薄味への反逆
なぜだかその辺で売られているポテトチップスはどれも「うすしお」である。カルビーも湖池屋もヤマザキビスケット(チップスター)も、どのメーカーもそろって「うすしお」なのだ。
健康へのこだわりは捨てた。僕はこう、ガツンとしょっぱいものが食べたいのだ。
そこで塩です
そう、なければ作ればいいのだ。「こいしお」の塩が1として「うすしお」が0.5と仮定しよう。理論上は、あと0.5の塩を足せばそれは「こいしお」となる。ちなみに写真のカルビーポテトチップスうすしお85gバッグの塩分量は0.8gで、それを0.5とすると…
じゃあかけますねザバー
計量すると思った?いいんです、適当で。そういうサガツさこそが、ポテトチップスのあるべき姿である。
シャカシャカポテトの要領で振ります
「こいしお」ポテトチップス。見た目は同じ
うすしおにさらに塩を振る行為を、「追い塩」と呼んでいる。この「追い塩」という単語、ぜひ口に出していってみてほしい。「おいしいよ」に聴こえるはずだ。日本語という言語にあらかじめ組み込まれた食べ方なのである。つまり、日本人の心だ。
左、編集部 橋田さんが試食
「私これ好きかも!」
塩をかけるとどうなるのか
塩をかけると塩味が濃くなるだけだと思うだろう。しかしここで起きるのはそういった量的な変化だけではなく、質的にも変わる。
・うすしおは、塩の利いた「ポテト味」である
・塩を増すことにより主役が塩になる(クーデター)
・塩味中心の味覚世界へ
塩味の芋ではなく、芋味の塩。ポテトチップスにパラダイムシフトが訪れるのだ。
ちなみにポテトチップス「こいしお」が真価を発揮するのは、酒のつまみとしてだ。塩辛とか、漬物とか、あのへんのラインナップに混じると塩の結晶はとたんに輝き始める。
正直おやつとしてはちょっとしょっぱい。そもそも「うすしお」だってそんなに薄くない。しかし一度開いてしまった塩味の扉は、もう閉じることはできない。
新たな塩味へ
「追い塩」の利点は単に塩が濃くなるだけではない。
シンプルなうすしおと、絶品うま塩味。
どちらもギザギザカットの厚切りポテトチップス。しかし右の製品に注目してほしい。「フランス産岩塩使用」とある。この段階では右のほうが圧倒的においしそうだが…
ドイツアルプスの岩塩をご用意いたしました
うま塩のほうには普通の塩を、うすしおのほうにドイツ産岩塩をかけてみる
うすしおのほうはドイツ産岩塩使用のこいしおとなり、一気に高級感が出た。実はこの場で参加者にいちばん好評だったのは、この「うすしお+岩塩」の組み合わせだ。
一方で、うすしおに増してマイルドな塩味であることが多い「うま塩」系チップス。こちらも塩をかけることで、塩味を満足レベルまで引き上げることができる。
このように、塩とチップスの自由な組み合わせこそが、「追い塩」の真価なのだ。
人には自由がある
さて、この記事で僕が伝えたいメッセージは2つだ。一つはうすしおに塩をかけるとおいしいということ。それからもう一つは、人にはうすしおに塩をかけることすら赦される、自由があるということ。与えられたうすしおで満足するのではなく、あなた自身の塩気を探求してもよいのである。
ところでこの日は編集部メンバーが3人同席してくれたのだが、記事中で紹介したのは橋田さんのみだ。
あとの2人は…
しょっぱすぎて悶えていた。あくまで塩好き・濃い味好きのための禁断のメニューであることを書き加えておきたい。「致死量」「ハードドラッグ」等の単語が飛び交う試食会であった。