クライミングが好きなんです
まずはクライミングの説明を。
登山の記事はたまに書いてきたけど、クライミングの記事はあまり書いてなかった(
しいて言えばこの記事か)。
でも実は初めてクライミングをしたのは2005年なので10年前になる。といっても最初の7年くらいはあんまり一生懸命やってなかった。
たまにインドアで登るくらい。外で登ったり定期的に登る様になったのはここ2、3年だったりする。
インドアジムのボルダリング。ボルダリングはロープを付けないで登る。インドアはホールド(手がかり)の場所が分かりやすい。
クライミングジムは手軽に行けるので便利なのだが、外の岩場で登る方が気持ちがいいし楽しい。
でもインドアジムと違ってどこを持って登るのか分かりにくかったり、落ちると怪我をしやすかったりするので怖い。でも楽しい。なぜ怖いのに楽しいのかは、未だによく分からない。
日本で一番有名なクラック(岩の割れ目)、小川山レイバック。
どうやって安全に登るのか?
外のクライミングルートは高いと数百mとかなんだけど、ややこしくなるのでここでは30mくらいまでの高さを(比較的)安全に登る方法をザックリ説明する。
ザックリなので細かい事は色々省く。突っ込みとかあったらTwitterとかfacebookで書いてください。
これは高さ200mの壁を登っているところ。ロープの長さは60mくらいなので適当な長さで区切って登る(『ピッチを切る』と言います)。
当然ロープを付けます
まず、ロープ(命綱)を自分に結ぶ。普通はロープなしで5m以上の岩に登る事はしない。落ちたら怪我したり死んだりしちゃうからだ。
大雑把に描くとこんな感じ。
登る人がクライマー、クライマーのロープを特殊な器具で操作する人がビレイヤー(確保者)である。
クライマーは登りながら岩に付いている『ハンガー』に『ヌンチャク』を掛けて、そのヌンチャクにロープを掛ける。
ちなみにヌンチャクの正規名称は『クイックドロー』で、カラビナ2個が紐(スリング)で繋がっている。
ヌンチャク。カラビナ2個が繋がっている。
ビレイヤーはクライマーが登った分だけロープを出して、クライマーが落ちた時はロープを止める。
落ちたとしてもロープを掛けたヌンチャクの下で止まる。落ちる高さは、ヌンチャクの上に出ていたロープの2倍だ。
最後に掛けたヌンチャクから出ているロープの長さの2倍落ちる。
ハンガーの上に伸びたロープの倍の距離落ちるので、ハンガーの間が長いと落ちる距離も長くなってしまう。
しかもロープは伸びるので予想以上に落ちてしまったりする。
これがハンガー。ハンガーが無いルートもあるがややこしくなるので割愛。ここは2本目が遠いので怖い。
上の写真だと2本目のハンガーが遙か上なので、2本目の下辺りで落ちると地面まで落ちてしまう。
下の写真は実際に登っている様子。
ヌンチャクをハンガーに掛けてそこにロープを通す。今はロープを掛けたヌンチャクのすぐ下にいるので落ちても大丈夫。登っているのはクライミング友達のY先輩。
下の写真は最後に掛けたヌンチャクより大分上なので、落ちるとすごく怖い。
多分地面までは落ちないけどかなり怖い。クライマーもビレイヤーも緊張する。
こんな感じで、壁に付いているハンガーにヌンチャクとロープを掛けながら登っていく。落ちた時に打ち所が悪ければ怪我はするかも知れないが、少なくとも死ぬことはあまり無い。大抵は無事に止まる。
ルートの上に着くと下降用のカラビナとか木とか、なにかしらあるので自分で方法を考えて下ろしてもらう(非常にややこしいので超割愛)。
以上が岩壁を安全に登って降りてくる方法だ。
次のページでは小川山の紹介をします。
前夜発で小川山へ
東京を出たのは金曜の夜。途中、道の駅でビバークして早朝出発。
清里の廃墟群を抜けると一面レタス畑の川上村に入る。
清里の廃墟群、好きです。
川上村では早朝からレタスの収穫をしていた。畑の向こうには、ところどころ岩肌が見える山。小川山に近づいている事を実感する。
気持ちがいい高原の朝。
小川山とは?
