特集 2020年1月6日

運航休止の宇野港⇔高松港フェリーに乗る

地方の公共交通は減る事こそあれど増える事はない。

岡山県の南部にある宇野港と、香川県の県庁所在地、高松港を結ぶ航路が2019年12月15日をもって休止となった。休止とは言っても事実上の廃止だろう。

名残惜しいので乗ってきた。

1984年生まれ岡山のど田舎在住。技術的な事を探求するのが趣味。お皿を作って売っていたりもする。思い付いた事はやってみないと気がすまない性格。(動画インタビュー)

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宇野と高松を結ぶ宇高航路

今回、運航休止となるのは下記の区間だ。「野」と「松」の頭をとって「宇高航路」とよばれる。

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宇高航路は岡山県の宇野と香川県の高松を結ぶ。岡山から高松までを結ぶ国道30号の海上部でもある。

今でこそ瀬戸大橋をはじめとする本州四国連絡橋が多くの物流を担っているが、かつてはこの宇高航路が本州と四国を結ぶ大動脈だったのだ。

 

宇高航路最終日の宇野駅へ。

宇高航路の最終日に僕も電車を乗り継ぎ宇野駅へと向かった。

運航休止が各種メディアで取り上げられたこともあり、宇高航路との別れを惜しみに来た人たちで電車内はごった返していた。

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宇野駅に到着。

岡山駅から一時間弱で宇野駅に到着。宇野駅は宇野線の終点で線路は宇野駅終わる。

ここから先は船が物流を担ったのだ。

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宇野の町に掲げられた鉄道連絡船(土佐丸)の写真。

宇野駅まで鉄道が敷かれたのは明治43年(1910年)で、同時に宇高航路は本州と四国の鉄道輸送をつなぐ鉄道連絡船としてスタートした。

鉄道連絡船は国鉄の運航だがその後、民間が運航するカーフェリーも続々と就航。24時間運航も行われ宇高航路は本州と四国を結ぶ大動脈となっていった。

昭和63年(1988年)に瀬戸大橋が開通すると鉄道連絡船は廃止となる。しかし瀬戸大橋の通行料が片道6,300円もかかったため、民間が運航するカーフェリーはその後も市民の身近な交通手段として運航された。

最後まで残っていた四国フェリー

そして当初は高額だった瀬戸大橋の通行料金は徐々に引き下げられ、民間のカーフェリーは相次いで宇高航路から撤退していった。

その後もETC割引(ETCの普及のためETCが付いた車の通行料金が割り引かれる)の拡大によって利用者が激減、最後まで頑張ってくれていた四国フェリーもこの日(2019年12月15日)をもって航路の休止を発表し、鉄道連絡船の時代から104年にも渡るこの航路の歴史に幕を下ろす。

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四国フェリーの乗り場。

駅から5分ほど歩いたところにある四国フェリーの乗り場に到着した。

この日は最終日の12月15日だったこともあって報道関係者も見受けられ、それ以外の人々もカメラやスマホでしきりにパシャパシャしている。

 

僕も宇高航路の休止は残念でならない。四国へ行く場合はほとんどフェリーだったからだ。

というのも、僕の車にはいまだにETCが付いておらず、ETC割引を受けられない。加えて岡山から高松へ行く場合、瀬戸大橋を使うとちょっと西に迂回するようなルートとなってしまう。

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冒頭の地図をもう一度貼っておく。

 

そして何より僕はフェリーを含め船が好きなのだ。

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四国フェリーの建物。

「高松行のりば」と掲げられた三角形の建物はまだ新しい。

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建物の中はこんな感じ。

普段は比較的のんびりとしている待合所も今日はこの混雑ぶりだ。

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旅客は片道740円(中学生以上)。

旅客と二輪車はここでチケットを購入する。

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車は長さによって値段が変わる。僕の車は4m未満なので3,150円。

瀬戸大橋を使う場合、岡山県側児島インターチェンジから香川県側の坂出北インターチェンジまでと比べると以下の表の様になる。

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ETC割引は平日と休日で値段が異なる。

ETC割引を受けていない僕はほとんど値段的なメリットが無いが、ETC割引を受けると瀬戸大橋のほうが断然割安だ。(国土交通省の最新のデータによるとETC利用率は92.1パーセントらしいので、ETCを持ってない僕はかなりの少数派であることが分かる)

またフェリーがおよそ1時間かかるのに対し10分ほどで渡れる瀬戸大橋は経済性においても利便性においてもかなりのアドバンテージを持つ。利用者が減少したのも無理のない話なのかもしれない。

 

フェリーの出航

しかしこの日は最終日ということもありもの凄い賑わいだった。

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人も車もこんなにたくさん。

建物の外にまで人があふれている。

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停泊中のフェリー(第一しょうどしま丸)。

そして停泊中のフェリー。現在、宇高航路は1日5往復のみでこの第一しょうどしま丸だけで運行されている。写真では伝わりにくいかも知れないがとても大きくてかっこいい。

客や車を載せる

出航時間が近づくと係の人が手際よく車やトラックを誘導してフェリーに積み込み始める。

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フェリーに乗り込む乗用車。

誘導に従い自動車やバイク、自転車、旅客が次々と乗り込んでいく。

 

