奥秩父主脈縦走路
奥秩父主脈縦走路の事を知ったのは何年前だったか。もう10年くらい経っている気がする。
人の記録を見ては、一度歩いてみたいなぁ、でも5日間は長いよなぁ、などと思っていた。
実際に歩いたトラックログが紫の線だ。山梨県から始まって、長野との県境を歩いて埼玉との県境になり、最後は東京都に入る。
終わってみるとあっという間だった気もするが、歩いているときはいつになったら着くんだろう?と思っていた。
縦走とは?
平たく言うと縦走とは、『山と山の間にある稜線を歩いて、いっぺんに複数の山に登る事』である。
ルートによっては山頂を踏まない事もあり、山頂を踏むことを目的にした『ピークハント』と違って『稜線を歩く事』を目的としている。
連なる稜線をひたすら歩く。
装備は19kgくらい
背負うザックには1日3食として12食分の食料(途中2食は山小屋で食べた)とテント一式、寝袋、マット、救急セット、スマホ3台と充電器、ガスと燃料、着替え、雨具、防寒着、水などなどの装備が入っている。
スマホ3台はアプリのテストで使うので必須で、充電器は合計容量33,500mAh。iPhone5sなら13回満充電出来る。一式で1.1kgあった。重いけど仕方ない。
普通に大型充電器とiPhone6plusだけにしても590gなので追加分は500gちょっと。この山行は
ジオグラフィカのフィールドテストも兼ねてるので必須。
荷物を削る
なにも考えずに装備を決めると重すぎて70kmも歩けないので、削れるものは極力削る。装備の重さを量って必要性を考えて、要らないものは削っていった。
サングラスはケース込みで109g。秋の低山では絶対必要なもんでもないので置いていくことにした。ストック(杖)も2本持つと重いので1本は置いていく。これで合計330g軽量化。
109gを削る。
食料が4kg
食べ物の重さは4kgあった。米をパックご飯にしたので6食分で1kgくらい。これをアルファ米(乾燥米)にすると600gで済むので400g軽くなるけど、食べれば軽くなるし安いしすぐ食べられるし美味しいのでパックご飯を持っていくことにした。
火を使うのは朝と夜だけで、昼間は前半は惣菜パン、後半は栗むし羊羹、柿の種などの行動食を食べて済ませる。
タンパク質も考えてビーフジャーキーとかも持つ。撮影後、要らない包装は全部外した。
水を入れないで17kgくらいの装備になった。5日分の装備としては軽い方だと思う。これに水が2リットルくらい入って20kgくらい。問題ない重さに収まった。
70リットルのザックに詰め込んだ。まだ入る感じ。単純に削ろうと思えばもっと軽い装備もあるんだけど、ランニングコストなどを考慮してこうなった。15kgまでは削れると思う。
準備は楽しい
登山の準備は楽しい。重さを量りながら持って行く装備を決めて、持ってみて重すぎると感じたらまた削る。
当然重すぎれば疲れるので自分の体力に合わせて装備を選択する。その辺がゲームっぽくて楽しい。
登山口にて。ひょっとこなポーズを決められるくらいには余裕ある。
ルートはこうなりました
予定してたルートとはちょっと違うんだけど、結果的にこうなりました。
1日目
瑞牆山荘→富士見平小屋→大日岩→金峰山(きんぷさん)→金峰山小屋(小屋泊)
2日目
金峰山小屋→金峰山→大弛峠(おおだるみとうげ)→甲武信岳(こぶしがたけ)→甲武信小屋→破風山避難小屋(避難小屋泊)
3日目
破風山避難小屋→破風山(はふうさん)→雁坂峠→笠取山→唐松尾山→将監小屋(テント泊)
4日目
将監小屋→飛龍山→雲取山→七つ石山→鷹巣山避難小屋(満員でテント泊)
5日目
鷹巣山→奥多摩駅
山とか小屋の名前を書き連ねても、行ったことない人にはわからないと思うので、順に説明して行きます。
