初めてのコンポ
確か自分が小学校5、6年のころだったと思うので、今から約35年くらい前のことでしょうか。友達に貸してもらったTHE BLUE HEARTSのカセットテープをきっかけに、急激に音楽に夢中になっていった僕は、両親に懇願を続け、はっきりとは覚えていないのですが、誕生日プレゼントだったのかな、「コンポ」というやつを買ってもらったんです。といっても、当時専門知識があったわけではないので、商品選びに関しては両親に一任してしまったのですが、それでもとても嬉しかった。
わかりますかね、コンポ。正式名称、コンポーネントステレオ。構成は商品によって違うものの(そもそも「コンポーネント」という言葉に“構成”という意味があるらしい)、レコードやCDやカセットプレーヤー類と、音源を増幅してスピーカーに送る「アンプ」、そしてスピーカーがワンセットになった、なにやら大げさな音楽再生機器のことです。
ストリーミングサービスやBluetoothがすっかり当たり前になった昨今、わざわざコンポで音楽を聞くという人はあまりいないと思いますが、当時はちょっと音楽が好きな多くの人がコンポ、また、それをミニサイズ化したミニコンポを部屋に持っていました。
ところで、今現在の僕が自宅の部屋で使っている、音楽を聴くためのスピーカーがあります。
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実はこれ、先ほどの話に出た、生まれて初めて親に買ってもらったコンポのスピーカーなんですよね。
コンポの本体、つまりプレーヤー部分は、実家に住んでいたころに処分してしまったんです。なんせ巨大だし、単体のアンプがあれば、そこに好きな音源をつないで、このスピーカーで再生することができるので。
なので、現在自室では、スピーカーとアンプをつなぎ、そこにレコードプレーヤーを接続して、主にレコードを聴く用途で使っています。
人生スピーカー
で、単刀直入に言ってこのスピーカー、音がめちゃくちゃいいんですよ。正確には、あくまで自分にとって、ものすごくしっくりくる音。だから、スピーカーだけは捨てられなかった。
もう知っている人はあまり多くないと思いますが、僕は20代くらいのころまで、テクノやハウスといったクラブミュージックが大好きで、自分でも機材やPCを使って作曲したり、それをCDやレコードにしてリリースする自主レーベル活動を熱心にやっていました。
当然、同じ趣味を持った友達も多く、音楽製作環境の話になることもよくありました。なかでも特に重要な要素のひとつが「モニタースピーカー」。つまり、音楽を制作する際、それをモニタリングするためのスピーカーですね。これは、単に雰囲気良く部屋にBGMを鳴らしてくれるというよりは、高音から低音まで解像度高く、自分の意図した音がきちんと出ているかを確認できる性能が重要。ゆえに、あれがいい、いやこっちがいいと、それぞれにこだわりやお金をかけるポイントだったりするわけです。
ところが僕は、自ら選択もせずに親に買ってもらったスピーカーの音に不満がないもので、ずっとそれをモニタースピーカーとして使っていました。音楽を聴くのも、作るのも、ずっとこのスピーカー1本。だって、それが体になじみすぎて、他のスピーカーを試してみようという気が起きないんだもん。
そもそもあのコンポがどの程度のグレードのものだったのかも、今となってはわかりません。手元に写真もないから、品番もわからないし。実はけっこう高級なものだったのかな。唯一の情報は、スピーカーに書かれている以下の文字だけ。
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LIVE
SPECIAL MONITOR
3-WAY BASS REFLEX
SPEAKER SYSTEM
AV
AV MAGNETIC
INSULATED
CONSTRUCTION
SHARP
なにがなんだかよくわかんないけど、シャープ製ということだけは読み取れます。
機種名が判明
と、前置きが長くなりましたが、つまり僕は、今後重度のオーディオマニアになってゆくという可能性も少ないし、きっとこのあとも一生、このスピーカーで音楽を聴き続けるのでしょう。そしてきっと一生、それで満足なのでしょう。出会えて良かった、LIVE SPECIAL MONITOR 3-WAY BASS REFLEX SPEAKER SYSTEM……。
しかし待てよと。実は近年、ほんの少しだけ不安に感じはじめていたことがあるんです。それは、万が一このスピーカーが壊れてしまったら、僕はどうすればいいんだろう、ということ。
まぁ、スピーカーなので修理も可能でしょうが、なんというか、保険があったらより嬉しい。これまで約35年、そして今後の人生があとどれだけあるかはわからないけど、できればその間ずっと。メインスピーカーはこいつでいきたい。なんなら予備があってもいいんじゃないか。
そんなふうに思ってあるとき、上記の文字列や「シャープ コンポ」などのキーワードで検索をしまくっていたら、なんと見つけてしまったんですよ。あ、おれのコンポだ! っていうずばりな商品を。それによると、品番が「SHARP CK-L650」というらしく。
で、念のためですよ? 念のため、オークションサイトなどでその品番を検索してみると、数こそ少ないものの、あるんですよね。出品が。ただ、そもそも古いものなので、見るからにぼろぼろなジャンク品だったり、本体のみとか、リモコンのみなんて商品も多い。ところがひとつだけ、唯一CDプレーヤーが故障していると記載があるものの、写真を見る限りかなり保存状態の良さそうなフルセットが出品されていたんです。
価格はなんと……2000円!
当時の定価はいまだわからないものの、どう考えても破格でしょう。ただ、でかいんですよ、コンポ。昨今の生活様式に合ってないんですよ。なのになぜでしょう。2、3日迷った末、ポチッと押してしまったんですよね。購入ボタンを。妙に早く目が覚めてしまったふとんのなかで……。
そうしたらなんと数日後、商品が届いてしまったんですよ。あります? そんなことって。
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写真をごらんくださいよ。かたわらにある1800mlのキンミヤ焼酎パックと比較すれば、そのサイズ感がおわかりになるでしょう。ひたすらに、でかい!
ついにコンポがやってきた
主旨説明がずいぶん遅くなりました。つまり今回はですね、このコンポを開封し、まずはきちんと動作するかを確認し、動作するならば、自分が聴きたい音源を快適に聴ける環境を整えていってやろうと。個人的な話ながらも、やっとひと段落したその作業がすごくわくわく楽しかったので、顛末を報告させていただこうと。そういう記事となっております。
さて開封。
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あのコンポだ! 子供時代から何年間も使い倒し、そしてやがてお別れしてしまった、あのコンポだ! 個体としては同じものじゃないんだけど、間違いなくあのコンポだ! なんかもう、人目も気にせず抱きつきたいみたいな、なんなんだこの感覚は。
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古いものなので多少の汚れや使用感はありますが、状態は思っていたよりもずっときれいで、大切に使用、保管されていたことがわかります。これがたったの2000円で、また自分のもとに戻ってきてくれるなんて……まぁ、送料が別途4000円かかったけど……。
ちなみに開封の舞台は、自宅に同じでっかいスピーカーが2セットあってもなんなので、家の近所に借りている小さな仕事場。そこにこれから、懐かしのコンポを基調としたリスニング環境を構築していこうというわけです。た、楽しいな。
というわけで、まずは動作確認。
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電源ボタンを押すカチッという感覚が、すでに最高に懐かしエモいですね……。
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が、いちばん肝心なのはスピーカー。本体にはラジオチューナーもついているので、それを再生してみると、しっかりとL、R、両方とも生きているようです。やったぜ。
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