
蝶ネクタイとは?
そもそも蝶ネクタイについて、僕は何も知らない。
まずは、ネットで「蝶ネクタイ」を検索してみた。すると、蝶ネクタイのことをボウタイと呼ぶことが分かった。そして、ボウタイの中にも様々なタイプが存在することも分かった。はじめから結び目が出来ているタイプがピアネス・タイ、長い紐っぽいものを蝶型に結ぶのがツウ・タイ。



そういうアルバイトの制服的な蝶ネクタイではなく、お洒落アイテムとしての蝶ネクタイを探すつもりだ。

銀座の老舗で蝶ネクタイ選び
蝶ネクタイデビューを飾るに辺り、1人では心細いので林さんを誘った。僕の見立てでは林さんの顔立ちには蝶ネクタイが似合うと思うのだ。これを機会に2人で蝶ネクタイの似合う大人になれたら幸いである。
銀座四丁目で林さんと待ち合わせて、ネクタイをはじめとする紳士用品を多数扱う老舗店に入った。
店内には様々なデザインのネクタイが陳列されているが、蝶ネクタイが見当たらない。優しそうな女性店員さんに聞いてみた。
「蝶ネクタイはありますか?」
すると、女性店員は陳列棚の下から玉手箱のような箱を取り出した。その中に色々な蝶ネクタイが入っている。



しかし、様々なデザインの蝶ネクタイを前にして、僕と林さんはどうしたらいいのか分からなくなってしまった。どの蝶ネクタイが自分に合うのか、全く見当がつかないのだ。
どうしよう?
「合わせてみたらいかがでしょう?」
と店員さんから提案があり、とにかく合わせていくことにした。









僕と林さん、2人とも決め手に欠けていたので、お互いに相手を評価しあう評価方式で選んでいくことにした。その際、遠慮はせずに率直な感想をぶつけ合うという約束で、まずは僕が合わせてみた。



「住さん、最近眼鏡を変えたでしょう。その眼鏡も個性的だから蝶ネクタイと喧嘩してますよ」
林さんの率直過ぎる感想に、少しカチンと来てしまった。蝶ネクタイと一緒に最近新調した眼鏡まで否定されたような気がする。
「じゃあ、林さんはこの蝶ネクタイが自分に似合うと思います?」
この柄は難しいですよ、という意味を込めて林さんに詰め寄ってみた。すると、
「僕、赤系はどうしても似合っちゃうんですよ」
と自信を示す。本当かどうか、林さんに合わせてみた。



そういえば、以前、カラーコーディネイターの人から僕には黄色系が似合うと言われたことがあった。そのことを思い出し、林さんに伝えてみた。
それを受けた林さんが黄色い蝶ネクタイを僕に合わせてくれる。



そんなはずはない。と思って鏡で確認したら確かにダメだった。司会者感が強い。僕には黄色が似合うと言ったあのカラーコーディネイターは偽物なのか?
黄色を捨ててグレー地にカラフルな矢印が印刷されているタイプを合わせてみた。



すると、林さんもこの矢印柄を気に入ったらしく、自分に合わせている。



率直にそう思った。赤系につづき、グレーベースも林さんはいけるのだ。僕に似合う蝶ネクタイを探すためにやって来たのに、気づいたら林さんがどんどん先を行っている。友だちの付き添いでオーディションに行ったらスカウトされた人、みたいな状況だ。
結局、林さんはこの矢印柄を購入することに決めた。
散々悩んで分からなくなった僕は、店員さんが薦めてくれた蝶ネクタイに決めた。






ファミレスで試着






この2人はお洒落上級者なのだろうか?
今ひとつピンと来ない。林さんから、チョッキのせいで蝶ネクタイが沈んでいるのでは? と指摘が入った。
確かに、せっかくの蝶ネクタイがあまり目立っていない。
ベストを脱いでみた。



一気にバイト感が強くなってしまった。あれだけ吟味した蝶ネクタイなのにどうしてだろう。ワンランク上どころか、2ランクくらいダウンしている。










試しにファミレスの店内を歩いてみた。












原因はどこにあるのか?
やはり白いYシャツがいけないのではという結論に至り、その日は解散した。
後日、林さんからシャツの色を変えてみた、という連絡をもらい写真を送ってもらった。







赤系はいける、という林さんの過信が招いた結果だと思う。