まずは韮崎駅からバスで瑞牆山荘へ。
1日目、金峰山小屋へ
韮崎駅から登山口がある瑞牆山荘までバスで1時間くらい。標高はすでに1500mあり、目的地の金峰山小屋は標高2400m。1日目はまず5.4km歩いて900m登る。
70kmの山旅が始まる。
冒頭の写真の様な山道を歩いて1時間程度で富士見平小屋に到着。水を補給した。残り標高は600mくらい。
富士見平小屋の水場は水量が豊富。水場は山の回復ポイントですよ。苔が、とか落ち葉が、とか細かい事は気にせず飲む。うまい。
瑞牆山と金峰山が目的ならここでテント泊もいいが、今回は先を急ぐのでスルー。
瑞牆山は縦走路から外れていて、寄っていると明るいうちに金峰山小屋に着かない可能性が高いので今回はスルーした。8月にもう登ってるし。
瑞牆山は日本百名山で小川山の隣にある岩山。クライミングのルートがたくさんあるらしいが、詳しくは知らない(レベルが違いすぎて)。
瑞牆山から見た縦走路
瑞牆山からは縦走路が見渡せる。下の写真に映ってる稜線が縦走路で、途中にあるポツンとしたピークが金峰山だ。金峰山も日本百名山。
1日目は金峰山山頂のちょっと下にある小屋まで歩く。
瑞牆山から見える稜線で10分の1くらいの行程。マジか。
先に書いておくけど、今回の記事は長いですよ。書くのも嫌になるくらい長いんだ、これが。
富士見平小屋から1時間くらい登ると大日小屋。無人です。この小屋、国土地理院の地形図と実際の位置が300mくらいズレてます。
もう、ひたすらに登る
まだ食料がたっぷりあるので重い。水を補給したので更に重くなった。秋真っ盛り、紅葉の山を汗かきながら登る。
一度に登る高度差としては1日目が一番大きい。以降は、100~200mくらいの細かいアップダウンはあるが一度に900m登る事は無い。
たまには鎖場なんかもある。鎖は、使わないで登れるなら使わなくてもいい。
大日岩の辺りは岩が多くて楽しい。思わず登りたくなってしまう。紅葉、岩、青い空。最高じゃないか。
どっか楽しいクライミングルートがあったりしないかな。
山道を歩いていると、ちょっと変わったものもあったりする。下の写真は傷だらけの岩。
誰が傷を付けたのかというと、積雪期にこのルートを登った登山者。アイゼンを着けて岩の上を歩くとこういう傷がつく。同様に、木の階段や橋に空いている穴もアイゼンのものだ。
足の形に凹んだ地面。長年の風化でこうなったのか、誰かがステップを刻んだのかは謎。これもアイゼンで削れたのかな。
昭和なファンタグレープの空き缶。『合成着色料含有』って堂々と書いてあるのが昭和。
ナナカマドっぽいけどどうですかね。
小さい秋みつけた、って感じ。
稜線に出ると岩度が増して植生も変わる。ハイマツという松の仲間が広がり、鋭角な岩が格好いい稜線を描く。瑞牆から登る金峰山の稜線は素晴らしい。
奥にある岩の辺りが金峰山のピーク。稜線の左側は長野県、右側は山梨県である。
時刻は15時。思いの外時間が掛かり、ガスって視界も悪くなってきたので、山頂に行くのはやめて1日目の泊地である金峰山小屋を目指す事にした。
稜線を北に外れて小屋への道に入る。
この岩が目印。裏側から登れます。
登るのは簡単だけど、降りるのが怖いよね。
金峰山小屋はきれいでご飯も美味しいよ
全てテント泊にする場合は、1日目で金峰山の山頂を過ぎて大弛峠まで、あと2時間くらい歩かないとならない。今回は同行者の希望もありここで一泊することにした。
外もきれいだけど中もきれいです。あとトイレが超きれい。
夕食のメニューは豪華で、鶏肉のソテー、ポテトサラダ、スープ、メロン、ピクルス、そして食前酒まで付くご。飯はちゃんと圧力釜で炊かれていて美味しい。
ご飯とスープはおかわり出来ます。山の上でこれを食べられるってすごくね?
