知らない世界だった
なんだか格好良い!と挑戦した野球のサインだけど、こんなに難解なことを試合中に繰り広げていたのか!という新鮮な驚きがあった。
最後にジーンさんが繰り出した、”回ごとにサインをずらしていく”というシステムも実際の試合で行われたりするらしい。確かにサインを盗まれるなんて死活問題だものな…しかしこれは頭も身体もフル回転だ。
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野球の監督が試合中、腕を触ったり帽子のつばに触れたりとサインを出しているだろう。勝負師の顔で指示を出す監督、真剣な眼差しでうなずくバッター、相対するピッチャー。なんて格好いいんだろうと思う。
サインを出したり、首を縦に振りたい。でも我々は運動がへたくそだ。なので野球のサインであっち向いてホイをやろうと思う。
10月初旬、デイリーポータルZの17周年を記念したイベントが開かれた。めでたいことである。開催前、編集長の林さんから「せっかくひとが集まるので、人数が必要な企画でもやりませんか?」とメッセージが入った。
そうだ林さん、おれ、野球のサインを出したいです。
・2チームに分かれ、あっち向いてホイをする
・プレイヤーは監督の指示(サイン)にしたがって出す
・相手のサインは見て良いこととする
大きな流れを図にするとこんな具合だ。
本来の野球ではサインの盗み見など御法度だけど、このゲームに関しては見放題。このサインはグーなんじゃないか?さっきから耳をしきりに触っていないか?
観察と推理であっち向いてホイを制すのだ!
今回のメンバーは編集部の安藤さんと、ライターの藤原さん、爲房さん、ジーンさん、筆者(北向)、そして撮影係に編集部 林さん。
さっそくチームに分かれたらお互いサインを決めるべく打ち合わせをしよう。
安藤監督と藤原さんのチームは、「帽子のつばをさわったらグー」「胸に手を当てたらチョキ」「左肩はパー」というサインに決めたようだ。
一方のジーン監督と爲房さんはどんなサインにしているのだろうか、何やら専門用語が聞こえていたが…?
ジーンさんは北海道在住のライターだ。一方安藤さんは愛知出身。これはさしずめ日本ハムファイターズvs中日ドラゴンズの戦いと言っても過言ではない。
普段1対1で遊ぶあっち向いてホイをチーム戦にしたらどうなるのだろう。わくわく始めよう、先攻はジーンチームのサインから。
胸→ひじ→帽子→手首→ひじ
藤原:!?
安藤:長い!
安藤チームがざわつく。なんだか複雑だ!そしてちょっと野球のサインっぽい!いいぞいいぞ!
「なんかこっちもフェイクを混ぜてサインするしかないですね…」とつぶやきながら安藤監督が繰り出したサインがこちら。
右耳→左耳→帽子
恐る恐るサインをする安藤さんとうなずく藤原さん。ジーン監督よりシンプルだ。帽子を触ったからグー、というわけだな。
お互いの指示が終わったのでいよいよじゃんけんだ。最初はグー!じゃんけん…
爲房:勝った!
藤原:ここはしょうがない
安藤:ここはしょうがない
確かにここまでは運。問題は次以降でどれだけサインが解析できるかである。
さぁ勝負のあっち向いてホイである。これで爲房さんが勝ったらサインとか関係なく”あっち向いてホイの強い人たち”である。ふんばれ藤原さん!
先攻はジーン監督のサイン。
ジーン監督の「胸→左ひじ→帽子→右手首→左ひじ」に対して、
続く安藤監督の指示は「帽子→右耳→左二の腕あたり」という具合。
もうこのサインを出した時点で決着がついているはずで、結果がわかるまでのタイムラグがあるのが新鮮だ。
でははじめよう、あっち向いて…
逆だ、セーフ!ストレート負けをまぬがれ喜ぶ藤原さんの一方で、しかし安藤監督が首をかしげている。
安藤:いま、サインと違くない?
指示と逆だったらしい。藤原さんのおかげで助かったのに不本意そうだ。
このあと実に3度もあいこが続き、試合は膠着状態となる。
ジーン:メモが欲しいな…
確かに、これを記憶だけで推理するのは大変だ。次からはメモを用意しよう。
北向:みんな目が真剣
爲房:一瞬も見逃すまいという感じがする
安藤さん、「今回は勝った」と自信満々でチョキを繰り出すも、あいこ。
帽子を触った安藤さんのサインに従い、藤原さんはグー。そして爲房さんもグー。
藤原:なにこれ!こわい!
ここらで先攻後攻を逆にしてみよう。そう、これは100%後攻が有利なゲームなのだ。
ジーン:なんとなくわかった気がする…
安藤:ええ!
