レコードに挟まった私物を見たとき、時空を超えた感覚になる
挟まっていたものは昭和のものが圧倒的に多かった。レコードが一番使われていた年代だからだろう。これ以外にも本当にまだまだたくさんあるのだが、紹介しきれないのでこのくらいにしておく。
私が平成生まれというのもあるのかもしれないが、懐かしい!というよりは「こんなものがあったんだ!!」とまるで化石を見つけたような気持ちになった。観察し解読するのも楽しい。友人にはずっとこのコレクションを続けて欲しいな…とかなり他力本願なことを思っている。
世間ではあまり知られていないが、レコード同士の間に私物(主に紙類)が挟まったまま売りに出されることが稀にあるらしい。
私の友人がレコード屋に勤めているのだが、あまりに変わったものが集まるので、コレクションとして集めてもらうことにした。今回は収集したものの一部を取り上げ、じっくりと観察してみようと思う。
レコード好きがある時、ふとジャンルに飽きて自宅にあるいらなくなったレコードをまとめて売りに出すことはよくある。時には入れ物の箱ごと売りにもってくるなんてお客もいるらしい。その時、私物が紛れこんだまま売りに出されることがあるみたいだ。
挟まっているものはライブのチケット・手紙・領収書・チラシ……などなど、種類はさまざま。レコードということ音楽関連のものが多いが、全く関係ないものもある。
なぜこれがこんなところに…!?と、勝手に推測しながら眺めるのは楽しい。まるで名探偵になった気分だ!
ではせっかくなので私の名推理(偽推理とも言う)と共にコレクションをご覧いただきたい!
世にも珍しいキョンキョンの握手券。握手券といえばAKBなど平成のアイドルが盛んに行っていた印象が勝手にあるが、昭和のアイドルも行っていたのには驚き。
1986年に行われた全国ツアー「テロ’86 武装アイドルを援護せよ!」のものだと書かれている。多くのファンはこの握手券を握りしめながら推しと対面できることに胸を踊らせていたはずだが、ここにあるということは持ち主は握手会に行かなかったのだろう。キョンキョンとの握手を上回る用事なんてあるのだろうか?
ニューアルバム「Liar(ライアー)を購入すれば握手券が手に入るらしい。アルバムさえ買えばキョンキョンと握手ができるなんて、ちょっとお手頃過ぎないかい!?と頭を抱える。アルバム10枚購入で握手券に応募できる、ぐらいでやっと帳尻が合う。私がこの時代に生まれていたら間違いなく購入していた代物だ。
(もちろんチケットを買うのも忘れずにネ!)の「ネ!」の部分に時代を感じる。語尾をカタカナにするのがイケていた時代だとは認知しているが、配布物にまで記入されるほどとはね…!!
そして、同じく昭和に活躍したスターの握手券がもうひとつあるのでご紹介する。
明らかに手書きで丸っこい字なのが愛しい。こんなにゆるい握手券がこの世に存在するだろうか?「原田真二」の直線の真っ直ぐさに、書き手の几帳面な感じが伝わってくる。左下の☆にも親しみを感じる。
そして、4月28日(二)の(二)はなんだろう?2回目ってことなのか。原田真二の(二)なのか?よくわからない!
チケット関連でいうと他にもこんなものが。
「8.16 エルヴィスよ永遠に」の赤文字が特徴的なチケット。1987年なのでプレスリーの没10周年記念イベントのものだろうと友人が教えてくれた。
12:00開演で入場券2500円…ファンクラブ主催のものなので一体どんな催しだったのか気になる。チケットがもがれているのできっと持ち主は会場に行ったのだろう。
いったい何が行われているのか気になったが、かつてライブ映像を集まって観る「フィルムコンサート」というものがあるらしいと編集部の林さんが教えてくれた。
あの…プレスリー好きすぎません?絶対さっきのと持ち主同じですよね?とつっこみたくなるほどなぜかプレスリーグッズが多い。5000円もいったい何を買ったのだろうか。「エルヴィス出版会」というネーミングも気になるところだ。そしてプレスリーはかっこいい!!
誰かが書いた、手書きのメモも見つかった。
レコードのA面・B面の曲順がチラシの裏面に書かれたもの。曲名から1985年に発売されたハードロックバンド EARTHSHAKERの「PASSION」というアルバムであることがわかった。
通常レコードには裏表紙に曲順が書かれていることがほとんどなので、わざわざ紙に書き起こす必要はない。もしかしてレコードやカセットにダビングしたものを友人に貸す際に使用したのだろうか?チラシの裏面というのがまた良い。下手に便箋に書かれるよりこっちの方が好印象な気がする。
このメモの気になる点は、Side-A Side-Bの文字だ。
なんというおしゃれな文字!何かを参照したというよりは普段から描いているような”慣れ”を感じざるを得ない。こんな字を鮮やかに目の前で書かれたら惚れてまう……。
やはり昭和の手書きのものは字が丁寧だったり特徴的なものが多い。ネットでのコミュニケーションで”手書き”という手段を取ることが減った今だからこそ、一層魅力的に感じてしまう。
全然関係ないですが、最近字を書くことが減りすぎてふと文字を書くと下手くそすぎてびっくりすることがあります。字、練習しよう!!!!