布団で寝れるのもしばらくはこれが最後。まともなご飯もこれが最後だ。あとはパックご飯とかインスタントラーメンとかそういう食事になる。
味わった。
朝食はおかゆと惣菜。これがまたやさしい味で美味いんだ。ただ、朝食付きにすると出発時間が遅くなるので早出には向かない。
2日目の天気は快晴。西の方を見ると、雲海から頭を出した八ヶ岳が朝日を浴びていた。あの稜線も良いなぁ。手前の岩山は瑞牆山。ヨーロッパの古城みたいで格好いい。
わぁい、雲海。雲海だいすきー。
6時半に小屋を出発、まずは縦走路に戻る。小屋周辺の登山道は岩がきれいに並べられていて歩きやすい。ありがたい事です。
きれいな石畳の登山道。
縦走を再開。見上げると五丈石と金峰山がそびえていた。
左の岩が五丈石。
かなり近づいてきた。ようやく最初のピーク、金峰山。
稜線に上がると富士山が見えた。堂々たる山容はさすが日本最高峰。
山頂に着いた。山頂には五丈石と呼ばれる、高さ15mくらいの岩がある。信仰の対象にもなっているそうで、鳥居が立っていた。
こんなん見たら登りたくなっちゃうよねぇ。
僕の身長と比べてこんな感じの大きさ。中段までは誰でも登れるし怖さも無い。
8月に来たときはウッカリ登ってしまったが、今回は万が一怪我したら縦走が終わってしまうので上まで登るのはやめておいた。
クライミングを多少やってる人とか、そもそも身体能力が高い人なら登れると思うけど、落ちたらタダじゃ済まない。
ちなみに一番上に登るところはいい感じに岩がえぐれていて簡単だったりする。でも、やっぱり登るのより降りる方が怖いし危ないので、怖いと感じたらやめておくのが正解ですよ。
まずい、まだ2日目の朝だ
3ページ目だがまだ5km分だ。全行程70kmの35分の1である。計算上はあと35ページ必要になってしまうのでペースを上げていこう。
GPSログの線で、歩いた分を赤くしてみるとあまりの進んでなさに震える。
全体が青い線。赤い線が1日目で歩いた部分。全然進んでない。
金峰山からしばらくは下りつつ、たまに小ピークを越えたりする。
金峰山から進んで鉄山という小さな山の山頂。看板が朽ちていた。
天気が悪い時は登らない主義
天気がいい登山は気持ちがいい。以前は悪天候でも予定を決めたら予定通りに山に入って修行みたいな山登りをしていた。が、最近はそういうのはやめた。
天気予報が悪い時は中止にしてクライミングジムにでも行く事にしている。悪天候の時に山に行っても、あまりいいことはない。
登山が上手くいくかは、天気と仲間で大体決まる。
朝日岳から後ろを振り返ると五丈石がポツンと小さく見えた。
振り返ると今までのトレイル
縦走は稜線を歩き続けるスタイルなので、振り返れば今まで歩いてきたトレイルが見える。苦労して登った山頂がもうあんなに遠い、と数時間の出来事なのに妙に懐かしい。
そして前を見ればこれから行く稜線がどこまでも続く。
過去の稜線、今いる山頂、未来の稜線。縦走は時の山旅だ。
これから行く稜線が延々続く。
ウソでしょ?と思うかも知れないが見えている稜線をずっと歩く。しかも今日中に、だ。
2日目は甲武信岳を越える。どうだ、うんざりするだろう。
旅だなんだと書いてきたが、正直に言おう。山に登っているときは大体後悔している。
『あー、家で寝てりゃよかった』とか『なんでこんな苦しい事をしてるんだ』とか『早く温泉に入ってコーラ飲んで布団で寝たい』とか思っている。
確かに景色はいいんだけど、果たしてそれだけの為に登るか。
山頂をゴールと考える人がいる一方で、僕は山頂を通過点と考える派だ。山頂に着いてもすぐに『じゃ降りよう』と先に進んでしまう。
達成感はあるけど、長い下山の事を考えると安心は出来ないし山頂からの景色で全てが癒される、という事もあまり無い。
とにかく早く温泉とコーラである。なので、4泊5日を予定している今回、5日間を通して後悔しっぱなしだった。
と、正直に吐き出したところで先に進もう。この先、なにかポエムが書いてあっても『本当は後悔してるんだな』と思ってください。
峠に降りてまた登る
金峰山から登ったり降りたりして、結局標高200m降りて大弛峠(おおだるみとうげ)に着いた。水を補給して出発、まずは標高250mくらいを登りなおす。
登っては下り、下っては登りの繰り返しで、全行程70kmだ。『なにやってんだろ?』って気持ちになるのもわかっていただけるでしょうか。
大弛峠からの登りは木道が整備されている。
