米子城をモチーフにした菓子販売店
グリム童話のヘンゼルとグレーテルに出てきたのが『お菓子の家』なら、鳥取県米子市にあるのは『お菓子の城』である。
前者はお菓子でできている家だが、後者はお菓子を売っている店らしい。
この城、お菓子屋さんなのか。
このお城、正確には『お菓子の壽城』という名前で、米子市に本社を構える寿製菓株式会社の販売店だそうです。
口をあんぐりと開けながら入城すると、最新のサービスエリアみたいなスペースが広がっていた。
内部の作りは城っぽさよりも利便性を優先したらしい。
平成5年にできたというこの壽城は、米子城という実在した城をモデルに築城したそうで、なんでも石垣を一部移築するほどのこだわりだとか。
鉄骨鉄筋造りの実用的な城模型。総工費24億円。なぜこんな建物を建てたのかはわからないが、寿製菓の社長は城内さんという名前と知り、なんとなく納得がいった。
米子に愛され、活気を与えるシンボルとして築城したそうです。
プレッシャーのない試食って楽しいですね
普通、この規模のお土産屋さんであれば、様々なライバル店が呉越同舟の群雄割拠で当然なのだが、ここは基本的に関係会社のみなのだろう。
城内のどっかでなにかを買ってくれればいいという考えなのか、試食の気前がとてもよく、たとえ買わなくても店員さんの笑顔はまったく崩れない。
最近になって抹茶味がようやくおいしいと思えるようになってきた。
ゴーフレットを洋風煎餅と言い切るセンスは好きです。
あんこって久しぶりに食べると甘くてうまいなー。
とち餅が壽城の代表銘菓だそうです。とち餅を売って城を建てるってすごいな。
人はなかなか『美味しんぼ』の辰さん(試食の達人)のように強くはなれない。どうしても「食べたからには買うんですよね?」というプレッシャーを感じてしまうのだが、ここはそれがないのである。まるで楽園のようだ。
それはさすがに言い過ぎだが、生まれて初めてリラックスして試食ができた。そして結果的に結構な量のお菓子を買ってしまった。
『北風と太陽』でいったら、にこやかな太陽にやられた気分だ。
城内にはスタバではなく、すなば珈琲。鳥取だからね。
建物の一番奥に神社の手を洗う場所みたいなのがあった。
なにかと思ったら水飲み場だった。
お菓子以外もいろいろある
城内にはお菓子以外にも、揚げ物や漬け物などを売る店も揃っており、こちらも試食を積極的におこなっている。
お菓子に興味のないおとうさん達のハートも、ここでがっちりとキャッチだ。
甘党じゃなくても楽しめるようにという城主の戦略だろうか。
世の中の食べものは、この試食サイズこそが一番おいしいのではと常々思う。
ちょっとお高い鯖寿司も販売されていた。さすがにこれの試食はないかなー。
あった!すごい嬉しい!嬉しくて関係ない珍味を買った!
さらには城内にガラス張りの工場まで完備。時間帯によっては稼働しているところが見られるようだ。
ここの外観が城であることを忘れる中身の充実度だが、ちょっと外にでて見直してみれば、やっぱりどうみても城なのである。
城は外見で判断してはいけないのだ。
入り口と反対側から。
天守閣に昇ってみよう
この壽城は2階から上もちゃんとあって、無料で天守閣まで昇れるらしい。
なるほど、ならば攻めてみようではないか。であえー、であえー。
まずはエスカレーターで2階へ。
登城記念の顔ハメがあった。
おっと、2階にもすなば珈琲があるのか。さすが鳥取。
NIKAIと書かれた、一気に雰囲気が変わるエリアも。
3階の天守閣には専用エレベーターで上がるようだ。
まさか我が平坦な人生で、天守閣に上がることがあるなんてのぅ。
さてさて、城の要はどんな造形なのだろうか。
いざ、天守閣へ!
なんだこのスペース。
外敵から攻められたときに(税務署とか?)、天守閣を防ぎやすいようにとエレベーター直結ではなく螺旋階段を挟む構造になっているのだろうか。
とにかく階段をあがってみると、360度を見渡せる窓があり、そして謎の鐘が置かれていた。
ツイてる、らしいよ。
とりあえず360度の景色は最高。
この施設は鳥取取材中にパンフレットで知ったのだが、その写真で見るよりも建物にインパクトがあり、別に藤波辰巳のような城好きという訳でもないのだが、なんだか興奮してしまった。
思い返すと、しみじみよかった。もともと高速道路にあるサービスエリアのお土産売り場を眺めるのが好きなので、堪能させてもらった。いやー、寄ってよかった。