小川山は1970年代の終わりからクライミングエリアとして開拓され、数多くの岩場に無数のクライミングルートがある。日本におけるクライミングの聖地とも言える場所だ。
天気のいい週末になると多くのクライマーが集まってくる。
レベルは難しいクライミングルートから、僕みたいなヘボクライマーでも登れる簡単なルートまで様々。表面がツルツルの岩にもルートがあって、そこにクライマーが張りついて登っていく姿は非常に格好良い。
着いた。早く岩場に行きたい。
宿泊は小川山の麓にある『廻り目平キャンプ場』。金峰山荘という宿泊施設もあるが、個人的にはテント泊の方が楽しくて好きだ(安いし)。
テントだらけ。たき火の煙もそこら中から上がる。
バーベキューとたき火
最近は「地面の生き物が死ぬ」とか「火事になったらどうする」とか言うことでたき火に厳しい場所が多いが、廻り目平では直火のたき火が出来る。
たき火は良い。
鶏のモモ肉を豪快に焼く。
昼間はクライミング、夜はたき火をしながら魚や肉を焼いて酒を飲んでテントで寝る。
最高じゃないか。まさにクライマー天国だ。
たき火でマシュマロを焼いちゃったりする。
で、これがマラ岩です
マラ岩はキャンプ場から見ると川の向こう側になって、形的にもそういう形をしている。
うっかり写真を撮り忘れたのだが、ギリギリ写っている写真を見つけた。
チラリズム。
この写真で『写っている写真を見つけた』とか書いちゃう勇気を称えて欲しい。
右の木に隠れているのがマラ岩である。マラだけに、どうよこのチラリズム(撮り忘れてすみません)。
シルエットをなぞるとこんな具合。
屹立。
なかなか立派である。
マラ岩の隣にあるのは妹岩である。妹の横で屹立するマラ。いいのだろうか、この組み合わせ。
妹岩の左の方を見るとごま粒みたいにクライマーが張りついている。
スケール感をわかっていただけますでしょうか。
無数の岩場にごま粒のようなクライマー。登ってるのを遠くから見るだけでも面白い。
次のページではいよいよマラ岩に登る。
キャンプ場からマラ岩に行くにはクソ冷たい川を渡渉する必要がある。真夏でも足の芯まで痛くなるような冷たさだ。
本当に冷たい。でも岩の上を飛んで渡るのはほとんど無理。
岩場への道は一般的な登山道と比べて不明瞭で迷いやすい。こういう場所ではGPSアプリが役立つ。岩場の位置をマークしてあるので、それを目指せば大体着く。
途中に植生保護の看板が立っていた。ちゃんとした印刷物にも『マラ岩』と書かれている。地名みたいなもんだから仕方がない。
マラ岩のすぐ横には妹岩のカサブランカ(百合)。なにやら意味深である。
妹岩にはカサブランカという有名なルートがあります。
下の写真で赤い服の人が登ってるのがカサブランカ。きれいなクラックを登っていく有名ルートだ。
難易度は5.10a。
マラ岩に到着
対岸から見てマラ岩の裏側に当たる基部に着いた。
マラ岩には沢山のルートがあるが、一番簡単に登れるルートを選んだ。他のルートは登れる気がしない。
『川上小唄』というルートで難易度は5.8。5.8ってのは大体、25段階くらいある難易度のうち下から3番目くらいだ(つまりとてもやさしい)。
この壁を真上に登っていきます。
1本目って書いてあるところにハンガーがある。
1本目のハンガーが結構たかいところにあるので、そこまでで落ちたら死ぬパターンだ。
5m落ちれば済むと思った?残念!
落ちても5mなら大体死なないとか思ったでしょう。でも違うんだ。落ちると、角度的には山の斜面も転げ落ちて15mくらい下まで行っちゃうのである。
これ、死ぬやつだ。
さっさと登ろう
川上小唄もそこそこの人気ルート。モタモタしてると混んでしまうのでサッサと登らなければならない。
自分のハーネス(ロープを結んだり道具をぶら下げておくベルト)にロープを結び、ビレイヤーに確保をお願いして登り始める。
緊張のスタート。
登れる事はわかってるけど、こわい
しょせん5.8である。登れないわけがない。でも、ウッカリ手や足が滑ってしまうことはあるし、ヌンチャクを1本も掛けずに落ちたら死んじゃう。
手に汗をかきながら登っていく。
1本目のヌンチャクにロープを掛けて一安心。これで死ぬ確率は非常に低くなった。
怖いところは抜けたので、あとは快適に登れる。
滑りやすいところを抜けたらあとは快適に登れる楽しいルートになっていた。
持つところや足を置くところがいっぱいあるし、多少落ちても地面までは落ちない高さなので怖さも減る。
みんなが触った部分は白くなる。そういうところは大抵持ちやすい。
マラ岩のさきっちょに到着
上に着いてみると、マラ岩という名前からは想像出来ない薄さだった。舌の様な形である。
マラ岩は薄かった。
一度クライミングで自撮りをしてみたくて自撮りスティックを持って来た。
しかし実際に撮ってみると、顔がどうにも真顔である。
表情を作る余裕は無い。
薄いマラ岩の先端にまたがっているのだが、左足の下は100mくらいの絶壁である。
すんげー絶壁。
下を見るとなかなか震える高度感。マラ岩の影がなかなかにセクシーだ。
高すぎてなにがなんだかって感じ。
なにやってんだって感じがある。撮影はクライミング友達のMさん。
二日間でマラ岩以外の岩場でも楽しいクライミングが出来た。キャンプも楽しいしクライミングも楽しいし、やっぱ小川山は最高だ。
と同時に、クライミングは上手い方が絶対に楽しいので、もっと難しいルートも登れるようにがんばって練習しようと思ったのでした(大体恐怖心に負ける)。
帰り道はすっかり秋空でした。
マラ岩っぽい岩はどこにでもある
マラ岩はたしかにマラ岩って感じの形だが、実のところそういう形の岩は色んなところにある。下の写真は瑞牆山の近くにある岩だが、そういう形をしているだろう。
岩はただそこにあり、人間が勝手にルートを決めて名前を付けているだけなのだ。