ナイフで切ってみるとこんなかんじの断面

写真ではさほどおいしそうに見えないのが残念なのだが、これがまあ、うまいのだ。

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主な生息地は地元スーパーのお惣菜コーナー

そんなうむくじ天ぷらはどういうところで買えるのかというと、「サンエー」や「かねひで」「りうぼう」といった地元系スーパーであればだいたいお惣菜コーナーに並んでいる。時間帯によっては品切れしていることもあるが、コロッケやトンカツなどと並んで置かれていることが多いので、そのあたりを探してみてほしい。

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また惣菜コーナーだけではなく、冷凍コーナーに揚げるだけで完成する冷凍品が売られていることもある。

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うむくじ天ぷらの魅力はやはり揚げたてのアチコーコー(アツアツ)の味わいなので、揚げる工程を家でやれば間違いなくおいしいうむくじ天ぷらが食べられるという算段だ。また、夜中に急にどうしてもうむくじ天ぷらが食べたくなったときにもこれをストックしておけば安心だ。

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コープのカタログにも冷凍品が載っていた

そして、小麦粉などのコーナーでは「いもくず」の粉状のものが販売されているので、旅行などで来て冷凍品は持ち帰れないな...というときにはこのいもくず粉と、同じくスーパーで売られている紅芋パウダーをお土産に買って帰って自宅で再現することも可能だ。

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材料を混ぜて揚げるだけで、アッツアツの出来立てうむくじ天ぷらが味わえる。揚げる他に蒸してもOKだがその場合はうむくじ天ぷらではなく、沖縄の餅菓子「ムーチー」のような感じになる。

その他、道の駅やファーマーズマーケット、沖縄天ぷら専門店などでもうむくじ天ぷらが売られているのを見かけたことがある。
また沖縄料理店や居酒屋などで揚げ物もしくはデザートのカテゴリに載っていることも。

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沖縄本島南部の奥武島(おうじま)にある天ぷら専門店の注文票にも「ウムクジ」の文字が

ちなみに沖縄ではおやつとして天ぷら(衣が分厚いタイプのいわゆるうちなー天ぷら)を食べる習慣があるので、うむくじ天ぷらも基本的におやつとしての位置づけだと思うのだが、お惣菜コーナーに並んでいるのを見ると、もしかしたらうむくじ天ぷらをおかずとして食べる層も一定数いるのかもしれないなとふと思ったりもする。自分の周りではいないのだが。

これまでにいろんなお店でうむくじ天ぷらを買って食べてきた記憶によると、おそらく味や食感の違いはそこまではないというのもうむくじ天ぷらの特徴な気がする。どこで買っても、どこで食べても、間違いなくうまい。そんなアベレージの高さもまたうむくじ天ぷらの魅力のひとつなのかもしれない。
そして価格もだいたい1本あたり60〜80円ほどとお財布やさしい。芋なのでおなかにずっしりとたまってくれてコスパも鬼だ。

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地味がゆえにアレンジで進化するうまさ

そのままでももちろんうまいのだが、うむくじ天ぷらはアレンジしてもまた驚くべきうまさが楽しめる。
まず試してほしいのがリベイク。おしゃれに言ったが、つまり温め直しだ。

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その際にはぜひ電子レンジではなくオーブントースターを使用してほしい。染み込んだ自身の油で二度揚げのようになって、周りはサクッと香ばしく中はしっとりもっちり。得も言われぬおいしさへと進化する。

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そしてその温めたうむくじ天ぷらに、バニラアイスを添えてみてほしい。これはもう、「シェフを呼んでください」事案である。

あとは、逆に冷蔵庫で冷やして固めの食感を楽しんでも、まわりにきなこをまぶしても間違いなくうまいと思う。と思う、と書いているのは、いつもうむくじ天ぷらを買ってもアレンジする余地なくそのまますぐに食べてしまうから。

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すごいぞ、うまいぞ、うむくじ天ぷら

どこで買ってもどう食べても安定的に最高にうまくて値段も安い、沖縄地味スゴおやつ「うむくじ天ぷら」。
テンションのあがらない見た目ながら、いちど食べたらきっと虜になってしまうはずだ。

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