特集 2021年6月11日

「とろみ vs 炭酸水」爽快感の境界を探る

喉をとろとろ、シュワシュワと流れていく炭酸水は、果たして爽やかなのか。

そろそろ炭酸水が美味しく感じる季節だ。

ゴクゴク飲むとシュワッとした刺激が爽快で、蒸し暑いときも気分がスッキリする。

ということで、梅雨の頃から夏場にかけては無糖の炭酸水をずっと愛飲しているんだけど……ふと気になったのだ。炭酸水はとろみが付いても爽やかなのか、と。

とろみと爽快感は果たしてどちらが強いのか。それが知りたいのである。

1973年京都生まれ。色物文具愛好家、文具ライター。小学生の頃、勉強も運動も見た目も普通の人間がクラスでちやほやされるにはどうすれば良いかを考え抜いた結果「面白い文具を自慢する」という結論に辿り着き、そのまま今に至る。(動画インタビュー)

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「とろみ」=非・爽やかという図式

意味が分からないという人もいるかと思うが、考えてみて欲しい。
「サラサラ」は爽やかだが、「とろとろ」は爽やかじゃない。実際、世の中のとろみがついたものは、だいたいにおいて爽やかカテゴリに入らないはずだ。

水[爽やか]←→ くず湯[爽やかじゃない]
お茶漬け[爽やか]←→ おかゆ[爽やかじゃない]
ざるそば[爽やか]←→ あんかけうどん[爽やかじゃない]

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とろみの有る無しで大きく爽快感が違ってくる、という明確なサンプル。

だったら、爽やかさの代表格とも言える炭酸水は、とろみをつけとも爽やかなのか?それとも爽やかじゃなくなるのか?どこかに境界線はあるのか?
そこは気になるはずだ。

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先月に購入したゲル化剤、まだ300g中の280gほど余ってる。ぶっちゃけ、なにか使い道はないかと模索していたのだ。

あと、前回のチューブ薬味記事で使ったゲル化剤がまだ手元に大量に残ってるというのも、こんなことを考え始めた理由の一つではある。
なんでこんな大袋で買っちゃったかな、俺。すっごい持て余してるわー。

とろみ炭酸水の中に爽快感はあるのか

まずはどんな感じになるのか、試しにゲル化剤へ炭酸水を注いでみた。
するとその瞬間、ぶわっとすごい量の泡が発生。あわててかき混ぜると、すぐにその泡は消えてきたんだけど……これ、つまり炭酸水の中の二酸化炭素が一気に抜けてしまったということではなかろうか。

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注ぐと同時にこの爆発泡。これはあかんのではないか。

飲んでみると、うーん、確実に爽やかじゃないんだけど、それはとろみのせいというより、やはり気が抜けてしまってる部分が大きい。
そりゃそうか。炭酸水は非常に不安定な状態なので、物理的なショック……つまり、なにか固形物が混じったり、かき回したりすることで簡単に二酸化炭素が抜けてしまうのである。
この方法で正しく「とろみと爽やかさの勝敗」を決めるのは難しい。
であれば、なんらか別のやり方を模索するべきだろう。

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案の定、主に気が抜けてる方面での「爽やかじゃなさ」だ。

炭酸水から二酸化炭素を抜かないテクニックの一つに、ボトル内の気圧を高めるということがある。
水から二酸化炭素が出て行かないように、外側から押さえつけるというわけだ。
実際、炭酸飲料の鮮度をキープする用のポンプ付きキャップというのがあれこれ売られているし、市販の炭酸水もそもそも圧を高めた状態で流通している。

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「この原理ならいける!すごいのできるかも!」と意気込んで作ったものほど、なぜかガラクタ感が出る。デイリーポータルの工作あるあるだ。

ということで作ってみたのが、この「とろみ炭酸作成ボトル」である。
まずキャップ部には、よりポンプ性能が高く、素早くボトルの内圧を高められるポンピングスプレー(ペットボトルを霧吹きにできる改造パーツ)を搭載。
さらにゲル化剤を攪拌できるよう、ペットボトルに穴を開けて菜箸を差し込んでから、コーキング剤でフタをする。コーキング剤は乾燥してもゴムのような弾力があるので、気密性を保ちつつ菜箸を動かすことができるのだ。

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炭酸水とゲル化剤を入れたら、スプレーキャップを装着してポンピング!
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圧力さえかかれば、多少かき混ぜても泡が立たない。これは成功の予感。
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とろーり、と注がれたとろみ炭酸水。

ここに炭酸水を注ぎ、ゲル化剤を少量の水で溶いたものを加える。あとはポンピングして内圧を高めてから菜箸で攪拌したら、とろみ炭酸水が完成だ!
実際に飲んでみると、ダイレクトに攪拌したよりもかなり炭酸の刺激が残っているのを感じる。
口に含むと、トローッとした液体がもったりと喉に流れていき、じんわりとシュワシュワしつつ、ゆっくりと胃に降りていく。なんというか、今までに受けたことのない感覚である。

