特集 2023年2月19日

“県境のある”日本最長のトンネルは関越トンネル、では、日本最短は……?

“県境がある”日本最長と日本最短のトンネルについて調べました

県境を越えるトンネルで、日本最長と最短のものはいったいどれでしょうか? 調べてみました。

鳥取県出身。東京都中央区在住。フリーライター(自称)。境界や境目がとてもきになる。尊敬する人はバッハ。(動画インタビュー)

前の記事:“県境のある”日本最長の橋は大鳴門橋、では最短の橋は……?

> 個人サイト 新ニホンケミカル TwitterID:tokyo26

県境のある日本最長のトンネルはどこか

川端康成『雪国』のあまりにも有名な書き出し『国境の長いトンネルを抜けると雪国であった』は、みなさんご存知でしょう。
この国境のトンネルは、群馬新潟の県境にある清水トンネルとされていますが、清水トンネルは現在、JR上越線の上り(東京方面)専用のトンネルとなっています。(つまり、今は清水トンネルを抜けても雪国(新潟)には行けない。「トンネルを抜けて雪国に行く」ためには、隣に新しくできた新清水トンネルを使う必要がある)
いずれにせよ、山がちな日本において、県境とトンネルは切っても切れない関係があるといえるでしょう。

日本の道路トンネルのうち、長い方からのトップ10はこちらです。

02.jpg
県境のある長いトンネルランキング(データは『日本の国道事情』を参考にしています)なお「県境番号」とは、隣接するふたつの県を、総務省の都道府県コードの若い順に並べて1番から92番まで番号を振り、92本の県境を表した番号です

鉄道トンネルも含めると、北海道青森県境の青函トンネルが一番長いわけですが、今回は道路トンネルに限って調べています。

ちなみに、道路トンネルで日本最長のトンネルは、東京にある山手トンネルで、全長18,200m(18.2km)です。
2015年に山手トンネルが完成するまでは、群馬新潟の県境にある関越トンネルが日本一長い道路トンネルでした。ただし「県境のある道路トンネル」としては、現在でも1位ということになります。

私は、自動車の免許を持っていないので、関越トンネルを自動車で走行したことがありません。ウィキペディアを見ると、トンネル内に新潟県と群馬県の県境表記があるようです。

03.jpg
関越トンネルの県境表示(Wikipediaより

今年は自動車の免許を取得し、この県境表示を撮影する。というのが目標です。

閑話休題。

2位の東京湾アクアトンネルですが、これは先週も紹介した通り、「川崎市側の浮島ICを起点として約7.2kmの位置」に管理境界があるらしいので、そこが県境ということになるでしょう。

ずいぶん前に、オープンカーをレンタルして(人の運転で)アクアトンネルを走ったことがありますが、県境表示のようなものがあったかどうか、ちょっとわかりません。

04.jpg
東京湾アクアトンネルの中

先週書いたことの繰り返しになるのですが、基本的に海上に県境はありません(例外あり)。

県境は、国や県が上から決めるのではなく、市区町村といった自治体自身が、境界を周辺の自治体同士で話し合って決め(決まらない場合は県や国が裁定する場合もある)それがたまたま県境になったり、市区町村境になっているわけです。

内水面(川や湖沼)にはそういった自治体の境界が決まっていることが多いのですが(例外あり)、海上の県境は瀬戸内海など一部を除いては、必ずモメる原因になるので、あえて決めていないところがほとんどです。

なんか、カッコ書きが多い文章になってしまいましたが、そういうわけなので、海上橋や海底トンネルなどで県境とされているのは、施設を管理する境目の意味で設けた境界を便宜的に「県境」と呼んでいるわけです。

05.jpg
神奈川と千葉の県境(管理の為の境界)は東京湾アクアトンネルの中(地理院地図)

県境原理主義者(いないとおもいますけど)に言わせると「海上の橋や海底のトンネルにある県境は、まやかしのニセ県境だ」と、言い出すかもしれません。言い出さないかもしれません。
すみません、存在しないひとを想定して勝手に言い分を想像しちゃいました。

さて、トンネル内に県境表記があったとしても、トンネルはトンネル内なので(トートロジー)、車を勝手に止めて記念写真をパシャリなんてことはできません。

歩行者が通行できる(ただしこわい)トンネルがある

なん、です、が、例外的にそういうことができるのでは? と考えられるトンネルを、ぼくはひとつ知っています。それは、鳥取岡山県境にある志戸坂トンネルです。

06.JPG
志戸坂トンネルこちらです

実はこの志戸坂トンネル、高速道路(鳥取自動車道)と国道373号線の共用部分となっているため、トンネル内に歩道があり、徒歩や自転車を押したりして通り抜けできるようになっています。

