今回の企画を考える際に、こんなチューブわさびも見つけて、思わず買ってしまった。
伊豆産の本わさびチューブである。価格も約400円と、通常のやつの2倍近い。そうか、高級路線もありなのか。
ちなみに豆知識だが、チューブわさびの表記が「本わさび使用」なら、いわゆる日本原産の本わさびの割合が50%以上(他は西洋わさび)で、「本わさび入り」なら50%未満ということになるそうだ。へー。
ちなみに「生わさび」は、粉末わさびではなくちゃんとすり下ろしたものですよ、ということ。
先日、スーパーで買い物をしているときに、気になるものを見つけた。
いわゆる「チューブわさび」系列の薬味なんだけど、福神漬けとか紅しょうがとか…えっ、それチューブに入ってていいやつ?というラインアップなのである。
そうか、そういうのありなんだ。じゃあ、こっちも自分の好きなものをチューブ入りにしたっていいんじゃないのか。いいはずだ。
「えー、マジかー」と思いつつ買ってみた例のチューブ薬味がこれだ。
パッケージに「きざみ」とか「みじん切りタイプ」と書かれている通り、チューブの口を通る程度に細かく刻まれた紅しょうがや福神漬けが、絞るとネリネリと出てくる。
食べてみるとショリッとした紅しょうがらしき食感もあり、味も何の問題もない感じ。普通にうまいよこれ。
改めてスーパーでこういったチューブ薬味の棚を見てみると、まさに自由。これまで、カラシやワサビ、ショウガぐらいしか意識してなかった自分の不明を恥じるばかりだ。
写真には写ってないが、薬味の王様ネギに至っては、単なる刻みネギから、ショウガ・ニンニクとミックスのもの、ネギ塩(レモン/黒胡椒)など、多様に過ぎる。
つまりもう「薬味的なものはなんでもチューブでいいんじゃね?」と食品メーカーが言ってるようなものではないか。
チューブ薬味に対する心の枷から解き放たれた(そんな枷があったことも自覚してなかったけど)ところで、じゃあ自作の時間である。
空のチューブ容器自体はネットで探せばいろいろと見つかるが、残念ながら基本的には化粧品や医薬品をセルフで詰め直す用ばかりで、薬味用チューブサイズのものは発見できなかった。
仕方ないので、ちょっと小ぶりなタイプを購入。ひとまず、このチューブの口から絞り出せるような薬味を作って、シリンジで注入してやれば問題ないはず。
じゃあなにをチューブに詰めるかだけど、まず最初に思い浮かんだのが、僕の好物であるお好み焼きに欠かせない「かつおぶし」と「青のり」である。
いやほら、いちいちお好み焼きの上にかつおぶしと青のりを別の袋から取り出してかけるのも面倒くさいし。どうせならミックスにしてチューブからネリネリと搾り出せたら便利じゃないかなと思ったのだ。
ただ、かつおぶしをそのまま絞り出すのは難しそう。なので、紅しょうがなどと同じく、刻み路線でいこう。
刻むというか、電動ミルで細かく粉砕して粉にしてしまうのが手っ取り早い。
大量のかつおぶしをガーッと粉にした時点で「あれ?最初からカツオ魚粉を買ってくればもっと手早かったのでは」ということに気付いたが、まぁそれはいいとして。
かつおぶし粉ができたところで、次のステップはペースト化である。
だって、粉だとチューブから搾り出せないし。であれば、ある程度の水分と粘度は必要なはず。
そして粘度を出すのに必要なのがゲル化剤といわれるもの。他のチューブ薬味にも原材料名に「安定剤」や「増粘多糖類」などが入っているが、あれがつまりドロッとした粘りの元ことゲル化剤だ。
ゲル化剤なんて言うと面倒くさい気もするが、これもわりと簡単に手に入る。
老人介護用や赤ちゃんの離乳食用で、水分に混ぜるだけで簡単にゲル化する粉が売られているのだ。
ぶっちゃけ言えば片栗粉とかゼラチンでトロミをつけるのも一緒なんだけど、こっちのほうが冷たい温度でも溶けて安定するから、便利。
ということで、水分として用意したかつおだしにゲル化剤を少量混ぜて、よく攪拌してからかつおぶし粉に混ぜ込む。
さらに青のりを混ぜ込めば、目標とするものはあらかた完成と言っていいだろう。
最後に、このペーストをシリンジにいれてチューブにぶにゅーっと詰めれば、オリジナルチューブ薬味の出来上がりだ。
出来上がったら、次はもちろん実食である。
お好み焼きにソースとマヨをかけたら、チューブかつおぶし/青のりを上から搾って乗せて…まずビジュアルは、なんとなく想定していた通りにひどい。
比較のために、普通のかつおぶしと青のりをかけたハーフ&ハーフに仕上げてみたが、右半分と左半分で食欲のそそられ差が激しすぎないか。もう一回言うけど、チューブかつおぶし/青のり、ひどい。
