いろいろ持って干潟へやってきた
今回の大前提である『塩でマテガイを捕る』という話がそこまでメジャーじゃないような気もするので、まずその説明からさせていただこう。
実験のレベルとしては、スイカに塩以外をかけてもうまいのか、みたいな話である。
実験が夜なのは、この日の干潮時間が夜中だったからだよ。
潮の引いた干潟の表面を削るように掘って、マテガイの巣穴に塩を入れる。
ビュッと驚いて飛び出してくるマテガイ。
それをつまんで引っこ抜けば一丁上がり。この引っこ抜く感覚が、干潟のムダ毛を抜いているようで気持ちがよいのだ。
実験用に持参したのは、塩、味の素、砂糖、味付塩こしょう、重曹、一味唐辛子、クエン酸。家にあった粉末一式である。
あまり深く考えないで持ってきたが、塩味、旨味、甘味、辛味、酸味、苦味のバランスが抜群の実験となった。
味の素
まずは旨味成分の結晶である味の素から。
根拠はないが、感覚的に行けそうな気はする。野生の勘というやつだ。
(ハイミーじゃないけど)パッパッパ。
田舎のおばあちゃんが漬物にかけるくらい多めに味の素を振ると、しばらくしてモソモソと顔を出してきた。
でた!
だがすぐに穴に潜ってしまい、もう二度と顔を見せてくれなかった。まるで塩と勘違いしたというような対応だ。人違いならぬ塩違い。
何か所かやってみたが、同じような反応だったり、全く出てこなかったりで終了。
一味唐辛子
辛味を代表して一味唐辛子の登場。この刺激にマテガイは耐えられるかな?
穴に振りかけるものの、塩に比べると粒が大きいし、水に溶けないので穴に入っていかない。
こりゃだめだ。
なるほど、一味唐辛子はマテガイ捕りに全く向いていないようだ。
ちなみに一味で出てこなかった穴に塩を入れてみたら、すぐにピュッと飛び出してきた。『塩対応』という言葉は、きっとマテガイ界に置いては逆の意味なのだろう。
そんなに塩が好きなのか。いや逆に大嫌いなのかな。
味付塩こしょう
塩と胡椒と化学調味料などを混ぜ合わせた味塩胡椒。
一度使いだすとなんにでも振りたくなる万能調味料だ。これならきっとマテガイにも利くだろう。
マテガイの穴はこのような菱型をしています。
塩がたっぷり入っているのでマテガイに響くはずなのだが、水に浮いてしまって穴の中に入っていかないためか、意外にも効果無しだった。
成分をみてみると、水に溶けにくそうな上新粉やデンプンが含まれていた。これらが塩の効果をコーティングしてしまったのだろうか。
こういうことをやっている時が一番楽しい。
砂糖
塩と間違えて持ってくる可能性が一番高い調味料である砂糖はどうだろう。
この実験でその有効性が証明できれば、うっかり砂糖を持ってきてしまっても、まったく慌てなくてもよいのだ。
コーヒー用のグラニュー糖は穴に入れやすい。
水にも溶けやすく、見た目も塩に似ているのだが、これも無反応だった。水溶液の濃度が濃くなれば飛び出てくるというものではないようだ。
重曹
続いては重曹。炭酸水素ナトリウムである。山菜のアク抜きやキッチンの掃除、さらには中華麺作りにも使える万能薬である。
舐めるとものすごく苦いので、これはきっと塩以上に効くだろう。
サラサラサラ。
おかしい、これも無反応。なんらかの刺激を与えているはずなのだが、それが塩のように飛び出るという行動には結びつかないようだ。
クエン酸
たまたま家にあったクエン酸も試してみようか。
この強烈な酸味なら、きっとマテガイを飛び出させてくれるはず!
見た目はほぼ塩。これは期待ができる!
うーん、残念。今度こそはと思ったが、これもまた不発。だめかー。
どうやらマテガイは塩分にだけ反応して飛び出すシステムのようである。馬の耳に念仏、マテガイに砂糖。
これで安心して塩だけを持って干潟にこれるので、大変有意義な実験だった。そう思おう。
結局塩だけで捕りました。
やはりマテガイを捕るなら塩だよな
「実は砂糖の方が効果的!」みたいな意外性のある答えが欲しかったのだが、干潟はそんなに甘くない。誰が最初に考案したのかは知らないが、やはりマテガイを捕るなら塩が一番のようだ。
やはりという言葉がこれほど似合う実験結果もないだろう。干潟にマテガイ捕りにいかれる際には、塩と砂糖を間違えないようにお気を付けください。
マテガイを天麩羅にしたら油が跳ねまくって怖かったです。