大弛峠は観光でも来れる場所で、そのせいか登山道が過剰なほどきれいに整備されていた。登山者による地面の浸食を防ぐ意味もあるのだろうが、あんまり山に登ってる感じがしない。
階段もキッチリ整備されていた。
淡々と階段を登り、山頂を次々ピークハントしていく。
前国師なんて山あったんだ。
北奥千丈岳。一応奥秩父主脈の中では最高峰である。2601m。
次は国師岳。看板の下ギリギリに見えているのが北奥千丈岳。どうだ、地味だろう。
観光登山、おわり
上の山3つは近いので30分くらいで回れる。ここまでが観光地で、この先甲武信岳まではちょっと険しい山道になる。
北を見ると遙か彼方に甲武信岳が見えた。この時点で11時。明るいうちに着けるんだろうか。
まだまだ遠い。遠すぎる。
聞いて知ってはいたが、登山道はそこそこ荒れていて倒木が道を塞いだり道が薮に隠れたりしていた。
こういうのを避けるのが、地味に疲れてくる。
道が見えないくらいの薮。ガスってたり暗かったりしたら迷いそう。
不気味
なんだか薄暗く、不気味な登山道である。人間が逆さになって抱きついているような木もあった。
夜見たらすごく怖いだろう、これ。
ていうかどうなったらこういう形のコブになるんよ。
木の幹に赤いスプレーでなにか書いてあったりもして怖い。よく見れば『↑甲武信』と書かれているが、とっさには読めない。
ホラー映画だと変態兄弟の家に導かれたりするパターン。
100mくらいのアップダウンを3回ほど繰り返して、ようやく甲武信岳の直下にたどり着いた。
唐突に白い砂地の斜面があらわれた。
足跡が下に続いているが、降りてしまうと遭難する。足跡を残した人は無事なんだろうか。
上の写真で言えば左に進むのが正解。足跡があるからってそれに続くと間違いなく遭難する。
正しい登山道には赤やピンクのテープが付いているので、目安にして進む。が、間違った道にテープが付いている事もあるので鵜呑みには出来ない。
山は罠だらけだ。
テープは目安にはなるけど鵜呑みにしてはいけない。地図やGPSで確認する。
甲武信岳に到着
金峰山小屋を出て10時間くらい。ようやく甲武信岳の山頂に着いた。どうしよう、まだ2日目が終わらない。
ここも百名山。今回二つ目の百名山だ。
これまで歩いた道を振り返ると、遠くに五丈岩が見えた。連なる稜線は早くも懐かしく、後悔しながら登った記憶は薄れていい思い出になっていく。
だから懲りもせず、また山に登ってしまうんだろう。
甲武信岳からこれまでのトレイルを振り返る。
そしてとっとと進む。
県境の境界石。甲武信岳の山頂は長野県と山梨県と埼玉県の3県境になっている。
日も暮れかけて風も強いので早々に山頂を降りて甲武信小屋に着いた。予定ではここでテント泊だったのだが、水を補給して、1時間半先にある破風山避難小屋を目指す事にした。持ってる水筒全てを満水にして3リットル。
3日目の行程を進めておいて4日目の行程を楽にしようという魂胆だ。
結果から言えば、素直にここで泊まっておけばよかった。水場あるし。
山小屋らしい山小屋、甲武信小屋。次回はここで泊まろうかな。
平日なのでテント場は空いていて二張り。快適そうなテン場ですな。
段々畑みたいなテン場。テーブルなんかもあって快適そう。
あっという間に真っ暗。
茂みからガサガサと、明らかになにか大型ほ乳類の気配がある。山で大型ほ乳類と言えば鹿、熊、猪だ。
『フォー!フォー!』と叫んだり笛を吹いたりしながら進む。
夜の山はこわいよ。
怖くて嫌になったのでiPhoneのスピーカーから音楽を鳴らした。適当に選曲したら、シューベルトの『魔王』が掛かった。
「♪おとーさん、おとーさん!魔王がーいるー!こわーいよー!!」
なぜこのタイミングなのか。
避難小屋に到着(撮影は翌日の朝)。
18時過ぎ。魔王が終わった頃、避難小屋が見えた。完全に真っ暗。避難小屋なので中も真っ暗で、やや埃っぽい。
さっさと食事を食べて寝た。
夕食はカレーうどんにわかめとパックご飯の赤飯を投入して煮た。山での食事は基本、雑です。
朝、5時に起きて食事。ラーメンを作って食べたら荷物をパッキングして軽く掃除して出発。避難小屋を使った後はせめて掃除くらいしておきたい。
ダルマストーブがあるので冬に泊まるのもアリだな。
2日目で距離を稼いだと言ってもまだ全体の3分の1くらい。まだまだこれから難所もあったりする。
次のページへ。
あまりの長さに目眩が。
ようやく3日目