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顔芸だけで爽快感を伝えるのも難しそうなので、心象風景を合成してお伝えします。

まず、炭酸水100mlにゲル化剤0.5gの場合。粘度としては、だいたいバナナジュースぐらいのとろみ具合を想像してもらえばいい。
もちろん粘っこくはあるんだけど、それなりにスルッと飲める印象だ。そして、それなりに爽快感もある。しかし、やはりとろみ+炭酸への違和感はある。

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ゲル化剤1.0gでこれぐらいのとろみ具合。かなり危険な雰囲気は出てきたぞ。

続いてゲル化剤1.0g。粘度はグッと高まって生クリームぐらいの感じ。
飲んだ感じは、うーん、早くもこの時点で爽やかさととろみが拮抗し始めたっぽい。
順番としては、まずシュワシュワした炭酸のはじける刺激が来て「おっ、爽快じゃん」と思うんだけど、その直後、喉ごしにねっとりとした感触が来て「あー、爽やかじゃないなー」ってなる。
これは非常に混乱させられるぞ。何度飲んでも、自分が爽快かそうでないかの判断が付かないのだ。
二段階目にしてもうギリ。もしかして、とろみ炭酸の爽快感境界はこの辺りなのか?

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1.0gで早くも炭酸水への不信感が漂いだした。喉ごしがそろそろヤバい。

ゲル化剤1.5gは、だいたいあんかけの“あん”と同じぐらいのとろみである。
そして案の定というか、完全に爽やかじゃなくなった。あきらかにとろみの粘りが炭酸の爽快感を打ち消して、重い。シュワシュワしたとろみ、気持ち悪い。
あくまでも個人の感想ではあるが、これは飲むほどに爽快感が失われていく系のやつだと思う。
あと、粘りが絡むせいか、飲んだ後に逆に喉がかわく感じもある。少なくとも、夏場にこれはやめた方が良さそうだ。

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ゲル化剤1.5g。もう見た目からして重いし、喉にも絡む。
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気分的にはこれぐらい。もはや爽快感とか求めるレベルじゃない。

もう結果は出ちゃったけど、いちおうゲル化剤2.0gも試しておこう。粘度はファストフードのシェイクぐらいで、擬音として表現すると「とろり」ではなく「どるぉっ」だ。
スプーンですくうと、ぼってりとした塊になって落ちる。液体としての体面はギリギリ保っているものの、飲み物とは言い難い。立ち位置としては、もう流動食のカテゴリである。
もちろん、飲んでもシュワシュワするだけで、爽快感はゼロ。

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ゲル化剤2.0g。表現としては「ゆるめのスライム」あたりがマッチする。
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あまりに喉が渇いたので普通の炭酸水飲んだら、超爽やかだった。爽快感はここにあったのか。

最後にノーとろみ(普通の炭酸水)を飲んだら、あまりの爽やかさに涙が出そうになった。
そもそも「炭酸水にとろみは不要」という、考えるまでもなかった結論を噛みしめつつ、ゴクゴクと飲み干した次第である。

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とろみ炭酸水とゼリー飲料はなにが違うのか

ところで、自販機などでも見かける缶飲料で「ソーダゼリー」というのがある。飲む前に缶を良く振ると、まさにとろっとした炭酸飲料になって、しかも爽やか美味い。
おかしい。さっきまで飲んでたアレと何が違うのか?
無糖の炭酸水と、甘い炭酸飲料。要素として見えているのは「味」である。

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とろみをつけてもいけそうな炭酸飲料三銃士を連れてきたよ。
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どろっ…どぽっ…という音と共にとろみ炭酸作成ボトルから出てくる、とろみコーラ。

ということで、お馴染みの炭酸飲料をゲル化剤2.0g添加でとろみ化してみた。
あ、美味い。そして爽やか。これは全然ありだ。なぜだ。

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飲んでみると、とろみはすごいのに爽やか。やっぱり味かー。
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とろみファンタメロンは見た目の発泡入浴剤みが強いが、駄菓子っぽくて美味い。

喉ごしは確実にねっとりしているんだけど、甘さがあることで「そういう食物なんだな」と脳が認識してくれるのだ。確かにこういう駄菓子、あったような気がする。コーラゼリー的な。
ゲル化してとろっとろのとろみがついた炭酸も、認識次第ではきちんと爽快感を感じ取れるというのは、面白い結果だと思う。というか、味ってすごい。


今回は全く役に立つ情報のない記事だったので、最後にひとつ、実生活に役立つ話を。

たっぷりと遊び倒したゲル化剤なんだけど、今回の実験中に粉末を机の上にこぼしてしまって、それを片付けるのにやたらと難儀してしまった。

水拭きすると、その水分を吸ってゲル化した水が机にべとべとくっついてしまったのだ。

なので、机にこぼした粉末ゲル化剤は、可能な限り掃除機で吸うなりしてから拭き取ること。でないといろいろと面倒くさいことになるぞ。

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なんか、拭いても拭いても机がベタベタする。ゲル化剤の水拭きは危険だ」
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