もっとまわりたい恐竜公園
おそらく多くの恐竜公園は90年代初頭の恐竜ブームのころ作られたのではないかと思う。およそ30年ほど前に生まれた公園たちは、新しくもなく古過ぎることもなくいい具合に円熟していた。

去年の夏、鹿児島へ行った時のこと。
少し時間が空いたので桜島行きのフェリーに乗り、「桜島自然恐竜公園」へ足を運んでみた。
人気(ひとけ)の少ない敷地に大きな恐竜がポツポツと置かれたその雰囲気には独特の静けさがあって、なんだかとても良かったのだ。
この魅力はなんなのだろう。
恐竜公園の不思議な魅力に気づいてから都内で恐竜たちのいる公園をまわったので、この記事では8つの公園(ひとつは公園じゃないが)を取り上げていく。
まずは、ベーシックにして滋味溢れる恐竜公園から紹介したい。それが日暮里舎人ライナーの江北駅から20分ほど歩いたところにある堀之内北公園。
ここでは3体の恐竜が我らを待ち構えている。
なんだろうなーこいつ。
脚のしっかりした感じは古竜脚類…が立った瞬間のようにも見える。
恐竜公園にいる恐竜はメジャーなものも多いが、よくわからないやつもいる。明確なモデルがいるかもしれないし、なんとなくで作られたものもいそうだ。そんな曖昧な感じもいい。
16時過ぎに訪れたからか園内はとても静かで、一組の老夫婦がベンチに座って話している以外は恐竜と自分しかいない。ゆっくり彼らと向き合えるいい公園である。
恐竜たちを高くから見下ろすこともお手の物。なぜならここは公園で、滑り台があるからだ。
日暮里舎人ライナー沿いという少し通いづらい位置にあるが、この近辺は個性的な公園が多くふらふら歩いていても楽しい。恐竜公園の魅力がわかりやすいおすすめの場所だ。
アクセスの良さを求めるなら、東西線 西葛西駅 徒歩3分に位置する「レクリエーション児童公園」だ。恐竜公園が軒並み駅から離れた場所にあるなかで、都内で最も駅近の公園と言えるだろう。
ここにいるのがディメトロドン。
…なのだけど、なにやら様子がおかしい。
そしてこのディメトロドン、とにかく大きいのだ。10mはあるだろうか。
実際の彼らは2〜3mとのことで実物を遥かに超える大きさだ。
横っ腹に穴が空いていて、尻尾から滑り降りる遊具らしい。腹から入り、後ろから体外へ出るという、食べ物の消化の仕組みをショートカットしたような導線だなと思う。
ところで水を差すようであれなのだけど、このディメトロドン、正確には恐竜ではない。もう少し前の時代を生きた、単弓類という種類だ。
恐竜でなくともディメトロドンは人気が高い。おそらく背中に帆を持つ独特なフォルムが好かれるのではないだろうか。太陽系の中で個性的な土星の人気が高いのとなんとなく通じるものがあると思う。
砂場にはれっきとした恐竜であるトリケラトプスもいた。
恐竜公園の遊具はディメトロドンのように大きく扱われるものもあれば、このトリケラトプスのように矮小化する種も多い。
なぜならそれは”子供達が乗って遊ぶ”ためである。あくまで彼らは遊具なのだ。理由があってこのサイズになっているのだということに気づく。
恐竜がたくさんいる公園もあれば、1体だけぽつんと佇んでいる公園もある。筆者の好きなソロ公園が、東急池上線は石川台にある「ピノキオ公園」だ。
坂を越え、しばらく歩くと…
恐竜公園巡りでもっとも好きな瞬間が、遠巻きに恐竜の姿を発見した時だ。「あ、いるな」と気づいた瞬間。日常の中にいきなり非日常が現れ、胸が躍るのだ。
このピノキオ公園はとてもシンプルだ。複合的な滑り台が1台と、なんらかの肉食恐竜が1頭。できあがりである。
6,500万年もの昔彼らが絶滅したわけで、恐竜にも”地球上最後の1頭”がいたはずなのだ。
自分が最後の1頭だなんて、そんなこと本人は知るよしもないのだろうけど、「なんか周りに仲間がいないな」と思いながら絶滅したんだと思う。
この公園に来て勝手にそんなことを考えた。
恐竜ソロ公園をもうひとつ。哀愁を感じたいならここ、本村公園である。
中央線 武蔵境駅 徒歩8分ほど。緑が多くきれいに整えられたベッドタウン、という様相の武蔵境には遊歩道があり、
その遊歩道の脇には小さな公園が点在しているのだ。
そこにいるのが独特なかわいくなさのプロトケラトプスである。
プロトケラトプスは、先ほど紹介したトリケラトプスと同じ”角竜”と呼ばれるグループだ。
さっきのトリケラトプスは子どもたちが我先にとまたがって遊んでいたが、この物憂げな竜に近づこうという子どもはいない。
インターネットで調べても「何故ここにこれが?」という意見が多い。