しかし、実際に食べてみると評価は一転する。
見た目に反して、美味いのだ。
ほら、お好み焼きを食べたときの味の順番って、まずソースとマヨの味がして、次にお好み焼き本体と具材の味で、最後にかつおぶしがくる。かつおぶしは、モシャモシャとしっかり噛みしめないと、なかなか味が伝わらないのである。
ところが チューブかつおぶし/青のりだと、ソースとほぼ同時ぐらいにかつおぶしと青のりの味が来る。ペースト化により、味の伝達速度がやたらと速くなっているっぽい。
当然ながら味の複雑化が起き、旨味も強く感じられるようになるという仕組みだ。
これ、もしかしてお好み焼きの正解ではないか。
あと、JAXAと日清食品のコラボ宇宙食で「フリーズドライお好み焼き」というのがあるんだけど、チューブかつおぶし/青のりなら無重力空間にも対応できるだろう。素晴らしい。
思った以上にいいものができたので、調子に乗って追加で2種類のチューブ薬味を作ってみた。
「パセリ」と「天かす」である。
実は他にもあれこれ考えてはいたんだけど、薬味系で「○○ チューブ」と検索すると、わりとだいたいの製品化されたものがヒットしてしまうのだ。うーん、出遅れたようで悔しい。
まずパセリに関してだが、洋食などの添え物としては大定番であるにもかかわらず、薬味としての地位は妙に低い。正直、あってもなくてもどうでもいい、と感じている人も多いのではないか。
しかし、これもチューブ化することによって新たな地平が見えるかもしれない。
作り方は先例と同様、細かくしてゲル化剤を足してチューブに詰めるだけ。簡単だ。
とはいえ、かつおぶしほど細かく粉砕せず、みじん切りパセリの食感は残したい。
実食はパセリがマストとなる数少ない料理、ガーリックトーストで試してみた。
こちらもやはりビジュアルが難しいが、なに、味さえよければ問題ないのは先に実証した通りである。
正直な感想としては、あー、パセリこんなに要らないな、というところ。
細かく刻みすぎたせいか、パセリの青臭さが本格的。ストロングパセリだ。こんなに強くなくていいのに。
なるほど、上からパラパラっと散らされたぐらいで充分だったのか。
対して大当たり感があったのが、天かす。
天かすを薬味とカウントしていいのかはさておき、チューブ化にあたっては、かなり大胆な手法を採ることにした。
いや、これまた細かく粉砕してチューブに詰めただけなんだけど。
こちらは小麦粉のかたまりということで、水分を加えれば自動的にゲルっぽくなる。
味付けの好相性が確定しているめんつゆを加え、フードプロセッサーで攪拌すれば、天かすペーストの出来上がり。天かす最大のポイントであるカリカリ感が完全に失われるわけで、さすがに「これはヤバいか」という気持ちが強い。
しかし待って欲しい。ほら、うどんのトッピングとして考えればどうだろう。
普通に考えれば「天かすのペースト化とは何事か」と憤るカリカリ感至上主義の人でも、うどんの天かすがとろけていくのは許せるってこと、ないだろうか。
丼の中でつゆとの境界をあやふやにしてとろけていく天かす、美味いじゃないか。
そして天かすペーストは、そのとろけ速度が史上最速。うどんをすすりつつ、天かすがとろけるのをぼんやり待つ必要は無いのである。
初手から天かすの持つ油っ気と旨味が丼内で均質に広がっているので、どこからどう食べても美味い。丼に遍在する、ユビキタス天かすだ。
そしてもうひとつ。白ごはんにチューブを搾っても美味いことは述べておきたい。
コンビニなどでもお馴染みになってきた「悪魔のおにぎり(めんつゆ味の天かすを混ぜ込んだもの)」の味が、いとも手軽に堪能できる仕組みである。
もはやレッドオーシャン感のあるチューブ薬味業界だが、探せばまだ強いのが残ってる気はするぞ。
チューブ化…というかペースト化のメリット=味が速い、というのも見えてきたことだし、他にも模索してみる価値はあると思う。
今回の企画を考える際に、こんなチューブわさびも見つけて、思わず買ってしまった。
伊豆産の本わさびチューブである。価格も約400円と、通常のやつの2倍近い。そうか、高級路線もありなのか。
ちなみに豆知識だが、チューブわさびの表記が「本わさび使用」なら、いわゆる日本原産の本わさびの割合が50%以上(他は西洋わさび)で、「本わさび入り」なら50%未満ということになるそうだ。へー。
ちなみに「生わさび」は、粉末わさびではなくちゃんとすり下ろしたものですよ、ということ。
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