きっかけは初詣にて
2013年元日。…からだいぶ経った1月某日、自宅近くの富岡八幡宮(東京都江東区)へと初詣に出かけた。
日本最大の神輿で有名な富岡八幡宮
ちなみに門前町には牛丼が290円の「築地吉野家」もある。本当に「ちなみに」な情報だ
富岡八幡宮での参拝を終え、牛丼も食べ終わって帰る道すがら、べつの立派な神社が目にとまった。深川不動堂こと「成田山 東京別院」である。
電光掲示板なども駆使し、ハイテクと伝統が融合する境内
ガチャガチャみくじ
ちなみに「吉」でした。全体的に「慢心することなかれ」との戒め。ふだんからなにかと慢心しがちなので気をつけよう
せっかくなので本堂(旧本堂)の内部も見学してみた。
堂内は自由に見学可能
残念ながら堂内は撮影不可だったが、入口正面の「おねがい不動尊」や阿弥陀如来像など見どころが多い。なかでもひときわ興味深かったのが堂内にある「四国八十八ヶ所巡拝所」だ。四国八十八ヶ所、各霊場の御本尊が第1番札所から88番札所まで1部屋にまとめられたもので、入口の説明には「時空を超えた弘法大師の霊場」と書かれていた。
弘法大師ゆかりの寺にある「ミニお遍路」
聞けば、弘法大師こと空海によって開かれた真言宗系の寺院にはこうした「ミニ八十八ヶ所めぐり」を境内に設けているケースが少なくないという。ミニとはいえ、祈りをこめて巡拝すればきちんと御利益もあるらしい。
これはちょっとおもしろい。他のミニお遍路も探してみよう。
というわけで、やってきたのは東京・小岩の「善養寺」
雪化粧が美しい境内
弘法大師さま
名物「影向のマツ」は樹齢600年以上
茂りすぎた幹を82本の支柱で支えている
横綱の称号をもつマツ界のスターだ
境内の中央には東京都の天然記念物の指定も受けている巨大な松の木が鎮座する。約900平方メートルにもおよぶ繁茂面積は日本一といわれ、幹があまりにも茂りすぎたため支柱で支えられている。
これを見に来るだけでも十分な価値があるが、せっかく善養寺を訪れたなら境内のすみっこにあるコチラのコーナーにもぜひ立ち寄ってほしい。
そう、ミニお遍路コーナーである
大正時代に造られた由緒あるお遍路
中央の敷石の両側に八十八の石祠がある
「中央の敷石を踏んで両側の石祠を巡拝すると四国遍路をすることができる」とのこと。さっそくお遍路の旅へ出かけよう。
なかなか趣ある巡礼の道
自然と気持ちも凛とします
ひとつひとつ表情の異なる御本尊にお祈り
一番から時計回りに巡る。いわゆる「順打ち」である
途中、弘法大師様のお背中を拝しつつ
一本道ですが、ひとつひとつ巡拝するとけっこうな時間がかかる。なんせ八十八ヶ所である
30分ほどかけて踏破。このまま来た道を戻れば「逆打ち」になりますね
片道50mほどの巡礼道だが、ひとつひとつに参拝をしていくとけっこうな時間がかかる(といっても本家の500分の1くらいの所要時間だが)。
これだけでもそれなりにやりきった感はあるのだが、調べるとここ意外にも、さらに満足感を得られるミニお遍路があるという。富岡八幡宮と合わせここまですでに176ヶ所をめぐっているが、せっかくなので3回目の巡礼の旅へ向かうことにした。
ちなみに善養寺に向かう途中にあった中古携帯ショップのディスプレイが壮観だったので載せときます
有名な高幡不動にもあったミニお遍路
やってきたのは東京都日野市の高幡山 金剛寺。「高幡不動尊」の名で知られ、関東三大不動のひとつにも数えられる名刹だ。
大宝年間(701)草創とも伝えられる関東屈指の大寺院
まだまだ新年ムードの境内
重要文化財指定の仁王門や五重塔など、見どころも多い
日野のスター「土方歳三」の像もある
山内八十八ヶ所巡り
境内の奥は小高い山になっていて、ここに「山内八十八ヶ所巡拝道」としてミニお遍路が設けられているのだ。ミニお遍路の中では比較的規模の大きいものかもしれない。
幼き日の土方歳三が駆け回ったかもしれない山の入口から巡拝スタート
ちゃんと道と立て札が整備されているので安心
お賽銭は最後にまとめて、とのこと。こちらとしても有難い申し出
雪の山中に赤い頭巾の石仏がチラホラ
このような石仏が88体設置されている
第一番から八十八番までぐるっと山中をめぐるコースは所要約1時間程度。ひとつひとつ参拝しながらだと2時間くらいかかるが、ちょっとしたハイキング気分で楽しく巡れると思います。
5~10m間隔で置かれている赤い頭巾を頼りに進む
たまに感覚が離れている箇所があって不安になる
道中には季節の植物も群生。春に再訪したいですな
そんなふうに自然を愛でつつ、ひたすら「礼を打つ」
二十番あたりからにわかに山深くなります。引き返すならいま
崖っぷち仏
そうこうするうち高知県に突入
振り返ると眺望が開けていました
けっこう疲れる
ゆるゆる1時間ほど歩いてようやく半分の四十四番札所。正月休みでなまった体にはなかなかハードな道のりだ。だが、それなりの苦労があってこそ御利益にも与れるというもの。本家の八十八ヶ所を踏破した人からは「巡礼なめんな」とお叱りを受けそうですが、それなりの御利益しか望みませんので許してください。
いよいよ折り返しの四十四番札所へ到達
さらに山深く
半分を過ぎると周囲はさらに静寂に包まれる。いよいよ山が本気を出してきた感じだ。
ここはほんとに東京なんでしょうか
冬枯れの美しい巡礼道が都会生活でやさぐれたおっさんの心を癒してくれる。石仏の前で手を合わせる度に心が洗われていき、巡礼ギャルとの出逢いを期待するよこしまな心もいつの間にか消失していた。
高幡不動駅への案内板が出てきたら、巡礼道もいよいよ終盤
道中に咲く花や―
眺望や―
冬を耐えしのぶ草木に励まされながら進む
巡礼道は境内から八十八ヶ所をぐるっとめぐり、また境内に戻ってくるコースになっている。帰りのアクセスも考慮された親切な順路だ。
八十七番札所を過ぎ、ラストの八十八番は境内の大師堂前に設置されている。
八十七番を過ぎ
ラスト八十八番で境内に戻ってくる
ここまで所要2時間
こんな行楽気分の巡拝でも、2時間も歩けばそこそこの達成感がある。お遍路の醍醐味でもあろう「やりとげた感」がそれなりに味わえる点でも、この山内八十八ヶ所めぐりはオススメといえるだろう。
八十八ヶ所めぐり完遂。一日で合計264ヶ所めぐりだ
平穏な一年を祈願しました
お遍路入門としてオススメです
深川不動堂で聞いた話によれば、真言宗の中規模程度のお寺にはたいていこうした「ミニお遍路」が設けられているという。四国まで行く金銭的・時間的余裕はないけど、御利益を授かりたい、お遍路文化のエッセンスを感じてみたいという時は、まずこうしたものから始めてみるといいと思う。