3日目は破風山(はふうさん)からスタート。標高差200mくらいを登っていく。早い人なら20分、遅い人でも50分は掛からない。
破風山への登りも地味にしんどい。
途中、後ろを振り返るとこれまでの道のりがクッキリ見えた。3日目も天気に恵まれての快適なトレッキングになりそうだ。
金峰山がずいぶん遠くなった。
今日もサクサク登っていきますよ
まずは破風山。樹林帯なので眺望はイマイチ。
県境なので山頂の看板は埼玉県と山梨県の2本が立っている。左が埼玉県、右が山梨県。
それにしても延々県境だ。今度県境マニアの西村さん(当サイトライター)を連れてこよう。
岩場だと境界石を刺せないらしく、岩に直接マークが彫られている。
昨夜はそこそこ冷えたらしく霜が下りていて、風で揺れる木から氷がバラバラ降ってきた。
葉っぱのふちが白く凍っていてかわいい。
秋も終わりですね。
強風地点に生えていた木には氷が付いていた。羽根状の氷がエビの尻尾にも見えるって事で『エビの尻尾』とも呼ばれている。
過冷却された濃霧が木に当たって凍ったのがエビの尻尾。もっと育つと樹氷になる。
ちなみにエビの尻尾は風上方向に育つので、上の写真なら風は左から吹いている。
そうこうしてたら雁坂嶺(かりさかれい)。
まさかの国道140号線、雁坂峠
雁坂嶺の次は雁坂峠。開けて気持ちいい場所だが、日本三大峠だそうだ。
今ではこの下を国道140号線のトンネルが通っている。
なんとここ、国道である。一般国道140号線として指定されている。もちろん自動車は通れない。
武田信玄の軍用道路としても知られており、日本武尊が通ったとも伝えられている日本最古の峠道である。
実際にここを通ったときは歴史のこととか知らなかったので、なんでここが日本三大峠?とか思ったよね。
写真撮るのも疲れてきますな。
水場が無い
雁峠へ。地図によるとここに水場があるらしいので出来れば水を汲みたいところだが、どうも見あたらない。
雁峠(がんとうげ)。
山小屋の廃墟があったが、ここにも水場は無さそうだ。2日目の夕方に補給して以来なので、残りは600mlくらい。
晴れの昼間なのでそうでもないが、暗くなってたら相当不気味だろう。
このまま進んでもギリギリ足りるか、水が尽きても2時間程度なら歩けるかなー、なんて思っていたら同行者が小屋で水を汲みたいと言う。1時間のロスになるが、分ける分までは持ってないので笠取小屋に寄ることにした。
笠取小屋。奥秩父の小屋は大体個人経営だそうです。
小屋から5分程度降りたところに水場があった。もちろん沢の生水だが、細かい事を気にしてたら山登りなんか出来ない。
たっぷり汲んだ。これで水を節約しなくてもいい。
小屋の横には公衆トイレ。水源地帯って事で東京都の水道局がこういうバイオトイレを設置している。
笠取山の直登ヤバイ
水を補給して昼食を食べてトイレも済ませて再出発。笠取山へのトレイルはもう、ほとんど壁に見えた。
えげつない登り坂。
ここまで急な直登の登山道ってなかなか無い。斜度45°はあった。登っていて横を見るとほとんど崖であり、登り切ってから下を見たらホントに崖だった。
どうすか、この切れ方。
山頂で記念写真。実のところこれはニセ山頂で、この先の林の中に本当のピークがあった。
東京が見えた
東を見ると、まだまだ続く縦走路の先に東京都の最高峰、雲取山(2017m)が見えた。あそこまで歩けば東京都である。ついに来たな。
しかしまだ遠いな。
ようやく見えた雲取山に歓喜。
山に登って下界の町が見えたりすると興ざめだが、奥秩父は町から遠いので見渡す限り山である。気持ちいい。
笠取山から唐松尾山の間は細い痩せ尾根だったりちょっとした岩場だったりと、なかなか険しくて楽しい。
でもって唐松尾山の山頂は徹底的に地味だった。
看板も地味だし眺望もない。
唐松尾山から下って3日目の目的地、将監小屋(しょうげんごや)に着いた。ここでテント泊をする。そういえば3日目にしてようやくテントの出番だ。
将監小屋をやってたおじさんは先日事故で亡くなってしまったそうだ。ご冥福をお祈りいたします。
テント場は広くて快適。小屋の前で水を汲めるし水道局設置のきれいなバイオトイレもある。文句なしに良いテン場だ。
テントを設営。山用テントは一式で1.5kg切っていて非常に軽い。
多少風が吹いてたけど、雨が降ってないテント設営は楽ですな。
さて、GPSログによる進捗だが、ようやく半分まで進んだ。3日で半分なのにあと2日で着けるのだろうか?
