特集 2014年1月17日

蝶ネクタイでお洒落上級者を目指す

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ここ最近、ずっと蝶ネクタイが気になっている。普段使いとして蝶ネクタイをつけて、ワンランク上のお洒落を狙いたい。でも、変わり者と思われたくはない。手を出していいものかどうなのか。あぁ、麗しの蝶ネクタイ。ここは悩む前に行動だ。自分に似合う蝶ネクタイを探すことにした。
1970年神奈川県生まれ。デザイン、執筆、映像制作など各種コンテンツ制作に携わる。「どうしたら毎日をご機嫌に過ごせるか」を日々検討中。


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> 個人サイト すみましん

蝶ネクタイとは?

蝶ネクタイというとフォーマルなイメージが強い。タキシードや燕尾服に合わせるアイテムで、シチュエーションとしては結婚式くらいしか浮かばない。しかし、最近のお洒落上級者はカジュアルなシャツに蝶ネクタイを合わせたりしていて、それが格好いいなと思ったのだ。蝶ネクタイを結婚式のアイテムとしてしか見ていないようでは、ワンランク上は狙えない。

そもそも蝶ネクタイについて、僕は何も知らない。

まずは、ネットで「蝶ネクタイ」を検索してみた。すると、蝶ネクタイのことをボウタイと呼ぶことが分かった。そして、ボウタイの中にも様々なタイプが存在することも分かった。はじめから結び目が出来ているタイプがピアネス・タイ、長い紐っぽいものを蝶型に結ぶのがツウ・タイ。
Wikipediaのボウタイの写真。今回目指すのはこういうフォーマルな雰囲気ではない
Wikipediaのボウタイの写真。今回目指すのはこういうフォーマルな雰囲気ではない
自分で結ぶタイプはハードルが高そうなので、今回はピアネス・タイにターゲットを絞ることにした。そのタイプなら学生時代、バーテンのアルバイトで毎日つけていた。黒一色のシンプルなタイプの蝶ネクタイで、お洒落のためではなく制服として支給されていたものだ。

そういうアルバイトの制服的な蝶ネクタイではなく、お洒落アイテムとしての蝶ネクタイを探すつもりだ。

銀座の老舗で蝶ネクタイ選び

自分に似合うピアネス・タイを探すため、銀座に向かった。

蝶ネクタイデビューを飾るに辺り、1人では心細いので林さんを誘った。僕の見立てでは林さんの顔立ちには蝶ネクタイが似合うと思うのだ。これを機会に2人で蝶ネクタイの似合う大人になれたら幸いである。

銀座四丁目で林さんと待ち合わせて、ネクタイをはじめとする紳士用品を多数扱う老舗店に入った。

店内には様々なデザインのネクタイが陳列されているが、蝶ネクタイが見当たらない。優しそうな女性店員さんに聞いてみた。

「蝶ネクタイはありますか?」

すると、女性店員は陳列棚の下から玉手箱のような箱を取り出した。その中に色々な蝶ネクタイが入っている。
お洒落な蝶ネクタイたちが並ぶ
お洒落な蝶ネクタイたちが並ぶ
今まで見たことのない、お洒落な蝶ネクタイばかりだ。これらすべてがこのお店のオリジナルデザインだという。オンリーワンな蝶ネクタイを探すにはうってつけである。

しかし、様々なデザインの蝶ネクタイを前にして、僕と林さんはどうしたらいいのか分からなくなってしまった。どの蝶ネクタイが自分に合うのか、全く見当がつかないのだ。

どうしよう?

「合わせてみたらいかがでしょう?」

と店員さんから提案があり、とにかく合わせていくことにした。
片っ端から
片っ端から
合わせていくけど
合わせていくけど
どれが合うのか
どれが合うのか
まったく分からない
まったく分からない
どれでもいいんじゃないか、そんな気さえしてくる

僕と林さん、2人とも決め手に欠けていたので、お互いに相手を評価しあう評価方式で選んでいくことにした。その際、遠慮はせずに率直な感想をぶつけ合うという約束で、まずは僕が合わせてみた。
これなんてどうでしょう?
これなんてどうでしょう?
赤が際立つ賑やかな柄が素敵な一品だ。僕に似合っているかどうか、林さんに感想を聞く。

「住さん、最近眼鏡を変えたでしょう。その眼鏡も個性的だから蝶ネクタイと喧嘩してますよ」

林さんの率直過ぎる感想に、少しカチンと来てしまった。蝶ネクタイと一緒に最近新調した眼鏡まで否定されたような気がする。

「じゃあ、林さんはこの蝶ネクタイが自分に似合うと思います?」

この柄は難しいですよ、という意味を込めて林さんに詰め寄ってみた。すると、

「僕、赤系はどうしても似合っちゃうんですよ」

と自信を示す。本当かどうか、林さんに合わせてみた。
赤系に自信を示す林さん
赤系に自信を示す林さん
確かに似合う。自分に似合うと思って手に取ったものが林さんに似合ってしまった。なんとなく悔しい。そして、自分は赤系が似合うと自己分析が出来ている点も悔しい。