しかしこのメモ、裏面は何が書かれているんだろうと思いめくってみる。「マジカルスペース」というラジオ番組の1周年記念のチラシだった。ラジオのチラシというのがあったのか…と驚いた。どうやら送るとグッズが当たるらしい。このラジオ番組をネットで検索しても特に情報が出なかった。音楽系の情報を提供するメディアだろうか?
チラシといえばこちらも。
なんだか奇妙なチラシだ。「日本とたっぷり話そう」「今すぐ日本に安く国際電話したい方」という記述から、海外から日本にかけたい人向けのサービスだとわかる。イギリス通過の£(ポンド)を用いていることから、イギリスの日本人学校または日本人が多く勤める職場で配られていたものではないだろうかと予想する。(そんなこと言って違ったらごめんなさい!)
チラシの内容も気になるが、よくみると描いてあるイラストも妙な形をしている。
大きさも形も文字の角度も全てが違和感しかない。きっと様々なテンプレを組み合わせたに違いない。ガッシリと受話器を握る、にこやかなうさぎの表情に恐怖すら感じてしまう。なんか怖いんですけど!!
ルーズリーフのような紙に丁寧に書かれた感想文。これは一体なんなのだろうか?
冒頭に書いてある「サージェント・ペッパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド」は、イギリスで1967年に発売されたビートルズの8作目のオリジナルアルバムだ。日本発売は7月5日。リリースから大体3ヶ月後に書かれたものだ。
当時のリアルタイムリスナーが書いたレビューだと思うと急にタイムカプセルを掘り出した気分になる。1967年のレビューが時を超えて2021年に生きている私が読んでいると思うと、なんともロマンチックな気持ちになる。
熱心なファンなのか、非常に細かくかいてある。冒頭のイントロの説明であろう「歯切れのよいやや高いリズムギターが二小節、すぐにリード・ギターとボーカルがかぶって一小節…」という文章からもたっぷりとした愛情を感じる。
文章で細かく説明されているので、読んでいる方は音楽を聴いていないのに楽曲を想像してしまう。このレビューを見ながら曲を聞くと、当時の熱狂的なリスナーに曲を解説してもらっている感覚になって面白い。この人はのちに音楽ライターなどになったのだろうか?
「11月たんじょう会」と書かれた紙。報道部、放送部などと書かれていることから、マスコミ関係の会社内に貼られた社員の誕生日一覧だと予想する。
11月の誕生日だけでこんなに沢山の社員がいるのだから、大手の会社だったのだろうか。
それにしても社員全員の誕生日会を行うとは、相当仲のいい会社なのだろう。この表をみる限り毎日が誕生日だ。こんなに毎日誕生日を祝うとなるとだんだん皆飽きてくるんじゃなかろうか?という余計な心配を勝手にしてしまう!
よーく見てみると、手書きのように見えるがどうやら違うみたい。生配信イベント「出港!パワポ丸」にてこれを紹介した際、リスナーの方にガリ板印刷だと教えてもらった。
絶滅危惧種であるガリ板印刷に会えるなんて……!!と感動してしまった。独特の風合いが出ていてみるだけでほっこりしてしまう。というか、元のデータを作った人の字がうますぎないか?きっと字がうまいから会社のありとあらゆる表の作成を任されていたに違いない…などと苦労を勝手に想像してしまう。
続いては推しへの愛が抑えきれていない代物。
「good-bye yesterday」は、おばたあいこ氏が1977年10月21日にリリースしたアルバム。きっと発売当初に作ったのだろう。
よくみると、手書きの文字が書かれた紙の空白に既存のイラストが切って貼られている。
どのように量産したのかわからなかったが、コピーして切り貼りをしたのではないか?と林さんが教えてくれた。まるで今で言うWikipedia的なメディアにも見える。
きっとこの人は紙で好きなシンガーのWikipedia的なものを作成し、布教活動として友人に配っていたのではないか?だとしたらオタクの熱量ってすごいな…と思ったが、よく考えると自身のプロモーション用として配っていた可能性もある。なんとも謎めいた代物だ!
今でこそ給与は銀行振り込みだが、現金での支給の時代のものがあった。
なぜこれをレコードの棚にしまったんだ!と思わずつっこんでしまうが、なんとも珍しい。私は生まれた時から銀行振り込みが主流だったので、これを見た時はちょっと異世界に感じてしまった。現金が大量に入っていると分厚くなるので“ 給料袋が立つ ” なんて言い方もあるが、これが噂の給料袋か…とまじまじと見てしまった。
挟まっていたものは昭和のものが圧倒的に多かった。レコードが一番使われていた年代だからだろう。これ以外にも本当にまだまだたくさんあるのだが、紹介しきれないのでこのくらいにしておく。
私が平成生まれというのもあるのかもしれないが、懐かしい!というよりは「こんなものがあったんだ!!」とまるで化石を見つけたような気持ちになった。観察し解読するのも楽しい。友人にはずっとこのコレクションを続けて欲しいな…とかなり他力本願なことを思っている。
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