そもそもフランセジーニャとはなにか?
以前に何かの本で、ポルトガルのB級フードとして「フランセジーニャ」が紹介されていたのを読んだのだ。
曰く、ステーキ、ロースト肉、ハム、生ソーセージ、目玉焼きなどをパンに挟み、メルトチーズを載せ、トマトとビールを煮込んだソースをびしゃびしゃにかけて、フライドポテトをどっさり添えたものだそう。
ちなみになぜ「フランセジーニャ」(Francesinha=フランスのお嬢さん)という名前かというと、元々はフランス人大好き「クロックムッシュ」(チーズとハムを入れて焼いたサンドイッチ)をポルトガル人向けに魔改造したものだから、という説が有力らしい。
どんなものかと画像検索してみても、「……デブだなぁ」以外の感想がまず出てこないはず。
これが果たしてサンドイッチなのか?という厚みは、二郎系ラーメンのインパクトに近似だ。
ちなみにポルトガルではフランセジーニャを出すレストランがいくつもあり、さらにスーパーでは瓶詰めのフランセジーニャ用ソースを売ってたりもするらしい。そんなメジャーな食い物か、これ。
ともあれこのボリュームとカロリーっぷりは、ダイエット前の気合い入れに相応しい。これ作って食ったら、あとはもう潔くダイエットするのみである。
フランセジーニャはビールのソースが定番(らしい)
ポルトガルのレシピサイトを翻訳しながら見て回った結果、とりあえず、パンに挟む中身にあまり一貫性がないことは分かった。
だいたい共通なのは、男子学生が好きそうな肉系のなんやかやをバカスカ放り込む、ぐらいのもの。たまに海鮮系の具やキノコ類などのバリエーションもあったけど、野菜の類はほぼ存在しなかった。その辺りも男子学生感が強い。
となれば、まぁ欲望のままにやっちゃえばいいだろう、という話である。
せっかくなので、ソーセージとハムはお気に入りのハム専門店までわざわざ電車で出かけて買ってくる、という気合いの入りっぷり。肉ばかりあれこれ買うとテンション上がるなー。
で、材料が揃ったところでまずはソース作りから。
具材はとにかくボリューミーであればだいたいなんでもOK!というフランセジーニャだが、唯一、ソースにビールを使うというのが外せないポイントになっているらしい。
基本的にはトマトベースのソースになるらしいので、トマト缶・タマネギ・ニンニクをオリーブオイルで炒めて煮込み、最期にソースと同量のビールをドボドボと注いで軽く煮詰める感じ。
ひと舐めしてみると、おおー、これめちゃ美味いな。
お馴染みトマトソースの旨味にほんのりとビールっぽい苦みと香りが入って、味がいい感じに複雑化している。
ものによってはもうちょい煮詰めてソースにとろみをつける、という流儀もあるらしいんだけど、そうするとビールの風味が飛んでしまいそう。なので、今回はシャバシャバ派で行こうと決めた。
ソースさえできてしまえば、あとはただただ肉を焼いて準備を進めるのみ、である。
ステーキとソーセージは軽く焦げ目がつくぐらい。目玉焼きは加熱しすぎないよう(このあとオーブンで追加焼きするので)白身がうっすら固まったぐらいで火から下ろしておいた。
さぁ、いよいよここから挟んでいくよー。
君は厚さ9センチ超のサンドイッチを見たことがあるか
ということで、パンと肉を淡々と重ねていく動画をご覧いただこう。
下からパン・ステーキ・ステーキ・パン・ソーセージ×3・パン・目玉焼き・ハム・ハム・パンで、最期に溶けるスライスチーズをバサバサと乗っけてフィニッシュ。具材のわんぱくさがすごい。
これと比べると、ビッグマック(パン・レタス・チーズ・パティ・パン・レタス・ピクルス・パティ・パン)の構成は、レタスやピクルスが入る分だけ健康的だなー、という印象だ。
あと、ソーセージが思ったよりも転がり係数が高かったようで、ピラミッドに積む巨石を運ぶが如く上段が転げ落ちる、というトラブルが作業中に何度か発生した(動画はOKテイク)。
積み上がった時点で厚みを測ってみると、9.4センチ。
これがどれぐらいのサイズかというと、成人男性の握りこぶしの横幅(人差し指〜小指まで)がだいたい9センチぐらい。つまり、握りこぶしをタテにして口に入らない人は、そもそもガブッとかぶりつくことすらできないわけだ。どれぐらいのものか、試してみてほしい。
さすがに「今からこれを食うのか……」と、ちょっと怖じ気づいてきたことは否定できない。
そのままオーブンに投入し(ギリギリ入った)、チーズがとろけるまで3〜4分焼いたものがこちら。
うーん、チーズを乗せる時点で腰が引けていたようで、冒頭の本場フランセジーニャ画像と比べると、明らかにチーズが足りていないっぽい。この倍は必要だったな。
本来なら全体がドロッとチーズに覆われるのが正解と思われるので、ここはちょっと惜しいことをした。
さすがにこの厚みを普通のパンナイフで崩さずに切る自信はないので、料理記事のマストツールこと電動ナイフでスパーッと。
パンと肉だけの断面に黄味がとろーっと滴り落ちる様子は、なかなかに官能的である。腹ぺこ男子高校生だったら、この時点でもう奇声を上げて飛びかかってるはずだ。
それぐらいに食いつきたいのをグッとこらえて、温め直したトマトとビールのソースを上からビシャビシャと注ぎかける。
気分的には「えっ、サンドイッチにそんなにソースかける?」という感じなんだけど、最終的にパンや添え物のフライドポテトにソースをガンガン吸わせることで完成するタイプの料理らしいので、そこを信じてさらにビシャビシャと注ぐ。
最終的には一番下のパンが完全に浸る水たまりができたぐらいで、周りにフライドポテトをたっぷり盛れば、フランセジーニャの完成!!
さあ食うぞー。