抱えて持って帰ってきたぞ
ガラスの作品は輸送中に壊れることもあるらしい。
持って帰りますよと気軽に来たものの、これを新幹線で持って帰れるだろうか。
「尿酸結晶できました」という連絡をもらったときはまじで!?と思ったが、いいものを買った。
アクリルケースに入れて毎日眺めよう。
取材協力:
Seed Lampwork 平野元気
インスタグラム
メール glass.genkiアットgmail.com
(カタカナのアットを@に変えてください)
2018年の年末、AR忘年会というイベントでガラス細工のアーティストに会った。
作品の写真を見せてもらうと、ガラスのネクタイなど変わったものを作っていた。
そこで僕は「ガラスの尿酸結晶なんてどうですか?」などと軽はずみな提案をした。
それから4ヶ月、完成したという連絡をもらって工房を訪ねた。
尿酸結晶が気になるようになったのは、知人(痛風)が画像を見せてくれたのがきっかけである。
「痛風になると血管のなかにこんな結晶ができるんです。」
それはこんな画像だった。(リンク先の画像をどうぞ)
こんなトゲトゲしたものが血管のなかにできるなんて怖い。怖いけど、美しい…。いや、やっぱり怖い。むしろ怖いよ。
健康診断の結果で僕の尿酸値の値はもうすぐ要注意ゾーンだ。痛風は身近な恐怖として存在するし、生活習慣病はシリアスな話題である。
でも、この形はなんなのだ。なんでこんなにキラキラしているのか。怖いのに。
レディーガガの衣装が尿酸結晶に似ているというツイートも話題になっていた。(リンク)
怖い存在なのに、人の目を引くためのものに似ているのだ。毒蛇の模様を見たときのような気持ちになる。
そんなとき、ガラスのアーティストに会い、僕は「尿酸結晶を作ってくれませんか?」と言ったのだ。
ガラス細工のアーティストとは平野元気さん。岩手県北上市にアトリエを構えている。
工房に入ると尿酸結晶があった。その美しさと恐ろしさに息を呑んだ。
「台座は尿をイメージして真鍮にしました」のとこと。つまり、黄色ということだ。
とがっているが指にひっかからない。心地よく丸みを帯びている。でも強く押したらたぶん刺さる。
平野さんは作るまでに時間がかかるタイプなので4ヶ月でできたというのは驚異的なスピードらしい。
「『納品はいつでも大丈夫です』という注文もいただきますが、完成まで1年ほどお待たせしたこともあります…」
「尿酸結晶は製作工程をずっと考えていて、気付いたら試作を始めていました。」
怖美しさに惹かれた人がもうひとり増えた。
ガラスはバーナーで炙るとぐにゃりと柔らかくなるので、その間に曲げたりくっつけたりする。できる気がまったくしなかった。
なんどか途中で割れるなどの困難を経て尿酸結晶はできあがった。
工房にかかっているハンガーがガラス製だった。
軽くて強い、ということはなく弱いらしい。「すごく軽いものしかかけられません。おもしろいかなと思って」とのこと。
このほかにも
そのはかなさに小声になってしまうようなものを作っていた。紙飛行機は3800円だそうだ。
高いのか安いのかよく分からないが、「端数に800円をつけてお得感を出した」そうだ。これだけ実用性のないものを作っておきながら唐突なお得感がいい。
作品を入れている箱のなかにきれいな球を見つけた。
きれいだし、不思議だ。これは売れそうじゃないですかと言うと
「それですね。宇宙ガラスと呼ばれていて綺麗で人気があります。楽しみにしてくれる人もいます。
でもハンガーとかまだ無いものも作りたくなってしまうんですよね。」
宇宙 or ハンガー。あまり聞いたことがない二者択一である。
だが、ハンガーや紙飛行機のような単純な形状ほどやり直しやごまかしが効かないので基礎が問われると平野さんがこっそり教えてくれた。技術あってのおもしろだ。
ガラスハンガーのほかに超富裕層に売れそうな作品もあった。
どこの王族が使うのかねという豪華さである。フタについた輪はただのデコレーションではなく、せっけんの液剤がよく絡むように試行錯誤した結果だという。
興味を持った石油王はいかがだろうか。ただ、平野さんは作るばかりでネット通販などをまったくしてないので直接連絡してください。
ガラス製のクワガタやサソリもかっこよかった。
このサソリは宮沢賢治の作品に登場する紅い目玉のサソリをモチーフにしている。
宮沢賢治ゆかりの施設で販売しているが、梱包に気を使うので、店員さんに緊張を強いる作品らしい。
「賢治さんが書いた作品に、なにかしら関連があるとお店に置いてもらえるのですが、痛風は…」
雨ニモマケズの人と美味しいものを食べる痛風はなかなか結びつかない。
ガラスの作品は輸送中に壊れることもあるらしい。
持って帰りますよと気軽に来たものの、これを新幹線で持って帰れるだろうか。
「尿酸結晶できました」という連絡をもらったときはまじで!?と思ったが、いいものを買った。
アクリルケースに入れて毎日眺めよう。
取材協力:
Seed Lampwork 平野元気
インスタグラム
メール glass.genkiアットgmail.com
(カタカナのアットを@に変えてください)
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