3日掛けてようやく半分くらい。あと2日でどうにかなるのか?
夕食はペンネ
今日の夕食はペンネ。茹でて余ったゆで汁は飲んでカップスープの素をぶっかけて混ぜれば完成。そんなに美味しくはないが栄養は取れる。
ビーフジャーキーも一緒に茹でる。タンパク質、大事です。全体的な味としてはイマイチ。
4日目
夜中はけっこう風が吹いていたのでなかなか眠れなかったが、5時間くらいは寝た気がする。
4日目の朝はみそ汁と五目ご飯。パックご飯を積極的に食べているので荷物がどんどん軽くなっていく。
パックご飯は少量の水と一緒にコッヘル(鍋)に入れて火に掛けると3分くらいで蒸し上がる。待ってる間はみそ汁を飲む。
山梨と長野から始まった旅が、4日目にしてようやく東京都に達する。
ひたすら歩く
将監小屋からは緩やかな登りを延々歩く。体力的にはなんにもきつくないが、距離が長いので飽きる。
こういう良い道がずっと続くので楽っちゃ楽。
将監小屋の水場でたっぷり汲んでおいたので不足はないが、飛龍山の近くに水場があった。地図には載っているが、水が出ているか怪しいなぁ?と思ってアテにはしてなかった水場だ。
実際、水たまりみたいな水場で、あんまり飲みたいとは思えない。ホントに持ってなければ汲むが、たっぷり持っているのでスルー。
予想通りの小さな水場だったので汲まずにスルー。
山には小銭がよく落ちている
雲取山のちょい南西、飛龍山の登り口には祠があってお賽銭が散らかっていた。
みんなアレだろ、財布の中の小銭が重いからってここに捨てていったろ。
ほとんどが1円、5円、10円だが中には500円や100円が落ちていた。これ拾って下界で使った方が経済効果としては良いような気がするが、犯罪でしょうか(ですよね)。
ぱっと見1200円くらいはありそう。
飛龍山に登る
飛龍山、以前から登ってみたいと思っていた山だ。それほどよく登られている山ではないらしく登山道は荒れ気味。国師岳と甲武信岳の間の道(あの不気味な部分です)に感じが似ている。
山頂には一応山梨百名山の標が立っていたが、かなり朽ちていた。
最近流行のポーズ。
飛龍山からまた縦走路に戻って東を見たら、そこには雲取山が見えた。
Peakfinder earthというiPhoneアプリで山座同定するとやはり雲取山。画面に景色と同じ線画が表示される。
狼平
飛龍山と雲取山の間には『狼平(おおかみだいら)』という場所がある。平らで開けていて、ビバークするのに適していると聞いていた。
着いてみると、なぜかそこだけ木も笹も生えておらず開けていて、テントを張るのにちょど良さそうだ。ここで一泊したくなる気持ちも分かる。
※国立公園内では原則キャンプ指定地以外でのテント泊は禁止されているが、時間や体力の関係で仕方なくビバークすることもある。
確かに開けていて、テントを張ったら気持ちよさそうだ。が、実際に張ると「マナー違反」とか「国立公園法が云々」という面倒な事に巻き込まれがちなので、緊急時以外は張らないのが無難。水場は無いので、狙ってテント泊する場所ではないし。
いよいよ雲取
狼平を過ぎれば雲取山は目の前だ。いやー、長かった。
これまで歩いてきた山と比べれば標高は低いけど、東京都では最高峰の2017m。
雲取山の西面を登った事はなかったが、東面より急で体力を削られた。
そしてどうにか山頂に着いた。
埼玉県の看板で記念撮影。ここは埼玉、東京、山梨の3県境。
こっちは東京都の看板。
これがPC遠隔操作事件の時にUSBメモリが埋められていた三角点です。
実はUSBメモリが埋められていた頃、僕も雲取山に登っていた。探せば見つかったかも知れないので惜しいことをした(なにが)。
旅の思い出を一望する。
東を見ればこれから進む石尾根。石尾根は何度も歩いているので庭みたいなもんですから。もう安心でございます。
