パッチンバンドがカッコいい
憧れのパッチンバンドだった。実は長い間、忘れていたのだけれど、なぜかふと思い出し、パッチンバンドが欲しいという気持ちを止めることができなくなった。そして手に入れるとカッコいい。とてもカッコいい。ずっと遊んでいられる。有益な使い方はわからないけれど、カッコいい、それでいいじゃない。ブームが再来してほしい。

パッチンバンドというものがある。パッチンブレスや巻き付きバンドと呼ばれたりもする。板状なのだけれど、手首に軽く叩きつけると、クルっとなって手首に巻きついてくれるものだ。30代くらいの方は小学生の頃に流行ったのではないだろうか。
小学生時代の憧れだった。しかし、当時はお小遣いがなくて手に入れることはできず、大人になってしまった。そして、ついに手に入れたのだ。パッチンバンドを。誰もが憧れた、燦然と光り輝くパッチンバンドを。
小学生の頃はいろいろな流行りがあった。30代前半の私の頃は、ポケモンの青緑がちょうど発売された頃で、ゲームもそうだけれど、ポケモンのバトル鉛筆も流行った。他にも「爆走兄弟レッツ&ゴー!!」世代で、ミニ四駆も流行った。
「パッチンバンド」も流行った。何かのキャラというわけではない。コロコロコミックでも、パッチンバンドで悪と戦うみたいな漫画も連載されていない。しかし、「パッチンバンド」は確かに流行ったのだ。
何が面白いのか、と言われると困る。何に使うのか、と言われても困る。ただ無性にやりたくなるのだ。手首に軽く叩きつけてはクルッと巻きつく様が人を虜にするのだ。小学生当時は手に入れることはできなかったけれど、大人になった今、手に入れたのだ。
ついに手に入れたパッチンバンド。家で暇な時間が発生すると、パッチンと小気味良い音をさせ手首にクルッと巻きつけさせて遊んだ。癖になるのだ。シンプルであるからこそ、抜け出せない。結局、塩で食べるのが一番美味しい、みたいなことだ。
たとえば、上記はコンビニで買った「つくね」を見て、これは何センチだ? と思っているところだ。小学生の頃とは違い、パッチンバンドとて、ただ面白ければいいというだけではダメだ。大人になった今はそれに使い道がなければならないのだ。面白いだけでは生きていけないのだ。
常に定規を持ち歩くのは荷物になるけれど、パッチンバンドとして手首に巻きつけておけば、いつでも長さを測ることができる。日に7回くらいはこれ何センチ? という状況があるので、定規のパッチンバンドはとても便利だ。
冷たい風が強い時などは袖に隙間があると寒い。そんな時にパッチンバンドで隙間を埋める。もしかするとこれが一番正しい使い方かもしれない。自転車に乗る際にズボンの裾を捲り上げる時の固定などにもパッチンバンドがいいかもしれない。
今までのパッチンバンドはシリコンで作られていたけれど、反射板を使ったパッチンバンドもある。これを手に巻きつければ夜道も目立つので危なくない。脱着が楽なのでいいかもしれない。こういう使い方もパッチンバンドにはあるのだ。
パッチンバンドはもちろん日本だけのものではない。どこで生まれたかは知らないけれど、世界中で愛されていることは間違いない。先の定規としてのパッチンバンドは、イギリスの自然史博物館のお土産コーナーで買ったものだ。
ルーマニアに行った時にはガチャガチャにパッチンバンドがあった。しかもシンプルなタイプだ。定規が付いているわけではない。反射板が付いているわけでもない。純粋な小学生の頃に我々が憧れたパッチンバンドがあったのだ。
私はこのパッチンバンドにカッコよさを感じている。だって手首に巻きつくだけである。それが今も当たり前のように売っているのだ。しかも、よく使い方がわからないままに。そこにカッコよさや憧れを感じるのだ。
オシャレは我慢と聞く。機能性が優れていなくても、オシャレならいいのだ。それと同じようにパッチンバンドには機能性こそないが、カッコよさがあるのだ。だからこそ、長いこと憧れを集めているのだ。そういうことなのだ。
見れば見るほど、手首にパッチンとすればするほど、カッコいい。もう何だろう、惚れ惚れするのだ。自分の手が3倍カッコよく見え、それと付けた自分は9倍輝いている。小学生の頃の憧れが今、我が手にあるのだ。もっとカッコよくパッチンバンドを撮りたい。カッコよさを伝えたいのだ。
ちょっと湿り気を帯びると、すべてのものはより輝き出す。水も滴るいい男というように、果物を撮影する時に霧吹きで雫を作るように、雨の日は山の緑が濃く美しくなるように、パッチンバンドに湿り気をと思ったら、波ですよ。
ただここまででパッチンバンド自体がカッコいいことはわかったと思う。あとはカッコいい付け方だ。必然的に海ということにはなる。海は偉大なのだ。カッコよさとはなにか、を考えると海になる。大きいからね。海で複数付けが一番カッコいいパッチンバンドの付け方になるのだ。
憧れたパッチンバンドを一番カッコよく付けた。これ以上はないだろう。我が手の中にパッチンバンドがあるのだ。彼の力を一番発揮させることができたのだ。シリコンだから濡れても問題ない。問題あるのはつける方だけど。寒いのだ。
憧れのパッチンバンドだった。実は長い間、忘れていたのだけれど、なぜかふと思い出し、パッチンバンドが欲しいという気持ちを止めることができなくなった。そして手に入れるとカッコいい。とてもカッコいい。ずっと遊んでいられる。有益な使い方はわからないけれど、カッコいい、それでいいじゃない。ブームが再来してほしい。
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