大きなトラックが乗る様子は圧巻だ。船体が沈んで大きく揺れる。

係の人は車同士に隙間なく配置するのはもちろんのこと、フェリーが傾かないようにバランスにも配慮しているようだ。

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フェリーの内部はこの様な感じ。

大きすぎて建物の中のようだ。徒歩の旅客はこの様に隅を歩いて乗り込む。

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車でフェリーに乗った場合。

車で乗った場合はこの様になる。

運転に自信がなくても係の人が丁寧に誘導してくれるので全く不安なく乗ることができる。車で乗った場合も車を止めた後は客室へ向かう。

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フェリーの先頭部分。

フェリーは前と後ろが両方開くので、降りる時もバックする必要はなく前進だけで乗ったり降りたりできる。運転に自信がなくても安心だ。

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客室へは階段を使う。

バイクや自転車もこの様に載せられる。

 

出航

出航時間になるともやいが解かれる。

フェリーのハッチ部分がガシャコンと動き、その動きがとにかくかっこいい。あれだけでご飯何杯でもいけそうだ。

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徐々に岸から遠ざかるフェリー。
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それを見送る人々。

 

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180度回転して向きを変える。

着岸していたのは船首部分で、載せた車が前進のみで出られるように到着時は船尾側で着岸する。

客室内

ここから数日さかのぼり出航したフェリー内部の様子をお伝えする。

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客室内はこんな感じだ。

テレビがついていて、まるでリビングのように落ち着く。

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先頭付近の座席。景色が良い。

一番先頭の席はなかなか座れない人気の席だ。

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客室の後方はデッキになっている。

この日はめちゃくちゃ寒いが、時候が良ければほんっっとうに気持ちいい。

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客室中央付近にはこのような階段がある。

そして、この湾曲した階段を上ると屋上デッキへと出る事ができる。

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階段を上から見下ろした様子。

 

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屋上デッキでは海風が顔にぶつかる

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屋上のデッキ。

屋上デッキへと出た瞬間、海の匂いを含んだ風が顔にぶつかってくる。

風は冷たいが日差しは少しあたたかい。

はるか彼方まで続く海の景色は思わず深呼吸してしまうほど爽やかだ。

 

フェリーはもっとゆっくり動くイメージがあるかもしれないが、想像よりすごく早くて毎回びっくりしてしまう。

名物のうどん

宇高連絡船のころからうどんが名物で、もちろんこのフェリーでもうどんが食べられる。

客室にはカツオだしのいい匂いがしている。

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こちらは客室の中央付近にある売店。

客室のほぼ中央にちょっとしたお菓子や小物を扱う売店があり、名物のうどんを食べる事ができる。

普段はあまりお客さんがいるのを見た事がないが…、

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売店に人が殺到していた。

この日はお客さんの長蛇の列ができていた。

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わかめうどん(320円)。

讃岐うどんと比べるとあまりコシがないが、デッキで食べれば景色が最高の調味料となりどんなうどんよりおいしく感じる。寒風が吹きすさぶ中では暖かいうどんは体じゅうに染み渡る。

 高松港へ到着

そうこうしているうちに約1時間の航海が終了し、高松港に到着した。

宇高航路は船旅を楽しむ十分な時間もありつつ、飽きるほど長くない。本当に丁度良い時間なのだ。

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高松港に着いた第一しょうどしま丸。今度は船尾側から降りる。

高松港に着くと人や車やバイクや自転車がそれぞれの目的地へ向け散っていく。

そしてこの日はフェリーをバックに記念撮影する人がとても多かった。

 

高松港の様子。

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高松港のチケット販売所はこんな感じだ。

 

 

言い表せない帰りのフェリーの雰囲気

用事を済ませ、帰りももちろんフェリーに乗る。

帰りのフェリーの何とも言えない雰囲気が最高なのだ。

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帰りの客室の様子。

客室の明かりで運行に支障がでないよう、窓にはカーテンが引かれている。

多くの人がいるがとても静かだ。みんな疲れて寝たり、まったりして過ごしている。

 

帰りの船でもカツオ節の香りが船内にただよっていて、まるで家にいるような安心感がある。

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海の向こうに見えているのが高松の街。

再び屋上のデッキへ出ると空は薄暗くなっていた。温度が保たれていた客室内とは対照的に冷たい風がビュンビュンと吹き抜ける。

真っ黒な海の真ん中にぽっかりとフェリーのまわりだけが明るく、昼間は綺麗だった島々も薄暗くどこか不気味だ。

 

帰りのフェリーはいつも少しもの悲しい気分になるが、この日はいつも以上に強く感じる。

フェリーの運航が休止された後も瀬戸大橋を渡れば四国へ行くことはできるし、ETCを使えば安くもなる。しかしこの船旅の雰囲気が味わえなくなるのは寂しい。


香川の隠れ名物

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物骨付き鳥

香川と言えばうどんの印象が強すぎるが骨付き鳥も美味しい。

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