ここから先はほとんど下りばっかで楽勝。
まだ距離的には20km弱残っているが、あとは基本的に下りなので時間は掛からない。よく知ってる道だしサクサク進もう。
途中の奥多摩小屋の前にはトトロらしきものがいる。
七つ石山の山頂で自撮り。
三角点の根元が露出していた。積雪を考慮してこの長さなのか、周りの地面が削れたせいかのか、どちらだろうか。
ほとんど消化試合。稜線にある小ピークを踏破していく。
地味ピークには手作りの看板が掛かっています。
4泊目は鷹巣避難小屋
4日目の泊地は色々あって鷹巣避難小屋になった。個人的には奥多摩小屋のテン場がよかったのだが、同行者に却下された。
鷹巣避難小屋はきれいな避難小屋で、トイレと、ちょっと離れているが水場がある。
平日なのにすごく混んでいた。
平日だし広々寝れるだろ、なんて思っていたら、インターナショナルスクールの外国人が20人くらいで占領していた。先客の日本人パーティーもあぶれた人は外でテント泊だという。
まさかの展開だが、避難小屋なので仕方ない。泊まれる保証などないのだ。
それにしても避難小屋に20人で泊まるか、普通。
あと5時間歩けばゴールの位置。
もう時間も遅く、他に行く場所もないので僕もテントを立てた。
夕食は菊水の寒干しラーメン。インスタントだが生麺の様な食感の麺とコクがあるスープが美味い。
寒干しラーメン、ちょうおすすめ。
具はビーフジャーキーとワカメ。
5日目
急ぐ必要もないがなにせ寝る時間が早いので4時には目が覚めてしまう。水を汲んで朝ごはんを作って食べて色々撤収。
出発予定時間までボーッと待っててもしょうがないので準備が出来次第出発した。
パックご飯はほぼ食べきったので、荷物がすごく軽い。
食料がかなり減ったので荷物が軽い。なぜか疲労も無く、スイスイ登れてしまう。
鷹巣山の山頂。左の石柱は三角点だ。ここの三角点もずいぶん飛び出している。脱腸みたいだ。
城山だった気がする。
六ツ石山。またサクサク進みすぎて自撮りになった。
鷹巣山から石尾根の末端まで5時間くらい。ようやく長かった旅も終わる。悪態をつきながら登った笠取山の急登も、早くも良い思い出である。
下山すればコーラと温泉が待っている。早く、早く。
今回も無事に下山できそうです。ありがとうございます。
そしてついに山道が終わって舗装された林道になった。
ヒゲが伸びましたね。
これにて縦走、終わり!
奥多摩駅がゴールとなります。無事に下山できてよかった。
奥多摩駅に着いて、帰ってきた!って思ったのは初めてかも。
コカ・コーラ最高です
下山したら温泉に入ってコカ・コーラである。コーラ最高。ビールよりコーラであり、ビールなんか飲んだら帰り道がだるくなっちゃうのでコーラに限る。
神の飲み物だね。
強い炭酸と甘味と酸味、そしてスパイスの香り。全身の細胞に行き渡るようだ。何度飲んでも下山後のコーラはたまらない。
コカ・コーラさん、広告のお仕事お待ちしています。
実際のとこはまぁ、作り笑顔なんですけどね。
疲れ切ったよ!
マジで疲れた。そりゃ鼻毛もでるわ。
なんでまた登りたくなってるんだよ
5日間、歩いているときは楽しいと思っているより後悔してる時間の方が長かった。あー、やっぱ家で寝てりゃよかった、なんでこんな急坂登らなきゃならないんだよ、と思っていた。このルートは二度と歩かない!なんて。
が、この原稿を書きながら、装備はこうした方がいいな、ルートを工夫すれば3泊で行けるかな、歩いてない破線ルート(ちょっと危険なルート)も歩いてみたいな、などと考えている。
なぜ懲りないんだろう。どうせ山ではまた後悔するのに。で、またその次もその次も、山に行っちゃうんだろう。バカだ。
昼頃下山して家に着いたのが早かったし元気だったのでステーキを食べに行った。