特集 2012年11月1日

新・秋田名物「バター餅」ってどんな餅?

知らない間に特産品になっていた
知らない間に特産品になっていた
去年あたりから、実家の母から届く荷物の中に「バター餅」なる代物が頻繁に入るようになった。なんだこれは。ちなみに実家は秋田にある。

「最近、道の駅とかでよく売ってるんだけど、いまブームなんだよ。おいしいよ~。食べでみて~」とのことで、以来我が家でも「バター餅うまい!」と大人気であったが、その後テレビで紹介されたこともあり、なにやら事情が変わってきたという。

どうやらバター餅は「ブーム」から「秋田名物」へと進化したらしいのだ。これは現地へ行かねば。
1968年秋田県生まれ。食べたり飲んだりしていれば概ね幸せ。興味のあることも飲食関係が中心。もっとほかに目を向けるべきだと自覚はしています。

前の記事:うな重をナスで再現する店に行ってきた


スーパーで捜索

というわけで秋田に帰省した折、地元の大型スーパーまでリサーチに出かけた。が、ない。あれ? バター餅ないよ?

店内をくまなく捜索することしばし。 最終的には店員さんに売り場を聞き、ようやく見つけることができた。

母から「もうすっかり名物」と聞いていたので、てっきり「特設コーナー」のような場所で大々的に宣伝&販売してるのかと思いきや、なんと和菓子コーナーの一角で饅頭や団子に混じり、宣伝文句のひとつも宛てがわれることなく、ひっそりと売られているではないか。
「え? 私らずっとここで売られてましたけど何か?」的な面構えで陳列されていた。新人らしさゼロ。君らデビュー40代の歌手か。
「え? 私らずっとここで売られてましたけど何か?」的な面構えで陳列されていた。新人らしさゼロ。君らデビュー40代の歌手か。
これが件のバター餅。バター&餅って、いったい派手なのか地味なのか(見た目はご覧の通り、限りなく地味)
これが件のバター餅。バター&餅って、いったい派手なのか地味なのか(見た目はご覧の通り、限りなく地味)
…いいのか。もっと派手に売り出さなくて。おかげで発見までにえらい時間がかかったじゃないか。

それにしても、なんでもうこんなに馴染んでるんだ? なんの説明もなく売られてるってことは、つまり地元の食生活に完全に浸透したってこと?

名物は名物らしく駅で

混乱している私を見て、母が「うーん、駅ではもうちょっと宣伝してるかな?」と言う。そうか。名物と言うからには旅人にも売り込まないといけないもんな。

しかし…。
しーん。(北秋田市の中心地・鷹ノ巣駅です)
しーん。(北秋田市の中心地・鷹ノ巣駅です)
見事に何もなかった。これぞ「ザ・疲弊している地方の駅前」である。JRの駅の売店も縮小されて、立ち食いの蕎麦屋もなくなっていた。バター餅などもちろんない。

どういうことかと母に問えば、たしかJRじゃない方の駅にあったという。
JRの隣には秋田内陸縦貫鉄道の駅が。ここが北の始発駅です。終点は角館駅。
JRの隣には秋田内陸縦貫鉄道の駅が。ここが北の始発駅です。終点は角館駅。
が、こちらの駅舎の売店にも肝心のバター餅はない。「おかしいなー。前はここに売ってたんだけどなぁ…」と焦る母。
結局、売店の方に「バター餅はどこへ…」と聞いていた。
結局、売店の方に「バター餅はどこへ…」と聞いていた。
聞き込みの結果、どうやらJRの駅舎横にある店に移動したらしかった。
聞き込みの結果、どうやらJRの駅舎横にある店に移動したらしかった。
なるほど、店先にのぼり発見! うん、名物っぽい!
なるほど、店先にのぼり発見! うん、名物っぽい!
「からあげ」「ソフトクリーム」「そば・うどん」ののぼりと共に「バター餅」の物が確かにあった。そうか、バター餅の里ときたか…。

さっそく店内へと入ると、入口付近の一番目立つ場所に目的のバター餅が!
そうです! こういう扱いを期待していたんです!
そうです! こういう扱いを期待していたんです!
ほんとに名産品として扱ってるんだ…。

母からの情報が全てで、テレビを一切見ていなかった為いまいち確証が持てずにいたのだが、実際にこうして売られているのを見て、やっと「本当の話だったのか…」と実感が沸いてきた。そして秋田出身者として、新たな名物が出来たことを素直に嬉しいと思った。
この「もちもち三角」が地元では好評。元祖に近い存在らしい(あくまでうちの母情報)
この「もちもち三角」が地元では好評。元祖に近い存在らしい(あくまでうちの母情報)
もう一方は市内の老舗お菓子屋さんが作った物。スーパーのと同じ形ですね。
もう一方は市内の老舗お菓子屋さんが作った物。スーパーのと同じ形ですね。
バター餅が評判となり、あちこちで売れるようになると類似品を出す業者が多数出現したらしく、いまは協会認定のシールを貼ることで差別化を図っているのだという。

名物ともなると、管理も大変なのだ。
日本バター餅協会なんてものが出来たのか!
日本バター餅協会なんてものが出来たのか!
では、さっそく買い込んだバター餅を紹介していこう。