トンネル内を歩く場合は、歩行者がいることを知らせるランプを点灯させて歩きます。

07.JPG
トンネル内を歩いていることを知らせるボタン

道路と歩道は、ちゃんと仕切られており、かなり高い柵もあるので、いちおう大丈夫だとは思うのですが、生身でトンネルに入るのはめちゃくちゃ勇気が必要で、結局、このときは県境表記のある場所に行く前にオシッコちびりそうになって引き返しました。

08.jpg
オシッコちびりそうになっている私の勇姿を御覧ください

大型トラックが、かなりのスピードで(トンネル内は制限速度50km/hです)轟音とともに通り過ぎてゆくのでマジでこわいです。王蟲の前に立ちはだかったナウシカすげーよまじで。

というわけで、このとき車で通過する際にかろうじて撮影した志戸坂トンネルの県境表記のプレートがこちらです。

09.JPG
志戸坂トンネルの県境表記と思われるプレート

シャッタースピードを調節できないカメラで撮ってしまったのでこのザマです。でも、なんとなく鳥取県、岡山県。と書いてあるように見えませんか? 私はみえます!

今年の目標は、志戸坂トンネルの県境プレートを再撮影しに行くことです。今年は目標が多いぞ。

いったん広告です

県境表記のある日本一短いトンネル

さて、日本一短いトンネルですが、定義などによってずいぶん違ってくるので、どこどこが一番短い。と断定するのはかなり難しいです。

日本全国の県境にあるトンネルを、全て調べることになると思うのですが、そこまでの余力が今はないので、県境表記のある日本一短いトンネルを決めるのはあきらめるしか無いか……と、おもったのですが、実は偶然、かなり短い、県境表記のあるトンネルを発見してしまいました。

それは、福島茨城県境にある平潟トンネルです。

10.jpg
国道6号線の平潟トンネルです

国道6号線の福島茨城県境にある全長60メートルのトンネルは、トンネルに入る前から向こうがわの出口が見えています。

11.jpg
左側に小さく平潟トンネルの県境表記プレートが写っています!

先日バイクで通行したさいに、偶然に撮影できていたものですが、左側の壁に見える黒くて小さな四角が、福島茨城の県境表記のプレートです。ネットを検索すると、もっと近くから接写している方の写真もありますので、間違いないでしょう。

12.jpg
平潟トンネル付近は気になる物件が多い(地理院地図)

平潟トンネル周辺には、平潟洞門、勿来関、アメーバ県境など、県境マニア的に気になる場所が多いのですが、とくに、平潟洞門(洞門=トンネル)は、江戸時代に掘られたトンネル(現在は切通し)が、現役の道路として残っており、かつ、県境上にあるものとして、とても貴重なものです。

13.jpg
平潟洞門跡。真ん中左にある看板の脇に「縣境」と書かれた境界石があります

アメーバ県境は、茨城県の県境が福島側に侵出しているようにみえて、地図上でみるとおもしろいのですが、実際に行ってみてみると、谷に沿って引かれた境界がそのまま県境になっている、というだけの場所でした。

14.jpg
アメーバ県境の先っぽ。一段低くなっているところだけが、茨城県

これはこれでおもしろいのですが、現地のアメーバ県境には、県境を示すものはなにもないので、上級者向けといったところでしょうか?(上級者とは?)


県境表記のある全長60メートルより短いトンネルはあるのか?

というわけで、県境表記のある日本一短いトンネルは、暫定的に福島茨城県境にある「平潟トンネル」ということにしておきます。

もしかしたら、これより短いトンネルで、かつ県境表記のあるトンネルはあるかもしれません。

橋と同じく「全国Q地図」というサイトには日本全国のトンネルが網羅されておりますので、ここでひとつづつ丹念に調べれば「県境表記のある最短のトンネル」が見つかるのではないかとおもいます。 

もしご発見のおりは、お手数おかけしますが、ぜひ当方までご連絡いただけるとさいわいです。
それではよろしくおねがいいたします。

そして、何度もしつこくすみません。2月20日に、全国の気になる県境を紹介した本『地図でめぐる日本の県境100』(天夢人)を発売いたします! 

15.jpg
「地図でめぐる日本の県境」Amazon予約はこちら

上記の平潟洞門を含め、志戸坂トンネルの話などを本書では取り上げております。

お手にとってお読みいただけると、私めの暮らし向きが少しばかりよくなり、かかあとぼうずに白いおまんまをくわせてやることができるので、よろしくおねがいします……。

▽デイリーポータルZトップへ

banner.jpg

 

デイリーポータルZのTwitterをフォローすると、あなたのタイムラインに「役には立たないけどなんかいい情報」がとどきます!

→→→  ←←←

 

デイリーポータルZは、Amazonアソシエイト・プログラムに参加しています。

デイリーポータルZを

 

バックナンバー

バックナンバー

▲デイリーポータルZトップへ バックナンバーいちらんへ