そういえば、以前、カラーコーディネイターの人から僕には黄色系が似合うと言われたことがあった。そのことを思い出し、林さんに伝えてみた。

それを受けた林さんが黄色い蝶ネクタイを僕に合わせてくれる。
黄色系には自信あり
黄色系には自信あり
僕に合わせた途端、林さんの口元がゆるみ「あ、ダメだ」と言った。

そんなはずはない。と思って鏡で確認したら確かにダメだった。司会者感が強い。僕には黄色が似合うと言ったあのカラーコーディネイターは偽物なのか?

黄色を捨ててグレー地にカラフルな矢印が印刷されているタイプを合わせてみた。
黄色を諦めてグレーに挑戦
黄色を諦めてグレーに挑戦
カラフルな矢印がポップなムードを演出する一品だ。

すると、林さんもこの矢印柄を気に入ったらしく、自分に合わせている。
林さんもお気に入り
林さんもお気に入り
僕よりも似合っている。

率直にそう思った。赤系につづき、グレーベースも林さんはいけるのだ。僕に似合う蝶ネクタイを探すためにやって来たのに、気づいたら林さんがどんどん先を行っている。友だちの付き添いでオーディションに行ったらスカウトされた人、みたいな状況だ。

結局、林さんはこの矢印柄を購入することに決めた。

散々悩んで分からなくなった僕は、店員さんが薦めてくれた蝶ネクタイに決めた。
店員さんのオススメ
店員さんのオススメ
よく見るとカクテルグラスが並んでいるのが分かる。お酒好きとして、とても気に入った。似合う似合わないはこの際考えないことにした。
無事、蝶ネクタイをゲットしました
無事、蝶ネクタイをゲットしました

ファミレスで試着

購入した蝶ネクタイを持って、近くのファミレスに入った。そこで試着してお互いのお洒落具合を確認するためだ。
ファミレスで蝶ネクタイを装着
ファミレスで蝶ネクタイを装着
蝶ネクタイを普段使いにする、ワンランク上のお洒落は実現出来たのか?
ランクアップしたのか?
ランクアップしたのか?
どうなんだろう?

この2人はお洒落上級者なのだろうか?

今ひとつピンと来ない。林さんから、チョッキのせいで蝶ネクタイが沈んでいるのでは? と指摘が入った。

確かに、せっかくの蝶ネクタイがあまり目立っていない。

ベストを脱いでみた。
蝶ネクタイが目立つように、ベストを脱いだ
蝶ネクタイが目立つように、ベストを脱いだ
ダメだ。

一気にバイト感が強くなってしまった。あれだけ吟味した蝶ネクタイなのにどうしてだろう。ワンランク上どころか、2ランクくらいダウンしている。
漂う
漂う
バイト感
バイト感
こういう風にならないために、お洒落な蝶ネクタイを買ったはずなのに。
休憩時間中にさっきの客の悪口を言い合う、ベテランバイトの2人
休憩時間中にさっきの客の悪口を言い合う、ベテランバイトの2人
でもパフェを食べて機嫌を直す、ベテランバイトの2人
でもパフェを食べて機嫌を直す、ベテランバイトの2人
白いYシャツがいけないのか。

試しにファミレスの店内を歩いてみた。

お客さんに呼ばれて
お客さんに呼ばれて
笑顔で接客するバイトリーダー
笑顔で接客するバイトリーダー
林さんも店内を歩く。
お客に呼ばれたら
お客に呼ばれたら
すぐに駆けつけて
すぐに駆けつけて
笑顔を見せるバイトリーダー
笑顔を見せるバイトリーダー
ポップな矢印柄とか、カクテルグラスをあしらったデザインとか、そんな細かいこだわりをかき消すバイトリーダー感。

原因はどこにあるのか?

やはり白いYシャツがいけないのではという結論に至り、その日は解散した。


後日、林さんからシャツの色を変えてみた、という連絡をもらい写真を送ってもらった。
シャツの色を変えた
シャツの色を変えた
素材集みたいな写真が
素材集みたいな写真が
送られてきた
送られてきた
この2人は何を生業にしていて、何の打ち合わせをしているのか。お洒落以前にそこが気になって仕方がない。

赤系はいける、という林さんの過信が招いた結果だと思う。

蝶ネクタイを普段使いにしてお洒落上級者になる。それは簡単ではなかった。でも、僕は諦めない。せっかく蝶ネクタイを買ったので、今後もどんどんつけていこうと思っているし、また違う蝶ネクタイの購入も検討している。
今話題の水彩画アプリにかけたら社員っぽい雰囲気になった
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