食べ比べを終えて
各地のういろうを食べ比べてみて、どのういろうもういろうだな、と思った。姿形は違えども、あの優しい甘さのべとべとした食べ物はういろうでしかないのだ。
そういう意味で、どのういろうも僕たちが好きなういろうに違いなかった。地元にういろうがある人はこれからもういろうをお土産にしてほしいし、残念ながらういろうがない県に生まれてしまった人は、ういろう県へ出かけてみてほしい。
ういろうはもちもちしながら今日もあなたを待っている。

それぞれの思いをこめた長い長いプレゼンタイムが終わり、ここからいよいよ試食会の始まりである。
ういろうはお米の粉が原料であり、なにしろ密度が高いことをみんな知っているので、ちゃんとお昼を抜いてきている人が多かった。つまりプレゼンを聞きながらも、みんなおなかをすかせていたのだ。能書きはどいうでもいいから早くういろう食べさせろ、と思っていたことだろう。僕は思っていた。
ようやく食べるので今こそういろう欲を爆発させてほしい。
それぞれにそれぞれのういろうを開封し、食べやすいよう切り分けて楊枝を添える。ういろうを食べたことがある人ならわかってもらえると思うが、ういろうはとにかくべとべとしているので切り分けにくいのだ。
ここからは僕も真剣に食べ比べに参加したのであまり写真を撮っていない。代わりにボイスレコーダーに音だけ録音していたので、それぞれのういろうを食べての感想をピックアップしてお送りしたい。
・美味しいお米で作っているんだろうな、とわかる
・やわらかさが理想的
・甘さが優しい
・トータルのバランスがよい
僕にとっては安心のこの味である。これをベースに他を食べ比べて行きたい。
最初にも書いたが、ういろうは長時間冷やすと硬くなってしまう。しかし食べる直前に10分くらい冷やすと、特に夏場は美味しさが引き立つと思うのだ。
アイデム藁品さんはそのあたりも加味して、集合時間ギリギリにクーラーバックにういろうを持って現れた。勝ちに来たな、と思った。
引き続き、食べ比べての感想をお送りします。
・弾力がすごい
・これだ、私の知ってるういろうは(古賀)
・生とか気取ってんじゃなく、これでいいんだと思う。むしろこれがいい(古賀)
・他と比べて甘みが少ない
・醤油かみたらしをかけたら美味いと思う
ちなみに取り分ける時に楊枝が折れたのはこの宮崎と小田原だった。
一方、その対極にいたのが山口のういろうだ。
・しろ、抹茶、黒糖、の順で食べてほしい。この順で甘くなるので(藁品)
・米感が少なくて水羊羹みたい
・これはいいものだなー(全員)
・ほかのういろうにある素材のまま放り出した感じがない。ちゃんと完成品として成立している。
・ねちゃねちゃしておらず弾力があってぶりぶりしている。わらび餅に近いか。
山口のういろうは上品な水羊羹といった風情だった。確かにこれは贈答品として贈り合えるくらいいいものだろう。
同じく使用目的がある意味はっきりしていたのが小田原ういろうではないかと思う。
・これは食べ応えがあるな
・米感というか、粉感が残っている
・当時の味をかたくなに残しているんだと思う。それはそれで尊い。
・これを元にしていろいろ進化、派生して行った道筋が見える。
・これまでの中で一番配りにくい
・放っておくと(乾燥して)お米に戻ろうとするぞ
小田原のういろうはお土産に買っていくには最適だと思う。高級感と地方のお菓子のやぼったさが絶妙なバランスで混在しており、誰が食べても美味しいというだろう。元祖のプライドというか、小田原の歴史みたいなものを感じる。
・穀物の味がする
・食感が知っているういろうではなく、どちらかというと柚餅子みたい。
・味噌の発酵の風味がする。
・甘酒っぽい上品な甘さ。
・いい和菓子として完成している。
岐阜のういろうは味噌味ということもあり、他とは少し違った趣だった。ういろうを主張するのは少し異論もあるかと思うが、和菓子としての完成度は頭一つ抜けている。ういろうをベースに上品さと複雑さを加味したお菓子、そんな感じ。
そして三重県、伊勢の名店虎屋のういろうである。
・王者感ある
・ねちゃねちゃしていないので切り口がきれい。映える。
・売られている様子からして贈答品。
・ういろう界のベンツ。
・ただ、味は頑ななまでにういろう。
虎屋のういろうは基本を忠実に、しかもハイレベルに極めた感があった。きっとこれが正解なんだろうと思う。その風格は贈答品にも最適だろう。
ただ、誰にでも喜ばれる反面、強い個性が伝統によって抑えられている。
逆に歴史とか伝統とか、そういった古い考えにこだわらない個性派がこちら、阿波ういろうだと思う。
・違う!これはおれたちの知るういろうじゃない。
・赤福のあんこの部分を固めた感じ。
・上品な甘さ、おいしいあんこ菓子。
・ういろうにどこまで自由度を許すかだ。
徳島のういろうは全員一致で「これは自分たちの知るういろうじゃない」という感想だった。ういろうを食べたくて集まった人たちの意見である、少々辛辣なのは許してほしい。
われわれが知っているういろうとは違うかもしれないが、岐阜の養老軒と同じく、和菓子としての完成度はきわめて高い。つまりちゃんとした美味しいお菓子なので、わざわざういろうという沼で戦う必要はないんじゃないか、と思うのだ。
全てのういろうを一通り食べてもらったあとは、好きなういろうを3つ選んでもらうことにした。それぞれに1位5点、2位3点、3位1点として加点していく。
最初に言っておくが、これはあくまでも記事をまとめるために仕方のない評価である。こうでもしないと読んでいる人には伝わらないんじゃないかと思ったのだ。この場に来てういろうを全種類食べた人にとっては、正直順位なんてどうでもよくなっていたと思う。
とはいえ自分の推しが何点ゲットできるのか、気になるところでもある。
正直難しかった。判定タイムに、みんなでもう一周試食しなおしたくらいだ。
心を鬼にして選んだ集計結果は次のとおりである。ういろう好きが選んだ本当に美味しいういろうがこちら。
1位:宮崎
これは正直全員が驚いた。驚いたけれど、同時に納得もしていた。確かに宮崎のういろうはちょうどいいところをついているのだ。やぼったすぎない、それでいて洗練されすぎていない。僕も2位に投票した(1位は愛知)。
古賀さんが言っていたが、大切なのは「食べ慣れた味」なのだ。確かにそうかもしれない。僕らは今日、思い出の中にあるういろうに会いに来たのだ。美味しく進化したういろうを食べて、喜びとともになんとなく寂しさも感じたのは、それが思い出の中にあるういろうとは違ってしまっていたからかもしれない。
その点、小田原と宮崎のういろうは、武骨ながらも「そうそうこれこれ」と思わせるういろうだった。
宮崎に続いて、2位山口、3位愛知、という結果になったが、他のういろうにもそれぞれに票が入っていたのが面白かった。やはりみんな好きなういろうはそれぞれなのだ。
各地のういろうを食べ比べてみて、どのういろうもういろうだな、と思った。姿形は違えども、あの優しい甘さのべとべとした食べ物はういろうでしかないのだ。
そういう意味で、どのういろうも僕たちが好きなういろうに違いなかった。地元にういろうがある人はこれからもういろうをお土産にしてほしいし、残念ながらういろうがない県に生まれてしまった人は、ういろう県へ出かけてみてほしい。
ういろうはもちもちしながら今日もあなたを待っている。
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