目が本気だ。媚びていない。
いまひとつ人気のなかった恐竜がもう1体いた。
総武線 新小岩駅から徒歩30分、「東小松川公園」にいるアパトサウルスみたいな恐竜である。
しばらく彼を眺めていたけど、一瞬男の子がまたがってすぐに去っていった。さみしい。
一方で子どもたちにも人気だったのが、おそらくステゴサウルスをモチーフにしたと思われる滑り台。
大きな口を開けたどこかユーモラスなこの竜はなかなかの賑わいを見せていた。そして調べたところコイツと似た滑り台の遊具が他の公園にもあるようだ(八王子ほんごう公園など)。全国を探せばこいつの兄弟がもっといるのだろうか。
人気の差が如実に出た2頭のコントラストが心にさざ波を立てる公園である。
紹介したいスポットがあと3つ。ここで最も都内で恐竜の数が多いと思われる公園を紹介しよう。新馬場にある「子供の森公園」である。
新馬場に限らず、恐竜公園がなかったらなかなか縁がなかったろうな、という町が多い。
この公園だけ地殻変動にあったのか、多くの恐竜のY軸がマイナスからはじまっていた。
だいたいの公園は恐竜の名前が書かれていない。あまりマイナーな恐竜をモチーフにはせんだろう、という推測からなんとなくで種を想像するのも楽しい。
この公園で「おっ」と思ったのが、生きた化石とも言われるメタセコイアの樹が植わっていたことだ。
メタセコイアが繁栄した時期は恐竜のいた時代とギリギリかぶらないかどうか、ぐらいらしいが、それでも恐竜を意識してこの公園に植えられたことは確かだと思う。
他の公園でもシダ植物が植えられていたりと、恐竜にあわせて植樹されていることに気づく。主役である恐竜を後ろで支える植物たち。恐竜公園ここにあり、である。
とにかく恐竜の数が多く、ステゴやエダフォサウルスが2頭ずついるなど、複数体置かれていたのがこの公園の特徴で、まさに”群生”という言葉がぴったりあう公園だった。
先に、「遠くから恐竜が見えた瞬間が一番良い」と話したが、そう言った意味でインパクト部門第一位に挙げたいのがここ、葛飾区立石にある證願寺(しょうがんじ)だ。
公園ではないのだがここはスルーできまい、兎にも角にも写真を見てほしい。
思わず詠んでしまうところだ。しかし寺に恐竜って意外と違和感がない。
なんでこんなところにスティラコサウルスが、とお寺の方にお話を聞いたところ、「入りづらいお寺に、気軽に立ち寄るきっかけになれば」という思いから置かれたものらしい。
その言葉通り、このお寺では入り口の恐竜をはじめとして境内に入りやすい工夫が様々されていた。
ここには天文台やプラネタリウムまで併設されているのだとか(住職の方が天文学に明るいらしい)。
「なかなかお寺に入る機会もないでしょう」と話しかけられ、確かに、自分がまさに入る機会を得た人間だ、と思った。
そんな熱い気持ちの上で成り立っていたとは、イロモノ枠かなとタカを括っていてすみませんという気持ちだ。
いろいろ紹介したがひとまず次の公園で最後にしたい。
東武東上線 中板橋駅 徒歩10分、圧倒的に子どもの多かったのが「大谷口児童遊園」だ。
ここにいるのが、大きな恐竜たちの滑り台。
恐竜公園の恐竜は大きく3つに分けられる。
ひとつが完全なオブジェとして公園に君臨するもの。ふたつ目が、オブジェらしさを残しながらも子どもがまたがれるサイズに設計された、乗り物としての恐竜。三つ目が恐竜をモチーフとした遊具である。
この大谷口公園の彼らはこの3番目の遊具と言える。
公園にいたお母さん達に話を聞いてみたところ、この公園に以前あったプールのマスコットだった恐竜が復活したものだそうだ。
なんでも、プールが撤去されたあと恐竜の復活を求める声が多く、アンケートが取られた結果今年(2019年)の春にリニューアルして何倍も大きくなって復活したのだとか。
近隣住民に愛される恐竜だ。思わぬハートフルな話。
哀愁漂う恐竜もいいけど、みんなに囲まれる彼らもまた良かった。一口に恐竜公園と言ってもいろんな姿があるのだ。
という訳で様々な恐竜公園を見てきた。
最後に冒頭で触れた鹿児島の恐竜公園の写真をまとめて掲載したい。
やっぱり好きだなー、恐竜公園。
おそらく多くの恐竜公園は90年代初頭の恐竜ブームのころ作られたのではないかと思う。およそ30年ほど前に生まれた公園たちは、新しくもなく古過ぎることもなくいい具合に円熟していた。
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