見事なまでに、ふわっふわ

えー、みなさん。新・秋田名物のバター餅ってこんなんです。どうぞ。
まずは「もちもち三角」から。ご覧の通り、全体的にうっすらバター色というかクリーム色をしてまして、
まずは「もちもち三角」から。ご覧の通り、全体的にうっすらバター色というかクリーム色をしてまして、
ひとくち食べてみると、 ほのかな甘みとバターの香り…。うん、これはおいしいよね。老若男女好きな味だと思う。
ひとくち食べてみると、 ほのかな甘みとバターの香り…。うん、これはおいしいよね。老若男女好きな味だと思う。
実は私は餅がそれほど好きではない。お正月に付き合いで何個か食べる程度だ。そんな私でも「おいしい」と感じるのだから、これは人気が出るのもわかる。

なんたって、この弾力ですよ!
もっちもち。餅なのに固くない!
もっちもち。餅なのに固くない!
この「もちもち三角」には例の認定シールが貼られていなかった。それもそのはず、こちらは更にグレードが 上がり「北秋田推奨特産品」に指定されていた。なんと市から推奨品として認定されているのは2人の作り手(両方ともおばあちゃん)が作ったバター餅のみと いう厳しさ。どおりでうまいはずだ。

次は地元のお菓子屋さんが作っているバター餅を食べてみよう。
こちらもフワフワとはいかないまでも、ご覧の通りの弾力。
こちらもフワフワとはいかないまでも、ご覧の通りの弾力。
先ほどより薄い分、歯触りがサクッと少し軽い感じ。でもやっぱり柔らくておいしい。
先ほどより薄い分、歯触りがサクッと少し軽い感じ。でもやっぱり柔らくておいしい。
バターが入ってるから固くならないらしいが、その分賞味期限は通常の餅とは比べ物にならないほど短い。

ああ、旨さと日持ちの相容れなさよ…!

もしやこれ、作れるのでは?

ところでこのバター餅、バターの他には何が入っているのだろう。
ほう、砂糖と卵黄と小麦粉、片栗粉か…。
ほう、砂糖と卵黄と小麦粉、片栗粉か…。
こちらは粉関係はナシ。ふむふむ。
こちらは粉関係はナシ。ふむふむ。
…これ、作れるんじゃないか?

そういえば、類似品が出回ったことで認定シール制度が出来たと言っていたではないか。ってことは、みんなやっぱり真似してみたんだよ、で、結構うまく出来ちゃったんだよ、きっと。
というわけで、バター、卵黄、砂糖(きび砂糖)の3品を用意。
というわけで、バター、卵黄、砂糖(きび砂糖)の3品を用意。
ならば、これだって味としてならバター餅になれるのでは!?
ならば、これだって味としてならバター餅になれるのでは!?
ホカホカのごはんにバターを溶かして、
ホカホカのごはんにバターを溶かして、
卵の黄身をたらーっと入れて、
卵の黄身をたらーっと入れて、
最後に砂糖を混ぜ、食べてみた。
最後に砂糖を混ぜ、食べてみた。
うっ…(絶句)
うっ…(絶句)
当方、ごはんにバターを溶かしたら、次にかけるべきは当然「醤油&鰹節」という人生を40年以上歩んでいる。そりゃ、こういう顔にもなりますわい!

バター餅がいい具合に「ほの甘い」のを真似て、砂糖の量を控えめにしたのがマズかった。

うん、こういうのは思いっきり甘くした方がいい。もっとお菓子寄りに振り切れば、なんとかなるに違いない。
急いで砂糖を緊急投入。
急いで砂糖を緊急投入。
どれどれ…。
どれどれ…。
おおっ!?
おおっ!?
うん、味としてはかなり近い。そういえば原材料の表示が「もち米、砂糖、バター」という順番だった。通常、使用量の多い順に明記することになっているから、思いのほか砂糖を大量に使っているのかもしれない。

形を変えたら抵抗がなくなるはず

味はかなり近づいたように思う。あとはごはんであることを意識しないよう、箸を使わず食べるように工夫すれば、もっと口にしやすくなるのではないだろうか。
片栗粉を混ぜてから、
片栗粉を混ぜてから、
形を丸く整えて、レンジでチン。
形を丸く整えて、レンジでチン。
一気にツヤが出た。このままかじりつく。
一気にツヤが出た。このままかじりつく。
うん、かなり抵抗は無くなった。しかしバター餅のふわふわとした柔らかさや滑らかな食感とは比べるべくもない。ま、当たり前ですな。

そして食べながら「バター、砂糖、卵黄って、これ小麦粉と混ぜたらケーキが出来るのでは?」とふと思った。
そこで、パンにバターを塗って砂糖をまぶしてみた。
そこで、パンにバターを塗って砂糖をまぶしてみた。
味の系統としてはほぼ同じである。パンだって小麦粉と卵とバターの集大成だもの、そりゃそうだ。

バター餅が全世代に人気がある理由のひとつが分かった気がした。

マタギ発祥説もある

ネットで検索してみると、秋田でもテレビ番組で紹介されたのを見て初めてその存在を知ったという人が大多数であった。地元の友達に聞いてみても「知らねっけなー(知らなかったな)」とのこと。

テレビでは「古くはマタギが山に持参して食べていた。腹持ちはいいし栄養満点で固くならないため携行食として最適であった」と紹介していたようで、なるほど秋田の新名物としてはいいエピソードだと思う。

あとは手軽に全国で買えるようになればいいな、と願うのみ。がんばれバター餅! 食べてみたい人は、通販で購入することをオススメします。
スーパーで最初に買ったバター餅もおいしかった。しかしバターと砂糖と餅って、カロリー的には最強なんじゃなかろうか…。
スーパーで最初に買ったバター餅もおいしかった。しかしバターと砂糖と餅って、カロリー的には最強なんじゃなかろうか…。
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