すごい、監督格好いい…。張り詰めた空気のなか安藤監督が出したサインは「胸→左耳→右耳」。
そうしたら…と爲房さんにサインを送るジーン監督。
ジーン:胸→ひじ→帽子→肩→胸
安藤:これはあいこじゃないかな?
結果やいかに、最初はグー!じゃんけん…ポン!
藤原:監督ー!
さあさあ、じゃんけんのサインは盗まれたが、あっち向いてホイはどうか?
安藤:左肩→右肩→帽子
ジーン:胸→左ひじ→胸→帽子→左ひじ→右ひじ
両者サインが出揃う。あっち向いてホイのサインはまだ2回目だ。
さすがにそんなにすぐには盗めな…
決まった!!ジーンチーム、勝利!
ちょっと試合を振り返ってみよう。
北向:これはサインを読んで…?
ジーン:読みました
ジーン:方向は、”最後に触った側”みたいな感じだと思ったんですけど
藤原:すごい…
安藤:最初、左肩を触ったんだけど藤原さんが右向いたから、「おっ…」って
まーたこのチームは仲間割れしてる。
藤原さんは左右の概念が苦手だったらしい、この試合が終わったあと両手に「右」「左」と書いていた。
いやしかし、ジーンさん、これメモも取らずにその場の記憶だけで正解にたどりついたの相当すごいぞ…。
北向:ジーンさんのサインはどうでした。
安藤:いや、もう全然っわかんない
林:何番目のサイン、とかにしてたの?
ジーン:これ野球でも多分やってることだと思うんですけど、帽子をキーにして、つばの次に触った箇所をサインにしてました。
林:キー!
そう、ブロックサインと言って、実際に使われているサインの仕組みなのだ。完全に知ってるひとだ、ジーンさん。
<ブロックサインのよくわかる解説>
・単純にさわった箇所だけで決めるとサインがバレやすい。
・なので実戦ではキーという、サインをする”きっかけ”を決める。
・今回の場合、帽子のつばがキー。その次に触る箇所が肩ならグー、ひじがチョキ、手首がパーという複合的なサインにしていたのだ。
・ちなみに単純に触った箇所で決めるサインはフラッシュサインと呼ぶ。安藤軍が使っていたのがこちら。緊急時などに使ったりもする。
そもそもジーンさんは少しだけ野球をやっていたことがあるらしい。
さらに爲房さんも普通に野球好きだったので、サインを決める打ち合わせの時点で「ブロックサインで…」「キーは…」という会話がスムーズにされていた。
野球を知っているとこのゲームにも強い、というのは単純で面白いな。
ジーンさんたちの左右のサインは聞き忘れたのでみんなで解読しよう。
せっかくなので筆者も監督をさせてもらうことになった。安藤さんと交代し、最強ジーン・爲房チームに挑む。すげぇ緊張する。
結論から言うと各々の負けたくない気持ちが龍となって天に昇り、サインが高度化して全く試合の決着がつかなかったので、ダイジェストでお送りします。
冒頭でも述べたが、この日はデイリーポータル Z 17周年のイベント。筆者の出演する生放送の時間が刻一刻と迫る。0-0のまま延長12回まで戦っているような気持ちだ。
ようやく5ターン目で我々がじゃんけんに勝つも…
上のGIF、ジーンさんの最後のポンポンという拍手がいいな、おれには段々これが野球に見えてきた。
藤原さんの独断によるファインプレーが目立つ。一人の方が強いのかもしれない。
それにしてもこんな緊張感のあるあっち向いてホイは初めてだ…。
大人が本気で挑んだらなかなかあっち向いてホイって終わらないのだ。
種明かしをすると、北向チームのじゃんけんのサインは「左肩をさわった”2つあと”の部位で決める」というもの。あっち向いてホイは「監督が”袖をまくった側”を向く」でした。
ジーン監督は、「前回同様に帽子のつばがキーだけど、そのあとの「肩・ひじ・手首」に割り当てられらた「グー・チョキ・パー」が、サインを出すごとにずれていく」というものでした。(1回目は「肩がグー」だったものが次は「ひじがグー」になるような具合)
だから爲房さんがしきりにサインをする前に「今は3回目ですね」と確認していたのか!高度…!
なんだか格好良い!と挑戦した野球のサインだけど、こんなに難解なことを試合中に繰り広げていたのか!という新鮮な驚きがあった。
最後にジーンさんが繰り出した、”回ごとにサインをずらしていく”というシステムも実際の試合で行われたりするらしい。確かにサインを盗まれるなんて死活問題だものな…しかしこれは頭も身体もフル回転だ。
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